株価
AGCとは

AGC株式会社は、日本を代表する総合ガラスメーカーであり、世界的にも有名な化学素材企業です。以前は「旭硝子株式会社」という社名で知られていましたが、2018年に現在の「AGC株式会社」へ社名を変更しました。
本社は東京都千代田区丸の内一丁目5番1号にあり、老舗企業です。資本金は約908億円、従業員数はグループ全体でおよそ5万9千人にのぼります。東京証券取引所プライム市場に上場しており、ガラス業界では世界でもトップクラスのシェアを持っています。
AGCの事業は大きく4つに分かれています。
1つ目は「ガラス事業」です。建築用ガラスや自動車用ガラス、太陽電池用ガラスなどを製造しており、断熱性・遮熱性に優れた高機能ガラスを開発しています。高層ビルや住宅、さらには車載ディスプレイやヘッドアップディスプレイ(HUD)向けの特殊ガラスも手がけています。
2つ目は「電子事業」です。スマートフォンやタブレット、テレビなどに使われるディスプレイ用ガラスのほか、半導体製造に使われる素材も供給しています。有機ELや液晶ディスプレイ向けのガラス基板など、高精度な電子部材を世界中に提供しており、エレクトロニクス分野でも存在感を持っています。
3つ目は「化学事業」です。フッ素化学製品、クロル・アルカリ製品、シリコーン、樹脂などを手がけており、特にフッ素系化学品は半導体製造や電池材料に欠かせない存在です。電気自動車(EV)分野でも需要が拡大しており、AGCの化学製品は多くの産業を支えています。環境に配慮した化学品の開発にも力を入れており、持続可能な素材メーカーとしての地位を確立しています。
4つ目は「ライフサイエンス事業」です。医薬品やバイオ医薬の開発支援、製造受託(CDMO)などを行っており、世界の製薬企業に向けて高品質な医薬中間体や原薬を提供しています。この分野は近年AGCが特に注力している成長事業のひとつです。
AGCグループは世界30か国以上に拠点を持ち、ヨーロッパ・アジア・北米を中心にグローバルに展開しています。建築・自動車用ガラスでは世界トップクラスのシェアを持ち、電子・化学・ライフサイエンス事業などにも幅広く進出しており、多角的な事業構造を築いています。
企業理念は「Your Dreams, Our Challenge(あなたの夢を、私たちの挑戦で実現する)」です。素材の力で社会課題を解決し、持続可能な社会を実現することを目指しています。
AGCは単なるガラスメーカーではなく、化学やエレクトロニクス、バイオなどさまざまな分野で技術を磨き続ける総合素材メーカーです。創業から100年以上にわたり常に技術革新を続けており、これからも環境対応技術や次世代電子材料の開発など、新しい分野での成長が期待されています。
AGC 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当たり配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 2,035,874 | 57,206 | 58,512 | -3,152 | -14.2 | 210 |
| 2023年12月期 | 2,019,254 | 128,277 | 122,775 | 65,798 | 304.7 | 210 |
| 2024年12月期 | 2,067,603 | -44,678 | -50,050 | -94,042 | -443.7 | 210 |
| 2025年12月期(予想) | 2,050,000 | 102,000 | 97,000 | 57,000 | 268.4 | 210 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー(百万円) | 投資キャッシュフロー(百万円) | 財務キャッシュフロー(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 217,146 | -145,312 | -78,206 |
| 2023年12月期 | 212,546 | -179,790 | -108,021 |
| 2024年12月期 | 284,815 | -195,583 | -131,949 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 2.8% | -0.3% | -0.2% | ― | ― |
| 2023年12月期 | 6.3% | 4.5% | 2.2% | ― | ― |
| 2024年12月期 | -2.2% | -6.6% | -3.3% | 14.1~18.0 | 0.77 |
| 2025年12月期(予想) | 4.9% | 3.9% | 1.9% | 19.56 | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
AGC株式会社は、ガラスや化学、電子素材など幅広い分野で事業を行う日本を代表する総合素材メーカーです。
直近の業績を見てみると、2024年は赤字となりましたが、2025年には黒字回復を見込んでおり、短期的な不調からの立ち直りが期待されています。
まず営業利益に注目すると、2022年は約572億円、2023年には約1,283億円と大きく改善しましたが、2024年には再びマイナス446億円と赤字に転落しました。これは主に建築用ガラスの需要減少や、化学部門における原材料コストの上昇が影響しています。
しかし2025年には1,020億円まで回復する見通しで、経常利益も970億円の黒字が予想されています。純利益も2024年のマイナス940億円から、2025年には570億円の黒字へと反転が見込まれており、業績の底を脱する動きが見えています。
営業利益率を見ると、2022年が2.8%、2023年が6.3%、2024年がマイナス2.2%、そして2025年には4.9%まで回復する予想です。ROE(自己資本利益率)も2024年はマイナス6.6%と大きく落ち込みましたが、2025年には3.9%まで戻る見通しです。ROAも同様に2025年には1.9%と改善が期待されています。
株価指標を見ると、2024年のPBR(株価純資産倍率)は0.77倍で1倍を下回っており、資産面から見ると株価は割安な水準です。
2025年の予想PER(株価収益率)は19.56倍と少し高めですが、これは赤字期から黒字回復する企業に対する市場の期待が反映されたものといえます。
こうした数字を総合的に見ると、AGCは短期的な業績の波はあるものの、財務体質が強く、長期的な成長力を持った企業です。特に電子材料やライフサイエンス分野など、今後需要拡大が見込まれる新しい事業にも積極的に取り組んでいます。
したがって、AGCは短期的な値上がりを狙うよりも、中長期的に安定した配当と業績回復を期待して保有するのに向いている銘柄です。
特に、PBRが低く配当も安定しているため、「今は安く仕込んで長く持つタイプの株」として考えるのが良いでしょう。
一方で、景気や原材料価格、為替変動などの外部要因に影響を受けやすい点には注意が必要です。
まとめると、AGCは短期的なリスクを許容できる投資家にとって、今後の回復と再評価を見込める安定性と成長性を併せ持つ中長期保有向け銘柄と言えます。
配当目的とかどうなの?
