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日本製鋼所(5631)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

日本製鋼所とは

日本製鋼所は、日本を代表する総合機械・素材メーカーの一つであり、素材技術と精密機械技術の融合によって幅広い産業分野を支える企業です。創業は明治時代にまで遡り、当初は軍需・重工業のための鋼材製造からスタートしました。その後、時代の変化に合わせて民間産業向けの技術を発展させ、現在ではエネルギー・環境・産業機械・防衛といった多角的な分野で事業を展開しています。本社は東京都品川区大崎一丁目にあり、設立は1950年12月。東証プライム市場に上場しており、資本金は約1,983億円、連結従業員数は約5,000名規模の企業です。

同社の中核事業は大きく3つに分けられます。まず一つ目が「素形材・鋳鍛鋼事業」です。ここでは火力・原子力発電所のタービンシャフトや圧力容器などに用いられる大型の鋳鍛鋼部材を製造しており、世界でも限られた企業しか持たない超大型鍛造技術を保有しています。こうした重厚長大型の素材は、高強度・高耐熱性・高精度が求められるため、日本製鋼所の製品はエネルギーインフラや防衛、造船、産業機械など幅広い分野で採用されています。特に、発電設備やエネルギープラント向けの部材では国内外で高いシェアを持ち、エネルギー安全保障にも貢献しています。

二つ目が「産業機械事業」で、ここでは射出成形機、押出成形機などの樹脂成形機械を中心に展開しています。自動車、家電、包装資材、医療機器など、あらゆるプラスチック製品の生産に関わる基幹機械を供給しており、精密・高速・省エネといった高付加価値モデルの開発を進めています。特に電動化・自動化分野では業界をリードしており、次世代成形システムの開発や、デジタル技術を活用した生産ラインの最適化にも取り組んでいます。

三つ目が「エンジニアリング・プラント事業」で、これは社会インフラやエネルギー関連の設備建設を中心としています。発電所、製鉄所、化学プラントなどの設備構築だけでなく、水素ステーションや再生可能エネルギー設備の建設にも積極的です。脱炭素社会の流れを受け、水素関連機器、環境対応プラント、エネルギー効率化設備の需要拡大を背景に、新たな成長領域として注目されています。

また、防衛関連や原子力発電部材といった国家基盤を支える分野にも深く関与しており、長年の実績から高い信頼を得ています。加えて、電子デバイス用素材、精密部品、次世代エネルギー関連素材など、研究開発型の新事業にも注力しています。中期経営計画「JGP2028」では、「素材とメカトロの融合による新たな価値創出」を掲げ、高付加価値製品の拡充とグローバル展開を進めています。

総じて、日本製鋼所は「重厚長大から精密・環境・未来志向型」へと進化を続ける企業です。高い技術力を背景に、安定した素材供給と先端機械開発を両立しており、日本の製造業の根幹を支える存在といえます。脱炭素化やエネルギー転換という時代の転機を迎える中で、長年培ってきた素材加工技術と精密機械技術のシナジーを武器に、今後もグローバルな成長が期待される企業です。

日本製鋼所 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益(円) 一株配当(円)
2023年3月期 238,721 13,846 14,958 11,974 162.8 58
2024年3月期 252,501 18,014 19,945 14,278 194.0 59
2025年3月期 248,556 22,824 23,495 17,961 244.0 86
2026年3月期(予想) 290,000 24,500 24,500 18,500 251.3 88

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期(単位:百万円) 営業CF 投資CF 財務CF
2023年3月期 -986 947 -20,112
2024年3月期 21,707 -6,841 -4,899
2025年3月期 -4,567 -12,272 -5,723

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER(実績・倍) PBR(実績・倍)
2023年 5.8% 7.5% 3.4%
2024年 7.1% 8.0% 3.8%
2025年 9.1% 9.2% 4.5% 高値平均 23.3倍
安値平均 12.8倍
3.36倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

日本製鋼所は、素材・産業機械・エネルギー関連など幅広い分野に事業を持つ総合機械メーカーであり、ここ数年の業績を見ると、着実に利益体質が強化されていることが分かります。特に2023年から2025年にかけては、売上・利益ともに安定して伸びており、経営効率や収益力の改善が顕著です。

まず営業利益の推移を見てみると、2023年13,846百万円 → 2024年18,014百万円 → 2025年22,824百万円と増加を続けています。経常利益も14,958百万円 → 19,945百万円 → 23,495百万円、純利益も11,974百万円 → 14,278百万円 → 17,961百万円と右肩上がりの成長を示しており、本業の収益力が確実に改善していることがうかがえます。これは、同社の主力である産業機械事業(射出成形機や押出成形機)やエネルギープラント関連部品が堅調に推移しているためで、国内だけでなく海外需要の回復も追い風になっています。

営業利益率も2023年5.8% → 2024年7.1% → 2025年9.1%へと上昇しており、収益構造の改善が明確です。鉄鋼・機械系メーカーとしては高い水準で、効率的な生産体制への移行が進んでいると考えられます。またROEも7.5% → 8.0% → 9.2%、ROAも3.4% → 3.8% → 4.5%と上昇しており、資本効率と総資産利益率の両面でバランスの取れた成長を遂げています。特にROE9%超は製造業としては優良水準であり、株主資本の運用効率が高まっていることを示します。

株価指標の面では、2025年のPERが高値平均23.3倍・安値平均12.8倍、PBRが3.36倍と、数値上は一見割高に見えます。ただしこれは、同社が「素材メーカー」というよりも「精密機械・エンジニアリング企業」として評価されつつあることを示しています。高付加価値製品の比率上昇により市場からの評価も変わっており、PBRの上昇は期待値の反映といえます。特に半導体・水素関連設備、防衛・エネルギーインフラといった成長分野への進出が進んでおり、将来の利益拡大を織り込みつつある状況です。

