株価
エーザイとは

エーザイ株式会社は、東京都文京区小石川4丁目6番10号に本社を構える、日本を代表する研究開発型の製薬企業です。1941年12月6日に設立され、資本金は約449億円(44,986百万円)で、東京証券取引所プライム市場に上場しています。
同社の企業理念は「ヒューマン・ヘルスケア」であり、「患者と生活者の視点で考える」という姿勢を経営の根幹に据えています。エーザイの社員は全員が患者やその家族との対話を重視し、医療現場のニーズを直接理解した上で研究開発や製品改善を行うことを重視しています。この理念は、単に医薬品を販売する企業ではなく、「人の健康と生活の質(QOL)を高める企業」であるという使命を意味しています。
事業内容は、医療用医薬品を中心とする研究・開発・製造・販売・輸出入が主軸です。重点領域としては、認知症、アルツハイマー病、中枢神経系疾患(CNS)、がん、てんかん、肝疾患、消化器疾患などが挙げられます。特に神経領域と腫瘍領域を「ハブ領域」として重点投資を行っており、革新的な新薬の創出を目指しています。
エーザイは、国内に茨城県の筑波研究所、岐阜工場、鹿島事業所などの研究開発・製造拠点を持ち、海外にも米国(メリーランド州・マサチューセッツ州)、英国、インド、中国などに研究施設と製造拠点を展開しています。グローバル全体での売上比率は海外が約7割を占めており、真の国際製薬企業としての体制を築いています。
製品面では、認知症治療薬「アリセプト(ドネペジル塩酸塩)」が代表的な成功例で、世界中で高いシェアを誇ります。また、米国バイオジェン社との共同開発によるアルツハイマー治療薬「レケンビ(LEQEMBI)」は2023年に米国FDAで正式承認を取得し、次世代の中核製品として注目されています。このほか、抗がん剤「レンビマ(レンバチニブ)」も世界各国で販売されており、がん領域の収益基盤を支える柱となっています。
さらに、グローバルでの事業提携にも積極的で、米国・欧州・アジアなどの主要企業と提携を行い、臨床試験の共同実施や製品ライセンス契約を展開しています。自社開発品に加え、他社との協業による外部イノベーションも推進し、オープンイノベーションを経営戦略の柱としています。
財務面では、安定した売上と高い研究開発費比率が特徴です。営業キャッシュフローは毎年プラスで推移し、健全な資金循環を維持しています。研究開発費は売上の約20%にあたる1,500億円前後を継続的に投じており、将来の新薬パイプライン確保に余念がありません。また、配当政策についても「安定配当+業績連動配当」を基本としており、長期的に株主還元を重視しています。
経営面では、社会課題解決にも力を入れており、アフリカや東南アジアなどの発展途上国において、顧みられない熱帯病(NTDs)対策にも積極的に取り組んでいます。これは製薬業界として珍しい「社会的責任と事業成長の両立」を実現するモデルケースとされており、世界保健機関(WHO)など国際機関とも協力しています。
総じてエーザイは、「人に寄り添う創薬」を理念に掲げるグローバル製薬企業であり、認知症やがんといった難治性疾患への挑戦を通じて、世界の医療に大きく貢献している企業です。創薬力・国際展開力・社会的責任のバランスを兼ね備えた、日本を代表するライフサイエンス企業の一つといえます。
エーザイ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ◇23.3 | 744,402 | 40,040 | 45,012 | 55,432 | 193.3 | 160 |
| ◇24.3 | 741,751 | 53,408 | 61,823 | 42,406 | 147.9 | 160 |
| ◇25.3 | 789,400 | 54,378 | 61,065 | 46,432 | 163.8 | 160 |
| ◇26.3予 | 795,000 | 57,000 | 60,500 | 43,500 | 154.2 | 160 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | -1,772 | -22,723 | -24,522 |
| 2024 | 55,993 | -25,321 | -22,720 |
| 2025 | 30,117 | -10,097 | -57,809 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PBR | PER(高値平均) | PER(安値平均) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.3% | 6.9% | 4.3% | – | – | – |
| 2024 | 7.2% | 4.8% | 3.0% | – | – | – |
| 2025 | 6.8% | 5.5% | 3.3% | 1.44倍 | 59.8倍 | 33.0倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
エーザイの直近のデータを見る限り、投資判断としては「中長期での成長期待を見据えたやや強気の中立~買い判断」が妥当です。
まず、営業利益は2023年に400億円、2024年に534億円、2025年に543億円と緩やかな回復基調にあります。営業利益率も5.3%→7.2%→6.8%と改善傾向で、採算性は確実に回復しています。これは、主力薬「レンビマ」や認知症薬「レケンビ」などのグローバル展開が進みつつあることが大きな要因です。
経常利益も2023年に450億円、2025年に610億円と増加しており、金融収支・為替要因を含めた企業全体の収益性も安定しています。純利益は一時的な研究開発費や海外臨床費の増減によって変動していますが、全体として4,000億円台前後を維持しており、収益体質は良好です。
ROE(自己資本利益率)は6.9%→4.8%→5.5%と一時的に低下していますが、これは巨額の研究開発費と提携コストが影響しているためであり、事業基盤の劣化を示すものではありません。ROA(総資産利益率)も3%前後を維持しており、総資産の活用効率も一定水準にあります。
2025年の実績PERは高値平均で59.8倍、安値平均で33.0倍、実績PBRは1.44倍と、バリュエーション的には一見割高に見えます。ただし、これは「レケンビ」の世界的展開や、アルツハイマー市場の潜在的規模(数兆円規模)を市場が評価していることが背景にあります。短期的にはPERが高めに推移しても、中長期の業績成長が実現すれば株価の実質的な割高感は薄れる可能性があります。
また、エーザイはキャッシュフロー構造も堅実で、営業CFは毎年プラスを維持しつつ、財務CFでは安定した配当支出を継続しています。一株配当は160円を安定維持しており、配当利回りもおおむね2%前後と、製薬大手の中では平均的な水準です。
総合的に見ると、短期的にはPERの高さから「やや割高感」があるものの、アルツハイマー新薬を軸とした収益拡大のポテンシャルは大きく、研究開発力と国際展開の強さを考慮すると中長期では成長性の高い銘柄です。
したがって投資判断としては、短期では様子見~中期以降は買い有望。業績が計画通り進めばPERは次第に低下し、株価水準も安定的に上昇していく可能性が高いでしょう。
配当目的とかどうなの?
