株価
三菱重工業とは

三菱重工業は、日本を代表する「総合重工メーカー」であり、その事業範囲は非常に広く、エネルギー、防衛、航空宇宙、船舶、交通システム、空調機器、産業機械など多岐にわたります。創業は1884年と歴史が長く、日本の近代化を支え続けてきた企業の一つです。本社は東京都千代田区丸の内に構え、三菱グループの中でも中心的な役割を果たしています。
同社の最大の柱は「エネルギー関連事業」です。火力発電用のガスタービンやボイラー、原子力発電設備、水素・アンモニア混焼に対応した次世代発電システムなど、世界的に高いシェアと技術力を持っています。特に大型ガスタービンは、米GEや独シーメンスに並ぶ世界トップレベルの技術を誇り、脱炭素社会に向けた水素ガスタービンの開発でも先陣を切っています。
次に大きいのが「航空宇宙・防衛システム」です。航空機向けエンジンの部品製造、宇宙ロケット(H-IIA/H3)開発、ミサイル・護衛艦・潜水艦などの防衛機器の製造を行っており、日本の防衛産業の中心的存在となっています。防衛分野は政府予算に支えられるため景気変動の影響を受けにくく、企業の収益を安定させる役割があります。特に潜水艦・護衛艦の技術は世界的にも評価が高く、国内では圧倒的シェアを持ち、安全保障上欠かせない企業です。
また、三菱重工は「産業機械」「冷熱・空調機器」「輸送システム」などの生活に近い分野も強く、ビル用大型空調、ターボ冷凍機、エレベーター向け機器、鉄道車両の製造、トラック用冷凍ユニットなど、幅広い産業を支える製品を供給しています。特に空調機器や冷凍機は省エネ技術に強みがあり、業務用空調では世界シェア上位です。
近年では「脱炭素・カーボンニュートラル」を主軸にした成長戦略を打ち出しており、水素発電・CCUS(二酸化炭素回収)・カーボンフリー燃料など新しい技術開発に積極的です。また、海外インフラ、アジア・中東への大型プラント輸出も増えており、グローバル企業としての存在感も大きくなっています。
事業領域が広いため業績が一点に偏らず、エネルギーや防衛など“国の基盤産業”を支えるビジネスが中心のため、不況でも大きく落ち込みにくいという特徴があります。航空産業の波、自動車市場の波など、複数セクターの動きが分散することで、総合重工としての安定性が強い企業です。
総合すると、三菱重工業は「エネルギー」「防衛」「航空宇宙」という国家レベルの重要分野を支える、日本の産業インフラの中核企業であり、世界的にも“技術の三菱”として高い評価を得ている企業です。脱炭素・エネルギー転換が進む中で、今後も長期的に成長が期待される日本の代表的な重工メーカーです。
三菱重工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 一株当り配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 4,202,797 | 193,324 | 191,126 | 130,451 | 38.8 | 13 |
| 2024/3 | 4,657,147 | 282,541 | 315,187 | 222,023 | 66.1 | 20 |
| 2025/3 | 5,027,176 | 383,198 | 374,531 | 245,447 | 73.0 | 23 |
| 2026/3(予想) | 5,400,000 | 420,000 | 400,000 | 260,000 | 77.4 | 24 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023/3 | 80,888 | -45,575 | -18,902 |
| 2024/3 | 331,186 | -131,048 | -158,903 |
| 2025/3 | 530,459 | -187,714 | -114,123 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | 実績PER(高値平均) | 実績PER(安値平均) | 実績PBR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 4.5% | 7.4% | 2.3% | – | – | – |
| 2024/3 | 6.0% | 9.8% | 3.5% | – | – | – |
| 2025/3 | 7.6% | 10.4% | 3.6% | 25.6倍 | 11.4倍 | 5.63倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
三菱重工業の直近3年間の業績推移を見ると、売上高・営業利益・経常利益・純利益のすべてが右肩上がりで成長しており、収益性の改善が鮮明です。特に営業利益は 1,933億円 → 3,831億円 → 4,200億円(予想) とほぼ倍増ペースで伸びており、営業利益率も 4.5% → 6.0% → 7.6% と改善が続いています。大型プラント・エネルギー・防衛の各分野で大型案件が進み、利益率が安定して高まっている点はプラス材料です。
ROEは 7.4% → 9.8% → 10.4% と、10%を超える水準に乗せており、重工メーカーとしては十分高い水準です。ROAも 2.3% → 3.5% → 3.6% と改善しており、資産効率の改善が継続しています。財務・収益の効率性は着実に強まっていると判断できます。
一方で、株価指標を見ると割高感は否めません。2025年の実績PBR 5.63倍 は明らかに高水準で、製造業としてはかなり“期待先行”の価格帯です。PERも実績ベースで 高値平均25.6倍 と重工メーカーとしてはかなり高めで、株価が将来の成長を織り込み済みであることを示しています。市場が大型防衛需要やエネルギー分野の成長期待を相当程度織り込んでいる状態という評価になります。
総合的に判断すると、「業績は非常に好調で長期的には成長期待があるが、株価指標はすでに高めで、押し目待ちが妥当」という結論になります。現在のPBR5倍台・PER20倍台では積極的に買い増すよりも、調整局面を狙った方がリスクが低いと考えられます。
ただし、業績は安定して改善しているため、長期保有目的であれば一定の強さがあります。防衛関連・エネルギー関連のテーマ性が強く、中長期の成長シナリオには魅力があります。
配当目的とかどうなの?
