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住友電気工業とは

住友電気工業株式会社は、住友グループの中核企業の一つであり、日本を代表する総合電線・電子部品メーカーです。創業は1897年と非常に歴史が古く、長年にわたり「電線」「通信」「エレクトロニクス」「自動車」「エネルギー」といった幅広い分野で事業を展開してきました。本社は大阪市中央区にあり、東京証券取引所プライム市場に上場しています。資本金は約997億円、従業員数は国内外合わせて約28万人にのぼります。
同社は、電力・通信・自動車・電子材料などの基幹産業を支える製品をグローバルに供給しており、事業は大きく分けて「自動車」「情報通信」「エレクトロニクス」「環境・エネルギー」「産業素材」の5分野で構成されています。
まず、最も大きな柱となっているのが自動車関連事業です。これは売上全体の約6割を占める主力事業で、車両の電装系統をつなぐ「ワイヤーハーネス」や「自動車用電線」「電子制御ユニット(ECU)」などを製造しています。近年はEV(電気自動車)化の流れに伴い、高電圧ケーブルや軽量素材の需要が急増。住友電工は自動車メーカー向けに電動車対応の配線システムを供給し、世界的にも高いシェアを持っています。特にトヨタやホンダなど国内大手との取引が多く、安定した収益基盤を築いています。
次に情報通信事業では、光ファイバーや光ケーブル、通信システム製品などを展開しています。5G・6G時代の通信インフラ構築やデータセンターの増設に伴う光通信需要の拡大を背景に、国内外で堅調な成長を見せています。光ファイバー製造では世界的なトップクラスの技術力を有し、超低損失・高耐久の通信ケーブルを開発。アメリカ・アジア・ヨーロッパなど各地域に生産拠点を持ち、国際競争力を高めています。
また、エレクトロニクス事業では、フレキシブルプリント回路(FPC)、電子ワイヤー、半導体関連材料などを製造しています。スマートフォンやパソコン、デジタル家電などの内部配線や接続材として欠かせない製品を手掛け、特に高密度実装・軽量化の分野で技術的優位性を持っています。半導体関連向けの銅箔や高機能絶縁フィルムも展開しており、半導体需要の波に連動した収益構造を持っています。
さらに、環境・エネルギー事業では、電力ケーブル、海底ケーブル、送配電システム、再生可能エネルギー関連設備向け製品などを展開。洋上風力や太陽光発電など、再エネ導入に必要な送電網構築で世界的な需要増が見込まれており、住友電工は超高圧ケーブルやスマートグリッド関連製品の提供を通じてエネルギーインフラの高度化に貢献しています。
また、産業素材事業では、超硬工具、ダイヤモンドワイヤー、金属粉、鋼線、導電材料などを製造。工作機械や建設機械、自動車用部品、電子機器など、さまざまな製造業分野で活躍しています。特に高強度・高耐久の素材技術は、国内外の製造業で高く評価されています。
このように、住友電工は多角的な事業ポートフォリオを持ち、特定分野の景気変動リスクを吸収できる強みを備えています。海外展開も積極的で、海外売上比率は50%を超えています。アジア、北米、欧州などにグローバルな生産・販売拠点を持ち、世界約40カ国で事業を展開中です。
同社のコア技術は、「電力伝送」「通信」「材料」「精密加工」「制御」の5つであり、これらを組み合わせることで新しい価値を生み出しています。特にカーボンニュートラル社会への対応として、EV関連・再エネ関連・省エネ材料の開発を強化しており、サステナビリティ経営の強化を経営方針の中心に据えています。
総合的に見ると、住友電気工業は「日本の製造業の心臓部」とも言える存在です。電線・通信・自動車といった社会インフラに不可欠な分野を支え、安定した収益力と高い技術基盤を持つ企業です。短期的には素材価格や為替の影響を受けやすいものの、中長期ではEV化・再エネ化・デジタル通信拡大というメガトレンドに確実に乗るポジションにあるといえます。
住友電気工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 4,005,561 | 177,443 | 173,348 | 112,654 | 144.5 | 50 |
| 2024年3月期 | 4,402,814 | 226,618 | 215,341 | 149,723 | 192.0 | 77 |
| 2025年3月期 | 4,679,789 | 320,663 | 309,496 | 193,771 | 248.5 | 97 |
