株価
SCREENホールディングスとは

SCREENホールディングスは、京都に本社を置く日本を代表する精密機器メーカーで、半導体製造装置の分野で世界トップクラスのシェアを持つ企業である。創業は1943年の大日本スクリーン製造から始まり、当初は写真製版機メーカーとして成長した。その後、製版技術や画像処理技術をベースに事業領域を電子、半導体、ディスプレイ、印刷、基板関連へと大きく拡大し、現在は持株会社体制を敷き、半導体製造装置を中心としたハイテク企業グループとしてグローバルに展開している。特に半導体製造工程の“洗浄装置”では世界でも指折りの存在で、最先端ロジック、大容量メモリ、先端パッケージングなど幅広い用途で導入が進んでおり、アメリカ・台湾・韓国・中国など世界中の半導体メーカーが主要顧客となっている。売上の海外比率は70%を超える年も多く、世界の半導体市場の動向に大きく連動する収益構造を持つ。
事業内容は大きく4つのセグメントで構成される。主力の「半導体ソリューション(SPE)事業」では、ウェーハ洗浄装置、コータ/デベロッパー、枚葉式洗浄システムなど、半導体製造に欠かせない装置群を提供している。微細化・多層化が進む半導体開発では洗浄工程がますます重要性を増しており、SCREENはこの領域で世界的な競争力を持つメーカーとして高い評価を受けている。
次に「FT(フラットパネルディスプレイ・成膜)事業」では、液晶や有機ELパネルの製造に用いるコータ/デベロッパー、成膜装置などを提供している。スマートフォンやテレビなどで高精細・大型化が進む中、SCREENの装置は高品質なディスプレイ作りに欠かせない存在となっている。
「PE(プリント基板関連)事業」では、スマホ・PC・自動車の電子基板に用いられるダイレクトイメージング装置や検査装置が柱となる。5G、EV、IoTなど電子部品の高度化が進むにつれて、微細基板に対応できる高精度な装置が求められており、SCREENは高密度実装分野でも存在感を拡大している。
さらに「MP(メディアアンドプレシジョンテクノロジー)事業」では、産業用インクジェット、印刷機器、画像処理装置、計測装置などを展開。製版機メーカーとして磨いてきた画像処理・高精度制御の技術を活かし、商業印刷分野だけでなく産業用途にもソリューションを提供している。
また、グループとして保守・サービス・環境関連技術の開発にも注力しており、長期的な顧客サポート体制を確立することで装置販売後の収益基盤も強化している。半導体の微細化、ディスプレイの高度化、基板の高密度化といった世界的な技術トレンドに合わせ、研究開発への投資も積極的に行い、クリーンテクノロジーや先端計測技術など多くの独自技術を育ててきた。
近年はAI関連半導体、車載向けパワー半導体、データセンター向け次世代ロジック需要などの追い風もあり、SCREENは中長期的な成長が期待されている。歴史の中で培った精密加工技術と、半導体製造工程に関する深い知見を武器に、日本を代表する装置メーカーとして世界の最先端技術を支え続ける企業である。
SCREENホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3* | 460,834 | 76,452 | 77,393 | 57,491 | 608.2 | 183 |
| 連24.3* | 504,916 | 94,164 | 94,279 | 70,579 | 742.1 | 224 |
| 連25.3 | 625,269 | 135,683 | 138,265 | 99,467 | 1,024 | 308 |
| 連26.3予 | 621,000 | 117,000 | 117,000 | 88,000 | 927.5 | 280 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 73,906 | -12,514 | -20,961 |
| 2024 | 96,255 | -43,456 | -35,142 |
| 2025 | 71,234 | -21,772 | -46,466 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | 実績PER(倍) | 実績PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 16.5% | 19.1% | 10.2% | — | — |