三菱重工業の予想配当利回りは 2026年3月期で0.57%、2027年3月期も0.57% と、重工メーカーとしてはかなり低い水準です。一般的に、日本株で高配当を目的にする場合は 3〜4%以上が1つの目安 とされており、0.5%台はインカムゲイン狙いとして物足りない水準と言えます。
また、三菱重工は近年大幅な利益成長を達成していますが、依然として設備投資や研究開発が大きな企業であり、利益を内部留保しやすい傾向があります。防衛・エネルギー・大型インフラなど、成長投資が欠かせない事業構造のため、配当増加よりも事業投資を優先している点も、利回りの低さに表れています。
PBR5倍台、PER20倍台とすでに市場の期待が高く、株価が割高圏にあるため、利回りがさらに低く見えるという側面もあります。株価が急上昇した分、配当利回りが押し下げられている形です。
総合的に見ると、三菱重工業は「配当目的」で買う銘柄ではないという評価になります。ただし、業績は力強く改善しており、成長性は高いため、「株価成長を狙う長期保有」 なら十分選択肢に入る銘柄です。インカムゲインではなく、キャピタルゲイン重視の投資対象と言えるでしょう。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在株価4,174円を起点にして三菱重工業の今後5年間の値動きを考えると、今の同社は業績が極めて好調で、営業利益も利益率も年々改善しています。一方で、すでにPBR5倍台・PER20倍台と割高感が強いため、このまま真っ直ぐ上がるというよりは、今後の業績や市場環境によって大きく分かれる銘柄と言えます。
まず、良いシナリオでは、防衛関連の受注が継続して増えたり、エネルギー分野での大型案件、原子力・水素などの成長領域が順調に進むケースです。その場合は成長期待が継続し、株価も引き続き高く評価され、5年後には6,500円から8,200円あたりまで上昇する可能性があります。市場が「日本を代表する防衛・インフラの成長企業」と評価する流れが続けば、この展開は十分あり得ます。
次に、中間シナリオでは、業績は堅調に伸びる一方で、今のような割高感が薄まり、適正なバリュエーションに戻っていくケースです。重工メーカーとして本来のPER・PBR水準に落ち着くと、株価は4,500円から5,300円のレンジに収まると考えられます。これは最も現実的なパターンで、業績が良くても株価が一定の水準で落ち着く典型的な銘柄の動きです。
逆に、悪いシナリオでは、防衛・プラント案件の遅延や採算悪化、世界景気の減速、為替の円高などが重なるケースです。今の株価が期待先行で買われている面もあるため、何か悪材料が出ると株価が下落しやすく、3,100円から3,800円まで調整する可能性があります。特に、現在のPBR5倍台は製造業としてはかなり高いため、過熱感の反動が出ると下値余地もそれなりにあります。
総合的に見ると、三菱重工業は「業績の力強さ」と「株価の割高さ」が共存している状態で、今の価格帯では上にも下にも振れやすい銘柄になっています。長期的に成長力は高いものの、5年間での株価は6,500円~8,200円の強気シナリオから、3,100円~3,800円の弱気シナリオまで幅のある動きが想定されます。最も確率が高いのは4,500円~5,300円前後の中間シナリオで、過度に悲観・楽観するのではなく、押し目を狙いながら長期で保有するスタンスが無難と言えるでしょう。
この記事の最終更新日:2025年11月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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