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日産自動車(7201)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

日産自動車とは

日産自動車は、1933年の創立以来、日本の自動車産業を支えてきた世界有数のグローバルメーカーであり、国内外で幅広いブランド力と技術力を誇る企業である。本社は横浜市西区に構え、日本・北米・欧州・中国・アジア・中東など世界160以上のマーケットで事業を展開している。自動車メーカーとしては珍しく、早い段階から「グローバル共創」を重視し、ルノー・三菱自動車とともに「日産・ルノー・三菱アライアンス」を形成。開発・生産・調達・技術基盤をグローバルで共有することで効率化を進め、世界的な競争力を高めてきた点が特徴的だ。

取り扱う車種は多岐にわたり、乗用車、SUV、ミニバン、軽自動車、商用車、スポーツカーなどフルラインアップを展開している。国内では「ノート」「セレナ」「エクストレイル」「ルークス」などの人気車種が安定した販売を支えており、海外では北米の「ローグ」「パスファインダー」、欧州のコンパクトカー、中国の合弁事業モデルなど、地域ごとに最適化したモデルを展開している。長年培ってきたグローバル販売網と生産拠点は、日産の強みのひとつと言える。

特に近年の注目は電動化戦略だ。日産は2010年に世界初の量産EV「日産リーフ」を発売し、EV普及の先駆者として世界的な地位を築いた。その後も独自技術「e-POWER」、四輪統合制御技術「e-4ORCE」などを積極的に投入し、ガソリン車とEVの中間的な電動技術から完全EVまで幅広い電動化ラインを構築している。長期戦略「Nissan Ambition 2030」では、2030年代の主力モデルの大部分をEV化することを宣言し、バッテリー技術、ソフトウェア開発、次世代モビリティに重点投資を行っている。

先進安全技術の分野でも積極的で、運転支援システム「プロパイロット」を中心に、自動運転に向けたAI技術やセンシング技術の研究を続けている。自動ブレーキや高速道路での半自動運転支援はすでに実用化されており、今後は完全自動運転レベルの技術開発にも取り組んでいく方針だ。安全性・快適性・利便性を高めるソフトウェア領域の強化も日産の大きなテーマとなっている。

また、アフターサービスや金融サービスも重要な収益源のひとつで、日産ファイナンスではローン、リース、保証プランなど多様な商品を提供し、販売後の顧客フォロー体制を強化している。これにより、自動車販売後の長期的な関係構築と収益安定化を図っている。さらに「NISMO」ブランドによるモータースポーツ参戦も行っており、レースで培った技術を市販車へフィードバックすることで、走行性能の向上に役立てている。

総合的に見ると、日産自動車は“電動化のパイオニア × グローバルメーカー”という独自の存在感を持ち、従来型の自動車メーカーから「電動化・知能化を軸にしたモビリティ企業」へ進化しつつある。世界の自動車市場が大きく変化する中で、電動化・自動運転・ソフトウェア化という3つの成長分野に積極的に投資しながら、日産独自の技術で競争力を高めている企業である。

日産自動車 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益(円) 一株配当(円)
2023/3 10,596,695 377,109 515,443 221,900 56.7 10
2024/3 12,685,716 568,718 702,161 426,649 110.5 20
2025/3 12,633,214 69,798 210,168 -670,898 -187.1 0
2026/3(予) 12,100,000 -190,000 -150,000 -240,000 -68.7 0

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

年度 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023/3 1,221,051 -447,041 -670,607
2024/3 960,899 -812,664 -131,551
2025/3 753,687 -971,227 263,251

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER(実績) PBR(実績)
2023/3 3.5% 4.3% 1.2%
2024/3 4.4% 7.1% 2.1%
2025/3 0.5% -13.6% -3.6% 高値平均:8.3倍
安値平均:5.7倍
0.28倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

日産自動車の直近3年間の指標と業績推移を見ると、明確に“改善 → 伸長 → 一転して急悪化”という動きになっており、投資判断としてはかなり慎重に見なければならない局面にある。まず営業利益は、2023年に3771億円、2024年には5687億円へ拡大して収益体質が明確に強化されたが、2025年には697億円と大幅に縮小しており、営業利益率も4.4%から0.5%まで落ち込んでいる。自動車メーカーの営業利益率として0.5%は極めて低く、実質的に利益がほとんど出ていない状態に近い。経常利益・純利益も同様で、2025年の純利益は▲6708億円と巨額の赤字に転落している点は非常に重い。

効率性の指標であるROEは4.3% → 7.1%と改善した後、2025年には▲13.6%まで急落しており、資本効率が大幅に悪化している。ROAも2025年に▲3.6%となり、総資産を使って利益を生む能力が著しく低下しているのが分かる。このように、利益率・ROE・ROAが軒並み急落する形になっている企業は、短期的な収益ショックを受けている可能性が高く、市場評価も慎重にならざるを得ない。

株価指標でも同じ傾向が出ており、2025年の実績PERは高値平均8.3倍、安値平均5.7倍という水準で、自動車業界としては「割安だが業績不振を織り込んだ低評価レンジ」で推移している。過去のトヨタやホンダのように安定的に5〜8倍で推移する割安とは異なり、日産の場合は純利益がマイナスのため、本来PER(株価収益率)は正常に算出できない状況で、あくまで株価の平均的なレンジから“見かけ上”計算された目安に過ぎない。PBRは0.28倍と極めて低く、これは市場が「事業価値が大きく毀損している可能性」や「将来の収益回復が見通せない」と考えているときに出る典型的な水準である。

