株価
荏原とは

荏原製作所は、日本でも歴史の長い重工メーカーで、特にポンプや送風機などの「流体機械」の分野ではトップクラスの実績を持っています。1912年の創業以来、水を扱う技術を中心に事業を拡大してきた企業で、上下水道設備や発電所、工場、ビルの空調設備など、社会インフラのあらゆる場面で荏原の機械が使われています。生活や産業を支える“縁の下の力持ち”のような存在の企業で、表舞台には出にくいですが実は非常に重要な役目を果たしています。
同社の最大の特徴は、「インフラ事業」と「半導体製造装置」の両方を手がけている点です。ポンプ・送風機などのインフラ向け事業は景気に大きく左右されにくく、安定性が強い一方、半導体製造装置の分野では世界的な半導体需要の増加に伴って高い成長力を持っています。特に半導体製造工程で欠かせないドライ真空ポンプやCMP装置(半導体ウェーハの研磨装置)では世界的トップシェアを持っており、グローバルの半導体サプライチェーンの中でも重要なポジションを占めています。
また、荏原製作所は環境・省エネ技術にも早くから取り組んでおり、省エネ型ポンプ、高効率送風機、排ガス処理装置、水処理設備など、環境負荷の低い製品開発を積極的に進めています。世界的な脱炭素潮流の中で「環境インフラ×産業機械」の需要は拡大しており、同社の技術はさまざまな場面で活用されています。
事業範囲は非常に広く、国内の水インフラ更新需要だけでなく、アジア・中東・北米など海外の発電所や工業プラント向けにも多くの設備を提供しています。さらに半導体事業では欧米や台湾、韓国の半導体メーカーとも深い関係を築いており、技術サポートや装置の安定稼働に向けたソリューション提供にも力を入れています。
荏原製作所のもうひとつの強みは「サービス事業」の強さです。ポンプや真空装置などは導入後のメンテナンスが重要であり、定期点検や修理、部品交換などで長期的な収益を確保できるモデルになっています。単に機械を売って終わりではなく、長期にわたって技術的なサポートを行うことで、安定したキャッシュフローを生み出す仕組みを持っているのが特徴です。
半導体事業の成長性とインフラ事業の安定性の両輪で収益を構築しているため、景気循環の影響をある程度相殺できる体質であり、ここ数年は業績も大きく伸びています。特に世界的に半導体不足が深刻化した時期には荏原の装置に対する需要が急拡大し、企業としての存在感も一段と増しました。
今後も世界各国でインフラ更新や半導体投資が継続する見込みが高いため、荏原製作所の事業機会は引き続き広がる方向にあります。老朽化インフラの更新、水不足対策、半導体の微細化、高効率化など、同社が必要とされる場面は確実に増えていくことから、長期的な成長ポテンシャルのある企業だといえます。
荏原 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 680,870 | 70,572 | 69,481 | 50,488 | 109.7 | 38.6 |
| 連23.12 | 759,328 | 86,025 | 84,733 | 60,283 | 130.7 | 45.8 |
| 連24.12 | 866,668 | 97,953 | 99,852 | 71,401 | 154.6 | 55 |
| 連25.12予 | 910,000 | 107,000 | 106,000 | 75,600 | 163.8 | 56〜58 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022 | 37,070 | -38,324 | -23,749 |
| 2023 | 70,012 | -35,625 | -4,658 |
| 2024 | 100,940 | -48,554 | -31,915 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 11.3% | 14.7% | 6.5% | – | – |
| 2024 | 11.3% | 15.0% | 7.1% |
14.8倍(高値平均) 8.4倍(安値平均) |
4.37倍 |
| 2025(予想) | 11.7% | 15.9% | 7.5% | 27.76倍(予想) | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
荏原製作所の業績を改めて見ると、ここ数年は非常に力強い成長を続けており、機械メーカーとしてはかなり異例の伸び方をしています。まず営業利益ですが、705.7億円 → 860.2億円 → 979.5億円 → 1,070億円(予想) と、毎年しっかり積み上げている点が非常に強いです。普通の重工・機械メーカーだと景気の波で利益が揺れやすいのに対し、荏原はほぼ一直線の右肩上がりで、安定性と成長の両面を兼ね備えています。
売上も 6,800億円 → 7,590億円 → 8,660億円 → 9,100億円(予想) と連続で過去最高を更新しており、規模拡大が止まりません。純利益も同様にしっかり伸びていて、最終利益の伸びが営業利益の伸びとちゃんと連動しているのは、企業としての財務体質が健全で、稼ぎがそのまま残っている証拠です。
収益性指標を見るとさらに優秀で、営業利益率は11%台で安定、ROEは15%前後、ROAは7%前後 と、どれを取っても機械メーカーの中ではトップクラスの数字です。特にROE15%は、「利益率が高く資本効率も優秀」という理想的な状態で、本当に稼げる企業だけが到達できるレベルです。これらの数字を見るだけで、荏原製作所の企業体質がいかに強いかが分かります。
この成長を支えているのが、「インフラ事業の安定性」と「半導体製造装置の高成長」の両方を持っている点です。ポンプや送風機などのインフラ装置は景気に左右されにくい一方、半導体装置は市場成長が大きい分、ダイナミックに利益を押し上げます。この“守りと攻めの二刀流”が、業績の安定的かつ高い成長につながっています。
ただし、ここで気になるのが株価バリュエーションです。2024年のPERは 高値14.8倍/安値8.4倍 と標準〜やや割安の評価でしたが、2025年の予想PERは 27.76倍 と一気に割高水準になっています。これは市場が荏原に対して「成長株としてのプレミアム」を付け始めた状態で、利益が伸びることをすでに織り込みつつ株価を引き上げています。またPBRが 4.37倍 と非常に高く、資産価値より利益成長力で評価される“グロース株扱い”になっていることが分かります。
総合すると、荏原製作所は 業績の強さは本物で、機械メーカーとしてはトップレベルの優良企業 です。安定して成長できる事業構造を持ち、利益率も高く、数字だけを見ると「買いたくなる銘柄」です。ただし株価面ではすでに相当買われており、今後の成長を先取りした形になっているため、短期では割高感が強く、押し目で拾いたい局面 です。
長期では、インフラ需要・半導体需要どちらも伸び続ける可能性が高いため、「安心して持てる成長株」というポジションに入っています。成長性・収益性・市場テーマのどれを取っても優秀なため、時間を味方につける長期投資には向いていると言えるでしょう。
配当目的とかどうなの?
