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電通グループ(4324)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想


株価

電通グループとは

電通グループ株式会社は、日本を代表する総合広告会社であり、世界でもトップクラスの規模を誇るグローバルマーケティング企業です。本社は東京都港区東新橋一丁目8番1号に所在し、東証プライム市場に上場しています。設立は1906年12月27日で、資本金は約746億円、連結従業員数は約6万7,000人を超えます。

電通は「Good Innovation.」をスローガンに掲げ、クライアント企業の成長支援と社会課題の解決を目的としたマーケティング・コミュニケーションサービスを展開しています。長年にわたり日本国内最大の広告代理店として圧倒的なシェアを誇り、広告・メディア・クリエイティブ・プロモーション・イベント・スポーツ・デジタルなど幅広い領域を手がけています。

現在の「電通グループ株式会社」は、2020年に事業会社「株式会社電通」から持株会社体制へと移行したものであり、傘下には「株式会社電通(日本事業)」と「電通インターナショナル(海外事業)」を中核とした多数のグループ会社が存在します。この再編により、国内外を横断した一体的な経営体制を強化し、グローバルでの競争力を高める構造に生まれ変わりました。

事業構成としては、「日本事業」と「海外事業」の2本柱があります。

日本事業では、テレビ・新聞・雑誌などのマスメディア広告から、デジタル広告、SNS運用、データドリブンマーケティング、PR、スポーツイベント運営、コンテンツビジネスなど多岐にわたる分野で事業を展開しています。特に、広告主のマーケティング課題を総合的に解決する「統合型マーケティング支援」を強みとしており、広告制作にとどまらず、ブランド戦略の立案やデータ分析を通じた施策提案までをワンストップで行っています。

一方、海外事業では、「Dentsu International」を中心に145か国以上で事業を展開し、グローバル広告市場での存在感を確立しています。欧米を中心に強固なネットワークを構築し、デジタル広告代理店「Merkle」やクリエイティブエージェンシー「Isobar」、メディアエージェンシー「Carat」など、多彩なブランドを統合した「One dentsu」戦略を推進しています。これにより、海外売上高比率はすでに全体の6割を超えており、グローバル企業としての地位を確立しています。

また、同社は伝統的な広告ビジネスから脱却し、データとテクノロジーを活用したデジタルトランスフォーメーション(DX)支援やコンサルティングサービスへと事業領域を拡大しています。AI、データ分析、顧客体験設計(CX)、ECプラットフォーム支援、CRM(顧客管理)などを通じて、企業のデジタル成長戦略をサポートする方向へシフトしています。

経営面では、「成長」「効率」「ガバナンス強化」をキーワードに構造改革を進めており、不採算事業の整理や本社機能のスリム化を実施。利益率の改善と資本効率の向上を目指しています。ESG(環境・社会・ガバナンス)経営にも注力しており、サステナビリティ経営推進本部を設置し、社会的価値と企業価値の両立を目指しています。

総合的に見ると、電通グループは単なる「広告代理店」ではなく、データ・テクノロジー・クリエイティブを融合させた「統合マーケティング企業」へと進化しています。国内では圧倒的なブランド力を持ち、海外ではグローバルネットワークを活かしたデジタルマーケティングのリーダー的存在です。今後も、広告産業の枠を超えた「総合コミュニケーション・ソリューション企業」としての成長が期待されています。

電通グループ 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益(円) 一株配当(円)
2022年12月期 1,243,883 117,617 100,908 59,847 223.3 155.25
2023年12月期 1,304,552 45,312 33,103 -10,714 -40.5 139.5
2024年12月期 1,410,961 -124,992 -139,759 -192,172 -734.6 139.5
2025年12月期(予想) 1,430,000 -3,500 -20,000 -75,400 -290.5 0〜69.75

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2022年12月期 80,896 -24,346 -188,192
2023年12月期 75,267 -146,297 -153,681
2024年12月期 59,984 -30,908 -65,714

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PBR(実績) PER(高値平均) PER(安値平均)
2022年12月期 9.4% 6.7% 1.5%
2023年12月期 3.4% -1.3% -0.3%
2024年12月期 -8.9% -27.6% -5.5% 1.40倍 22.7倍 17.0倍
2025年12月期(予想) -0.3% -10.9% -2.2%

出典元:四季報オンライン

投資判断

電通グループは、日本最大の広告代理店であり、世界でも有数のマーケティング・コミュニケーション企業ですが、ここ数年は業績の振れ幅が非常に大きく、投資判断としては慎重さが求められる局面です。

まず、営業利益・経常利益・純利益の推移を見ると、2022年12月期には営業利益1176億円、経常利益1009億円、純利益598億円と堅調でしたが、2023年12月期以降は急激に悪化しています。2023年は営業利益453億円、純損失107億円と減益に転じ、2024年には営業赤字1249億円、純損失1921億円と大幅な赤字を計上しました。2025年の会社予想でも、営業損失35億円、純損失754億円と赤字が続く見込みです。

この要因は、海外子会社の減損損失、構造改革費用、のれん償却負担などの一時的な損失が大きく影響しています。売上自体は横ばい〜微増傾向であり、本業の広告・マーケティングサービス自体は堅調に推移していますが、巨額の減損計上により最終損益が大きく悪化している点が問題です。

営業利益率の推移をみると、2022年9.4%、2023年3.4%、2024年-8.9%、2025年予想-0.3%と、収益性が大幅に低下しています。ROEも2022年6.7%から2024年には-27.6%、ROAも1.5%から-5.5%へ急落しており、資本効率・資産効率のいずれも悪化しています。企業規模が大きいために赤字のインパクトが強く、利益体質の回復には相応の時間がかかると考えられます。

