株価
川崎重工業とは

川崎重工業株式会社は、1896年に創業した日本を代表する総合重工メーカーであり、兵庫県神戸市に本社を構える企業です。造船から始まり、鉄道車両、航空機、発電設備、産業用ロボット、そして世界的に有名な二輪車「Kawasaki」ブランドまで、陸・海・空のあらゆる領域をカバーする技術力を持つことで知られています。三菱重工・IHIと並ぶ「日本三大重工」の一角であり、日本のものづくりを支える重要企業として長い歴史を持っています。
同社の事業は大きくいくつかの分野に分かれています。まず「モーターサイクル&エンジン事業」は、一般ユーザーにも馴染みの深い分野で、NinjaシリーズやZシリーズなど世界的に人気の高いスポーツバイクを製造しています。二輪車だけでなく、ジェットスキーなどの水上バイクやATV(四輪バギー)、産業用エンジンなど幅広く展開しており、北米や欧州を中心に強いブランド力を持っています。
「航空宇宙システム事業」は、防衛・民間の双方で日本の航空産業を支える中核領域です。自衛隊向けのP-1哨戒機やC-2輸送機、各種ヘリコプターの開発・製造を手掛けているほか、ボーイング向けの大型民間航空機部品の製造も行っています。長年にわたり航空宇宙技術の蓄積が進んでおり、日本の防衛産業にも深く関わる重要事業となっています。
「エネルギーソリューション&海洋事業」では、発電用ガスタービン、圧縮機、プラント設備などを提供し、世界中のエネルギーインフラを支えています。さらに、川重の原点とも言える造船分野では、LNG運搬船や潜水艦の建造を行っており、日本の造船技術の根幹を担う存在です。特に潜水艦の製造では長年の実績を持ち、高い技術が評価されています。
「精密機械・ロボット事業」では、産業用ロボットや油圧機器を開発・製造し、製造業の自動化・省人化を支える役割を果たしています。自動車メーカーや電子部品メーカーなどに幅広く採用されており、今後の労働力不足社会においてさらに重要性が増す分野です。
鉄道車両事業では、新幹線用車両や国内外の都市交通向け車両を製造しています。日本国内ではもちろん、アメリカやアジアの鉄道向けにも輸出しており、軽量で高性能な車両づくりに強みがあります。新幹線の先頭形状の設計など、空力技術の高さは航空宇宙部門との技術融合によるものです。
川崎重工は、これら多岐にわたる事業を横断的に支える研究開発力を持ち、次世代技術として水素エネルギー関連にも積極投資しています。世界初となる液化水素運搬船の開発・建造を進めるなど、脱炭素に向けた取り組みでも先駆的な企業です。また、航空宇宙・防衛分野の需要拡大や、インフラ関連投資の盛り上がりにより、中長期的な成長期待が高まっています。
重工メーカーは景気に左右されやすい側面もありますが、川崎重工は防衛・エネルギー・鉄道・ロボットなど、各分野で安定した収益源を持つのが特徴です。さらに、「Kawasaki」ブランドの二輪車が世界的に安定した収益を生み出しており、同社の業績を下支えしています。日本国内だけでなく海外比率が高い企業であるため、グローバル市場の影響も受けやすい一方、世界規模での成長機会も多いのが同社の強みです。
川崎重工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 1,725,609 | 82,355 | 70,349 | 53,029 | 316.6 | 90 |
| 2024/3 | 1,849,287 | 46,201 | 31,980 | 25,377 | 151.5 | 50 |
| 2025/3 | 2,129,321 | 143,123 | 107,518 | 88,001 | 525.4 | 150 |
| 2026/3(予) | 2,290,000 | 145,000 | 115,000 | 82,000 | 490.6 | 150 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023/3 | 23,617 | 42,213 | 85,305 |
| 2024/3 | 31,662 | 43,585 | 12,911 |
| 2025/3 | 148,943 | 70,498 | 9,605 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023/3 | 4.7% | 9.2% | 2.1% | ― | ― |
| 2024/3 | 2.4% | 4.0% | 0.9% | ― | ― |
| 2025/3 | 6.7% | 12.5% | 2.9% | 高値平均:21.1倍 安値平均:10.5倍 |
2.31倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
川崎重工業は、直近3年間の業績と各種指標を見る限り、確実に利益体質が回復しつつある企業と言える。まず利益面では、2024年に一度大きく落ち込んだ営業利益・経常利益が、2025年には大幅に改善し、営業利益は1,431億円、経常利益は1,075億円、純利益は880億円まで回復している。営業利益率も 2.4% → 6.7% と倍以上改善しており、事業収益性がしっかり戻ってきていることが分かる。
株主資本利益率(ROE)は 4.0% → 12.5% と急改善しており、企業が資本を効率的に使い始めていることを示す。ROEが10%を超えてくると一般的には“投資対象として魅力的”と評価されるため、2025年の数字は十分に合格点と言える。ROAも0.9% → 2.9%と改善し、資産運用効率も明確に良化している。
株価指標を見ると、2025年度の実績PERは「高値平均21.1倍、安値平均10.5倍」で推移している。機械・重工セクターとしてはPER10〜15倍が妥当ラインになるため、安値圏では割安、水準訂正が入った高値圏ではやや割高という評価になる。PBRは2.31倍とやや高めだが、利益回復局面では成長期待を織り込んだ水準として受け入れられやすい。特に川崎重工は防衛・航空機・エネルギーなど、中長期で需要が増えやすい分野を多く抱えており、投資家が評価を高めている背景がある。
総合すると、2024年の落ち込みから2025年にかけての急回復は非常に強いポイントであり、収益性・効率性の改善が数字に表れている。ROEや営業利益率の改善幅も大きく、構造改革や需要回復がしっかり成果につながっていると評価できる。割安と感じられるPER10〜12倍台の局面で仕込むことができれば、中期的には十分にリターンが期待できる銘柄といえる。
ただし、重工業は為替動向、海外需要、防衛政策など外部要因の影響も大きく、株価の振れ幅が大きくなる可能性は残る。それでも、直近の業績回復スピードと指標の改善を踏まえると、「中期で狙いたい優良リカバリー銘柄」という評価が妥当だろう。
配当目的とかどうなの?