| 2026年3月期(予想) | 4,700,000 | 305,000 | 314,000 | 212,000 | 271.8 | 100 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー(百万円) | 投資キャッシュフロー(百万円) | 財務キャッシュフロー(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 265,191 | -147,821 | -98,290 |
| 2024年3月期 | 393,465 | -123,809 | -292,313 |
| 2025年3月期 | 402,253 | -223,904 | -150,825 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | 実績PER(高値平均) | 実績PER(安値平均) | 実績PBR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 4.4% | 5.9% | 2.8% | — | — | — |
| 2024年3月期 | 5.1% | 6.7% | 3.4% | — | — | — |
| 2025年3月期 | 6.8% | 8.4% | 4.3% | 12.5倍 | 8.2倍 | 1.92倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
住友電気工業は、電線・光通信ケーブル・自動車用電装部品などを世界中に供給する総合電線メーカーであり、非鉄金属業界の中でもトップクラスの技術力と事業規模を誇る企業です。近年の業績と指標をみると、堅調な売上の伸びと利益率の改善が続いており、中長期的には安定した成長が期待できる銘柄といえます。
まず、業績の推移をみると、売上高は2023年3月期に4兆円を突破し、翌2024年には4兆4,028億円、そして2025年には4兆6,798億円と着実に増加しています。営業利益も1774億円 → 2266億円 → 3206億円と3年連続で増加し、経常利益・純利益も同様に上昇傾向を示しています。2025年3月期には純利益が1937億円まで拡大しており、同社の収益基盤が大幅に強化されたことがわかります。営業利益率も4.4% → 5.1% → 6.8%へと改善し、収益性の高まりが明確に確認できます。
ROE(自己資本利益率)も5.9% → 6.7% → 8.4%と堅実に上昇しており、企業の資本効率が確実に改善しています。ROA(総資産利益率)も2.8% → 3.4% → 4.3%と増加しており、資産を活かした利益創出力が高まっていることを示しています。これらの数値は、住友電工が安定した経営のもとで着実に収益体質を強化している証拠といえます。
一方、株価指標を見ると、2025年3月期の実績PERは高値平均で12.5倍、安値平均で8.2倍、PBRは1.92倍です。PERが10倍前後というのは、電線業界の中では適正〜やや割安水準であり、過熱感はありません。PBRが2倍近い水準にあるのは、資本効率が高まって市場が将来成長を評価していることを示しています。ROE8%台に対してPBR1.9倍というのは、総合素材・電装系メーカーとしてはバランスの取れた位置づけです。
キャッシュフローの面でも、営業キャッシュフローは2023年26,519億円から2025年40,225億円へと増加しており、本業からの資金創出力が強化されています。投資キャッシュフローはマイナス(設備投資)を維持しつつも、財務キャッシュフローでは借入金返済や配当による株主還元を行っており、資金運用も安定しています。
住友電工の強みは、事業ポートフォリオの広さにあります。自動車用ワイヤーハーネスではトヨタ・ホンダなど国内大手メーカーとの取引が厚く、EV化の波にも乗っています。光ファイバーや通信関連では世界市場で高いシェアを持ち、5G・6Gインフラやデータセンター向け需要が収益の下支えとなっています。また、再生可能エネルギー分野では海底ケーブル・超高圧電線などの需要が伸びており、将来的にさらなる収益源となることが期待されます。
総合的に見て、住友電気工業は「安定成長型の大型優良株」と位置づけられます。派手な成長はないものの、業績の底堅さとキャッシュフローの強さ、そして持続的なROE改善が続いており、長期保有に適した企業です。株価指標も割高感はなく、PBR2倍・PER10倍前後という水準は、今後の利益成長を織り込みながらも過熱していない良好な水準です。したがって、投資判断としては、中長期での安定成長と株主還元を見込んだ「やや強気の買い」が妥当です。
配当目的とかどうなの?
