株価
デンカとは

デンカ株式会社は、1915年(大正4年)に設立された日本の総合化学メーカーで、100年以上の歴史を持つ老舗企業です。本社は東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号(日本橋三井タワー)にあります。東京証券取引所プライム市場に上場しており、連結従業員数は約6,500人です。
デンカは「化学で未来をつくる」を企業理念に掲げ、化学技術を基盤に幅広い分野で事業を展開しています。事業構成は主に「電子・先端プロダクツ」「ライフイノベーション」「エラストマー・インフラソリューション」「ポリマーソリューション」の4分野に分かれています。
電子・先端プロダクツ部門では、アセチレンブラック(リチウムイオン電池用導電材)、高機能セラミックス、電子用テープ、放熱材料、接着剤などの電子部品・高機能素材を製造しています。これらは、スマートフォン、EV(電気自動車)、通信機器などの先端産業で欠かせない材料として使用されています。
ライフイノベーション部門では、医療やヘルスケア分野における製品を展開しています。具体的には、ワクチン、臨床検査用試薬、感染症検査キット(抗原検査・抗体検査など)、ウイルス製剤などを開発・販売しており、新型コロナウイルス対策関連でも高い技術力を発揮しました。また、医療用診断装置や臨床検査薬の分野でも国内外で高い評価を受けています。
エラストマー・インフラソリューション部門では、特殊合成ゴム、高耐久性の土木建材、高断熱アルミナ繊維、パイプ材(コルゲート管)などを手がけ、社会インフラや建設、環境関連分野を支えています。特に高性能エラストマーは自動車・建築・エネルギー関連産業で広く使われています。
ポリマーソリューション部門では、スチレン系機能樹脂、アセチル系化学品、合成繊維、食品包装フィルムなどを展開しています。プラスチック原料から高機能樹脂までを幅広く手掛け、日用品や工業製品などあらゆる分野に関わっています。
また、デンカは脱炭素や環境対応にも積極的に取り組んでおり、CO₂削減技術や再生可能エネルギー活用、環境対応型製品の開発などを推進しています。特に電池材料や高効率セラミックスの分野では、今後のEV普及やエネルギー転換を支える重要な企業の一つと位置づけられています。
まとめると、デンカは化学を基盤としながら電子・医療・環境・社会インフラまでを幅広くカバーする総合化学メーカーです。伝統的な化学素材企業でありながら、近年は電子材料や医療・バイオ分野への進出を加速させており、次世代エネルギー・医療・環境の分野での成長が期待される企業です。
デンカ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 407,559 | 32,324 | 28,025 | 12,768 | 148.1 | 100 |
| 連24.3 | 389,263 | 13,376 | 5,474 | 11,947 | 138.6 | 100 |
| 連25.3 | 400,251 | 14,413 | 7,623 | -12,300 | -142.7 | 100 |
| 連26.3(予) | 410,000 | 25,000 | 19,000 | 15,000 | 174.1 | 100 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 8,946 | -28,268 | 18,361 |
| 2024年3月期 | 36,260 | -22,572 | 712 |
| 2025年3月期 | 18,620 | -59,586 | 40,118 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 7.9% | 4.3% | 2.1% | — | — |
| 2024年3月期 | 3.4% | 3.8% | 1.9% | — | — |
| 2025年3月期 | 3.6% | -4.2% | -1.9% | 高値平均 24.4倍/安値平均 17.0倍 | 0.66倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
デンカは、電子材料、化学製品、医薬品などを幅広く展開する総合化学メーカーで、創業から100年以上の歴史を持つ老舗企業です。アセチレン系化学品や導電材、セラミックス、ワクチン、診断薬など多様な分野で事業を行っていますが、近年は原材料価格の高騰やエネルギーコスト上昇の影響を強く受け、業績が厳しい局面にあります。
営業利益は2023年の323億円から2025年には144億円へ減少し、営業利益率も7.9%から3.6%に低下しています。経常利益も280億円から76億円へと大きく下がり、純利益は127億円の黒字から123億円の赤字に転落しています。これは、原料高や為替の影響、欧州や中国での需要減退、さらには一部事業での減損処理などが重なった結果です。
ROEは4.3%からマイナス4.2%、ROAも2.1%からマイナス1.9%となり、資本・資産を有効に活用できていない状態です。営業利益率の低下も含め、企業の収益力は一時的に弱まっているといえます。
ただし、株価指標に目を向けると、2025年の実績PERは高値平均24.4倍、安値平均17.0倍、PBRは0.66倍とかなり低い水準です。PBRが1倍を下回っていることから、市場では業績不振を織り込み済みで、株価が資産価値に対して割安な状態にあると考えられます。
また、財務面では営業キャッシュフローがプラスを維持しており、投資CFのマイナスは主に将来の成長分野への積極投資によるものです。短期的には利益が圧迫されていますが、中長期的にはこの投資が事業拡大に結びつく可能性があります。
今後の成長分野としては、EV(電気自動車)向けの導電材、半導体関連素材、そしてワクチンや診断薬などの医療分野が挙げられます。特に電子・先端プロダクツ事業やライフイノベーション事業は、デンカの将来の柱となる可能性が高く、これらが本格的に収益化すれば再び黒字転換も期待できます。
総合的に見ると、デンカは現在業績面で厳しい状況にありますが、財務体質は健全で、PBRが0.6倍台ということからも、長期的に見れば割安な水準にあります。短期的には赤字による株価の低迷が続く可能性がありますが、2026年以降の黒字回復が実現すれば再評価の可能性は高いです。
現時点での投資判断としては、短期的な値上がりを狙うよりも、業績の底を確認してからの中長期保有を意識するのが現実的です。赤字を織り込んだ今の株価水準は、長期投資家にとっては仕込み時期とも言えます。業績回復と成長投資の成果が見え始めた段階で、株価が大きく見直される可能性があります。
配当目的とかどうなの?
