株価
三井不動産とは

三井不動産は、日本を代表する総合不動産ディベロッパーであり、三井グループの中核企業として長年にわたり都市開発の中心的役割を担ってきた企業です。本社は東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号にあり、同社が深く関わってきた「日本橋再生計画」を象徴するように、日本橋エリアの街づくりを丁寧に育てながら、都市の価値を長期的に高めていくビジネスモデルを展開しています。
三井不動産の事業は非常に幅広く、オフィス、商業施設、住宅、物流、ホテル、リゾート、そして海外事業まで、多層的なポートフォリオを持つ点が特徴です。特にオフィス事業は同社の柱で、日本橋や大手町、霞が関、新宿など、都心の一等地に大規模ビルを多数保有しています。「日本橋室町三井タワー」「日本橋三井タワー」などランドマークとなるビルも多く、テナント企業からの信頼も厚いことから、景気の波に左右されにくい安定した賃貸収益を生み出しています。
商業施設分野においては、「ららぽーと」や「三井アウトレットパーク」が全国で高い知名度を持ち、家族層や観光客、さらにはインバウンドまで幅広い需要を取り込んでいます。こうした大型商業施設はストック収益の源泉として機能し、景気が多少揺れても大きく崩れにくい安定したキャッシュフローを支えています。
住宅事業では「パークホームズ」「パークタワー」シリーズなど、ブランド力の強い分譲マンションを展開し、特に都心部や湾岸エリアのタワーマンション開発で大きな実績があります。近年は賃貸住宅や学生レジデンスにも力を入れ、住まいの多様なニーズに応える体制を整えています。
また、近年急成長しているのが物流施設事業で、「MFLP(三井不動産ロジスティクスパーク)」として全国に大型物流施設を展開しています。EC市場の拡大を背景に需要が高まり、テナントの長期契約が多いことから、安定した賃料収益を得られる分野として三井不動産の成長ドライバーとなっています。
ホテル・リゾート事業でも「三井ガーデンホテルズ」「ザ・セレスティンホテル」など複数ブランドを展開し、国内外で存在感を広げています。訪日観光客の増加に伴い、ホテル事業は収益の厚みを増しており、ハワイや台湾など海外施設の拡大も着実に進んでいます。
海外事業も強化が続いており、ニューヨーク、ロンドン、アジア各国など世界の主要都市で不動産投資・開発を行っています。海外比率が年々高まっていることから、国内市況だけに依存しない分散された収益体質が整いつつあります。
さらに近年はスマートシティ構想やDX(デジタルトランスフォーメーション)にも積極的で、街全体のデジタル化やオフィスのスマート化、物流の効率化など、都市インフラそのものを革新する取り組みも加速しています。
総じて三井不動産は、巨大な不動産ポートフォリオによって安定した収益を生みつつ、オフィス・商業・住宅・物流・ホテル・海外など幅広い事業をバランスよく展開する、日本屈指の総合ディベロッパーです。特に日本橋を中心とする大規模都市開発を長期視点で進めてきた実績は他社にない強みであり、将来に向けても安定した成長を見込める企業と言えます。
三井不動産 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 営業収益 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
1株益(円) | 1株配(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3* | 2,269,103 | 305,405 | 265,358 | 196,998 | 69.3 | 20.7 |
| 連24.3* | 2,383,289 | 339,690 | 267,890 | 224,647 | 80.2 | 28 |
| 連25.3 | 2,625,363 | 372,732 | 290,262 | 248,799 | 89.3 | 31 |
| 連26.3予 | 2,700,000 | 380,000 | 285,000 | 260,000 | 93.8 | 33 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 297,708 | -422,034 | 111,448 |
| 2024 | 241,697 | -286,987 | 59,988 |
| 2025 | 599,252 | -321,970 | -269,367 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 13.4% | 6.7% | 2.2% | – | – |
| 2024 | 14.2% | 7.2% | 2.3% | – | – |
| 2025 | 14.1% | 7.9% | 2.5% | 18.3~11.4 | 1.51 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
