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日野自動車(7205)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

日野自動車とは

日野自動車は、トヨタグループの商用車メーカーとして、日本の物流・交通インフラを支える中心的な存在である企業だ。設立は1942年と歴史は古く、東京・日野市に本社を構え、長年にわたりトラックとバスの開発・製造・販売に特化してきた。乗用車メーカーとは異なり、商用車は日々の物流・公共交通の“現場で働く車”であるため、耐久性・信頼性・積載性能などが厳しく求められる。そうした領域で日野自動車は国内トップクラスのブランド力を持ち、特に「日野のトラックは壊れにくい」という評価は世界的にも高い。

主力事業であるトラック分野では、大型「プロフィア」、中型「レンジャー」、小型「デュトロ」など、物流シーンに合わせて幅広くラインアップを揃えている。バス事業では「セレガ」「ブルーリボン」などを展開し、観光バス、路線バス、コミュニティバスまでカバーしている。これらの車両は国内だけでなく、アジア・中東・中南米など世界中の市場で販売され、海外比率も高い。特にインドネシアでは圧倒的な知名度を持ち、国を代表する商用車ブランドの1つとされている。

また日野自動車は、トヨタグループの中核企業でもあり、トヨタ向けの車両・部品の受託生産にも携わるなど、グループ全体の生産ネットワークの中で重要な役割を果たしている。トヨタの技術や資本関係を背景に、製造品質や開発力は高く、商用車分野に最適化された独自のノウハウとグループ技術が相互補完的に機能している。

近年では、世界的な脱炭素社会の流れを受け、商用車でも環境対応技術の開発が急務となっている。日野自動車は電気トラック(EV)、燃料電池バス(FCV)などのゼロエミッション車の研究開発を推進しており、次世代商用車の分野に積極的に投資している。物流や公共交通はCO₂排出量が大きい領域であることから、企業の環境対応への期待は極めて高く、日野の技術開発は社会的にも重要性が増している。

ただし同社は、2020年代前半に認証不正問題が発覚し、ブランドイメージに打撃を受けた過去がある。その後は再発防止と組織改革を進め、品質・安全性の強化に取り組んでいる。トヨタグループとしてもバックアップ体制を強化しており、再成長の基盤づくりが進んでいる段階だ。

総合すると、日野自動車は「商用車に特化した専門メーカー」として強い存在感を持ち、国内外の物流・交通インフラを支える重要な企業である。トヨタグループの一員としての強力な技術・資本バックボーンを持ちつつ、EV・FCVなど次世代商用車への転換を進めている点が大きな特徴で、今後の成長はこれら環境対応技術の普及スピードに大きく影響されるだろう。

日野自動車 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益(円) 一株配当(円)
2023/3 1,507,336 17,406 15,787 -117,664 -205.0 0
2024/3 1,516,255 -8,103 -9,233 17,087 29.8 0
2025/3 1,697,229 57,490 39,310 -217,753 -379.3 0
2026/3(予) 1,500,000 43,000 43,000 24,000 41.8 0

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

年度 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023/3 -40,799 -60,257 114,208
2024/3 -110,410 39,244 55,638
2025/3 1,128 -4,600 29,738

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER(実績) PBR(実績)
2023/3 1.1% -32.0% -8.7%
2024/3 -0.6% 4.3% 1.1%
2025/3 3.3% -122.1% -14.8% 高値平均:―
安値平均:―
1.12倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

日野自動車の直近3年間の業績と財務指標を見ると、「再建途上の企業」という印象が非常に強い。営業利益率は2023年1.1%、2024年は−0.6%と赤字転落、2025年は3.3%まで回復しているが、同業他社であるいすゞや三菱ふそうと比べると依然として低水準にとどまっている。商用車メーカーは通常3~8%程度の営業利益率が求められるため、日野の数字はまだ正常化途中であり、本格的な収益改善にはもう少し時間がかかると考えられる。

純利益を見るともっと顕著で、2023年は▲1,176億円、2024年は170億円と黒字化したものの、2025年には再び▲2,177億円の巨額赤字に落ち込んでいる。これは主に認証不正問題の影響が長期化し、補償費用・品質関連費用・生産調整などが重くのしかかっているためで、正常化までの道のりがまだ遠いことを示している。ROE・ROAの数字も厳しく、2025年にはROEが▲122.1%、ROAが▲14.8%と、企業としての効率性が大幅に損なわれていることがハッキリ表れている。

株価指標から見ても、状況の重さは変わらない。PERは赤字のため算出不能で、高値・安値いずれの水準も「―」となっており、利益面で投資尺度を出せる状況にない。唯一、PBRは1.12倍と“意外に高い”数値になっているが、これは日野自動車がトヨタグループであることや、将来的な再建期待が多少織り込まれている結果で、実態の利益からすれば決して割安とは言い難い指標である。

総合的に判断すると、日野自動車は依然として「再建中の企業」であり、投資対象としては慎重さが求められる。収益性がまだ低く、赤字幅も大きく、ROE・ROAも極めて悪い状態のため、短期的な投資妙味は限定的と言える。改善の兆しはあるものの、まだ業績が完全に立ち直ったと判断するには早い段階であり、株価が急上昇するような強い材料も見えにくい。

