株価
エムスリーとは

エムスリー株式会社(M3, Inc.)は、東京都港区赤坂一丁目11番44号 赤坂インターシティ10階に本社を置く、医療分野に特化したインターネットサービス企業です。2000年9月に設立され、現在は東京証券取引所プライム市場に上場しています。資本金は293億51百万円、代表取締役は谷村格氏です。従業員数は単体で700名程度、連結では1万5千人を超え、ソニーグループの持分法適用関連会社でもあります。
エムスリーは、医療従事者専用のプラットフォーム「m3.com」を中心に事業を展開しています。日本国内の医師の約9割にあたる30万人以上が会員登録しており、世界では600万人を超える医師ネットワークを保有しています。これにより、製薬会社や医療機器メーカーなどに対し、効率的で効果的な医薬品プロモーションやデジタルマーケティング支援を行っています。
事業の柱は5つの主要セグメントで構成されています。まず「メディカルプラットフォーム事業」では、m3.comを通じて医療従事者に最新の医薬・治療情報を提供し、製薬企業の営業活動(MR業務)をオンライン化する「MR君」などのソリューションを展開しています。
次に「エビデンスソリューション事業」では、CRO・SMOを中心とした治験・臨床研究支援やデータ解析を行い、臨床現場の効率化に貢献しています。「キャリアソリューション事業」では、医師や薬剤師を対象とした人材紹介・転職支援サービスを提供する「エムスリーキャリア」を運営しています。
さらに「サイトソリューション事業」では、医療機関の経営支援や電子カルテ、予約システムなどのITソリューションを提供しています。また「ペイシェントソリューション事業」では、患者や一般生活者向けの健康情報サービス、在宅医療支援、福利厚生領域などにも取り組んでおり、医療と生活の接点を広げています。
グループ会社には、メビックス株式会社(治験支援)、エムスリーキャリア株式会社(人材紹介)、ノイエス株式会社(治験施設支援)、アイチケット株式会社(予約システム)、エムスリーデジカル株式会社(電子カルテ開発)、QLife株式会社(医療情報メディア運営)などがあり、それぞれが医療分野のデジタル化・効率化を支えています。
エムスリーのミッションは「インターネットを活用して、健康で楽しく長生きする人を1人でも増やし、不必要な医療コストを1円でも減らすこと」です。医療従事者・製薬企業・患者の三者をつなぐデジタル基盤を強化し、医療業界の構造改革を推進するリーディングカンパニーとして、国内外で成長を続けています。
エムスリー 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 当期純利益(百万円) | 一株当たり利益(円) | 一株当たり配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 230,818 | 71,983 | 74,318 | 49,028 | 72.2 | 19 |
| 2024年3月期 | 238,883 | 64,381 | 68,840 | 45,271 | 66.7 | 21 |
| 2025年3月期 | 284,900 | 62,971 | 64,785 | 40,484 | 59.6 | 21 |
| 2026年3月期(予) | 360,000 | 70,000 | 70,000 | 45,000 | 66.4 | 21〜24 |
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー(百万円) | 投資キャッシュフロー(百万円) | 財務キャッシュフロー(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 57,113 | -21,933 | -22,837 |
| 2024年3月期 | 58,310 | -39,456 | 9,432 |
| 2025年3月期 | 51,743 | -39,149 | -27,165 |
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均) | PER(安値平均) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 31.1% | 16.2% | 12.2% | — | — | — |
| 2024年3月期 | 26.9% | 12.8% | 9.2% | — | — | — |
| 2025年3月期 | 22.1% | 10.6% | 6.9% | 53.2倍 | 30.5倍 | 3.95倍 |
投資判断
エムスリー株式会社は、医療分野に特化したインターネットサービス企業で、医師や薬剤師、製薬会社、患者を結ぶプラットフォームを運営しています。会社の規模としては、売上や従業員数が年々拡大しており、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)の中心的な存在として日本国内だけでなく、海外でも事業を伸ばしています。
売上高は2023年3月期に約2,308億円、2024年3月期に約2,389億円、2025年3月期には約2,849億円と増加しており、規模の拡大が続いています。しかし、営業利益は2023年の719億円から2025年の629億円にやや減少しており、営業利益率も31.1%から22.1%へと低下しています。利益率の低下は、M&Aや海外展開、人材投資によるコスト増が主な原因と考えられます。経常利益も743億円から648億円へ、純利益も490億円から404億円へと減少しています。
一方で、ROE(自己資本利益率)は16.2%から10.6%、ROA(総資産利益率)は12.2%から6.9%へと下がっており、効率性の面では一時的に鈍化しています。これは資産の増加や先行投資の影響が大きく、短期的にはやや厳しい局面にあります。ただし、これらの投資は将来の収益成長につながる可能性が高く、中長期的にはプラス要素と見ることができます。
株価指標を見ると、2025年3月期の実績PERは高値平均で53.2倍、安値平均で30.5倍、PBRは3.95倍と、依然として高い水準を維持しています。これは投資家が同社の長期的な成長性を高く評価していることを示しています。医療分野は景気の影響を受けにくく、同社のように安定した顧客基盤と高い市場シェアを持つ企業は、プレミアム評価を受けやすい傾向にあります。
キャッシュフローを見ると、営業キャッシュフローは毎年5,000億円前後を維持しており、事業の収益基盤は非常に安定しています。一方で投資キャッシュフローはマイナスが続いており、積極的なM&Aや開発投資が行われています。財務キャッシュフローの変動も、資金調達や投資に関連する動きで、健全な範囲といえます。
全体的に見ると、エムスリーは短期的には利益率の低下やROEの鈍化など、調整局面にありますが、医療業界のデジタル化需要は今後も拡大が続く見通しであり、同社の優位性は揺るぎません。特に「m3.com」を中心に医師ネットワークを活用したデータ事業や、製薬企業向けのデジタルマーケティング支援、治験支援事業、人材ソリューション事業など、収益の柱が複数存在している点は大きな強みです。
投資判断としては、短期的には株価の調整リスクがあるものの、中長期的には再成長が見込まれるため、「中立からやや強気」と言えます。安定したキャッシュフローと医療関連の需要の強さを考慮すると、長期保有を前提とした押し目買い戦略が有効な銘柄です。
将来的には、医療現場のDX支援やAIを活用した診療支援、海外事業の拡大などで再び高成長軌道に戻る可能性が高く、医療とITの融合を進める日本を代表する成長企業の一つとして注目に値します。
配当目的とかどうなの?
