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ジェイテクトとは

ジェイテクト(JTEKT)は、トヨタグループのコア企業として、自動車向けステアリングシステム、ベアリング、駆動系部品、そして工作機械などを幅広く手がける総合精密部品メーカーです。2006年に光洋精工(ベアリングメーカー)と豊田工機(工作機械メーカー)が経営統合して誕生した企業であり、機械加工・精密制御技術・モータ制御技術をまとめて保有する、世界的にも珍しい“複合型の精密機械メーカー”という位置づけを持っています。
本社は愛知県刈谷市にあり、従業員数は連結で約4.5万人を超え、世界100以上の地域に拠点を構えるグローバル企業です。
ジェイテクトの強みで最も知られているのが、自動車向けステアリングシステムです。特に電動パワーステアリング(EPS)では世界トップシェアを誇っており、トヨタ自動車を中心とした世界有数の自動車メーカーへ安定的に供給しています。EPSは今後の自動運転、ADAS技術と密接に関わる分野でもあり、ステアリング制御の高度化、安全性向上に向けた開発が加速しています。また、ステアリングという自動車の「操舵系」の中枢を担う製品を扱うことから、その品質・安全性に対する要求は非常に高く、ジェイテクトは長年にわたって高い信頼を確立してきました。
次に、ベアリング事業もジェイテクトの柱となっています。同社は「KOYO(光洋)」ブランドで知られ、自動車、鉄道、航空機、ロボット、産業機械など、あらゆる回転機構に欠かせないベアリングを供給しています。ベアリングは産業の“縁の下の力持ち”とも言われる製品であり、故障率の低さ、高負荷・高回転に耐える精度、摩擦の低減などがメーカーの競争ポイントですが、ジェイテクトはその技術力で国内外から高く評価されています。特にEVのモータ効率向上に貢献する低フリクションベアリング、省エネ型の特殊ベアリングなど、環境対応技術の開発にも注力しています。
駆動系部品の分野では、デファレンシャルやトランスファーといった車の“走る力”を支える重要部品を製造しています。トヨタの四輪駆動車(SUV・クロカン系)を中心に採用されており、パワートレインの高効率化、電動化に伴う新製品の開発も進んでいます。EVやハイブリッド車向けの減速機・ギヤ関連製品など、今後の電動車市場拡大によって成長が期待される領域にも積極的に投資しています。
さらに、工作機械・FA(工場自動化)関連の事業も大きな特徴です。研削盤やマシニングセンタなどの工作機械は「ものづくりの基盤」となる製品で、ジェイテクトはそれらを長年にわたり提供してきました。自動車産業のみならず、鉄鋼、航空、精密機械、エレクトロニクス分野の製造現場でもジェイテクトの工作機械が使われており、生産設備の高精度化、効率化に貢献しています。またFA領域では、センサー、電子制御ユニット、ロボット向けの部品などを手がけ、工場全体の自動化ソリューションも提案しています。
近年は、ステアバイワイヤ技術、車載用センサー、トルクセンサー、e-Axle関連など、次世代自動車技術に直結する領域への研究開発も強化。自動車のEV化・自動化の流れに合わせて、従来の機械技術だけではなく、ソフトウェア、電子制御、AI・IoTの導入など、付加価値の高い製品展開を進めています。さらに、二酸化炭素削減や環境負荷低減に向けた取り組みも積極的で、バリューチェーン全体の省エネ化、リサイクル材の活用、エネルギー効率向上をテーマにした製品開発が加速しています。
ジェイテクトはトヨタグループの一員として、安定した取引基盤を持つ一方で、世界中のメーカーにも広く製品を供給する“複合型精密機械グローバル企業”としての側面を持っています。自動車産業の大きな転換期である「電動化」「自動運転」「CASE」に対応できる強力な技術資産を持ち、今後の成長が期待される企業のひとつです。
ジェイテクト 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 1,678,146 | 49,325 | 55,889 | 34,276 | 99.9 | 30 |
| 24.3 | 1,891,504 | 62,196 | 72,513 | 40,257 | 117.4 | 36 |
| 25.3 | 1,884,397 | 38,452 | 30,876 | 13,713 | 40.4 | 50 |
| 26.3予 | 1,770,000 | 50,000 | 45,000 | 20,000 | 62.8 | 60 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 78,279 | -52,109 | -28,707 |
| 2024 | 154,461 | -71,352 | -47,224 |
| 2025 | 80,238 | -75,936 | -52,076 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 2.9% | 5.1% | 2.3% | – | – |
| 2024 | 3.2% | 5.1% | 2.4% | – | – |
| 2025 | 2.0% | 1.8% | 0.8% |
高値平均:20.0倍 安値平均:12.6倍 |
