株価
UBEとは

UBE株式会社は、東京都港区芝浦一丁目二番一号のシーバンスN館に本社を置く日本の大手化学メーカーです。東京証券取引所プライム市場に上場しており、資本金は約584億円、連結従業員数はおよそ7,500名です。設立は1942年3月ですが、創業は1897年にまで遡る長い歴史を持つ企業です。かつては宇部興産株式会社の名称で知られており、2022年4月に持株会社体制から事業会社体制に移行し、「UBE株式会社」として新たにスタートしました。
UBEはもともと石炭・セメント事業から始まりましたが、現在では化学を中核とした総合素材メーカーとして世界的に事業を展開しています。国内だけでなくアジア、欧州、北米などにも多数の拠点を持ち、海外売上比率は5割を超えています。
主な事業内容は以下の通りです。
化学品事業では、ナイロン原料であるカプロラクタムやアジピン酸をはじめ、ポリアミド樹脂、ポリイミド、ポリカーボネートジオールなどの高機能化学品を製造・販売しています。これらは自動車、電子部品、包装フィルム、工業材料など幅広い分野で使用されています。特にポリアミドやポリイミド分野では世界的な競争力を持ち、エネルギー効率化や軽量化に貢献する素材として注目されています。
医薬・ライフサイエンス分野では、医薬品原薬や中間体の開発・製造を行っています。自社で創薬研究を行うほか、受託製造(CDMO)事業にも取り組んでおり、安定した収益基盤を確保しています。
機械事業では、射出成形機やダイカストマシンなどの産業用機械を製造・販売しています。これらの装置は自動車や家電業界などで使用されており、国内外に多数の納入実績を持っています。また、工場の自動化や生産効率向上に貢献するソリューション提供にも注力しています。
以前の主力であったセメント・建設資材事業については、2022年に三菱マテリアルとの経営統合により新会社「宇部三菱セメント株式会社」として持分法適用会社化され、UBE本体は化学事業への集中を進めました。これにより、化学分野に経営資源を集約し、より高付加価値型の事業構造を目指しています。
研究開発体制も充実しており、ライフサイエンス、環境エネルギー、機能性材料といった成長分野で新しい技術や製品の開発を進めています。環境配慮型素材やリサイクル対応材料など、持続可能な社会に貢献する製品づくりを強化しており、カーボンニュートラル社会への対応も積極的です。
UBEの経営理念は「人・社会・地球との共生」であり、環境保全と企業成長の両立を重視しています。中期経営計画では、化学事業の収益基盤強化と新規事業の育成を柱として掲げており、今後は素材開発を通じたグローバル展開をさらに加速させる方針です。
総合的に見ると、UBE株式会社は化学を中心とした技術開発力に強みを持つ企業であり、環境・エネルギー・医薬・素材といった幅広い分野で社会課題の解決に貢献することを目指しています。
UBE 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 494,738 | 16,290 | -8,689 | -7,006 | -72.3 | 95 |
| 2024年3月期 | 468,237 | 22,456 | 36,333 | 28,981 | 298.6 | 105 |
| 2025年3月期 | 486,802 | 18,045 | 22,372 | -4,816 | -49.6 | 110 |
| 2026年3月期(予想) | 485,000 | 23,000 | 35,000 | 25,500 | 262.5 | 110 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 18,127 | -26,019 | 2,443 |
| 2024年3月期 | 52,960 | -33,316 | -15,712 |
| 2025年3月期 | 35,837 | -63,152 | 105,851 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PBR(実績) | PER(高値平均) | PER(安値平均) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 3.2% | -2.0% | -1.0% | ― | ― | ― |
| 2024年3月期 | 4.7% | 7.0% | 3.6% | ― | ― | ― |
| 2025年3月期 | 3.7% | -1.3% | -0.6% | 0.56倍 | 9.4倍 | 6.9倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
UBE株式会社は、化学事業を中心に展開する総合素材メーカーであり、ナイロン原料やポリアミド樹脂などの高付加価値製品を扱う一方で、事業環境の変化により収益に波が見られる状況です。
直近3年の業績をみると、売上高はほぼ横ばいながら、利益面で大きな変動がありました。2023年3月期は営業利益16,290百万円、経常損失8,689百万円、純損失7,006百万円と赤字でしたが、2024年3月期には営業利益22,456百万円、経常利益36,333百万円、純利益28,981百万円と黒字に転換しました。2025年3月期は再び営業利益18,045百万円、経常利益22,372百万円、純損失4,816百万円と減益・赤字に戻っています。利益の不安定さが目立つ決算内容です。
営業利益率は2023年3.2%、2024年4.7%、2025年3.7%と推移しており、全体として利益率は低い水準にとどまっています。高付加価値型化学メーカーとしてはやや収益性が物足りず、原料高や市況変動の影響を受けやすい構造です。ROEは2023年-2.0%、2024年7.0%、2025年-1.3%、ROAは2023年-1.0%、2024年3.6%、2025年-0.6%と、資本効率の観点からも波があります。利益が安定していないため、自己資本を有効に活かしきれていない状況といえます。
ただし、株価面では割安感が際立っています。2025年の実績PBRは0.56倍と1倍を大きく下回り、株価は解散価値を大幅に下回る水準です。PERも高値平均9.4倍、安値平均6.9倍と低水準で、利益が安定すれば再評価の余地があります。
総合的に判断すると、UBEは収益の安定性という点では不十分ですが、財務基盤が堅実であり、キャッシュフローも黒字を維持しています。短期的には業績変動リスクがある一方で、株価はすでに大きく割安圏にあり、長期的には反発の可能性を秘めています。
投資判断としては、短期では「様子見」、中長期では「割安放置からの回復期待株」といえます。化学市況の改善や為替の追い風があれば業績は黒字化に戻る余地があり、特にPBR0.5倍台という水準は下値の固さを示しています。安定配当を維持している点も評価でき、配当利回り狙いの長期保有には向いている銘柄です。
配当目的とかどうなの?
