株価
トクヤマとは

株式会社トクヤマは、日本を代表する化学メーカーの一つで、1918年(大正7年)に設立されました。本社は東京都千代田区外神田1丁目7番5号(フロントプレイス秋葉原)にあり、登記上の本店は山口県周南市御影町1番1号に位置しています。東京証券取引所プライム市場に上場しており、連結従業員数は約5,700人です。
トクヤマは創業当初、ソーダ灰や苛性ソーダなどの基礎化学品を中心に事業を展開していましたが、現在では電子材料や医療関連など高付加価値分野にも積極的に進出しています。事業セグメントは大きく「化成品」「特殊品(電子先端材料)」「セメント・建材」「ライフアメニティ」「環境・その他関連」の5つに分かれています。
化成品事業では、苛性ソーダ、ソーダ灰、塩化ビニルモノマー、塩化カルシウムなどの基礎化学製品を製造しています。これらは紙パルプ、繊維、建設、化粧品、食品などさまざまな産業で使用され、国内外の製造業を支える基盤素材となっています。
特殊品事業では、半導体や液晶向けの超高純度多結晶シリコン(ポリシリコン)や四塩化珪素、フォトレジスト用現像液、高純度薬品などを扱っています。特に多結晶シリコンは世界でもトップクラスの品質を誇り、同社の成長を牽引する主要事業のひとつです。また、窒化アルミニウムや高性能セラミックス材料など、電子デバイス分野の高機能素材も展開しています。
セメント・建材事業では、セメントや生コンクリートをはじめ、セメント系固化材や産業廃棄物のリサイクルなども手がけています。トクヤマは山口県徳山地区に大型の製造拠点を持ち、セメント事業では製造から販売、再資源化まで一貫した体制を構築しています。
ライフアメニティ事業では、歯科材料や医薬品原薬、プラスチックレンズ材料、イオン交換樹脂膜、微多孔質フィルムなどを製造・販売しています。これらは医療機器や光学レンズ、自動車分野などに幅広く利用されており、同社の「人の暮らしを豊かにする化学」を体現する事業です。
環境・その他関連事業では、廃棄物リサイクル、水処理、環境保全に関する事業を展開しています。特に、廃石膏ボードの再資源化や水処理用膜技術の開発など、サステナブルな社会づくりに貢献する取り組みを強化しています。
近年は電子材料や医療関連など高収益分野の拡大を進めると同時に、基礎化学とセメント事業の安定収益を軸に、バランスの取れた事業構造を築いています。さらに、環境負荷低減やカーボンニュートラル対応にも積極的に取り組み、再生可能エネルギーや資源循環型社会への対応も進めています。
まとめると、トクヤマは「素材の力で社会を支える総合化学企業」として、伝統ある基礎化学分野を土台にしながら、半導体、医療、環境といった先端領域にも強みを広げる企業です。安定的な収益基盤と高付加価値分野の成長性を併せ持つ、堅実かつ将来性のある化学メーカーといえます。
トクヤマ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 351,790 | 14,336 | 14,783 | 9,364 | 130.2 | 70 |
| 連24.3 | 341,990 | 25,637 | 26,292 | 17,751 | 246.7 | 80 |
| 連25.3 | 343,073 | 29,968 | 29,588 | 23,388 | 325.1 | 100 |
| 連26.3(予) | 364,500 | 41,500 | 41,500 | 29,000 | 403.1 | 120 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | -11,800 | -33,757 | 30,151 |
| 2024年3月期 | 55,828 | -30,405 | -46,508 |
| 2025年3月期 | 52,368 | -23,478 | -1,106 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 4.0% | 4.0% | 1.9% | — | — |
| 2024年3月期 | 7.4% | 7.1% | 3.8% | — | — |
| 2025年3月期 | 8.7% | 8.9% | 4.9% | 高値平均 12.8倍/安値平均 9.3倍 | 1.00倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
トクヤマは、化学・電子材料・セメント分野を中心に展開する総合化学メーカーで、近年は特に半導体向け高純度多結晶シリコンや電子材料の伸びが業績を押し上げています。数字面から見ても、利益率・収益性の改善が明確に表れています。
2023年3月期の営業利益は143億円、経常利益147億円、純利益93億円でしたが、2025年3月期には営業利益299億円、経常利益296億円、純利益234億円まで増加しており、わずか2年で営業利益が2倍以上に拡大しています。営業利益率も4.0% → 8.7%と大幅に改善しており、収益構造が安定化し、事業の質が明らかに変わっています。
ROEも2023年の4.0%から2025年には8.9%に上昇しており、資本効率が高まっている点も評価できます。ROAも1.9%から4.9%まで上昇しており、資産を効率的に利益へ結びつける経営が進んでいることが分かります。これらの指標から、単なる売上規模の拡大ではなく、高収益体質への転換が進んでいることが読み取れます。
株価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均12.8倍、安値平均9.3倍、PBRは1.00倍です。PERが10倍前後という水準は、化学セクター全体の平均から見ても割安圏にあると言えます。PBRがちょうど1倍であることから、企業の純資産価値と株価が均衡している状況で、これ以上業績が伸びれば株価の上昇余地があると考えられます。
また、営業キャッシュフローは2024年以降プラスを維持しており、財務CFのマイナス(返済・配当)が安定していることから、内部資金での成長投資と株主還元が両立できる段階にあります。
総合的に見ると、トクヤマは業績の回復力と財務の健全性が高く、堅実な成長株・割安バリュー株の両面を持つ銘柄です。営業利益率が9%近くまで改善し、ROE・ROAも安定上昇している点から、今後も収益拡大と株主還元の両立が期待できます。
投資判断としては、中長期での成長と配当の両取りを狙える良好な投資対象です。現在のPER・PBR水準を考えると、過度な割高感はなく、押し目での買いは十分検討に値します。業績の上向きトレンドが続く限り、株価の上昇と配当増の両方が見込める堅実な銘柄といえます。
配当目的とかどうなの?
