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出光興産とは

出光興産株式会社は、日本を代表するエネルギー企業のひとつであり、石油精製や販売を中心に多角的な事業を展開している会社です。1911年に創業され、100年以上の歴史を持ちます。本社は東京都千代田区大手町にあり、資本金は約1,683億円。東京証券取引所プライム市場に上場しており、国内外に広い事業ネットワークを有しています。
出光興産は、2019年に昭和シェル石油と経営統合を行い、国内2位の規模を誇る石油元売り会社となりました。統合後のブランドは「apollostation(アポロステーション)」に統一され、全国のガソリンスタンドを通じてエネルギーを安定供給しています。石油製品の精製・販売だけでなく、化学製品や潤滑油、高機能素材の開発など、多様な分野で事業を展開しています。
主力のエネルギー事業では、ガソリン、軽油、重油、ジェット燃料などの製造・販売を行い、国内の交通や産業活動を支える基盤となっています。また、近年はカーボンニュートラル社会への転換を見据え、バイオ燃料や合成燃料などのクリーンエネルギー開発を進めています。再生可能エネルギー分野では、太陽光・風力発電のほか、次世代エネルギーである水素・アンモニア燃料の商用化にも注力しています。
化学部門では、石油化学製品、電子材料、高機能樹脂、光学フィルムなど、幅広い分野に製品を供給しています。特に自動車や電子機器向けの高機能材料や潤滑油では、国内外で高い評価を受けています。また、リチウムイオン電池の電解液材料や半導体関連材料など、次世代技術分野への進出も積極的です。
資源関連事業では、オーストラリアやインドネシアなど海外での石炭・鉱物資源開発にも携わっており、資源供給網の安定化に貢献しています。さらに、電力・再エネ事業では、自社発電設備の運用に加え、再生可能エネルギー由来の電力販売にも取り組み、脱炭素経営を推進しています。
出光興産は、企業理念として「人の和」「独立独歩」「責任遂行」を掲げており、創業以来の“人間尊重”の精神を重んじています。社会と共に成長するエネルギー企業を目指し、単なる石油会社にとどまらず、「持続可能なエネルギーを生み出す総合エネルギー企業」への転換を進めています。
株主に対しても還元を重視しており、安定的な配当の維持と自己株式の取得を継続。株主優待として、自社関連商品やグループサービスの特典も提供しています。
出光興産は、今後も石油から次世代エネルギーへの橋渡し役として、化石燃料と再生可能エネルギーの両立を図りながら、日本のエネルギー安定供給と環境負荷低減を両立させることを目指している企業です。
出光興産 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 9,456,281 | 282,442 | 321,525 | 253,646 | 170.7 | 24 |
| 2024年3月期 | 8,719,201 | 346,316 | 385,246 | 228,518 | 161.3 | 32 |
| 2025年3月期 | 9,190,225 | 162,185 | 214,764 | 104,055 | 77.8 | 36 |
| 2026年3月期(予想) | 7,900,000 | 37,000 | 56,000 | 50,000 | 40.8 | 36 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー(百万円) | 投資キャッシュフロー(百万円) | 財務キャッシュフロー(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | -32,844 | 70,079 | -90,416 |
| 2024年3月期 | 377,391 | -65,805 | -280,506 |
| 2025年3月期 | 476,742 | -118,514 | -343,450 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 2.9% | 15.7% | 5.2% | ― | ― |
| 2024年3月期 | 3.9% | 12.6% | 4.5% | ― | ― |
| 2025年3月期 | 1.7% | 6.0% | 2.1% | 高値平均:8.9倍 安値平均:5.8倍 |
0.77倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
出光興産の直近3年間の業績と各種指標をもとに見ると、安定した経営基盤を持ちながらも、2025年にかけて収益がやや鈍化しており、投資判断としては「中立からやや慎重」と言えます。
まず、2023年3月期は原油価格の上昇が追い風となり、売上高9兆4,562億円、営業利益2,824億円、経常利益3,215億円、純利益2,536億円と非常に高い利益水準を記録しました。営業利益率は2.9%、ROEは15.7%、ROAは5.2%と、効率性の面でも好調で、エネルギー価格高騰による恩恵を大きく受けた一年でした。
翌2024年3月期も、世界経済の減速による原油価格の調整があったものの、売上高8兆7,192億円、営業利益3,463億円、経常利益3,852億円、純利益2,285億円と、引き続き安定した収益を維持しました。営業利益率3.9%、ROE12.6%、ROA4.5%と、前年と比べても高水準で、統合後の効率化が定着し、経営の地力が強いことを示しています。
しかし、2025年3月期に入ると状況は変化します。売上高は9兆1,902億円と増収となったものの、営業利益は1,621億円、経常利益2,147億円、純利益1,040億円と大幅な減益となりました。営業利益率は1.7%、ROE6.0%、ROA2.1%に低下しており、原油価格の下落や精製マージンの縮小、化学事業の採算悪化が業績を押し下げています。
PERは高値平均8.9倍、安値平均5.8倍、PBR0.77倍と、株価の水準自体は依然として割安圏にあります。ただ、利益水準の減少を踏まえると、投資家心理は慎重で、株価が大きく上昇する要素は今のところ限定的です。
総合的に見ると、出光興産はエネルギー大手としての安定感は非常に高く、財務も健全です。営業キャッシュフローも十分で、配当性向も安定しており、株主還元姿勢は継続されています。PBRが1倍を下回っていることから、資産価値に対してはまだ割安感があります。
しかし、今後は原油価格や為替変動の影響を受けやすく、収益力が外部要因に左右されやすい点がリスクです。また、世界的な脱炭素化の流れの中で、再生可能エネルギーや次世代燃料への転換が課題となっており、この分野での成長戦略が業績の鍵を握ります。
したがって投資判断としては、短期的には「様子見」、長期的には「堅実な高配当・資産バリュー株として保有も検討可能」と言えます。
今後、再エネ事業や化学分野の収益改善が進めば再び株価上昇のチャンスもあり、エネルギー市況次第では上振れ余地も十分あります。
配当目的とかどうなの?
