株価
富士電機とは

富士電機は、1923年に古河電気工業(富士=フジ)とシーメンスが技術提携したことをルーツとする、日本を代表する総合電機メーカーの一社です。100年以上の歴史を持ち、現在は「パワーエレクトロニクス技術」を中心に、電力、産業、半導体、流通、社会インフラなど非常に幅広い領域で事業を展開しています。特に電力インフラ向けの重電機器から、工場の自動化機器、パワー半導体、自動販売機まで扱う多様性が特徴で、単一事業に依存しない安定した事業基盤を構築しています。
富士電機の中核を担うのが「パワエレ(パワーエレクトロニクス)ソリューション事業」です。ここでは、インバータ、モーター、サーボ、各種制御機器など、工場の省エネ化・自動化に欠かせない製品を提供しています。製造業のDXが加速している現代において、FA(ファクトリーオートメーション)関連製品の需要は世界的に拡大しており、富士電機は日本の製造業の技術力を支える重要企業の1社とされています。
また「電力・エネルギーシステム事業」では、水力・地熱発電設備、変電設備、電源装置、UPS(無停電電源装置)など、エネルギーインフラを支える多様な製品を供給しています。特に地熱発電では長年の実績があり、国内外で多くのプラントに採用されています。再生可能エネルギーが世界的に重視される中、この分野は今後も注目を集める領域です。
さらに「電子デバイス事業」では、パワー半導体を中心とした部材を展開しており、自動車の電動化(EV)、鉄道、エレベーター、産業機械などの幅広い用途で需要が伸びています。特にパワー半導体は富士電機の成長を牽引する重要分野で、電力制御・変換技術の高度化が進むほど欠かせない部品です。
「食品流通事業」では自動販売機事業を展開している点も富士電機のユニークな特徴です。国内自販機市場は縮小傾向とされる一方で、富士電機は海外展開を強化しており、アジアや欧州でも販売チャネルを拡大しています。さらにコンビニ・スーパー向けの店舗ソリューションも提供し、流通業界の効率化に関与しています。
加えて、ビルや社会インフラ向けでは、受変電設備や監視制御システム、環境試験装置なども取り扱い、都市インフラの安全性・省エネ化に貢献しています。
全体として富士電機は、「電力 × 産業 × 半導体 × 流通」という多岐にわたる事業を持つことで、景気変動に強く、かつ成長領域も抱えるバランス型の総合電機メーカーです。パワー半導体やエネルギーシステムなど、今後さらに成長する分野を持つ一方で、重電系メーカーとして社会インフラを支える役割も持ち合わせています。そのため、安定性・成長性の両方を兼ね備えた企業として評価されています。
富士電機 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 1,009,447 | 88,882 | 87,811 | 61,348 | 429.5 | 115 |
| 24.3 | 1,103,214 | 106,066 | 107,822 | 75,353 | 527.6 | 135 |
| 25.3 | 1,123,407 | 117,646 | 118,759 | 92,239 | 642.7 | 160 |
| 26.3予 | 1,168,000 | 127,000 | 125,000 | 87,200 | 591.9 | 150〜160 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 116,163 | -49,498 | -77,193 |
| 2024 | 84,858 | -62,418 | -45,867 |
| 2025 | 144,920 | -63,384 | -86,246 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 8.8% | 11.8% | 5.1% | – | – |
| 2024 | 9.6% | 12.5% | 5.9% | – | – |
| 2025 | 10.4% | 13.3% | 7.0% |
高値平均:17.1倍 安値平均:10.1倍 |
2.16倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
富士電機の直近の数字を見ると、全体的に「安定成長」と「収益性の強さ」がはっきり出ており、総合電機メーカーの中でもかなり優秀な部類に入る企業であることがわかります。まず営業利益は 888億円 → 1060億円 → 1176億円としっかり増えており、営業利益率も 8.8% → 9.6% → 10.4% と、10%台へ到達するレベルにまで改善しています。総合電機メーカーで営業利益率が10%を超えてくる企業は多くなく、これは相当高い収益性です。
純利益も 613億円 → 753億円 → 922億円 と順調に伸びており、ROEも 11.8% → 12.5% → 13.3% と一貫して上昇している点が非常に評価できます。製造業でROEが13%を超えるというのは、明確に“優良企業”の領域で、資本効率の高さが際立ちます。ROAも 5.1% → 5.9% → 7.0% と改善しており、資産を効率良く利益に変えていることが数字からはっきり読み取れます。
株価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均17.1倍、安値平均10.1倍と、そこまで割高ではありません。むしろROE13%・営業利益率10%という高い収益性を考えると、PER17倍で評価されるのは自然な水準で、PER10倍台前半なら割安に近いとも言えます。PBR2.16倍は一見すると高めですが、ROEが13%もあるため、適正と言える範囲に収まります。利益成長が続く限り、PBR2倍台は維持されやすいタイプの企業です。
総合的に判断すると、富士電機は「収益性が高く、利益成長も続き、資本効率も優秀な、高品質の成長株」という評価になります。営業利益率・ROEがここまで改善している総合電機メーカーは珍しく、事業ポートフォリオの強さとパワーエレクトロニクス事業の伸びが効いています。
また、景気循環や為替の影響は受けるものの、電力インフラ・FA・パワー半導体といった成長領域を複数持っているため、企業としての安定感も強いです。
結論としては、富士電機は“長期成長と安定収益の両方を狙える優良銘柄で、業績指標から見ても買いを検討できる水準”という評価になります。割安株ではないものの、割高すぎる水準でもなく、成長性を考えれば納得できるバリュエーションです。長期投資との相性が非常に良いと言えます。
配当目的とかどうなの?
