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日立建機とは

日立建機株式会社は、日本を代表する建設機械メーカーであり、油圧ショベルを中心とした建設・鉱山機械をグローバルに展開している企業です。1949年に設立され、長年にわたり日立グループの一員として培ってきた技術力を背景に、世界中のインフラ整備や資源開発を支え続けています。特に油圧ショベルでは世界でもトップクラスのシェアを持ち、国内だけでなく北米、欧州、アジア、オセアニアなど多くの地域で高い評価を受けています。
同社の特徴として、単に建設機械を製造して終わりというわけではなく、デジタル技術を活用したソリューション事業も積極的に展開している点が挙げられます。機械の稼働データをリアルタイムで分析し、故障予兆の検知や最適なメンテナンスを提案する「ConSite(コンサイト)」など、ICT・IoT を活用したサービス分野でも存在感を高めています。施工現場の省人化・自動化を目指す取り組みも加速しており、遠隔操作建機や自動運転技術の研究開発にも注力しています。
環境対応への取り組みも重要なテーマで、電動化建機や省燃費技術の開発を推進しています。世界的に環境規制が強まる中、同社は電動ショベルやハイブリッド建機など環境負荷を低減する製品を市場に投入し、建設現場における脱炭素化の流れにも対応しています。また、建設機械のリビルト(再生品)や中古機市場の拡大を通じて、サーキュラーエコノミーの実現にも貢献しています。
事業の中心となるのは油圧ショベルやホイールローダーなどの建設機械ですが、鉱山向けの超大型油圧ショベルやダンプトラックの分野でも高い存在感があります。特にオーストラリアや北米の資源国では、日立建機の超大型機械が多く稼働しており、安定した収益基盤となっています。海外比率が高いことから、為替の影響は受けやすいものの、グローバルな販売ネットワークにより地域分散されたビジネスモデルを持っているのも強みです。
また、販売後のアフターサービスにも力を入れており、稼働状況に応じた部品供給やメンテナンス支援など、顧客の機械稼働率を高めるサービスを提供しています。レンタル・中古機事業も積極的に展開しており、建設需要の変動にも柔軟に対応できるビジネスモデルを構築しています。今後はインフラ老朽化対策や資源需要の活発化など、世界の建設需要拡大に伴う追い風も期待されている企業です。
日立建機 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 1,279,468 | 133,310 | 112,661 | 70,175 | 330.0 | 110 |
| 連24.3 | 1,405,928 | 162,690 | 160,476 | 93,294 | 438.7 | 150 |
| 連25.3 | 1,371,285 | 154,730 | 134,168 | 81,428 | 382.8 | 175 |
| 連26.3予 | 1,300,000 | 133,000 | 119,000 | 73,000 | 343.1 | 175 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年 | -26,135 | -42,647 | 87,089 |
| 2024年 | 73,035 | -39,035 | -8,917 |
| 2025年 | 143,932 | -52,833 | -85,371 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 10.4% | 10.6% | 4.3% | – | – |
| 2024 | 11.5% | 12.2% | 5.0% | – | – |
| 2025 | 11.2% | 10.0% | 4.5% | 11.5倍(高値平均) 7.4倍(安値平均) |
1.18倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
日立建機は直近3年間の業績を見ると、売上は横ばいから微減傾向ですが、営業利益率は10%台前半を安定的に確保しており、収益性は建設機械メーカーとしてはかなり高い水準にあります。営業利益率は 2023年10.4% → 2024年11.5% → 2025年11.2% と、ほぼブレがなく安定しており、価格転嫁やコスト管理がしっかり効いている状態です。
純利益も2024年に一度ピークを付けた後、2025年は多少落ち込んだものの 8,000億円前後 を維持しており、この規模の企業としては十分な利益水準です。経常利益も毎年1,300〜1,600億円台で推移しており、本業の強さと海外需要の底堅さが表れています。ROEは10〜12%、ROAは4〜5%程度と、資本効率も平均以上のレベルで推移しています。特にROEが2年連続で10%を超えている点は評価が高く、株主資本をしっかり利益につなげられている企業といえます。
株価指標を見ると、2025年の実績PERは 高値平均で11.5倍、安値平均で7.4倍 とかなり割安なゾーンにあります。PBRも 1.18倍 と、利益の安定性を考えると低めです。重機メーカーは景気循環の影響を受けやすい業種ですが、それを考慮しても「割安〜適正下限」の評価と見て良いでしょう。利益率が10%を超えている企業としては、PER10倍割れは評価不足といえます。
キャッシュフローも改善が続いており、営業キャッシュフローは 2023年 -261億 → 2024年 730億 → 2025年 1439億 と大幅に改善しています。これは本業の収益がしっかり現金を生んでいる証拠で、今後の投資や配当の原資としてプラス材料です。財務CFがマイナスに転じたのは借入返済や株主還元の増加が理由で、財務が弱っているわけではありません。
総合的に見ると、日立建機は利益率・資本効率・キャッシュフローが安定しており、指標面では割安感も強い銘柄です。世界的にインフラ投資や資源関連の需要は底堅く、建設機械の需要は大きく崩れにくい点も安心材料です。特に、同社はICT建機・電動建機・自動化技術など先進領域にも積極的で、今後の成長余地もあります。
一方で、米国や中国の景気動向に左右されやすいこと、為替リスクが大きいことは注意点です。また、建機市場は景気の山谷が大きいため、好調時に過剰な期待を持ちすぎないことも重要です。
総合判断としては、業績の安定性と割安感から、中長期では「買い優勢の良好な銘柄」 と評価できます。特に配当利回りも高水準で株主還元姿勢が強いため、安定した業績を重視する投資家に向いています。
配当目的とかどうなの?