0.68倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ジェイテクトの直近の業績を数字から読み解くと、まず利益面の波が大きく、安定感にはやや欠ける印象があります。売上は1兆7,700億〜1兆8,900億円と非常に大きな規模を維持していますが、営業利益は 622億 → 384億 → 26年度予500億 と上下が激しく、25年度は大きく落ち込んでいます。営業利益率も 2.9% → 3.2% → 2.0% と低水準で推移しており、自動車部品メーカーとしては収益性がやや弱めです。特に2025年の2.0%という数字は、グローバル競争の激しいステアリング・ベアリング分野において十分とは言えない収益性です。
経常利益・純利益も同様で、2025年は純利益が 137億円 まで落ち込み、EPSも 40.4 円と前年の 117.4 円から大幅減少しています。ROEも 1.8%、ROAも 0.8% まで低下しており、資本効率はかなり弱い状態です。一般的に製造業はROE 8%前後が一つの目安ですが、それと比較すると現状の収益力は低く、企業価値の向上には課題が残っています。
一方で、株価指標を見るとやや割安感があります。2025年の実績PERは高値平均で20.0倍、安値平均で12.6倍とやや幅がありますが、PBRは 0.68倍 と1倍を下回っており、純資産価値から見れば割安に評価されています。製造業でPBR1倍割れは珍しくないとはいえ、「利益が低迷している時期」にPBRが下がるのは自然な流れで、現状は市場が同社の成長性にやや懐疑的であることを示しています。
ただし、26年3月期の予想を見ると、純利益は 200億円、EPS 62.8円 と回復見込みが示されており、営業利益も 500億円 まで戻す予想になっています。これは自動車生産の回復や、コスト削減効果、主要顧客のトヨタグループの生産拡大による恩恵が含まれていると考えられます。直近のキャッシュフローを見ると営業CFも安定してプラスを確保できており、非常に厳しい財務状況というわけではありません。
総合すると、収益性は低い(特にROE/ROA)、直近の利益は弱い、だが回復余地と割安感はあるというのが現状の評価です。
特にPBR 0.68倍は、企業価値の本質(純資産)から見ればかなり低く、今後の利益回復が実現すれば株価の見直し余地は十分あります。一方で、営業利益率2〜3%台では大きな株価上昇が期待しづらく、安定成長株というよりは“トヨタグループの生産動向に強く左右される準景気敏感株”という性格が強いです。
配当目的とかどうなの?
ジェイテクトの予想配当利回り(2026・2027年度)は3.71%と日本株の中では比較的高めで、配当目的での投資を考えるうえでも魅力がある水準です。特に現在のPBR0.68倍という割安な株価水準は、純資産価値を下回っている状態であり、株価の下値が固まりやすく利回りを確保しやすい点が強みです。
ただし、ジェイテクトは利益の変動が大きく、良い年と悪い年の差がはっきりしている企業です。過去には純利益が137億円まで落ち込んだ年もあり、毎年安定して増配を続けるようなタイプではありません。それでも、同社は業績が落ち込んだ年でも配当を大きく減らさない傾向があり、株主還元を重視する姿勢が見られます。
また、26年3月期は純利益200億円、EPS62.8円へ回復する予想となっており、配当60円という水準も無理のない範囲です。この回復が実現すれば、高めの利回りに加えて配当の持続可能性という面でも安心感が出てきます。
総合すると、ジェイテクトは利回りが高く株価も割安で、長期で保有しながら配当を受け取りたい投資家に向いている銘柄です。ただし、利益が安定しない企業であるため、毎年確実に増配するような安定高配当銘柄を求める人には向きにくい特徴があります。
今後の値動き予想!!(5年間)
ジェイテクトの現在値1,613.5円を基準に、今後5年間の値動きを予想すると、まず同社は利益の波が大きく、トヨタグループの生産計画や景気動向の影響を強く受けるため、相場次第で大きく上下する可能性があります。PBR0.68倍と割安ではあるものの、収益性が低い点を加味すると、強気・中立・弱気で見通しに大きな差が出やすい銘柄です。
良い場合は、トヨタの増産やEV・電動パワーステアリング需要の拡大が追い風となり、業績が回復基調で推移したケースです。営業利益率の改善や純利益の安定化が進めば、株価は割安放置状態からの見直し買いが入りやすく、5年後には2,300〜2,800円程度まで上昇するイメージです。景気が強い期間が続けば3,000円台に乗せる可能性も十分あります。
中間の場合は、業績が回復と停滞を繰り返しつつ、今の収益体質が大きくは変わらないケースです。営業利益率は2〜3%台のままで推移し、株価も1,400〜1,900円のレンジ内で上下する動きになりやすく、5年後の株価は1,700〜2,000円前後に落ち着く見通しです。現在値とそこまで大きく変わらず、配当を受け取りながら横ばい推移を許容するイメージです。
悪い場合は、景気後退や自動車生産調整、原材料高による利益圧迫が長引いたケースです。営業利益が再び減少し、純利益も不安定な状態が続くと、市場の評価がさらに低下し、5年後の株価は1,000〜1,300円程度まで下落する可能性があります。PBR0.5倍台まで売り込まれるシナリオも想定されます。
総合すると、ジェイテクトは割安ではあるものの、業績の安定性が低いことから、良い場合と悪い場合の差が大きい銘柄です。長期保有で配当を受け取りながら中間シナリオを想定するのが現実的で、上ブレすれば2,000円台後半までの株価見直しを狙える一方で、景気悪化局面では1,000円台への下振れリスクも残ります。
この記事の最終更新日:2025年11月14日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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