株価
ENEOSホールディングスとは

ENEOSホールディングスは、日本を代表する総合エネルギー企業であり、その歴史は戦後の日本経済の成長とともに歩んできたと言っても過言ではありません。
もともとは石油精製・販売を中心とした会社として発展し、現在は「エネルギーの安定供給」と「脱炭素への挑戦」という、相反する2つの課題を同時に追いかける巨大企業グループです。
本社は東京・大手町の超高層ビル群の中に構えられ、持株会社としてグループ全体を統括しています。ENEOSというブランドは全国のガソリンスタンドでもおなじみで、街を歩けば赤い「ENEOS」の看板を見ない日はないほど、私たちの生活に深く根付いています。
ENEOSホールディングスの主力事業は大きく分けて4つあります。
ひとつ目は「石油精製・販売事業」です。これはガソリン、軽油、灯油、ジェット燃料など、国内のエネルギーインフラを支える中核事業です。全国に製油所と流通網を持ち、家庭や産業、運輸などあらゆる分野へ燃料を供給しています。日本国内における石油シェアはトップクラスであり、その安定供給能力は国のエネルギー安全保障にも欠かせない存在です。
ふたつ目は「資源開発事業」。
ここでは、国内外での原油・天然ガスの探査・開発を進めています。かつては中東やアジアでの資源開発に積極的に参加しており、近年では再生可能エネルギーやカーボンニュートラル燃料への転換を見据え、地球環境に配慮した開発体制へと移行しつつあります。
三つ目は「素材事業」。
これは石油から派生する化学製品、高機能素材、電子部品、樹脂、潤滑油などを開発・供給する分野です。自動車や半導体、電子機器などの産業分野で欠かせない素材を数多く手がけており、単なるエネルギー企業ではなく“素材メーカー”としての顔も持っています。
そして四つ目が「電力・再生可能エネルギー事業」。
太陽光発電、風力発電、水素エネルギーなど、次世代エネルギーへの投資を積極的に行っています。脱炭素社会に向けて「石油の会社」から「総合エネルギー企業」へと進化する過程にあり、グリーン水素の供給や、EV(電気自動車)用インフラの整備など、新しい時代を見据えた取り組みを進めています。
会社としての規模は圧倒的です。グループ全体では3万人を超える従業員を抱え、売上高は年間10兆円を超える巨大企業。国内最大級の製油能力を誇り、資本金は約1,000億円。
東京証券取引所プライム市場に上場し、日本経済を支える「エネルギーの中枢」として存在感を放っています。
ENEOSという名前には「ENERGY」と「NEOS(ギリシャ語で“新しい”)」という2つの言葉が込められており、「新しいエネルギーの時代を切り開く」という決意が象徴されています。
石油という伝統的な事業を守りながらも、水素社会・カーボンニュートラル・再エネ拡大という新しい波の中で進化を続けており、まさに「古くて新しいエネルギー企業」です。
つまりENEOSホールディングスは、これまでの日本を動かしてきた「燃料の会社」でありながら、これからの未来を支える「エネルギーの会社」でもあるのです。
化石燃料と再生エネルギーのはざまで、同社がどんな未来を描くのか——その歩み自体が、これからの日本のエネルギー政策の行方を象徴していると言えるでしょう。
直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当たり配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 15,016,554 | 281,285 | 257,435 | 143,766 | 46.6 | 22 |
| 2024年3月期 | 13,856,662 | 464,946 | 448,075 | 288,121 | 95.6 | 22 |
| 2025年3月期 | 12,322,494 | 106,093 | 88,219 | 226,071 | 80.0 | 26 |
| 2026年3月期(予想) | 11,700,000 | 360,000 | 345,000 | 185,000 | 68.8 | 30 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー(百万円) | 投資キャッシュフロー(百万円) | 財務キャッシュフロー(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | -110,246 | -115,928 | -13,316 |
| 2024年3月期 | 1,010,283 | -240,983 | -331,031 |
| 2025年3月期 | 576,835 | 130,765 | -630,414 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 1.8% | 5.0% | 1.4% | ― | ― |
| 2024年3月期 | 3.3% | 8.9% | 2.8% | ― | ― |
| 2025年3月期 | 0.8% | 7.2% | 2.5% | 高値平均:10.1倍 安値平均:7.1倍 |
0.87倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ENEOSホールディングスの直近3年の数値を見ると、全体的に安定した経営を維持しつつも、原油価格の変動に大きく左右される構造がはっきりと表れています。
2023年3月期は売上高約15兆円、営業利益2,812億円、経常利益2,574億円、純利益1,437億円でした。営業利益率は1.8%、ROEは5.0%、ROAは1.4%と、利益率はやや低めでしたが、これは原油市況が落ち着き、精製マージンが縮小した影響が大きい年でした。
2024年3月期は原油価格の安定と円安の影響で採算が改善し、営業利益は4,649億円、経常利益4,480億円、純利益2,881億円まで大幅に回復しました。営業利益率は3.3%、ROEは8.9%、ROAは2.8%と上向きで、ENEOSとしては比較的良好な年でした。エネルギー価格の高止まりと販売数量の回復が業績を押し上げ、キャッシュフローも大きく改善しています。
一方で、2025年3月期はやや減速が見られます。売上高は12兆円台に減少し、営業利益1,060億円、経常利益882億円、純利益2,260億円と減益。営業利益率は0.8%と低下していますが、純利益は子会社の資産売却や持分法収益の影響で下支えされました。ROE7.2%、ROA2.5%と悪くはありませんが、成長性よりも安定性重視の数字です。
PERは高値平均で10.1倍、安値平均で7.1倍、PBRは0.87倍と、依然として株価は割安圏にあります。PBRが1倍を下回る水準は、資産に対して株価が低く評価されていることを意味します。つまり、エネルギー市況が回復すれば再び株価が見直される余地があるということです。
総合的に見ると、ENEOSは急成長を狙う企業ではなく、安定収益と高い資産価値を持つ成熟企業です。原油価格や為替に左右されるため業績の波はありますが、キャッシュフローは安定しており、配当も継続的に支払われています。財務面も健全で、自己資本比率や資金繰りにも大きな問題はありません。
したがって投資判断としては、短期的な値上がり益を狙うより、中長期で配当を受け取りながら安定保有をするタイプの銘柄です。
株価はPBR0.8倍前後と依然として割安で、長期投資家にとっては買い場といえる水準です。脱炭素時代における再生可能エネルギーや水素事業へのシフトが成功すれば、数年後には新たな成長フェーズに入る可能性も十分あります。
配当目的とかどうなの?