荏原製作所の予想配当利回りは、25.12期で 1.23%、26.12期で 1.29% とされています。この数字を見る限り、配当目的の投資としては正直「高配当株」とは言えず、どちらかと言えば利回りは控えめな部類に入ります。日本株全体の平均利回りが約2%前後ということを考えると、荏原は“利回りではなく成長で勝負する銘柄”という位置づけに分類されます。
ただし、利回りが低いからといって配当面が弱いというわけではありません。荏原製作所はここ数年、売上・利益が非常に強い伸び方をしており、その成長に合わせて配当も着実に増えています。配当性向も安定しており、急な減配リスクが低いのは大きなメリットです。企業としての財務基盤がしっかりしており、キャッシュフローも安定しているので、配当の持続性という観点ではかなり安心感があります。
また、荏原の事業は「社会インフラ(ポンプ・送風機など)」と「半導体製造装置」という2本柱で構成されているため、景気が悪くなってもインフラ需要が下支えし、景気が良いときは半導体関連で一気に利益が伸びるという構造になっています。このため、長期で見れば安定と成長の両方を取れる企業であり、配当を受け取りながら企業価値の成長も享受できる点は強みです。
とはいえ、現状の利回り 1.2~1.3%台は、配当収入を主目的に投資する人にとってはかなり物足りない水準です。高配当株のように毎年しっかり配当でリターンを得たいという人には向いていません。一方、増配の伸び代はまだあり、企業成長とともに配当が増えていく“成長配当銘柄”として捉えるなら十分に魅力があります。
総合的に見ると、荏原製作所は「配当で稼ぐ銘柄」ではなく、「成長+少しの配当を長期で積み上げていく銘柄」です。利回りは低いものの、業績の強さと増配余地を考えると、長期投資家にとっては満足できる企業ですが、純粋に配当利回りだけを求める投資家には向かないタイプと言えます。
今後の値動き予想!!(5年間)
荏原製作所の現在の株価は4,543円ですが、ここから先の5年間を考えると、この銘柄は成長力の強い事業と景気に左右されにくいインフラビジネスを両方持っているため、上にも下にも動く幅がありつつ、長期的には安定して評価されていきやすい企業だと思います。まず業績面では、営業利益が 705.7億円 → 860.2億円 → 979.5億円 → 1,070億円(予想) と非常にきれいな右肩上がりで伸びていて、売上も8,600億円を超えて9,000億円台に乗ろうとしている状況です。ROEは15%前後、営業利益率は11%台と、機械メーカーとしてはほぼトップクラス。こうした強さを見ると、長期的にはまだ企業価値が伸びていく余地が十分にあることが分かります。
良い場合のシナリオとしては、半導体市場の再拡大や水インフラ更新の需要が世界的に強まって、荏原の真空ポンプ・CMP装置などの半導体関連装置がさらに受注を伸ばすパターンです。今のROEや利益率の高さを維持しながら成長が続けば、株価は7,000〜9,000円ぐらいまで見えてくる可能性があります。現在から1.5〜2倍を目指せる展開で、成長企業として市場の再評価が入るとこうしたシナリオも十分にありえます。
次に、もっと現実的な中間のシナリオでは、事業が今のペースで安定して成長しつつ、株価もそれに合わせてゆっくりと評価されていくケースです。半導体・インフラ両方の事業が堅調で、利益がじわじわ積み上がり、業績も大崩れせずに進んでいく展開です。この場合、株価は 5,500〜6,500円 くらいで落ち着くと考えられます。現在値から見るとほどよく上昇を期待でき、長期投資としては最も現実的なラインです。「高すぎず、低すぎず、無難に伸びていく」というイメージになります。
一方で、悪い場合のシナリオとしては、世界の半導体投資が一時的に鈍化したり、景気後退で設備投資が全体的に縮むタイミングが来るケースです。あるいは円高が進み、海外の売上・利益が目減りすることも考えられます。荏原は成長企業ではあるものの、現在は予想PERが約27倍と高めの評価になっているため、業績の伸びが落ちた時には株価調整が起きやすいリスクがあります。このシナリオでは、株価が一時的に 3,000〜4,000円 ぐらいまで下がる可能性もあります。長く持つ投資家にとっては耐える期間が必要になる場面です。
総合して見ると、荏原製作所は「長期で持つほど実力が出てくるタイプの成長株」であり、短期というより中長期向けの銘柄です。株価が割高になっている局面では無理に飛びつかず、調整が来たときに拾うのが賢い戦略ですが、5年という期間を取るなら企業の成長とともに株価が上がっていく可能性は十分に高いです。良い場合には大幅な上昇、中間なら堅実な伸び、悪い場合でも大崩れはしにくい構造になっているため、長期保有には比較的向いている銘柄だと感じます。
この記事の最終更新日:2025年11月13日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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