総合的に判断すると、日産は2024年までは堅調に改善していたが、2025年に入り大規模な損失計上や収益性の崩れが発生しており、中期的には“再建フェーズ”に入っていると見る方が妥当である。EVシフト、電池投資、海外事業の調整、原価高騰など構造的課題も多く、直近の赤字転落は一時的なものか構造的な悪化かを見極める必要がある。

投資判断としては、少なくとも利益が正常化し、ROEが5%以上、営業利益率が3〜4%に戻る兆しが出るまでは“積極的に買い向かう局面ではない”。PBR0.28倍という異例の低さは魅力的ではあるものの、赤字企業のPBR割安は“罠”となるケースも多く、安易に割安と判断するのは危険である。今は“復活の芽を観察する時期”であり、業績改善が確認できる四半期を待ってから判断する方が安全性は高いだろう。

まとめると、現在の日産は「割安に見えるが、事業リスクの方が大きい局面」であり、中長期投資には慎重姿勢が必要な銘柄だと言える。

配当目的とかどうなの?

日産自動車を配当目的で考える場合、結論から言えば、現在の段階では「配当狙いの銘柄としては完全に不適格」と言わざるを得ない。予想配当利回りは2026年3月期・2027年3月期ともに0.00%となっており、つまり 今後2年間は無配(ゼロ配当)を見込んでいる状態 である。自動車メーカーは本来比較的安定した配当を行うケースが多いが、日産は利益悪化が続いており、株主への還元よりも資金確保と財務改善を優先しなければならない状況に陥っている。

直近では、2025年3月期に純利益が‐6708億円と巨額の赤字を計上し、2026年も‐2400億円の赤字予想となっている。企業として赤字が連続している以上、配当を出す余裕は現実的にほとんどなく、無配が続くのは当然の判断と言える。また、赤字のまま配当を出すと財務リスクが高まるため、今は株主還元よりも事業再建を優先するフェーズにあると見られる。

さらに、日産は電動化投資やバッテリー開発、海外事業の見直しなど多額の投資が必要な局面にあり、キャッシュフロー面でも余裕があるとは言い難い。営業キャッシュフローは減少傾向で、投資キャッシュフローは大幅なマイナスが続いており、財務面でも資金の出入りが大きく揺れている。こうした状況では、安定配当を維持するのは困難で、当面は“無配または極小配”が続く可能性が高い。

したがって、配当目的で日産株を買うのは現状では全くおすすめできない。利回りゼロの銘柄に資金を置いても、配当収益は得られず、むしろ株価の下落リスクの方が大きくなる。日産を保有するなら配当狙いではなく、「事業再建による中長期での復活・株価反転」を期待したキャピタルゲイン狙いの投資しか成立しない。

総合すると、日産自動車は現在“配当投資には完全に向かない銘柄”であり、安定して配当を受け取りたい投資家は別の高配当銘柄(銀行株・商社株・通信株など)を選ぶ方が圧倒的に合理的である。日産に関しては、配当が戻るのは黒字復帰と財務改善が完全に確認されてからであり、それまでは配当目的の投資判断としては不適といえる。

今後の値動き予想!!(5年間)

日産自動車の現在値が383.8円という極めて低い水準にある中、今後5年間の株価推移をシナリオ別に整理すると以下のようになる。

まず「良い場合」では、電動化戦略「Nissan Ambition 2030」が予定どおり進展し、EV販売が急拡大、コスト構造の抜本改革が成功、利益が数千億規模で回復し、ROEが10%以上に回復するようなシナリオである。この場合、PERが10~12倍、PBRも0.5~0.8倍程度まで改善され、株価は 700〜900円前後に回復する可能性がある。つまり、現在値から約2倍以上のリターンが見込めるポジティブな展開だ。

次に「中間の場合」は、構造改革が部分的に進んではいるが、業界環境(半導体供給、原材料高、EV競争激化など)が想定どおりには好転しないケースである。利益は回復するが過去のピークには及ばず、ROEも5~7%水準にとどまる。こうした場合、PERは5〜7倍あたりでの評価が妥当とされ、株価は 400〜550円 の範囲で推移すると考えられる。現在の383.8円から多少上昇するものの、大きな上振れを期待するのは難しい。「回復するがゆっくり」というスタイルだ。

最後に「悪い場合」は、EV投資が思いのほかコストを吸収し、海外販売も期待外れとなり、原材料・物流コストの高騰が続くシナリオである。利益が回復せず、純利益が引き続き赤字またはわずかな黒字にとどまると、ROEは0~マイナス、PBRも0.2倍以下に低迷する可能性がある。その場合、株価は 200〜300円程度まで下振れすることがあり、現在値からさらに30~50%の下落リスクも念頭に置く必要がある。特に、配当ゼロが続くと株主還元面での魅力も薄れやすい。

総合的に見ると、日産自動車は現在「非常に割安」な水準にあるものの、同時に「復活が確実ではない」銘柄でもある。現在値383.8円から考えれば、ポジティブな成長シナリオが実現すれば十分な上昇もあり得るが、構造的な課題が残るため慎重な姿勢も必要だ。したがって、5年間という時間軸で保有するなら「リスクを取りつつリターンを狙う」スタンスが適切であり、特に成長を信じて買うなら良いが、安定的なリターンや配当を目的に買う銘柄ではない。

この記事の最終更新日:2025年11月16日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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