| 2024 | 18.6% | 18.9% | 10.4% | — | — |
| 2025 | 21.6% | 23.6% | 14.8% | 高値平均:19.1倍 安値平均:7.3倍 |
2.75倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
SCREENホールディングスは、ここ3年間で業績・収益性ともに大きく伸びている企業で、半導体製造装置メーカーとしての強さが数値にしっかり表れている。まず営業利益は2023年の 764億円 から2025年には 1,356億円 まで伸び、営業利益率も16.5% → 21.6%と上昇基調となっている。半導体装置メーカーは設備投資の波に左右されやすいが、その中でも利益率が改善しているのは、洗浄装置など高シェア製品の販売増加やサービス収益の積み上がりが効いている証拠と言える。
経常利益も同様に2023年の 774億円 から2025年には 1,383億円 と右肩上がりで、財務負担や為替影響に左右されにくい安定した成長が続いている。純利益も 575億円 → 995億円 とほぼ倍増しており、ROEも19.1% → 23.6%まで上がっている。特にROE20%超という水準は、日本企業の中ではトップクラスの収益性であり、極めて資本効率の高い企業であることを示している。ROAも10%台前半から14.8%まで改善しており、自己資本だけでなく総資産全体を効率よく利益につなげている点は評価できる。
バリュエーションの観点では、2025年の実績PERは高値平均で19.1倍、安値平均で7.3倍と振れ幅が大きい。これは半導体投資サイクルに左右され、株価変動が大きいことを示しているが、一方で安値圏(PER7倍台)は利益水準から見て割安に放置される局面があるとも言える。PBRは2.75倍と、資本効率を考えれば妥当〜やや割安水準。ROE23%超でPBR2倍台は、国際比較で見るとまだ評価余地がある領域で、成長企業として市場が完全にプレミアムを付けているとは言えない状態である。
総合的に見ると、SCREENは“業績が伸びる成長局面”と“市況悪化による調整局面”がハッキリ分かれる半導体関連銘柄の典型だが、その中でも安定して利益率を上げ続ける力のある会社で、長期目線では非常に強い。特にEPSが2023年608円 → 2025年1,024円へ増えており、一株利益がしっかり伸びている点は株価の中期的な上昇余地を示す。洗浄装置は半導体プロセスで絶対に必要な工程であり、AI・データセンター・車載半導体の増加によって今後も需要は継続しやすい。
結論として、SCREENホールディングスは利益率・ROEの高さから見て“優良成長銘柄”に分類され、長期では評価が高まりやすい企業である。ただし半導体投資サイクルに敏感なため、PERが7倍台に落ちた局面は“押し目の好機”になりやすく、逆にPERが20倍前後まで買われた局面では短期調整のリスクも意識する必要がある。財務面・キャッシュフローともに健全で、配当も年々増加しているため、成長+安定性を求める投資家に向いた銘柄と言えるだろう。
配当目的とかどうなの?
SCREENホールディングスを配当目的で考える場合、利回りは26.3期で2.23%、27.3期で2.39%と、配当利回りだけを基準に見ると「そこまで高くはない」水準に位置する。日本株の中では平均的、もしくはやや低めの利回りだが、この企業の場合は“配当利回りの低さ=投資魅力の低さ”には直結しない点がポイントとなる。
まず前提として、SCREENは半導体製造装置メーカーであり、市況に応じて業績が大きく上下しやすい業種だ。そのため配当政策も「安定配当+業績連動型」の位置づけで、稼げる年はしっかり配当を増やし、調整局面でも急激に減配しにくいようにバランスを取っている。実際、過去数年間でも配当金は着実に増加傾向にあり、EPSの成長に合わせて株主還元を強める姿勢が見える。
利回りは2%台と控えめだが、その理由は株価の上昇スピードが速いからとも言える。業績が伸びるにつれて株価も上がりやすく、結果的に利回りが抑えられてしまう構造だ。逆に言えば、配当金そのものは増えているのに利回りが伸びないのは、株価が成長に反応している証拠であり、成長株として健全な動きとも言える。
