株価
太陽誘電とは

太陽誘電株式会社は、日本を代表する電子部品メーカーの一つで、特にスマートフォン・パソコン・自動車・産業機器などのあらゆる電子機器に使われる「マルチレイヤーセラミックコンデンサ(MLCC)」の大手として知られています。1950年創業という長い歴史を持ち、セラミック技術をコアにして世界中の電子機器メーカーへ部品を供給している企業です。本社は東京都中央区京橋にあり、製造拠点は日本だけでなくアジア各国にも展開するグローバル企業でもあります。
太陽誘電の事業の中心となるのが、電子回路の基本中の基本である「受動部品」。特にMLCCはスマホ1台に数百〜数千個使われるほど大量需要がある部品で、同社の売上の大部分を占めます。スマートフォン・タブレットはもちろん、EVなどの車載用途でも使われる重要部品であり、これらの市場拡大が直接太陽誘電の成長につながっています。MLCCの他にも、インダクタ(コイル部品)、高周波デバイス、アルミ電解コンデンサ、通信モジュールなどの製品群を持ち、電子部品メーカーとして非常に多様なラインナップを形成しています。
同社の特徴は「小型化・高容量化・高信頼性」の3点で、特にスマートフォンやノートPCのようなスペースが限られた機器向けに強い技術力を持っています。また、車載向けでは高温・高負荷環境に耐えられる高信頼性部品が求められますが、太陽誘電はここでも存在感を高めており、EV化によって電子部品の搭載点数が増える中で、長期的な成長ドライバーになっています。
さらに太陽誘電は、IoTや5Gといった中長期の通信インフラの進化にも深く関わっています。5G機器では高周波特性の優れた部品が求められますが、同社は高周波デバイスやアンテナ関連部品にも強みがあり、スマート家電・ウェアラブルデバイス・基地局など幅広い用途で採用が期待されています。
生産面では海外拠点の比率が高く、アジア(特に中国・フィリピン・マレーシア)に大規模な工場を持ち、需要変動に応じた柔軟な供給体制を築いています。また、品質管理・供給の安定性で定評があり、世界中の大手メーカーからの信頼が厚いことも強みです。
総合すると太陽誘電は、スマートフォン需要に加え、自動車の電子化、再エネ、5G、IoTといった中長期の成長テーマに直結する部品を多数手がけており、電子部品メーカーの中でも「成長市場の中心にいる企業」と言えます。MLCC大手としての技術力と、幅広い受動部品を一括で提供できるバランスの良さを併せ持つ企業で、景気変動の影響はあるものの、中長期での成長期待が高い銘柄となっています。
太陽誘電 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 319,504 | 31,980 | 34,832 | 23,216 | 186.3 | 90 |
| 24.3 | 322,647 | 9,079 | 13,757 | 8,317 | 66.8 | 90 |
| 25.3 | 341,438 | 10,459 | 10,517 | 2,328 | 18.7 | 90 |
| 26.3予 | 340,000 | 16,000 | 15,000 | 8,000 | 64.0 | 90 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 39,460 | -60,438 | 14,485 |
| 2024 | 51,104 | -82,793 | 37,647 |
| 2025 | 33,941 | -63,527 | 3,048 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 10.0% | 7.3% | 4.6% | – | – |
| 2024 | 2.8% | 2.5% | 1.4% | – | – |
| 2025 | 3.0% | 0.7% | 0.4% | 高値 125.7倍 安値 59.8倍 |
1.29倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
太陽誘電の直近の数字をじっくり眺めていくと、「事業としてのポテンシャルは高いのに、直近の利益面がガクッと落ちている」という、典型的な“電子部品メーカーの景気循環に直撃されたケース”であることが分かります。まず業績面では、2023年は売上3,195億円・営業利益319億円と健全でしたが、翌2024年は営業利益が90億円まで急減し、2025年は104億円と微増に留まっています。営業利益率に直すと 10.0% → 2.8% → 3.0% という推移で、電子部品メーカーとしては厳しい水準です。本来であれば、太陽誘電ほどの規模の企業なら営業利益率10%前後を安定的に確保したいところです。
ROEの推移を見ると、7.3% → 2.5% → 0.7% とさらに深刻で、会社の稼ぐ力そのものが落ちてきています。同じくROAも 4.6% → 1.4% → 0.4% とほぼ“資産を活かしきれていない状態”。一時的な市況悪化というより、スマホ需要の減退や在庫調整の長期化、車載向けMLCCの本格回復が遅れているなど、複数要因の悪化が重なっていることが数字から読み取れます。
一方でPERを見ると、2025年の高値平均は125.7倍、安値平均でも59.8倍と、利益が大きく落ちているにもかかわらず“株価はそこまで下がり切っていない”状態です。これは市場が太陽誘電の将来性、つまり車載用途向けMLCC需要の回復や5G通信機器関連の再拡大を織り込んでいる証拠でもあります。しかし同時に、「利益水準が低い間はPERが割高に見える」ので、投資タイミングとしては慎重になるべきだとも言えます。PBRは1.29倍で資産価値ベースでは割安感は薄く、中途半端な評価に落ち着いています。
投資判断として総合すると、太陽誘電は“短期で勝ちに行く銘柄ではない”というのが率直な印象です。業績底打ちのサイン、例えば受注回復や営業利益率の5〜8%台への改善、ROEが5%前後まで戻る兆しが見えるまでは、積極的に買い向かう理由は弱めです。ただし長期で見ると、車載向け電子部品・高周波部品の需要は中期的には伸びるため、構造的な追い風は確かにあります。つまり、「業績回復が始まったタイミングで乗る銘柄」であり、今は“監視しながら押し目で拾う準備をしておく”フェーズと言えます。
総じて、太陽誘電は今は我慢の時期であり、改善の兆しが出てくれば評価が見直される余地は大いにあります。現時点では割高・低収益・低ROEが並んでしまっているため強気にはなりづらいものの、業界テーマとしての伸びしろは大きく、反転局面を狙う中長期投資家には魅力が残っている、そんなポジションの銘柄です。
配当目的とかどうなの?