一方で、トヨタグループという大きな後ろ盾があること、商用車市場自体は一定の需要が継続すること、電動化対応の取り組みが前進しつつあることなど、長期的な再生可能性は十分残されている。今後の焦点は「品質問題の完全収束」と「収益性の正常化」であり、この2点がクリアされるまで過度に強気の評価をするべきではないだろう。

結論として、日野は“短期投資には向かず、あくまで長期の再建シナリオを信じて待てる投資家向け”の銘柄と言える。現状の業績と指標を見る限りは、積極的に買いに向かう局面ではなく、改善の確証が見え始めてから投資判断するのが賢明だ。

配当目的とかどうなの?

日野自動車を配当目的で保有するという観点では、結論として「現時点では全く向かない銘柄」である。予想配当利回りが26.3期・27.3期ともに0.00%となっている通り、同社は無配状態が続いており、配当を目的として投資するメリットは一切ない。これは単に方針としての低配当ではなく、業績面・財務面の問題から“配当を出せる余力自体がない”ことが理由として大きい。

日野は現在、認証不正問題の影響で補償費用や品質関連費用が重くのしかかり、2025年3月期は再び巨額赤字に転落している。純利益がマイナス2,177億円というレベルでは、配当どころか事業の立て直しと財務の安定化が最優先課題であり、株主還元に回せる余裕はない。ROE・ROAも深刻なマイナス水準で、企業としての収益効率が大きく損なわれている状態のため、当面の間は配当復活が見込める環境とは言いがたい。

さらに、商用車メーカーは通常、一定の配当を安定して出す傾向にある業界だが、日野は「問題対応による負担」「生産調整」「ブランド力低下」など複数の要因が絡み、他社とは異なる厳しい状況に置かれている。トヨタグループという強力な後ろ盾はあるものの、それでもまずは品質問題の完全収束と、収益体制の正常化が優先されるのは明らかだ。

もし配当目的で商用車メーカーを検討するのであれば、同業のいすゞ(7202)や三菱ふそう(現在は上場廃止予定)などのほうが比較にならないほど安定している。日野はまだ復配できる段階にまで持ち直しておらず、配当狙いの投資対象としては完全に除外してよいレベルと言える。

総合すると、日野自動車は「再建中の企業」であり、配当目的でホールドする意味は現状ゼロである。配当を期待して購入する銘柄ではなく、もし投資する場合は“再生期待の長期投資”という全く別の目的で考える必要がある。配当投資という観点に限定すれば、現時点の日野は完全に不適格な銘柄だと言える。

今後の値動き予想!!(5年間)

現在値402円を基準に、日野自動車の今後5年間の株価を考えると、会社の置かれている状況、業績の不安定さ、認証不正問題の影響、トヨタグループ内でのポジションなどを踏まえ、かなり幅のあるシナリオになる。今は再建途上という段階にあり、“成長株”というより「再生に期待できるかどうか」がポイントになる銘柄である。

まず良い場合のシナリオでは、長期間尾を引いていた認証不正問題が完全に収束し、補償費用や品質関連費用が大幅に減少。EVトラックやFCVバスなど新世代商用車の開発が進み、トヨタグループとの連携強化で安定的な受注も戻ってくるケースだ。営業利益率が3〜5%の水準まで改善し、純利益も黒字を確実に維持できるようになれば、市場から「再生完了」と評価される可能性がある。この場合の株価は 500〜600円台 まで戻る余地がある。あくまで“正常化しただけ”の株価レンジだが、日野にとっては大きな前進と言える。

中間のシナリオでは、不正問題の処理は徐々に進むものの、利益はまだ安定せず、黒字と赤字を行き来しつつ体制を立て直していくパターンが想定される。商用車の需要は底堅い一方で、日野独自のブランド力や受注力がすぐに戻るわけではなく、回復は緩やかなものになる。この場合、株価は 380〜450円付近 のレンジで長く行ったり来たりしやすい。いわゆる「停滞しながら少しずつ改善する」タイプの動きで、派手さはないが底割れの可能性もそこまで高くはない。

悪い場合のシナリオでは、品質問題の再発、追加の補償費用、海外事業の失速、電動商用車開発の遅れなどが重なり、赤字が長期化してしまうケースが考えられる。さらに商用車業界は今、海外勢の競争が激しいため、日野だけが回復の波に乗れない展開も十分あり得る。この場合、株価は 250〜320円 まで下落する可能性がある。業績が改善しない場合、PERも算出不能のままで投資家の評価が極端に低くなりやすいため、株価が低空飛行となるリスクが大きい。

総合すると、日野自動車は“リスクの大きい再建株”という位置づけであり、株価の上昇余地よりも、まずは業績が正常化するかどうかが最重要ポイントになる。トヨタグループとしてのバックアップがあるため倒産リスクは小さいものの、成長株でも高配当株でもないため、投資するならあくまで「再生に期待して長期で待つ覚悟」が必要な銘柄だと言える。

この記事の最終更新日:2025年11月16日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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