また、ROE23%を超える高収益企業で、営業利益率や純利益の伸びを生かして内部留保を厚めに確保しているため、還元余力は十分にある。27.3期の利回り予想が2.39%にやや上昇している点を見ると、業績見通しに合わせて増配が続く可能性も高い。
結論として、SCREENは「高配当狙いの銘柄」ではなく、「成長+増配を期待するタイプの銘柄」として捉えるのが適切だろう。利回りだけで見ると物足りないが、中長期では株価上昇+配当の両面のリターンが期待できる企業で、成長企業の中では株主還元も積極的な部類に入る。安定した継続配当を求めつつ、同時に業績拡大による増配の恩恵も狙いたい投資家に向いていると言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
SCREENホールディングスの今後5年間の株価を考えるとき、まず前提として現在値は12,530円というところからスタートになる。ここ数年の業績を振り返ると営業利益や純利益は着実に伸びており、営業利益率も16%台から21%台へと改善、ROEも20%を超える高水準に乗ってきている。半導体製造装置の中でも洗浄装置という、プロセス上絶対に必要な工程で世界トップクラスのシェアを持っていることを考えると、中長期では事業の競争力はかなり高い部類に入る。一方で、半導体設備投資はどうしても景気や需要サイクルに振り回されやすく、PERも安いときは7倍台、高いときは19倍前後まで買われるなど、株価の振れ幅が大きい銘柄でもある。
良い場合のシナリオとしては、AIサーバー向けやデータセンター向け、先端ロジックや車載半導体向けの設備投資がこの先も継続し、SCREENの主力である洗浄装置や関連サービスの売上が順調に伸びていくパターンが考えられる。この場合はEPSも毎年のように積み上がり、マーケットからの評価も高めで、PERが18〜20倍程度の水準を維持するイメージになる。その結果として株価はじわじわとレンジを切り上げ、5年スパンで見れば2万円台、うまくいけば2万4,000円前後まで到達してもおかしくないシナリオになる。AIバブルが長引き、世界的な設備投資ブームが続くような環境であれば、一時的に2万5,000円台にタッチするような局面も十分に想像できる。
中間的なシナリオは、おそらく最も現実味があるケースだ。半導体需要は長期的には成長していくものの、途中で何度か調整も入りながら、業績は「ドカンと伸びる年」と「足踏みする年」を繰り返すイメージである。EPSは右肩上がりではあるが、年によって伸び方に強弱があり、PERも12〜15倍程度の落ち着いたレンジに収れんしていく。この場合、株価は今よりも水準を切り上げつつ、5年後のイメージとしては1万5,000〜1万8,000円あたりに収まる感覚だ。大きく化ける爆発力というよりは、業績と連動しながらじわじわ評価が高まっていく、「成長株として順当に育っていく」ような展開である。
悪い場合のシナリオとしては、どこかのタイミングで半導体市況が冷え込み、設備投資が一時的に減速するパターンが考えられる。EPSが頭打ち、もしくは一時的に減益となり、投資家のリスクオフが進むと、過去の安値圏であるPER7〜9倍程度まで評価が落ち込む可能性もある。このような局面では株価も調整色が強くなり、5年後に見ても9,000〜1万1,000円程度のレンジでくすぶる展開もあり得る。ただしSCREENは利益率やROEの水準が高く、キャッシュフローも比較的しっかりしているため、長期的に見て企業としての競争力が大きく崩れるイメージではなく、「サイクル要因で一時的に売られている期間が長引く」ようなイメージに近い。
まとめると、現在値12,530円からの5年をざっくり眺めたとき、強い追い風が吹き続ける良い場合には2万円台前半~中盤、中間的な現実路線では1万5,000〜1万8,000円、サイクルの逆風が長引く悪い場合でも9,000〜1万1,000円程度のレンジを想定するイメージになる。半導体サイクルに振り回される一方で、洗浄装置という必須工程で世界トップというポジションを持っているため、長期の時間軸で見れば「成長性とボラティリティをセットで受け入れる銘柄」として考えるのがしっくりくると言えるだろう。
この記事の最終更新日:2025年11月18日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す