UBE株式会社は、配当目的の投資先として非常に魅力のある銘柄です。2026年3月期の予想配当利回りは4.84%と高水準にあり、東証プライム上場企業の中でも上位に位置する利回りです。
同社はもともと「安定配当」を重視する経営方針を掲げており、業績が赤字となった期でも減配せず、配当を維持してきた実績があります。実際に、2023年3月期は最終赤字にもかかわらず一株あたり95円を支払い、2024年以降も105円、110円と着実に増配しています。この点からも、短期の業績変動に左右されにくく、株主還元姿勢の強い企業といえます。
その背景には、堅実な財務基盤とキャッシュフローの安定性があります。営業キャッシュフローは毎期黒字を維持しており、2025年3月期も35,837百万円のプラス。仮に利益が一時的に落ち込んでも、内部留保とキャッシュフローで配当を支える力があります。また、有利子負債比率も低く、自己資本比率は40%を超える堅実な水準を維持しています。
配当性向については、一時的な赤字期を除けばおおむね30〜40%前後で推移しており、今後の業績が回復すればさらに増配の可能性もあります。2026年3月期の会社予想では純利益25,500百万円を見込んでおり、配当110円を維持しても十分に余力があります。
また、PBRが0.56倍と非常に低く、株価は解散価値を大幅に下回っているため、「高配当かつ割安株」という二重の魅力があります。仮に株価が多少下落しても、配当利回りが下値を支える可能性が高く、安定的なインカムゲイン狙いの投資家には非常に向いている銘柄です。
総合的に見ると、UBEは短期的な値上がり益を狙う銘柄ではありませんが、長期保有で安定した配当収入を得たい投資家にとっては最適な高配当株です。業績の波があっても配当を維持できる財務体質と企業姿勢があり、4〜5%台の利回りを長期で享受できる点は大きな魅力です。守りの資産運用、配当生活志向の投資家には適した銘柄と言えます。
今後の値動き予想!!(5年間)
UBE株式会社の現在値は2,270円です。ここから今後5年間の値動きを想定すると、良い場合、中間の場合、悪い場合の3つのシナリオが考えられます。
良い場合は、化学事業や機能性素材の需要が世界的に回復し、電気自動車向けや再生可能エネルギー関連の材料需要が拡大するパターンです。原材料価格も安定し、営業利益率が4~5%台、ROEもプラスで安定すれば、業績の信頼性が高まり、市場からの評価も上向くと考えられます。この場合、PERは15倍前後まで上昇し、株価は3,400円から4,500円程度まで上昇する可能性があります。配当も110円水準を維持すれば、配当利回りと値上がり益を合わせて長期で高いリターンが期待できます。
中間の場合は、化学業界全体が横ばいで推移し、売上高や利益が大きく伸びないものの、一定の安定を保つシナリオです。営業利益率は3~4%台で推移し、ROEは小幅プラスを維持。PERは8~10倍程度、PBRは0.6倍前後で推移すると見込まれます。この場合、株価は2,500円から2,800円前後を中心に推移する可能性が高く、大きな上昇は期待しにくいものの、4%台後半の配当利回りを享受できる安定株として保有価値はあります。
悪い場合は、世界景気の減速や原材料価格の高騰、円高などの影響で収益が悪化するシナリオです。営業利益率が3%を下回り、ROEもマイナス圏に沈むような展開では、PERが5~6倍、PBRが0.5倍を割り込む水準まで低下する可能性があります。その場合、株価は1,600円から1,800円程度まで下落するリスクがあります。ただし、財務基盤が堅実なため、極端な下落や倒産リスクは低く、配当も一定期間は維持できると見られます。
総合的に見ると、現在の2,270円という株価はすでに割安水準にあり、下値は限定的です。業績が安定して配当を継続できる限り、長期的な保有で年4~5%の安定収入を得られる可能性があります。景気が回復すれば3,000円台後半まで上昇する余地もあり、配当狙いと中期的な値上がりを両立できる堅実な銘柄といえます。
この記事の最終更新日:2025年11月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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