株価
日本郵政とは

日本郵政株式会社は、日本を代表する大手持株会社であり、「郵便」「銀行」「保険」という三つの中核事業を傘下に持つ巨大グループの親会社です。本社は東京都千代田区大手町に所在し、2006年1月に設立されました。もともとは日本郵政公社の民営化に伴って誕生した会社であり、かつて国営だった郵便・貯金・簡易保険の各事業を引き継ぎながら、現在は完全民間企業として東京証券取引所プライム市場に上場しています。資本金は約3兆5千億円と日本企業の中でも最大規模に位置します。
日本郵政グループの主な事業は、「日本郵便株式会社」「株式会社ゆうちょ銀行」「株式会社かんぽ生命保険」の3社が担っています。
まず、日本郵便は全国の郵便局を通じて郵便・物流事業を展開しており、郵便物やゆうパック、EMS(国際スピード郵便)などの宅配サービスを提供しています。日本国内に約2万4,000局ある郵便局ネットワークを活かし、地方や離島までカバーする配送網は日本最大規模です。また、郵便だけでなく、銀行や保険の窓口業務、さらには地域密着型の物販・行政手続きのサポートなど、生活インフラとしての役割も果たしています。
次に、ゆうちょ銀行は個人向け預金残高で国内トップクラスの規模を持ち、資金運用・決済・送金サービスを中心に展開しています。安全性と利便性を重視しながら、国債や社債などの運用を通じて安定的な収益を確保しています。近年では、デジタル化の進展に対応するため、スマートフォンアプリやキャッシュレス決済など、ITを活用した新サービスの拡充にも力を入れています。
かんぽ生命はグループの生命保険事業を担い、長年にわたり国民の生活保障を支えてきました。簡易保険の伝統を引き継ぎ、全国の郵便局を通じて幅広い顧客層に保険商品を提供しています。医療・介護・年金など、少子高齢化社会に対応した商品ラインナップを強化し、安定した保有契約数を維持しています。
さらに、日本郵政は国内事業だけでなく、海外にも積極的に進出しています。特にオーストラリアの物流企業「トール・ホールディングス」を買収したことで、国際物流事業を拡大。欧州やアジア地域でもグローバルな輸送ネットワークを展開し、海外収益の強化を目指しています。また、不動産開発やホテル・病院運営などの新規事業にも進出しており、ポートフォリオの多角化を進めています。
経営面では、「地域とともに歩む社会インフラ企業」を基本理念に掲げ、全国の郵便局ネットワークを活かして高齢者支援や地方創生にも積極的に取り組んでいます。2021年以降はデジタル技術を活用した業務効率化を進め、民営化の第2ステージとして「郵政グループ全体の収益性向上と民間競争力の強化」を重点課題としています。
総じて、日本郵政は「郵便」「銀行」「保険」を中核とした国内最大級の生活インフラ企業です。郵便・物流の全国ネットワーク、膨大な金融資産を扱うゆうちょ銀行、安定した契約基盤を持つかんぽ生命を通じて、個人から法人まで幅広い層を支える事業構造を確立しています。今後は、デジタル化や地域連携を通じて、公共性と収益性の両立を目指す動きがさらに加速すると見られます。
日本郵政 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 11,138,580 | ‥ | 657,499 | 431,066 | 120.8 | 50 |
| 連24.3 | 11,982,152 | ‥ | 668,316 | 268,685 | 80.3 | 50 |
| 連25.3 | 11,468,368 | ‥ | 814,596 | 370,564 | 119.3 | 50 |
| 連26.3予 | 11,260,000 | ‥ | 1,020,000 | 380,000 | 131.9 | 50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | -8,151,226 | 9,352,146 | 549,640 |
| 2024年3月期 | -2,359,045 | -7,718,612 | -606,258 |
| 2025年3月期 | 2,794,869 | 4,684,413 | 215,896 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | ― | 4.2% | 0.1% | ― | ― |
| 2024年3月期 | ― | 2.6% | 0.0% | ― | ― |
| 2025年3月期 | ― | 4.0% | 0.1% | 高値平均14.8倍/安値平均9.8倍 | 0.47倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
日本郵政は、日本最大規模の総合インフラグループとして、郵便・銀行・保険の3事業を柱に安定した経営を続けています。直近3年間の財務データを見ても、同社の特徴は「超大型企業としての安定性」と「成長よりも安定配当重視の経営方針」にあります。
まず、経常利益の推移を見ると、2023年3月期が6,574億円、2024年が6,683億円、2025年が8,145億円と堅調に増加しています。純利益も2024年に一時的な減益(2,686億円)を挟みましたが、2025年には3,705億円まで回復。EPS(1株益)は119円前後と持ち直しています。売上高も11兆円前後で推移しており、国内経済の中では「安定した収益を出し続ける国民的企業」といえます。
株価指標に注目すると、2025年3月期のPERは高値平均14.8倍、安値平均9.8倍、PBRは0.47倍と非常に低い水準です。PBRが1倍を大きく下回っていることは、純資産に対して株価が割安で放置されていることを意味します。これは投資家から見れば「低リスク・高配当を狙いやすい銘柄」とも評価できます。ROE(自己資本利益率)は4%前後、ROA(総資産利益率)は0.1%程度と低水準で、収益性の面では決して高くありませんが、それは「リスクを極端に抑えた超安定型経営」の結果でもあります。
営業利益率が開示されていないのは、グループ全体の構造が郵便・銀行・保険など異なる業種で構成されているためです。一般的な企業のように単一の利益率を示すことが難しく、事業ごとに収益性の特性が異なります。ゆうちょ銀行やかんぽ生命の運用収益が業績を支え、郵便・物流事業は国民インフラとしての役割を担うため利益率は低く抑えられています。
総合的に見ると、日本郵政は成長株ではなく、安定配当と資産価値の高さを武器にした「ディフェンシブ銘柄」です。景気変動の影響を受けにくく、株価の上下動も比較的穏やかです。ROEやROAが低く見える一方で、潤沢な資産と安定したキャッシュフローにより、倒産や急激な業績悪化のリスクは極めて小さいといえます。
したがって、短期的な値上がりを狙うよりも、長期で保有して毎年安定した配当(年50円)を受け取りながら、株価上昇をゆるやかに期待するタイプの投資に適しています。低PBRで放置されている今の水準は、長期投資家にとっては「高配当・安定性重視の優良銘柄」として魅力的な局面といえるでしょう。
配当目的とかどうなの?
