株価
クラレとは

株式会社クラレは、日本を代表する高機能化学メーカーの一つで、1926年6月24日に設立されました。本社は東京都千代田区大手町2丁目6番4号の常盤橋タワーにあり、創業の地である岡山県倉敷市酒津には今も本店機能を残しています。東京証券取引所プライム市場に上場しており、決算期は12月末日です。資本金は約889億円、連結従業員数はおよそ1万2千人で、海外にも多数の生産・販売拠点を持つグローバル企業です。
クラレの特徴は、他社が簡単に真似できない独自の化学素材を強みにしている点です。中核事業は「ビニルアセテート」「イソプレン」「機能材料」「繊維」「トレーディング」などの5分野に分かれています。
主力のビニルアセテート関連事業では、ポバール樹脂(PVA)、PVAフィルム、EVOH樹脂「エバール」などを展開しています。これらは食品包装用のバリアフィルム、太陽電池封止材、自動車の燃料タンク部材など、生活や産業を支える幅広い用途で使われています。
イソプレン事業では、熱可塑性エラストマー「セプトン」や「ハイブラー」などを製造し、自動車の部品、医療機器、スポーツ用品、粘着剤などに使用されています。また、医薬や農薬の中間体、工業用洗浄剤などの化学品も取り扱っています。
機能材料分野では、高性能樹脂や光学用フィルム、メタアクリル樹脂、活性炭、水処理用中空糸膜などを開発・販売しています。特に光学用途や水処理分野では世界トップクラスの技術を持ち、環境関連素材としても評価が高いです。
繊維・生活資材分野では、不織布、人工皮革「クラリーノ」、高機能繊維などを展開しています。クラリーノは天然皮革に代わる素材として、靴やバッグ、スポーツ用品などに幅広く利用されています。
売上構成比をみると、ビニルアセテート関連が約47%、機能材料が約24%、イソプレンが約9%、トレーディングが約8%、繊維が約7%で、その他が約6%を占めています。海外売上比率も高く、アジア、欧米など世界各地で事業を展開しています。
クラレは「世界中の人々の暮らしを豊かにする価値ある製品を創造する」という企業理念のもと、環境負荷の少ない素材やサステナブル製品の開発にも積極的に取り組んでいます。再生可能資源を利用したバイオマス素材や、CO₂削減に貢献する軽量材料など、環境と経済の両立を目指す姿勢が特徴です。
総合的に見ると、クラレは安定した財務基盤と高い技術力を持ち、包装・自動車・医療・環境といった多様な分野で世界的に需要のある素材を提供する「スペシャリティ化学メーカー」として位置づけられています。
クラレ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022.12 | 756,376 | 87,139 | 84,060 | 54,307 | 161.1 | 44 |
| 2023.12 | 780,938 | 75,475 | 69,025 | 42,446 | 126.8 | 50 |
| 2024.12 | 826,895 | 85,081 | 81,480 | 31,724 | 96.3 | 54 |
| 2025.12(予) | 840,000 | 75,000 | 69,000 | 33,000 | 105.9 | 54〜56 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 51,727 | -68,624 | -12,053 |
| 2023.12 | 129,298 | -63,151 | -64,959 |
| 2024.12 | 138,294 | -76,008 | -82,504 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022.12 | 11.5% | 8.3% | 4.4% | - | - |
| 2023.12 | 9.6% | 5.9% | 3.3% | - | - |
| 2024.12 | 10.2% | 4.1% | 2.4% | 高値平均:15.3倍/安値平均:9.5倍 | 0.72倍 |
| 2025.12(予) | 8.9% | 4.3% | 2.5% | 予想PER:16.31倍 | - |
出典元:四季報オンライン
投資判断
クラレの直近データを見ると、売上高は年々微増傾向にあり、2025年12月期も増収を見込んでいますが、利益面ではやや横ばいから微減の推移となっています。
営業利益は2022年の87,139百万円をピークに、2023年は75,475百万円、2024年は85,081百万円と推移し、2025年予想では75,000百万円とわずかに減少見通しです。経常利益も2024年81,480百万円から2025年は69,000百万円に減少予想となっています。純利益は2022年の54,307百万円から2024年には31,724百万円へと減少し、2025年は33,000百万円と小幅な回復を見込む水準です。
利益率を見ると、営業利益率は2022年11.5% → 2023年9.6% → 2024年10.2% → 2025年予想8.9%と、利益体質は安定していますが上昇力は鈍化しています。ROEも2022年8.3%から2025年4.3%へ低下しており、資本効率面ではやや物足りない印象です。ROAも4.4%から2.5%まで下がっており、全体的に収益性が落ち着いてきています。
株価指標をみると、2024年の実績PERは高値平均15.3倍・安値平均9.5倍、PBRは0.72倍と依然として割安圏です。2025年の予想PERは16.31倍で、業績見通しを織り込む形で市場評価はやや上向いています。PBRが1倍を下回っていることから、依然として資産価値から見れば見直し余地がある水準といえます。
総合的に判断すると、クラレは景気や原材料コストの影響を受けやすく、利益水準の伸びは限定的ですが、財務体質が強固でキャッシュフローも安定しています。短期的な成長よりも、堅実な業績と安定配当を重視する投資家に適した銘柄です。
株価はPER・PBRの水準から見ても割安感があり、長期的に保有することで配当と徐々の株価上昇を狙う「中長期安定投資向け銘柄」といえます。急成長を求める投資先ではありませんが、底堅い素材メーカーとして安定したポートフォリオの一部に組み込むには適しています。
配当目的とかどうなの?