エムスリー株式会社の配当目的での投資についてですが、結論から言うと「配当狙いには向かない銘柄」です。
同社の2026年3月期の予想配当は1株あたり21〜24円で、予想配当利回りはわずか0.96%前後と1%を下回っています。これは東証プライム上場企業の平均配当利回り(約2%〜2.5%)と比べてもかなり低い水準です。つまり、インカムゲイン(配当収入)を目的に投資するタイプの株ではなく、あくまで成長性や将来の株価上昇によるキャピタルゲイン狙いが中心になります。
エムスリーは、もともと「配当よりも成長投資を優先する企業」です。得られた利益を積極的に再投資し、M&Aや海外展開、医療DX関連の新規事業に振り向けているため、配当水準はあえて抑えられています。こうした戦略は、短期的な株主還元よりも中長期的な企業価値の向上を重視する成長志向型の方針といえます。
ただし、安定性という観点では、業績が景気の影響を受けにくく、赤字転落リスクが低いため、今後も安定的に配当を継続できる可能性が高い点は安心材料です。連続増配銘柄ではないものの、減配の心配も小さい企業です。
まとめると、
- 配当利回りは約0.96%と低水準
- 成長投資を優先しており、高配当方針ではない
- 安定配当は維持される見込みだが、インカム目的では物足りない
- 中長期の株価上昇を狙う「成長株投資」向き
したがって、エムスリーは「配当目的よりも、医療DXの成長性を見込んだ長期的な株価上昇狙いの銘柄」として位置づけるのが適切です。
今後の値動き予想!!(5年間)
エムスリー株式会社の現在の株価は2,169.5円です。ここから5年間の値動きを、業績の見通しや医療DXの成長性を踏まえて3つのパターンで考えてみます。
まず「良い場合」は、エムスリーが進めている医療のデジタル化が国内外でさらに進み、m3.comを中心とした医療従事者向けサービスや製薬会社向けのデジタルマーケティング、治験支援、AI診療支援などの新規事業が順調に成長した場合です。海外の買収企業も安定的に利益貢献し、営業利益率やROEが再び上昇していけば、株価は再評価される可能性があります。
このシナリオでは、5年後の株価は現在の約2倍から2.3倍、つまりおおよそ4,200円から5,000円台まで上昇する可能性があります。医療DXが社会的に浸透し、業績の拡大が続けば株価も高値更新を狙える展開です。
次に「中間の場合」は、エムスリーの成長は続くものの、利益率の回復が緩やかで、コスト増や競争激化が重しになるケースです。売上は増えても利益の伸びが限定的で、株価はやや控えめな上昇にとどまります。
それでも医療業界全体が堅調であるため、株価が大きく下がる可能性は低く、5年後の株価は2,800円から3,000円前後と、現在よりやや上の水準に落ち着くと考えられます。安定成長型の推移となるシナリオです。
最後に「悪い場合」は、製薬企業の宣伝費削減や治験案件の減少、海外事業の収益化の遅れなどが重なって、業績が伸び悩むケースです。利益率がさらに低下し、投資家の期待が薄れるとPERも下がり、株価は軟調に推移する可能性があります。この場合は株価が1,100円から1,500円台まで下落することも考えられます。投資負担が重くなり、短期的な業績改善が見られない場合に起こりうるパターンです。
まとめ
総合的に見ると、エムスリーは配当よりも成長に重きを置く企業です。短期的な値動きは不安定な場面もありますが、長期的には医療のデジタル化が続く限り、再び上昇トレンドを描く可能性は十分にあります。つまり、5年後の株価は「良い場合4,000円台後半」「中間で2,800円前後」「悪い場合は1,000円台半ば」という見通しで、長期的な成長を信じて保有するタイプの銘柄といえます。
この記事の最終更新日:2025年11月3日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す