株価
NTNとは

NTN株式会社は、日本を代表するベアリングメーカーの一つとして、100年を超える歴史を持つ精密機械部品メーカーです。軸受(ベアリング)や等速ジョイント(CVJ)を中心に事業を展開し、自動車産業や産業機械、鉄道、建設機械、航空機、農業機械、ロボット、さらには風力発電設備など、世界中のあらゆる機械の回転・可動部分にNTNの製品が使われています。企業としての性格は“部品の部品を作る会社”ですが、その技術はあらゆる産業の根幹を支える重要な役割を担っています。
NTNの強みは、まずベアリングメーカーとしての長年の高い技術力です。ベアリングは一見すると単純な丸い部品に見えますが、わずかな摩擦の違いが燃費や寿命、安全性に大きく影響するため、高度な精度・耐久性・材料技術が求められます。NTNはその中でも特に自動車分野に強く、ホイールベアリング、トランスミッション向け軸受、エンジン補機関連部品など、多数の車両部品を世界中の自動車メーカーに供給しています。また、自動車の駆動系に欠かせない等速ジョイント(CVJ)は、世界的にトップクラスのシェアを持っており、走行時の振動低減や静粛性に寄与する重要な部品として評価されています。
産業機械分野でも、工作機械やロボット、建設機械、鉄鋼プラント、船舶、エレベーターなど幅広い用途に対応しており、高温・高負荷・高速回転など過酷な条件下でも性能を発揮する特殊ベアリングの開発力にも定評があります。近年は環境対応の流れを受けて、低摩擦・高効率のベアリングや、長寿命化を実現する素材技術にも注力しており、機械の省エネ・長寿命化に貢献しています。
また、NTNはグローバル展開が非常に進んでいる企業でもあり、日本国内だけでなく、アメリカ、ヨーロッパ、中国、東南アジアなど世界中に生産・開発・販売拠点を持っています。海外売上比率も高く、世界中の自動車メーカーや工業メーカーのサプライチェーンに深く組み込まれています。このグローバル体制は大きな強みである一方で、世界景気や自動車市況の影響を受けやすいという側面もあります。
さらに近年では、新領域への挑戦も進めています。例えば、風力発電向け大型ベアリングや、電動パワーステアリング関連の部品、高精度センサー、アクチュエーター、モーションコントロール製品など、電動化・自動化の流れに合わせた商品も強化しています。特に風力発電向けベアリングは世界的に需要が伸びている分野であり、NTNの将来成長にとって重要な柱となりつつあります。
一方で、NTNは自動車産業に依存する割合が高いことから、市況に左右されやすい企業でもあります。世界的なEVシフトのスピード、中国の景気動向、原材料価格の高騰、円安円高など、外部環境の影響は大きく、業績が安定しにくい面もあります。また、同業の日本精工(NSK)、ジェイテクト(旧光洋精工)、スウェーデンSKF、ドイツのFAGなど、世界的な競争相手も非常に強く、熾烈な技術競争・価格競争の中に置かれています。
それでも、NTNの製品は自動車や産業機械の安全性・信頼性を支える不可欠な部品であり、世界中の機械が動き続ける限り需要が消えることはありません。成熟産業ではあるものの、電動化や省エネルギーという大きなテーマが背景にあるため、新技術の導入を追い風にできれば再び業績を大きく伸ばすチャンスも持っています。
NTN 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 773,960 | 17,145 | 12,047 | 10,367 | 19.5 | 5 |
| 連24.3 | 836,285 | 28,149 | 20,001 | 10,568 | 19.9 | 10 |
| 連25.3 | 825,587 | 22,959 | 10,475 | -23,801 | -44.9 | 11 |
| 連26.3予 | 790,000 | 21,000 | 8,000 | -7,500 | -14.2 | 5〜11 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 34,219 | -13,858 | -33,258 |
| 2024 | 65,103 | -24,970 | -30,212 |
| 2025 | 45,623 | -25,960 | -18,708 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 2.2% | 4.6% | 1.1% | - | - |
| 2024 | 3.3% | 3.9% | 1.1% | - | - |
| 2025 | 2.7% | -10.3% | -2.8% |
18.4倍(高値平均) 11.4倍(安値平均) |
0.80倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
NTNの直近の業績を億円単位で整理してみると、まず営業利益は171.5億円から281.5億円へ一度伸びたものの、その翌年には229.6億円まで落ち込み、安定して右肩上がりとは言えない推移になっています。経常利益も120.5億円から200.0億円へ増えたあと、104.7億円まで半減しており、事業としての収益力が十分に安定しているとは言いにくいのが現状です。純利益に関しては103.7億円と105.7億円の黒字が続いたあと、一気に−238億円の大幅赤字へ転落しており、これは企業としてかなり重たい数字です。単なる一時的な悪化ではなく、構造的に何らかの問題が生じている可能性もあります。
利益率を見ても、営業利益率は2.2%、3.3%、2.7%と極めて低く、製造業の中でも利益体質がかなり弱い水準です。価格競争やコスト負担、需給変動の影響を強く受けていることがうかがえ、安定した収益力とはかなり距離があります。ROEは4.6%、3.9%から−10.3%へ悪化し、株主資本を利益に変える力が完全に失われる状況になっています。ROAも1.1%から−2.8%へ落ち込んでおり、企業全体の収益効率も大きく低下しています。
こうした収益の大幅悪化にもかかわらず、2025年のPERは高値平均で18.4倍、安値平均でも11.4倍あり、利益が落ちこんでいる企業としては割安とは言いにくい評価になっています。一方でPBRは0.80倍と低水準ではあるものの、これは“資産価値から見れば割安”というより“業績悪化が株価に反映された結果の低PBR”と見るほうが自然です。
総合的に判断すると、NTNは現状の数字だけを見れば、利益の大幅悪化と利益率の低さ、ROE・ROAの急落が揃っており、短期的に積極的に買える状態ではありません。営業利益が200億円規模あるにもかかわらず利益率が2〜3%台にとどまるのは、稼ぐ力の弱さが構造的な問題になっている可能性があります。純利益が−238億円まで落ち込んでいる点も非常に重く、中期的な競争力にも不安が残ります。
ただ、PBRが0.8倍という水準は過度に売られている可能性もあり、もし業績が底を打って回復に向かうなら、株価が見直される可能性はあります。しかし、現状では明確な改善シグナルが見えていないため、「割安だから買う」という単純な判断は危険で、慎重に見守るほうが現実的と言えます。
現時点での総合評価としては、短期の値上がり目的には全く向かず、長期でも改善の兆しが見えるまで様子見が妥当な銘柄だと判断できます。
配当目的とかどうなの?