エーザイは、配当目的の投資先としても安定しており、長期保有に向いている銘柄です。
2026年3月期と2027年3月期の予想配当利回りはいずれも3.64%と高めで、日本の製薬業界の中でも比較的高い水準にあります。ここ数年、一株あたりの配当は160円で安定しており、業績の変動があっても減配をしていない点が特徴です。
エーザイは利益の範囲内で確実に配当を出す保守的な方針を取っており、無理な増配は行わないものの、キャッシュフローの安定性が高く、減配リスクが非常に低い会社です。営業キャッシュフローも毎年プラスを維持しており、研究開発費を積極的に投じながらも、株主還元に回す余力を十分に確保しています。
また、財務体質も非常に健全で、自己資本比率が高く、借入金も少ないため、長期的に見ても配当の継続性には安心感があります。エーザイは製薬業界の中でも「安定配当株」として位置づけられ、景気に左右されにくいディフェンシブ性を持つ点も魅力です。
ただし、研究開発費の割合が高いため、大幅な増配を期待するタイプの銘柄ではありません。エーザイは売上の約2割を研究開発に投じており、その分、配当よりも将来の成長への投資を優先しています。したがって、今後も配当額は横ばいで推移する可能性が高いです。
一方で、アルツハイマー治療薬「レケンビ(LEQEMBI)」の世界展開が進めば、業績の大幅な改善が期待でき、将来的には増配の可能性も出てきます。特に米国での販売拡大により収益が安定すれば、特別配当や増配といった株主還元の拡充が実現する可能性があります。
総合的に見ると、エーザイは「高配当株」というよりも「安定した配当を出し続ける優良企業」といえます。
長期的に安定したインカムゲインを得たい投資家に向いており、減配リスクの少なさと将来の成長期待を両立したバランスの良いディフェンシブ銘柄です。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在のエーザイの株価はおよそ4,387円です。この株価を基準に、今後5年間の値動きを「良い場合」「中間の場合」「悪い場合」で考えると次のようになります。
良い場合は、認知症治療薬「レケンビ」をはじめとする主力新薬が順調に世界的な売上を伸ばし、研究開発面でも新しい成果が出てくるシナリオです。米国や欧州など海外での販売が拡大すれば利益率がさらに上がり、営業利益率は6.8%以上、ROEも5%台後半を維持できる見通しです。また、キャッシュフローも安定し、今後の増配や株主還元の強化も期待されます。この場合、株価は5年後に6,000円から7,000円程度まで上昇する可能性があります。新薬の成長と配当の両方で着実なリターンが見込める展開です。
中間の場合は、新薬や既存薬の売上は安定しているものの、薬価改定や競合の影響で成長スピードが落ち着くケースです。営業利益率は6~7%台を維持し、ROEも5%前後と安定推移する見込みです。配当は現行の160円を維持しつつ、業績とともに堅実に推移するでしょう。株価は大きく上下せず、5年後には5,000円から6,000円前後の範囲で推移する可能性が高いです。堅実な中配当株として長期保有に向いた安定的な展開になります。
悪い場合は、新薬の販売が思うように伸びず、研究開発費が重くのしかかるケースです。薬価引き下げや競合激化によって収益が圧迫され、営業利益率が5%を割り込むことも考えられます。ROEやROAも低下し、配当維持はできても増配余力は限られるでしょう。この場合、株価は5年後に3,500円から4,000円程度まで下落するリスクがあります。配当は支払われる可能性が高いものの、株価下落によるトータルリターンの低下が懸念されます。
総合的に見ると、エーザイは短期的には新薬の評価次第で変動があるものの、長期的には安定配当を維持しながら成長を狙える企業です。研究開発に積極的な姿勢を維持しており、中長期では株価上昇の余地が十分にあります。
したがって、5年間の想定レンジは「良い場合 6,000~7,000円」「中間 5,000~6,000円」「悪い場合 3,500~4,000円」と予想され、堅実な中長期保有が向いている銘柄といえます。
この記事の最終更新日:2025年11月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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