日本郵政は、配当目的の投資として非常に向いている銘柄です。
現在の予想配当利回りは2026年3月期・2027年3月期ともに3.41%と安定しており、東証プライム上場企業の中でも平均を上回る水準です。しかも同社は長年にわたり1株あたり50円の配当を維持しており、減配したことがほとんどないという特徴があります。これは、日本郵政グループ全体が郵便・金融・保険という生活インフラに根ざした安定収益構造を持っているため、景気変動に強く、業績が大きく悪化しても配当水準を維持できるからです。
また、財務面でも自己資本比率が高く、潤沢な現金・預金を保有しているため、配当の持続力が極めて高い点も魅力です。ROE(4%前後)やROA(0.1%)といった収益性の指標は低めですが、これは「安定・安全重視の経営」を徹底している結果であり、リスクを抑えた配当運営ができているとも言えます。
株価指標面では、PBRが0.47倍と純資産に対して割安に放置されているため、利回り3%超の安定配当を得ながら、将来的な株価上昇余地も残しています。短期的な成長や値上がり益を狙うタイプではありませんが、長期で保有し続けることで、**毎年安定した配当を受け取りながらリスクを抑えた運用が可能な“インカムゲイン銘柄”**といえます。
結論として、日本郵政は「高成長を狙う株」ではなく、長期で持って安心・安定した配当を受け取ることを目的とした投資家に最適な銘柄です。景気後退局面でも強く、ポートフォリオの守りの柱として保有する価値が十分にある企業といえるでしょう。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本郵政の現在の株価は1,462円です。ここから今後5年間の株価の動きを考えると、国内の景気動向や金利の方向性、そしてグループの金融事業・郵便事業の成長度合いによって3つのパターンが想定されます。
まず、良い場合のシナリオでは、日本経済が緩やかに回復し、金利上昇によりゆうちょ銀行やかんぽ生命の運用益が増加する展開です。金融事業の利益が拡大し、郵便・物流事業もEC(ネット通販)や法人需要の増加によって安定的に収益を確保できれば、グループ全体の経常利益は1兆円規模を維持できます。このような展開になれば、投資家の評価も改善し、PBRが1倍近くまで上昇。株価は2,000円から2,200円前後まで上がる可能性があります。配当も年50円を維持するため、値上がり益と配当の両面で安定したリターンが期待できるでしょう。
次に中間のシナリオです。景気は横ばいで、郵便・銀行・保険の各事業も安定的に推移するものの、特別な成長要因が見られない場合です。この場合、ROEは4%前後で落ち着き、経常利益は8,000億円台を維持。株価は1,400円から1,700円の範囲で推移し、配当利回りは3%台半ばを確保できます。大きな値上がりは見込めませんが、安定した配当を得ながら長期的に保有することで、リスクを抑えた堅実な投資が可能です。長期の資産運用の一部として、守りのポートフォリオに組み込むのに向いた形です。
一方で、悪い場合のシナリオでは、景気の後退やエネルギーコストの上昇などで郵便・物流事業が伸び悩み、加えて金融緩和が長期化して金利が低下し、ゆうちょ銀行やかんぽ生命の資金運用益が減少する展開です。ROEは3%を下回り、PBRも0.4倍前後まで落ち込む可能性があります。市場からの評価が一時的に低下し、株価は1,100円から1,200円台まで下がるリスクがあります。ただし、日本郵政は財務基盤が非常に強く、安定配当方針を維持しているため、減配の心配はほとんどなく、保有していれば配当収入によって下落分をある程度補うことができるでしょう。
総合的に見ると、日本郵政は短期的な値上がり益を狙う成長株ではなく、長期保有で安定した配当を受け取る「守りの銘柄」です。3%を超える配当利回りを長期間維持しており、景気が悪化しても事業基盤がしっかりしているため、大きく下がりにくい特性があります。5年間のスパンで見れば、株価が大きく伸びる可能性は高くありませんが、確実に配当を積み上げながら、ゆるやかな株価上昇を期待できる堅実な投資先と言えるでしょう。
この記事の最終更新日:2025年11月12日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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