太陽誘電を配当目的で考える場合、まず最初に押さえておきたいのは「利回りはそこそこ良いが、業績の安定性が弱い」という点です。予想配当利回り(2026・2027年度)は約2.67%と、決して悪い水準ではありません。むしろ日本株の中では平均以上ですが、だからといって“安心して長期で持てる高配当株”というタイプではありません。
最大の理由は、ここ数年の利益水準の落ち込みです。営業利益は2023年の319億円から急減し、2024年は90億円、2025年も104億円と低迷したままです。純利益も同じく大きく下がり、ROE・ROAも低調で、企業としての稼ぐ力が弱まっている状況です。本来、配当株は利益が安定しているからこそ安心して長期保有できるのですが、太陽誘電は市況に左右されやすい電子部品メーカーで、スマホ需要や車載MLCC、在庫調整といった外部環境の影響を強く受けるため、どうしても利益がブレやすい特徴があります。
それでも配当が90円という一定額で維持されているのは企業努力によるものですが、業績が弱い中で配当を維持しているため、配当性向は高くなりやすく、今後さらに業績が悪化した場合は“減配リスクがゼロではない”という状態です。つまり、今後の配当が強固に守られるタイプの企業ではありません。
配当目的で買うなら、本来は収益が安定している電力、通信、インフラ、高配当ETF、あるいは安定利益を出す製造業の大企業などが向いています。それらと比べると、太陽誘電はどうしても“波の激しい銘柄”に該当し、配当の安全性という観点ではやや不安があります。
ただし、太陽誘電には明確な強みもあります。車載向けMLCCの需要はEV・自動運転の普及で中長期的には伸びる可能性が高く、5Gや高周波部品の市場拡大も追い風です。つまり「今は悪いが、中期で回復の可能性を秘めている」銘柄です。そのため、業績が底打ちして改善局面に向かうタイミングなら、配当を受け取りつつ株価の反発も狙えるというメリットがあります。
まとめると、太陽誘電は“配当だけを目的として選ぶには弱いが、業績回復も込みで狙うなら悪くない選択肢”という位置づけです。安心して長期で配当を受け取りたい投資家向きではなく、景気循環を理解し、業績の反転を待ちながら保有できる中長期投資家向けの銘柄です。
今後の値動き予想!!(5年間)
太陽誘電の株価は現在3,368円ですが、今後5年間を考えるうえでは、電子部品の市況回復がどの程度進むかでシナリオが大きく変わります。業績はまだ弱いものの、車載向けMLCCの成長性や5G関連の需要回復が本格化するタイミング次第で株価の見通しは大きく分かれます。
【良い場合】
世界的に半導体需要が回復し、EV・自動運転分野でMLCCの使用量が増加。スマホ向けの在庫調整も終了し、営業利益率が5〜8%台へ戻り、ROEも5%前後まで改善していくと、市場の評価が一気に上向く可能性があります。この場合、PERが正常化しつつ業績回復が進むため、株価は 5,500円〜7,000円台 を狙える展開となります。特に海外投資家が電子部品セクターに資金を戻したタイミングが重なると、サプライズ的な急騰もありえます。
【中間の場合】
車載向けの需要は伸びるものの、スマホ市場や通信機器向けの回復が鈍く、業績もジワジワとしか戻らないパターンです。市場評価も割安ではないが割高でもない中途半端な位置に落ち着きやすく、株価は 3,600円〜4,300円台 のレンジで推移していく可能性が高くなります。配当を受け取りながらも、株価の上昇余地は限定的で、どちらかというと保ち合い相場の中で時間をかけて少しずつ持ち直す動きになるでしょう。
【悪い場合】
スマホ需要の低迷が長引き、車載向けも期待したほど伸びず、在庫調整が再び重荷になると、業績の回復が遅れ、利益率も低水準が続きます。この場合、投資家の評価が下がりPERが縮むことで、株価は 2,400円〜3,000円台 の安値圏で推移する展開が考えられます。特に営業利益が再び減少に転じた場合は、電子部品セクター全体が売られる局面で一緒に下押しされる可能性があります。
総合すると、太陽誘電は今が「業績回復前の谷」のタイミングに近く、景気次第で戻す余地は大きいものの、同時に下振れリスクも残っています。5年スパンで見れば上昇の芽はあるものの、短期では市況に左右されやすい銘柄なので、押し目や業績改善の兆しを確認したうえで投資するのが賢明です。
この記事の最終更新日:2025年11月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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