住友電気工業は、配当目的の長期保有にも十分向いている安定高配当銘柄です。
まず、2026年3月期および2027年3月期の予想配当利回りは2.01%とされています。これは東証プライム全体の平均(およそ2%前後)とほぼ同水準で、極端に高いわけではないものの、業績の安定性と増配傾向を考えると堅実なインカム銘柄といえます。
ここ数年の配当推移を見ると、2023年に50円、2024年に77円、2025年に97円と、3年連続で増配を実施しています。業績の回復とともに還元姿勢を強化しており、2026年3月期には100円配当が予定されています。つまり、過去3年間で配当が2倍近くに拡大しており、利益成長に応じて着実に株主還元を強化している点が評価できます。
同社は営業キャッシュフローが非常に強く、2025年には4,022億円を超える水準にあります。この豊富なキャッシュ創出力が、増配の原資をしっかり支えており、今後も減配リスクは低いと見られます。加えて、住友グループ特有の財務健全性(自己資本比率約45〜50%台)もあり、配当の安定性は業界内でも上位クラスです。
住友電工の配当方針は「業績に応じた安定配当+成長に応じた増配」を掲げており、今後はROE改善(現状8.4%→目標10%前後)や営業利益率の上昇が進むことで、さらなる配当引き上げ余地も十分あります。特にEV(電動車)や再生可能エネルギー、光通信などの成長領域が拡大しているため、中期的に1株あたり120〜130円水準への増配も視野に入ります。
総じて見ると、住友電気工業は「高すぎず低すぎず、安定的に右肩上がりの配当を狙える堅実銘柄」です。短期での高利回り狙いには不向きですが、業績連動でじっくり増配を期待する長期インカム投資には最適です。配当を守る企業ではなく、育てる姿勢が強い点も魅力であり、長期的な資産形成のポートフォリオに組み入れる価値が十分ある銘柄といえます。
今後の値動き予想!!(5年間)
住友電気工業は現在株価5,860円前後で推移しています。ここから5年間の値動きを考えると、同社の業績や世界経済の動き、そしてEV化や通信インフラなどのメガトレンドにどれだけ乗れるかが大きなカギになります。
まず良い場合のシナリオでは、電気自動車(EV)関連のワイヤーハーネス事業や、光ファイバー・通信ケーブルなどのインフラ需要が世界的に拡大していくことで、収益が順調に伸びていくパターンです。営業利益率やROEもさらに上昇し、PBRやPERも改善して市場から高い評価を受ける可能性があります。こうしたケースでは、株価が5年後には9,000円から12,000円前後まで上昇していく可能性があり、約1.5倍〜2倍の成長が見込まれます。特に再生可能エネルギーや6G通信のような次世代技術分野での受注拡大が進めば、住友電工は再び「日本を代表するグローバル素材メーカー」として再評価される展開になるでしょう。
次に中間的なケースでは、現在の成長トレンドが続くものの、利益率の伸びは緩やかで、市場もやや慎重な見方を続ける状況です。EVや通信の需要は堅調ながらも、競合との価格競争や原材料コストの上昇などが足かせになる可能性があります。この場合、株価は5年後に6,500円から8,000円前後のレンジに落ち着くと考えられます。つまり、配当を受け取りながら着実に中長期でリターンを得る「安定保有型」の銘柄として推移するシナリオです。
一方で悪い場合のシナリオでは、世界経済の停滞や資源価格の高止まり、EV需要の鈍化、通信投資の抑制などが重なり、収益が想定よりも低迷するリスクがあります。特にワイヤーハーネス事業は材料費や人件費の影響を受けやすく、利益率が下がると株価の評価も下がりやすい構造です。この場合、株価は4,000円から5,000円台前半まで下落する可能性があり、調整局面が長引く展開も想定されます。
総合的に見ると、住友電気工業は業績の安定性やキャッシュフローの強さがあり、急落するようなリスクは小さい一方で、爆発的な成長よりは「安定的な右肩上がり」が期待されるタイプの銘柄です。配当利回りも約2%あり、長期保有しながら着実に利益を積み上げていくスタイルに適しています。したがって、長期目線でみれば、5年間で株価は6,000円台後半から1万円前後を目指す中期的な上昇トレンドを描く可能性が高く、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を狙える「堅実な成長株」と言えるでしょう。
この記事の最終更新日:2025年11月11日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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