日立建機の予想配当利回りは 26.3期・27.3期ともに 3.75% とかなり高めの水準にあります。日本株の平均配当利回りがおおよそ 2% 前後であることを考えると、日立建機の利回りは明確に高配当株の部類に入ります。
しかも、単に利回りが高いだけでなく、利益水準やキャッシュフローの面から見ても配当の安定感が比較的高い点が強みです。営業キャッシュフローが 2023年 -261億 → 2024年 730億 → 2025年 1439億 と改善しており、本業がしっかり現金を生み出しているため、配当を維持する体力が十分にあります。
さらに日立建機は株主還元に積極的な企業で、過去にも増配トレンドが続いています。直近では 110円 → 150円 → 175円 と着実に配当が増えており、企業の稼ぐ力が配当にもしっかり反映されていることが分かります。
また、営業利益率が10%台前半と高い利益体質を持ちながら、株価のPERは 高値11.5倍・安値7.4倍 と割安に放置されており、「割安×高配当」の組み合わせは中長期保有と非常に相性が良いと言えます。
リスク面としては、建設機械メーカーという業種柄、景気循環の影響を受けやすいこと、海外比率が高いため為替リスクが比較的大きいことが挙げられます。しかし、利益率とキャッシュフローの安定性を見る限り、急激に配当が減配される可能性は低く、むしろ将来的に増配余地も十分あります。
総合的に見ると、日立建機は 「安定配当+割安+利益体質が強い」バランスの取れた高配当株 といえ、配当目的の長期保有には非常に向いている銘柄です。
今後の値動き予想!!(5年間)
日立建機の現在の株価は4,660円ですが、この水準は業績面や配当利回りを考えるとまだ割安感が残っている価格帯だと思います。営業利益率も10%台前半を安定して確保していて、ROEやROAも十分に高く、キャッシュフローもしっかり改善してきている企業なので、本来であればもう少し評価されてもおかしくない銘柄です。ただ、建設機械メーカーはどうしても世界の景気や資源市況に左右されやすいため、株価の振れ幅は大きくなりがちで、シナリオによって未来が大きく変わるタイプの株でもあります。
良い場合のシナリオでは、世界的なインフラ投資や資源開発が再び活発になり、油圧ショベルや鉱山機械の需要が大きく伸びていくパターンです。特に北米やアジアがしっかり景気回復して、円安基調が続けば海外利益がさらに伸び、利益は拡大しやすくなります。この場合、PERが12~14倍くらいまで評価が戻っても不思議ではなく、株価としては7,000〜8,500円くらいまで十分に狙えると思います。現在値の1.5倍以上まで伸びるイメージです。
中間シナリオの場合は、世界の建機需要が大きく落ち込むことはないけれど、特別強い追い風もない、いわば“普通”の状態が続くケースです。インフラ投資や資源関連の市場は一定の需要があるので、大きく崩れる可能性は低いですが、大きな上昇も期待しづらい状態です。その場合、業績は今の水準を維持しながら緩やかに推移し、PERも10〜12倍程度の評価にとどまり、株価は5,200〜6,200円くらいに収まると見ています。現在の価格からすると緩やかな上昇といったイメージです。
一方で、悪い場合のシナリオでは、中国の景気悪化や資源価格の下落、そして急激な円高などが組み合わさったときが心配です。日立建機は海外売上比率が高いため、特に中国市場が冷え込むと影響が大きく、同時に資源市況が悪化すると鉱山機械の受注も落ち込む可能性があります。そうなると利益が圧迫されてPERも6〜8倍程度まで低迷し、株価は3,300〜4,000円と、現在よりも一段下の価格帯に沈む可能性もあります。この場合は中期的に我慢の時間が長くなるイメージです。
総合的にみると、日立建機は利益率が高く、キャッシュフローも改善していて、配当利回りも3.75%と非常に高いので、下値が大きく崩れにくいタイプの銘柄です。建機業界特有の景気循環の波は確かにあるのですが、中長期で見た場合には業績の安定性と割安感が強く、緩やかに株価は上方向に動きやすい印象があります。現実的には5年間で5,000〜6,000円台が中心ラインになるものの、世界的な建設需要が再び強まれば8,000円近くまでの上昇も十分にあり得る銘柄だと感じます。
この記事の最終更新日:2025年11月13日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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