また、キャッシュフローの面では2024年度に営業CFが21,707百万円と黒字化し、投資CF・財務CFも安定しています。内部資金で設備投資を行える財務体質が整ってきており、配当余力にも余裕が出ています。実際、配当は2023年58円 → 2024年59円 → 2025年86円 → 2026年予想88円と増配基調で、株主還元の姿勢も明確です。

総合的に見ると、日本製鋼所は「安定した業績成長」「収益力の向上」「技術分野の拡大」「高い株主還元意識」を兼ね備えた企業です。PER・PBRが高めに見えるのは、従来の鉄鋼メーカー的な見方ではなく、成長企業として評価されていることの表れです。

したがって投資判断としては、中長期での成長期待を見込んだやや強気(買い寄り)が妥当です。短期的な調整はあっても、業績と財務の安定性、そして成長テーマ(水素・防衛・再エネ・高機能素材)を背景に、今後も着実な株価上昇が見込める銘柄といえます。

配当目的とかどうなの?

日本製鋼所は、配当目的の投資先として見ると、やや物足りない水準といえます。予想配当利回りは2026年3月期で0.99%、2027年3月期で1.03%と、プライム市場の平均利回り(約2〜2.5%)を下回っています。

同社は、かつて景気や為替の影響を強く受けていた素材系メーカーから、近年では精密機械・エンジニアリング志向の企業へとシフトしてきており、内部留保や設備投資に重点を置いた経営方針を採用しています。そのため、利益の多くを新規技術開発や設備更新に再投資しており、株主還元率はやや低めに抑えられています。

配当自体は安定しており、2023年58円 → 2024年59円 → 2025年86円 → 2026年88円と、段階的な増配を続けています。しかし株価が上昇しているため、利回りベースでは低く見えてしまう状況です。これは悪い兆候ではなく、成長期待による株価上昇が利回りを相対的に押し下げている構図です。

つまり、「配当をたくさん受け取りたい投資家」には不向きですが、「中長期で企業価値の上昇と安定配当の両立を狙う投資家」にとっては魅力的な銘柄です。特に、日本製鋼所は防衛・エネルギー・水素関連・半導体設備といった国家的な成長テーマに関わる事業を多く抱えており、今後の収益拡大が見込まれます。業績成長に伴って配当性向を引き上げる余地もあるため、今後は配当“成長株”としての魅力が増していく可能性があります。

結論としては、現時点では「高配当株」ではないものの、安定配当を続けながら長期的に成長を目指す企業です。値上がり益と将来的な増配の両方を期待するタイプの銘柄といえます。

今後の値動き予想!!(5年間)

日本製鋼所の現在値は8,872円です。ここから5年間の値動きを考えると、この企業の強みである「重厚長大型素材技術」と「精密機械技術」の両立が、今後の株価を大きく左右していくといえます。同社は火力・原子力発電所向けの大型鍛造品から、樹脂成形機や射出成形機などの精密産業機械、防衛や水素関連インフラなど、幅広い事業ポートフォリオを持っています。これまで素材メーカーの枠を超えて成長してきた企業であり、営業利益率も9%を超える水準に上昇しています。ROEも9.2%と高く、収益性が着実に向上している点は投資家から高く評価されています。

良い場合のシナリオでは、世界的な脱炭素・再生可能エネルギーシフトが加速し、水素ステーションや新エネルギー設備などの需要が拡大します。さらに防衛分野や原子力関連の更新需要も追い風となり、同社の大型鋳鍛鋼部材や機械製品の受注が増加します。これにより営業利益率は10%を超え、ROEも12%前後に上昇する可能性があります。市場からの成長期待も高まり、PERが25倍程度まで評価されれば、株価は13,000円から15,000円程度まで上昇してもおかしくありません。日本製鋼所が「次世代インフラ支える企業」として再評価される展開です。

中間のシナリオでは、設備投資需要が横ばいで推移し、鉄鋼・エネルギー市況が安定する状況が想定されます。高付加価値製品へのシフトが進む一方で、原材料価格や為替の影響で利益の伸びはやや鈍化します。営業利益率は8%前後、ROEは9%を維持し、収益体質は安定します。この場合、株価は9,500円から11,000円程度のレンジで推移する見通しです。株価の大幅上昇は期待しにくいものの、財務の安定性と継続的な増配が支えとなり、長期的な安定運用には向いている状況といえます。

悪い場合のシナリオでは、世界景気の減速や金利上昇による設備投資の抑制、素材価格の高騰が同時に発生し、企業業績に下押し圧力がかかるケースです。この場合、営業利益率は6%台まで低下し、ROEも5%程度に落ち込む可能性があります。PERは10倍を割り込み、株価は6,000円から7,000円程度に下落するリスクがあります。ただし、同社は財務が健全で、キャッシュフローも安定しているため、極端な業績悪化や無配の懸念は低く、下値では買い支えが入りやすいと考えられます。

総合的に見ると、現在の8,800円台という株価は、日本製鋼所の成長性と安定性をほどよく織り込んだ水準です。短期的には値動きが荒くなる場面もありますが、長期的には脱炭素やエネルギー転換、防衛関連需要の拡大など、同社の得意分野に追い風が吹く可能性が高いです。5年スパンで見れば、悪くても横ばい〜微減にとどまり、良いシナリオでは1.5倍以上の上昇が見込めるポテンシャルを持っています。成長と安定のバランスが取れた、日本の製造業の中でも中長期投資に適した銘柄といえるでしょう。

この記事の最終更新日:2025年11月10日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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