NTNを配当目的で考える場合、まず確認すべきなのは現在の業績と今後の利益の安定性ですが、結論から言うと「配当目的にはかなり向きにくい銘柄」という評価になります。予想配当利回りは連26.3で3.01%、連27.3で同じく3.01%と、数字だけを見れば一見すると普通レベルの利回りに見えます。しかし、その裏にある利益の推移や財務状況を踏まえると、この利回りを安定して維持できるかどうかには大きな不安があります。
まず最大のポイントは、直近で純利益が−238億円という非常に大きな赤字に転落していることです。企業としては、利益がしっかり出ているからこそ配当を無理なく続けられるわけですが、赤字が出ている状態での配当は、事業活動から資金が生まれていないまま「無理して支払っている」可能性があります。これが続くと、いずれ減配や無配に転じるリスクは当然高まります。
さらに営業利益率が2〜3%台と利益体質が極めて薄いことから、景気の変動・原材料コストの上昇・為替などの外部環境の影響を受けやすく、安定して配当を続けるにはかなり不安定な体質になっています。ROEが直近で−10%を超えてしまっている点も、企業が株主価値を高めていく余力が弱いことを示しています。
こうした状況を見る限り、単に「利回り3%だからお得」という評価にはならず、「今の状態でその利回りが続くか?」という視点が必要になります。結論としては、NTNは配当利回りが平均的に見える一方で、業績悪化が深刻であり、この利回りを信頼して長期の配当狙いで保有するのはリスクが高い銘柄です。
配当目当てであれば、もう少し利益率が高く、ROE・ROAが安定していて、継続増配の実績がある企業を選んだほうが安全性は高くなります。NTNは現状、「安定配当銘柄」というよりは、「業績回復が見えたら検討するタイプの銘柄」という立ち位置にあります。
今後の値動き予想!!(5年間)
NTNの現在の株価は365円ですが、ここから先の5年間の値動きは、業績の回復度合いや自動車・産業機械市場の動きによって大きく変わる可能性があります。
まず良い場合のシナリオとして考えられるのは、軸受や等速ジョイントなどの主力製品の需要が世界的に持ち直し、特に自動車向けの需要が安定して回復するケースです。EV向けの高性能ベアリングや、精密部品の長寿命・低摩擦技術が評価され、営業利益が再び200億円規模へ戻っていくような流れになれば、市場からの評価も改善し、株価は500円から650円ほどまで戻す余地があります。過去の株価水準を考えても、業績さえ回復すれば一段の見直しが期待できるため、割安放置からの上昇という展開も十分ありえるパターンです。
次に中間の場合のシナリオでは、自動車や産業機械の需要が大きく落ち込むことはないものの、急回復するほどの勢いもなく、利益率が2〜3%台で推移するケースです。この場合は純利益が黒字に戻ったとしても、その水準が大きく伸びることは期待しにくく、株価も大きくは動かず、400円から480円ほどの範囲で推移する可能性があります。配当利回りが3%前後あるため、値上がり益よりもインカムを受け取りながら保有するような、やや守り寄りの投資スタイルになります。
一方で悪い場合のシナリオでは、中国を中心とした自動車市場の低迷や原材料費の高騰、競争激化などが重なり、純利益が再び赤字に戻るような展開が続くケースです。直近で−238億円という純利益の大幅赤字を記録していることを考えると、同じような収益悪化が再度起きれば株価の下値はさらに意識され、250円から320円あたりまで落ち込む可能性もあります。このレンジに入ると市場からの評価がかなり厳しくなり、長期間株価が低迷するリスクもあります。
総合して見ると、NTNは短期で急上昇するタイプの銘柄ではありませんが、割安な水準にあることから、業績が本格的に改善すれば大きく見直される余地もあります。ただし現時点では収益の不安定さが残っており、明確な改善が見えるまでは慎重に向き合う必要がある銘柄です。長期保有前提であれば、業績反転のサインを確認しながら時間を味方にする形がベストな戦略と言えます。
この記事の最終更新日:2025年11月13日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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