株価指標を見ると、2024年の実績PBRは1.40倍、PERは高値平均22.7倍・安値平均17.0倍と、一見すると「まだ割高」な水準に見えます。利益がマイナスのためPERは参考値に過ぎませんが、現状では収益基盤に対して株価がやや高めに評価されている印象です。特に、過去の高収益期(営業利益率9〜10%台)の時に比べて、現在の利益水準では割安感を見出しにくい状態です。

ただし、電通グループは依然として国内では圧倒的なシェアを誇り、広告業界における地位は揺るぎません。グローバルでも「Dentsu International」を中心に145か国以上に展開しており、海外売上比率が6割を超える国際的な企業体です。データ分析・デジタル広告・DX支援などの新分野では成長余地があり、中長期的には利益の立て直しが見込まれます。

投資判断としては、短期的には業績の不透明感と構造改革リスクから「見送り」または「様子見」が妥当です。財務体質は依然として強固であり、キャッシュフローは黒字を維持しているものの、利益の底打ちを確認するまでは慎重な姿勢が望まれます。中長期的には、減損影響が一巡し、営業利益率が5%前後まで回復するようであれば再び投資妙味が出てくる可能性があります。

まとめると、現時点での電通グループは「短期では割高感が強く、業績回復を確認してからの中長期投資向け銘柄」と言えます。業績の回復が見えれば再評価される余地はあるものの、現段階ではリスクの方が上回る局面です。

配当目的とかどうなの?

電通グループは、現在の状況では配当目的の投資にはまったく向かない銘柄です。

2025年12月期および2026年12月期の予想配当利回りはいずれも0.00%で、実質的に無配となっています。これは、2023年以降の業績悪化と巨額の最終赤字を受け、配当を支払える余力がないためです。電通はこれまで安定配当を続けてきた企業でしたが、近年の構造改革と減損損失によって財務的に厳しい局面を迎えています。

本来、電通グループは配当還元方針として「連結配当性向35%を目安」としていました。しかし、2023年12月期に赤字転落したことでこの基準を維持できず、2024年には経営の立て直しを優先するため配当維持から一転して無配転落となりました。2025年も赤字予想のため、引き続き配当は実施されない見込みです。

キャッシュフローの面では、営業キャッシュフロー自体はプラスを維持しているものの、減損や事業再編による支出が大きく、フリーキャッシュフローも限定的です。配当余力は現状ではほぼなく、資金は主に財務安定化と事業再構築に充てられている段階です。

また、電通グループは「グローバル構造改革」を進めており、海外事業ののれん償却やブランド再編のコストが継続的に発生しています。これが利益を圧迫し、配当復活をさらに先送りする要因となっています。

したがって、配当を目的とした投資対象としては現時点で完全に不適格です。短期的には配当収入を期待できず、むしろ減損リスクや株価の変動リスクの方が大きい状態です。

ただし、電通は依然として広告・マーケティング分野で世界トップクラスの規模を持ち、財務基盤自体は安定しています。将来的に構造改革が完了し、利益が黒字化すれば再び配当を再開する可能性はあります。その場合、過去の実績からすると再開後の利回りは1〜2%前後にとどまる見通しです。

総合的に見ると、今の電通グループは「成長回復を待つ再建途上企業」であり、配当株ではないといえます。配当目的で保有する価値は現時点ではなく、投資するなら業績再建や構造改革の成果を見極めた上での中長期スタンスが望ましいです。

今後の値動き予想!!(5年間)

電通グループの現在値は3,123.0円です。ここから今後5年間の株価の動きを想定すると、良い場合・中間の場合・悪い場合の3つのシナリオが考えられます。

良い場合は、構造改革と海外子会社の再編が順調に進み、減損処理が一巡して業績が黒字に回復するシナリオです。広告市場が回復し、デジタル・データマーケティング事業が収益を押し上げることで、営業利益率が4〜6%程度に戻り、ROEもプラス圏に回復すると見られます。この場合、PERは15〜18倍程度まで見直され、株価は4,500円〜5,500円あたりまで上昇する可能性があります。経営の安定化とともに将来的な配当再開が視野に入れば、投資家の信頼も戻り、中長期で上昇基調になる見込みです。

中間の場合は、赤字からの脱却には時間がかかるものの、減損や一時費用が徐々に減少し、収益が安定してくるパターンです。広告業界全体が横ばいで推移し、営業利益率は0〜2%程度と低水準ながら黒字を確保。構造改革の効果が限定的で、株価は3,000円〜3,600円の範囲で推移する可能性が高いです。配当は再開されないか、再開されてもごく少額にとどまり、株価の大きな上昇は期待しにくいものの、底堅い動きになると考えられます。

悪い場合は、海外事業の再編が長期化し、追加の減損損失や赤字が続くシナリオです。国内広告市場の成長も鈍化し、デジタル分野での競争激化によって利益率がさらに低下するおそれがあります。この場合、営業利益率はマイナス圏が続き、ROEもマイナス10%近辺で推移。PERは参考にならない水準となり、株価は2,000円〜2,500円程度まで下落する可能性があります。無配が長引けば、投資家の買い意欲はさらに低下するでしょう。

総合的に見ると、現在の3,100円台という株価は、すでにある程度の悪材料を織り込んでおり、下値は限定的です。ただし、業績が黒字に転じるまでは不安定な値動きが続く可能性があります。構造改革が順調に進み、利益が安定すれば中長期的に株価が4,000円台を回復する余地がありますが、現時点では「業績回復待ちの再建株」として慎重に見守る段階です。

この記事の最終更新日:2025年11月9日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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