トクヤマは、配当目的の投資にも十分向いている安定配当株です。
2026年3月期の予想配当利回りは3.16%で、これは東証プライム上場企業の平均(およそ2%前後)を上回る水準です。
同社は以前まで内部留保を優先する傾向が強かったものの、近年は利益拡大に伴い、株主還元にも積極的な姿勢を見せています。実際、1株配当は2023年の70円から2024年に80円、2025年に100円、そして2026年には120円と、3年連続で増配しています。これは業績に裏付けられた安定した増配であり、単なる一時的な還元ではなく、配当方針そのものが上向いていることを示しています。
配当性向もまだ40%前後と無理のない水準で、財務面にも余力があります。営業キャッシュフローが安定的にプラスを維持しており、借入金の削減や設備投資を行いながらも配当を支払える体制が整っています。今後も利益が積み上がることで、さらなる増配余地もあります。
また、PBRが1.0倍と資産価値に対して株価がほぼ同水準であることから、株価下落リスクも限定的です。利回り3%超の安定配当を得ながら、業績の上昇に伴う株価の上振れも狙える点で、インカムゲイン+キャピタルゲインの両面が期待できる銘柄といえます。
まとめると、トクヤマは安定した業績基盤を持ち、増配を継続している企業です。配当利回り3%超という水準は、高配当株の中でも安定性が高く、長期保有での資産形成に向いています。配当目的としても十分魅力があり、安定した収益と堅実な株主還元を両立する優良銘柄と評価できます。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在のトクヤマ(証券コード4043)の株価は3,795円です。
ここから今後5年間の値動きを、良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで考えます。
良い場合は、半導体や電子材料、高純度シリコンなどの需要が世界的に伸び続け、トクヤマの主力製品である高純度多結晶シリコンや機能性化学品が大きく売上・利益を伸ばすシナリオです。営業利益率は現在の8.7%から10%前後に改善し、ROEやROAも10%近くまで上昇します。市場の評価も高まり、PERは現在の12倍前後から15倍程度まで上昇する可能性があります。この場合、株価は現在の3,795円からおよそ1.8〜2.1倍程度に上昇し、5年後には6,800円〜8,000円前後になる可能性があります。配当も順調に増配が続き、配当収入と株価上昇の両方が狙える理想的な展開です。
中間の場合は、景気や市況が安定的に推移し、基礎化学や電子材料、セメントなどの事業が堅調に推移するケースです。営業利益率は8〜9%前後を維持し、ROEは8〜9%、ROAは4〜5%程度で安定します。PERは10〜12倍程度の水準を保ち、業績に見合った株価水準が続くと考えられます。この場合、株価は5年間で4,500円〜5,200円程度まで上昇する可能性があり、配当も3%台の高水準を維持できる堅実なシナリオです。
悪い場合は、景気減速や原材料価格の高騰、為替の円高などが重なり、収益性が低下するシナリオです。営業利益率は7%未満まで低下し、ROEも6〜7%台に落ち込む可能性があります。PERは9倍以下まで下がることが想定され、株価は2,800円〜3,200円程度まで下落するリスクがあります。ただし、トクヤマは財務基盤が堅いため、配当が大幅に減る可能性は低く、安定配当を維持できる余力があります。
まとめると、現在の3,795円を基準に、良い場合は6,800〜8,000円前後、中間では4,500〜5,200円前後、悪い場合は2,800〜3,200円前後が目安となります。
トクヤマは収益性の改善が進んでおり、増配を続けていることから、安定的な配当を得ながら長期で成長を狙う投資に適した銘柄です。
この記事の最終更新日:2025年11月8日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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