富士電機の予想配当利回り(2026・2027年度)は1.51%と、日本株の中では低めの水準です。利回りだけを目的に投資する場合、高配当株と比べるとどうしても魅力は弱く、配当収入を主目的とした投資には向いていません。1.5%台というのは「安定はしているが、配当で稼ぐ銘柄ではない」という位置づけです。
ただし、富士電機は利益成長が非常に堅調で、営業利益率は10%超、ROEは13%程度と、総合電機メーカーの中でもトップクラスの収益性を誇っています。利益が安定して増えているため、減配の可能性は低く、むしろ中長期的には「配当金の上昇が見込める成長型の企業」です。実際に、配当はここ数年でしっかり増えてきており、企業としての成長力が配当政策に反映されています。
利回りは低くても、成長企業にありがちな「無配・微配」ではなく、しっかり利益に応じて毎年増配を行う傾向が出ているため、安定感は十分にあります。また、EPSが毎年増えてきている点から見ても、今後の増配余地はまだ残されています。
総合すると、富士電機は「配当利回りは低いが、業績とともに増配していくタイプの成長配当株」という位置づけになります。
高配当目的だけで選ぶ銘柄ではありませんが成長とともに配当も伸びていく企業を長期で持ちたい人にとっては相性が良い企業です。配当よりも、業績と株価の成長を重視するタイプの投資家向けと言えます。
今後の値動き予想!!(5年間)
富士電機の現在値10,540円を基準にすると、同社は収益性・成長性共に改善傾向が明らかで、ファクトリーオートメーション・パワー半導体・エネルギーインフラ等の成長領域を抱えるため、中期的には堅調な上昇が期待できます。ただし、すでにある程度市場で評価されている大型電機株であるため、「大化け」を狙うには成長加速が不可欠という側面もあります。
良い場合
FA・パワー半導体・再生可能エネルギー関連で想定以上の需要拡大と収益改善が実現し、営業利益率・ROEともにさらに向上するケースです。このシナリオでは、5年後に株価は15,000〜18,000円、さらに成長が急加速すれば20,000円超も視野に入る可能性があります。成長トレンドが明確になった場合、株価は現在値の1.5〜2倍程度となる展開が期待できます。
中間の場合
成長は続くが急拡大ではなく、営業利益率が10〜11%程度、ROE13〜14%程度で横ばい又は緩やかな改善というケースです。この場合、株価は5年後に12,000〜14,000円程度に落ち着く可能性が高く、現在値10,540円からはプラス成長が見込まれるものの、爆発的な上昇には至らないという見通しです。安定成長株として保有する価値は十分ですが、短期間で劇的な収益にはならないという性格です。
悪い場合
世界景気の後退、設備投資の縮小、為替の逆風、成長領域の競争激化などが重なり、収益成長が停滞もしくは減速するケースです。この場合、株価は現在値を下回る可能性があり、5年後には8,000〜10,000円程度、最悪の場合7,000円台前半まで下振れる可能性も考えられます。ただし、業績基盤が完全に崩れるわけではないため、暴落とはならず「調整局面」での低めのレンジに留まる可能性が高いです。
総じると、富士電機は「中長期で見ればプラスリターンが期待できるが、現状は成長期待を織り込まれつつあるため、さらなる成長材料が重要」という銘柄です。現在値10,540円という出発点は悪くなく、特に安価で拾える時期であれば検討価値があります。長期保有前提で“成長+安定”という観点で保有するのが適しており、配当目的だけではなく、株価の上昇余地も視野に入れた投資スタンスが合っています。
この記事の最終更新日:2025年11月14日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す