ENEOSホールディングスは、配当目的での長期保有にとても向いている銘柄です。
現在の予想配当利回りは2026年3月期で3.07%、2027年3月期で3.27%と、東証プライム上場企業の平均利回り(およそ2%前後)を上回っています。
ENEOSはこれまで「業績に左右されにくい安定的な配当」を掲げており、配当の維持を最優先する経営方針をとっています。過去の推移を見ると、2023年3月期に22円、2024年3月期も22円、2025年3月期に26円、2026年3月期には30円と、緩やかな増配を続けています。減配することなく、安定して株主に利益を還元してきた実績があります。
また、営業キャッシュフローの水準も非常に高く、2024年には1兆円を超える資金を稼ぎ出しており、配当の原資には余裕があります。エネルギー価格や原油市況の変動は業績に影響を与えるものの、財務体質が強いため、一時的に利益が落ちても配当を守る力があります。
ENEOSは今後、再生可能エネルギーや水素事業などへの投資を加速していますが、その中でも配当の「安定維持」を基本方針としており、仮に新規投資が増えても配当を削る可能性は低いと見られます。
つまりENEOSは、短期間で株価上昇を狙う銘柄ではなく、3%を超える配当を受け取りながら長期で安定収益を得たい投資家に向いた企業です。PBRが0.8倍台と依然として割安圏にあり、下値も固く、リスクを抑えたインカムゲイン投資先として魅力があります。
まとめると、ENEOSホールディングスは「減配リスクが低く、着実に増配も見込める安定配当株」。配当を受け取りながら、再エネ事業や水素関連の成長を待つ長期投資に最適な、堅実で安心感のある銘柄といえます。
今後の値動き予想!!(5年間)
ENEOSホールディングス(証券コード5020)の現在の株価は976.2円です。ここから今後5年間の株価の動きを、「良い場合」「中間」「悪い場合」に分けて考えてみます。
良い場合
世界的なエネルギー需要が安定し、原油価格が堅調に推移するシナリオです。ENEOSは石油精製や販売事業で安定した利益を上げつつ、再生可能エネルギーや水素関連などの新規事業が本格的に収益化します。脱炭素社会に対応する形で、新しいビジネスモデルを確立できれば市場からの評価は高まります。
ROEや営業利益率が改善し、PBRも1倍を超えていけば、株価は見直される可能性が高いです。安定した配当を維持しつつ企業価値が上がることで、5年後の株価は1,800円から2,000円前後まで上昇することも考えられます。長期的に見ると、配当を受け取りながら緩やかに成長する堅実な上昇パターンです。
中間の場合
原油価格が大きく動かず、全体的に落ち着いた市況が続くシナリオです。ENEOSの業績は安定する一方で、燃料需要の減少を再生可能エネルギーや素材事業で補う形となり、成長性は限定的です。配当利回り3%前後を維持し、ROEは7〜9%の範囲で推移。投資家からは「安定しているが目立たない銘柄」として評価されます。株価も大きく動かず、1,000円から1,200円前後の範囲で推移する可能性が高いです。配当を目的に中長期で保有するには悪くない展開です。
悪い場合
世界景気の減速や原油価格の下落が長期化するシナリオです。エネルギー需要が減退し、精製マージンの縮小や化学事業の採算悪化が続くと、営業利益率やROEはさらに低下します。再生可能エネルギーへの転換もコストが先行し、短期的には業績に負担がかかる状況です。このような場合、株価は下落傾向となり、PBRが0.6〜0.7倍台まで低下するリスクがあります。配当は維持されるものの、株価自体は弱含みで、5年後の株価は700円から800円前後まで落ち込む可能性があります。
まとめ
ENEOSは大きな成長を狙う銘柄ではなく、安定した配当を得ながら長期的に保有するタイプの株です。エネルギー市況や再エネ事業の進捗によって上下はありますが、倒産や極端な減配のリスクは低い堅実な企業です。5年後の株価はおおむね 悪い場合700〜800円、中間で1,000〜1,200円、良い場合1,800〜2,000円 の範囲が想定され、配当を含めて堅実にリターンを積み上げていく銘柄といえます。
この記事の最終更新日:2025年11月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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