クラレは、配当を目的とした投資先として安定感のある企業です。2025年12月期の予想配当利回りは3.25%で、東証プライム市場の中でも平均をやや上回る水準にあります。これまでの配当推移を見ても、2022年に44円、2023年に50円、2024年に54円と増配を続けており、2025年も54〜56円を予定しています。ここ数年、減配が一度もなく、安定配当を重視する経営姿勢がはっきりしています。
また、営業キャッシュフローも堅調で、2024年には約1,382億円と高水準を維持しています。景気の影響を受けにくい事業構造と強い財務基盤を持っており、本業の収益でしっかりと配当を支払う余力があります。自己資本比率も高く、借入金に頼らない安定経営が続いています。
ただし、ROEや営業利益率の伸びはやや鈍化しており、株価の上昇スピードは限定的です。したがって、短期的な値上がり益を狙うよりも、長期的に保有して安定した配当を受け取りたい投資家に向いています。
まとめると、クラレは「減配しにくく、毎年確実に配当を得たい人」に向いた銘柄です。急成長や高利回りを狙うタイプではありませんが、堅実な経営基盤と安定したキャッシュフローに支えられた中長期の配当収益を重視する投資先として非常に優れています。
今後の値動き予想!!(5年間)
クラレの現在値は1,658円です。ここから今後5年間の株価の動きを想定すると、良い場合・中間・悪い場合でそれぞれ異なる展開が考えられます。
まず、良い場合です。主力のビニルアセテート系樹脂(ポバールやエバール)やイソプレン製品の需要が世界的に伸び、環境関連素材や医療分野での事業拡大が進むケースです。営業利益率が10%台を維持し、ROEも6〜7%程度に改善すれば、市場からの評価も高まり、PERが18倍前後に上昇する可能性があります。この場合、株価は2,800円から3,000円前後まで上昇し、配当の増加とともに長期的な上昇トレンドを形成する展開が期待されます。
次に、中間の場合です。業績は堅調ですが、世界経済や原材料価格の変動に影響を受け、成長がゆるやかに進むパターンです。営業利益率は9%前後を維持し、配当利回りも3%台をキープします。PERが14〜15倍程度の評価を受けると、株価は1,800円から2,000円前後で安定的に推移すると考えられます。この場合は大きな値上がりは期待しにくいですが、安定した配当を受け取りながら保有を続けるには良い水準です。
最後に、悪い場合です。世界景気の減速や原材料高、為替の円高が進行し、主力の化学品や樹脂事業の採算が悪化するケースです。営業利益率が8%を下回り、ROEも3%程度まで低下すると、PERは10倍を割り込み、株価は1,100円から1,200円程度まで下落する可能性があります。景気後退期には素材メーカー全体が売られやすく、クラレもその影響を受けやすくなります。
まとめると、良い場合は2,800円〜3,000円、中間の場合は1,800円〜2,000円、悪い場合は1,100円〜1,200円の範囲を想定できます。クラレは派手な値動きをする銘柄ではありませんが、業績と配当が安定しているため、長期的にじっくり保有し、配当を受け取りながら安心して運用できるタイプの株といえます。
この記事の最終更新日:2025年11月6日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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