川崎重工業を配当目的で考える場合、現在の利回り水準はそこまで高くはなく、純粋な配当狙いの銘柄とは言い切れない。予想配当利回りは 2026年3月期で1.42%、2027年3月期も1.42%とほぼ横ばいで推移しており、日本株の中では“平均よりやや低め”の水準になる。高配当株として人気の銘柄が3〜5%、一部の超高配当セクターで5〜7%に達することを考えると、川崎重工は明確にキャピタルゲイン(値上がり)重視の企業という位置付けになる。
ただし川崎重工の特徴は、配当の絶対額よりも“業績改善に伴う配当の増額余地”にある。実際、利益が急回復しており、2025年には純利益880億円(百万円換算:88,001)まで大きく伸びている。利益水準がこのまま維持されるか、あるいは増加するなら、将来的に配当の引き上げが行われる可能性は十分ある。現状の利回りが1.4%台とやや物足りないのは事実だが、業績が伸びれば配当性向を維持しながら自然と配当が増えていくビジネスモデルになっている。
また、川崎重工は業種的に景気循環や防衛関連需要の変動を受けやすく、利益が年ごとに大きく上下することがあるため、配当を急激に引き上げない“慎重型”の政策を取っていると見られる。そのため、安定して毎年同じ配当を受け取る「高配当目的」という観点では強みは弱めだが、業績サイクルに合わせて将来の増配が期待できる“中長期育成型”の配当銘柄という評価が近い。
まとめると、川崎重工業は配当利回りそのものは低く、配当に魅力を求めて買うタイプではないものの、業績の急回復と事業の拡大を背景に、将来的な増配余地は十分にある銘柄と言える。今の段階では「配当狙い一本では弱いが、値上がり益+将来の増配を期待したい投資家向け」のポジションと考えるのが妥当だろう。
今後の値動き予想!!(5年間)
川崎重工業(7012)の現在値10,535円から、今後5年間の値動きをシナリオ別に予想すると次のようなイメージになる。
まず「良い場合」では、防衛関連の需要拡大や航空機需要の本格回復、水素関連事業の成長などが追い風となり、業績が順調に伸び続けるケースだ。営業利益率がさらに改善し、ROEも10%台を維持できれば、機械株としてPER18〜22倍程度がついてもおかしくない。その場合、株価は およそ15,000〜18,000円 のレンジまで上昇する可能性がある。特に国防強化やインフラ投資が世界的に続けば、株価が高値を更新し続ける展開も十分考えられる。
次に「中間の場合」は、業績が堅調に推移するものの急拡大まではいかない、現実的な成長シナリオだ。営業利益は横ばい〜微増、ROEも10%前後をキープしながら安定成長していくイメージになり、PER水準も12〜16倍程度で落ち着くと考えられる。この場合、株価は 11,000〜13,500円前後 を中心に推移し、現在値よりややプラス圏で推移する可能性が高い。大きく崩れないが爆発的な伸びもない、「堅実だが控えめな株価推移」になるパターンである。
最後に「悪い場合」は、防衛予算縮小・為替の逆風・航空機分野の失速・水素事業の遅れなどが重なるケースだ。特に重工業は設備投資や景気動向に左右されやすく、外部要因が悪化すると利益が一気に細りやすい。営業利益率が低下し、ROEも5%前後に落ち込んでくると、市場は割高感を意識しPERも8〜10倍程度まで下がる可能性がある。その場合、株価は 8,000〜9,500円 のゾーンまで調整し、現在値から20%〜30%下落するシナリオも想定される。
総合すると、川崎重工の株価は事業の特性上、波が大きくなりやすいが、業績が中期的に改善トレンドに乗っていることを考えると、「中間〜良いシナリオ寄り」の推移をしやすい企業と言える。5年間という長期で見れば、現在値を起点に上昇する余地は十分にあるものの、悪いシナリオでは大きめの調整も起こり得るため、投資判断としてはリスクとリターンの振れ幅を理解した上での中期保有が向いている銘柄だと言える。
この記事の最終更新日:2025年11月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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