デンカは、業績は一時的に低迷しているものの、配当目的の投資としては十分に魅力があります。2026年3月期の予想配当利回りは4.41%で、東証プライム上場企業の平均利回りを大きく上回る高水準です。
同社は長年、株主への安定還元を重視しており、業績が悪化しても配当を維持する姿勢を続けています。実際、2023年、2024年、2025年と3年連続で1株あたり100円の配当を出しており、2025年には赤字であっても減配しませんでした。これは、会社として安定したキャッシュフローを持ち、内部留保がしっかりしている証拠です。
営業キャッシュフローも安定しており、2025年3月期でも約186億円を確保しています。つまり、一時的に利益が落ちても現金を稼ぐ力があるため、配当を支払う余力があります。財務的にも余裕があり、短期的な赤字で配当が途絶える可能性は低いといえます。
また、株価が下落している今はPBRが0.66倍と割安な状態で、株価が低い分、実質的な配当利回りはさらに高くなっています。これは長期保有でのインカムゲインを狙う投資家にとって非常に有利な状況です。
総合的に見ると、デンカは「安定して配当を維持し続けている老舗企業」であり、短期的な成長株ではないものの、安定配当を受け取りながら中長期で業績回復を待つスタイルに向いています。今後黒字回復が進めば、さらに増配の可能性もあるため、配当目的での保有価値は十分に高い銘柄です。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在のデンカの株価は2,266円です。ここから今後5年間の値動きを、良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで考えます。
良い場合は、電子材料や医療、環境関連分野での需要が回復し、会社の収益体質が改善して黒字に復帰するケースです。営業利益率は7%前後まで上昇し、ROEやROAもプラスに戻ります。原材料価格やエネルギーコストの安定、海外需要の回復も追い風となり、PERは15〜18倍程度まで上昇する可能性があります。この場合、株価は現在の2,266円からおよそ1.8〜2倍程度上昇し、5年後には4,100円〜4,500円程度まで伸びる可能性があります。配当も維持され、業績が改善すれば増配も見込まれます。
中間の場合は、業績が徐々に回復するものの、原材料価格の高止まりや為替の影響が残り、成長は緩やかなケースです。営業利益率は4〜5%台、ROEも5%前後で安定し、PERは現状と同水準の13倍程度で推移すると考えられます。この場合、株価はゆっくりと上昇し、5年後には2,800円〜3,200円前後になる見込みです。配当は維持される可能性が高く、配当利回り4%台を確保したまま安定的な運用が期待できます。
悪い場合は、世界的な景気減速や原材料価格の再上昇、為替の円高などが重なり、業績が再び悪化するケースです。営業利益率は3%未満、ROEやROAもマイナス圏に戻り、赤字が続くリスクもあります。市場の評価も下がり、PERは9倍を下回る可能性があります。この場合、株価は下落し、5年後には1,700円〜1,900円程度まで落ち込む可能性があります。配当は維持される可能性もありますが、業績が回復しなければ減配のリスクも否定できません。
まとめると、デンカの株価は今後5年間で、良い場合は4,100〜4,500円、中間の場合は2,800〜3,200円、悪い場合は1,700〜1,900円程度になると考えられます。現時点の株価は割安圏にありますが、業績回復の確実性を見極めたうえで中長期的な視点で保有するのが現実的です。業績が立ち直れば配当と株価上昇の両方が期待できる一方、景気次第では停滞するリスクもあります。
この記事の最終更新日:2025年11月8日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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