AGC株式会社は、配当目的の投資先として非常に魅力のある銘柄といえます。
予想配当利回りは2025年・2026年ともに4.09%と高水準で、東証プライム上場企業の平均(おおむね2%前後)を大きく上回っています。
同社は「安定した株主還元」を経営方針のひとつに掲げており、赤字決算となった2024年でも配当を減らさず210円を維持しました。業績が一時的に悪化しても減配しないという方針が見えるため、長期で安定した配当収入を狙う投資家にとっては信頼感のある企業です。
また、営業キャッシュフローも毎期2000億円前後を確保しており、事業投資や株主還元を同時に行えるだけの資金的余力があります。財務体質も健全で、自己資本比率が高く、借入依存度も低いため、配当の原資が枯渇するリスクは小さいです。
ただし、今後も景気や原材料価格、為替の変動によって業績が上下する可能性はあるため、業績連動型の増配を期待するよりは「安定的に配当を受け取る銘柄」と考えたほうが現実的です。
逆にいえば、多少業績が悪化しても配当が維持される傾向にあるため、長期的なインカムゲイン狙いの投資家には向いている銘柄といえます。
まとめると、AGCは株価の値上がり益よりも、毎年しっかりとした配当を得たい人におすすめの企業です。配当性向も比較的安定しており、財務基盤の強さから減配リスクは低め。配当目的で長期保有するには非常に適した安定銘柄です。
今後の値動き予想!!(5年間)
AGC株式会社の現在の株価は5,129円です。ここから5年間の株価の動きを考えると、業績の回復状況や世界経済の動きによって、良い場合・悪い場合・中間の3つの展開が考えられます。
まず、良い場合です。
世界的に景気が回復し、建築需要や自動車の生産が再び活発になります。AGCが強みを持つ高機能ガラスや化学素材の分野で受注が増え、利益率も上がります。営業利益率は6%を超え、ROEも5%台に回復します。業績回復に対する期待が高まり、市場からの評価も上がることで株価は上昇していくでしょう。
この場合、株価は6,500円から7,000円くらいまで上がる可能性があります。配当も安定しているため、株価の上昇と配当収入の両方が期待できる展開です。
次に、悪い場合です。
世界的に景気が冷え込み、建築や自動車関連の需要が減少します。原材料価格の高騰や為替の円高などの影響も受けて利益が圧迫されます。営業利益率は3%前後まで落ち込み、ROEも2%を切るような状況になるかもしれません。
このような状況になると市場の評価が下がり、PERも低下します。株価は4,000円から4,400円くらいまで下がる可能性があります。ただし、AGCは赤字の時でも配当を維持してきた企業なので、株価が下がっても配当が支えになるという点では安心感があります。
そして、中間の場合です。
景気は安定して推移し、AGCも大きな成長はないものの、堅実な経営を続けます。営業利益率は4〜5%台を維持し、ROEも3〜4%程度を保つような展開です。業績は安定しつつも派手さはなく、株価は緩やかに回復していきます。
この場合、株価は5,500円から5,800円あたりで推移する可能性が高いです。配当利回りも4%前後を維持できるため、安定した収入を得たい長期保有の投資家には向いています。
まとめると、良い場合は6,500〜7,000円、中間の場合は5,500〜5,800円、悪い場合は4,000〜4,400円あたりの想定です。AGCは短期的な値動きで利益を狙うよりも、配当を受け取りながら長期的に安定した成長を期待するタイプの株です。今の株価水準はやや割安で、財務体質も堅実なので、長期的に見ればリスクを抑えながら安定したリターンを狙える銘柄だと言えるでしょう。
この記事の最終更新日:2025年11月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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