出光興産を配当目的で考える場合、結論から言えば安定した配当を長期的に受け取りたい投資家にとって非常に魅力的な銘柄です。
現在の予想配当利回りは2026年3月期・2027年3月期ともに3.38%で、東証プライム上場企業の平均である2%台前半を大きく上回っています。エネルギー関連株の中でも出光興産は比較的安定的に利益を出しており、配当の継続性に信頼があります。
過去数年の配当推移を見ると、2023年3月期が24円、2024年3月期が32円、2025年3月期が36円と、着実に増配を続けています。原油価格や市況の変動に左右されやすい業種でありながら、出光興産は統合後も「安定配当と株主還元の両立」を掲げており、無理のない範囲で安定的な配当を維持してきました。
財務面でも安定しています。2025年3月期には営業キャッシュフローが約4,767億円と高水準で、配当原資には十分な余裕があります。ROEが6%とやや低下しているものの、キャッシュ創出力が高く、自己資本比率も良好なため、今後も減配の可能性は低いと見られます。
さらに、経営方針として「株主還元の安定」を重視しており、配当だけでなく自己株式の取得(自社株買い)も定期的に実施しています。原油価格が安定している限り、3%を超える配当利回りを維持できる見通しです。
したがって、出光興産は短期的な値上がり益を狙う銘柄ではなく、「中長期で安定的な配当収入を得たい人」に適した株 と言えます。今後、脱炭素社会への転換や再生可能エネルギー事業への投資が進むことで収益構造に変化はあるものの、会社としての体力があるため、安定配当は維持できると考えられます。
総合的に見て、出光興産は高配当かつ財務の健全性が高い企業であり、配当を目的とした長期保有には非常に向いています。毎年安定的に3%台後半の配当を受け取りながら、将来的なエネルギー転換による成長も同時に期待できる、堅実なインカムゲイン銘柄です。
今後の値動き予想!!(5年間)
出光興産の現在の株価は1,065円です。ここから今後5年間の値動きを、「良い場合」「中間」「悪い場合」で考えると次のような展開が想定されます。
良い場合
世界的にエネルギー需要が安定し、原油価格も高めで推移するシナリオです。出光興産は石油精製や販売に加えて、水素やアンモニアといった次世代燃料、再生可能エネルギー、化学素材などへの投資を強化しています。これらの新分野で収益が出始めると、利益構造が改善していきます。
さらに、統合後の経営効率化やコスト削減効果も持続し、営業利益率やROEが上昇して企業価値が見直される展開になります。財務基盤が安定しているため、配当も維持されながら株主還元も強化されるでしょう。
このように全体が順調に進んだ場合、出光興産は再び高収益体質を取り戻し、株価は5年後に2,000円から2,400円程度まで上昇する可能性があります。中長期で見ても、安定配当と企業再評価が進む良好なシナリオです。
中間の場合
原油価格が大きく動かず、エネルギー市況が落ち着いたまま推移するシナリオです。石油需要は国内でやや減少するものの、海外販売や化学素材部門などで一定の補完が進み、全体としては横ばいの業績になります。
再生可能エネルギー事業への投資が続く一方で、短期的にはコスト増の影響も残り、利益の伸びは限定的です。ROEや営業利益率は現状維持に近く、株価も大きな上昇は見込みにくい状況になります。
ただ、出光興産は配当利回りが3%を超える水準で安定しているため、長期保有でのインカムゲイン(配当収入)を目的にする投資家には魅力があります。
この場合、5年後の株価は1,200円から1,400円前後で推移し、安定的ながら控えめな成長という展開が現実的です。
悪い場合
世界経済の減速や原油価格の大幅下落が続くシナリオです。燃料需要の減退に加え、製造コストや再エネ関連投資による支出が重荷となり、採算が悪化します。化学事業の利益率も低下し、営業利益率やROEがさらに下がる可能性があります。
この場合、業績は横ばいまたは減益基調となり、市場からの評価も低下。PBR(株価純資産倍率)が0.7倍を下回るなど、資産価値を下回る株価が続くおそれがあります。配当は維持できても、株価は低迷しやすい局面になるでしょう。
このような厳しい展開では、5年後の株価は800円から900円前後まで下落する可能性があります。
まとめ
出光興産はエネルギー市況に強く影響される企業ですが、長年培った経営基盤と財務体質の安定感は非常に高いです。短期的に大きな値上がりを狙う銘柄ではありませんが、安定配当を受け取りながら中長期で持つタイプの堅実な投資先といえます。今後、水素や再生可能エネルギーなど新エネルギー事業が軌道に乗れば再評価される可能性も高く、配当を受けながら将来の成長を待つ投資スタンスが適しています。
この記事の最終更新日:2025年11月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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