三井不動産の直近の業績推移を見ると、この企業が日本を代表する総合ディベロッパーとして、盤石な収益基盤を維持しながら着実に成長していることが数字からよく分かります。まず売上高は連23.3の2兆2,691億円から連24.3の2兆3,832億円、そして連25.3では2兆6,253億円へと順調に伸びており、オフィス・商業・住宅・物流・ホテルなど幅広い事業がバランスよく収益に貢献しています。特に三井不動産は、オフィス賃料が都心部で依然として高い水準を維持しているほか、ららぽーとや三井アウトレットパークなどの商業施設も好調で、さらに物流施設MFLPがEC拡大を背景に大きく成長しているなど、複数の収益源が堅調に推移している点が際立っています。ホテル・リゾート事業や海外事業も拡大傾向にあり、日本国内の不動産市況だけに依存しない強い構造が出来上がっています。
利益面でも堅調で、営業利益は3,054億円 → 3,396億円 → 3,727億円と順調に増加し、経常利益も2,653億円 → 2,679億円 → 2,902億円と安定的に伸びています。不動産業界は景気に左右されやすい印象がありますが、三井不動産のように事業ポートフォリオが多角化している企業は、特定分野の調整を他分野の伸びで吸収しやすく、実際に数字からもその安定感が確認できます。純利益も1,969億円 → 2,246億円 → 2,488億円と着実に積み上がり、EPSも69.3円 → 80.2円 → 89.3円と企業価値の成長がそのまま反映されています。配当も20.7円 → 28円 → 31円と増配傾向が続いており、利益成長と還元のバランスが非常に良い企業と言えます。
収益性の指標では、営業利益率が13.4% → 14.2% → 14.1%と極めて安定しており、巨大ディベロッパーとして高水準の利益率を維持しています。ROEも6.7% → 7.2% → 7.9%と着実に改善、ROAも2.2% → 2.3% → 2.5%と向上しており、資本効率・総資産効率のいずれも上向いている点は大きな評価ポイントです。
バリュエーションを見ると、2025年のPERは高値平均18.3倍・安値平均11.4倍、PBRは1.51倍と、不動産大手としては割高ではありません。むしろ安値平均のPER11倍台は、今の三井不動産の成長力を考えると割安感がある水準です。利益が安定して増えており、複数の事業が堅調に伸びている中でこのバリュエーションで買えるのは魅力的です。
総合すると、三井不動産は売上・利益ともに堅実に伸びており、複数の強い収益源が支える“安定成長型の優良ディベロッパー”です。日本の不動産景気だけに依存しない多角化された事業構造によって、景気変動の影響を受けにくく、企業価値が長期的に積み上がっていくタイプの銘柄と言えます。中長期の資産形成において、安定性と成長性のバランスが取れた魅力的な投資先として十分評価できる企業です。
配当目的とかどうなの?
三井不動産を配当目的で見ると、いわゆる“配当利回りだけで稼ぐタイプの銘柄”ではありませんが、企業としての安定性と将来性の両面を考えると、長期の資産形成にはとても向いている企業です。予想配当利回りは連26.3期・連27.3期のどちらも1.92%と控えめで、配当利回りを最優先に考える投資家からすると物足りなく感じるかもしれません。
ただ、三井不動産が時間をかけて積み上げてきた強みは、高配当というより「安定成長しながら着実に増配を続ける」という点にあります。実際に配当は20.7円から28円、そして31円へと毎年増えており、EPSがしっかり伸びていることもあって配当余力は年々大きくなっています。利益の増え方も着実で、景気任せの一時的な増益とは異なり、じっくり積み上がる継続的な利益成長が背景にあるため、無理のない増配を続けられる企業と言えます。
三井不動産の大きな強みは、オフィス、商業施設、住宅、物流、ホテルといった複数のストック収益が安定的に積み上がり、キャッシュフローの基盤が非常に強い点です。こうした事業の多角化によって、景気が悪い年が来ても特定の部門だけが不調になりにくく、全体としての収益がブレにくい構造になっています。また、物流施設MFLPの拡大や海外事業の成長といった新しい収益源も増えており、今後の利益の底上げにも期待が持てます。こうした背景から、配当が急に落ち込むリスクは低く、長期的に見れば増配余地も十分あります。
総合すると、三井不動産の配当は“短期で高利回りを求める投資には向かない”ものの、長期保有でじっくり配当を育てていきたい人にとっては魅力の大きい銘柄です。安定した利益体質と強固なキャッシュフロー、そして企業価値が毎年積み上がる成長性が揃っているため、長期保有すればするほど配当も企業価値も自然と伸びていく、いわゆる「堅実な配当成長株」として扱える存在です。
今後の値動き予想!!(5年間)
三井不動産の現在の株価(1,767.0円)が今後5年間でどう動くかを考えると、同社の事業構造や利益成長の安定性を踏まえて、極端に大きく崩れる可能性は低く、一方で不動産市況・金利環境・海外事業の拡大次第ではしっかりとした株価上昇も見込めます。
まず良い場合のシナリオでは、オフィス賃料の高水準維持、ららぽーとやアウトレットの好調、物流施設MFLPの成長、ホテル・リゾートの回復、さらに海外事業の拡大が重なり、EPSも順調に伸びていく可能性があります。この場合、PERがやや上に見直されやすく、株価はおおむね 2,300円〜2,800円程度 まで上昇していくイメージです。年率で4〜9%程度の上昇ペースで、堅実な成長ストーリーがそのまま株価に反映されるパターンです。
中間シナリオでは、不動産市況が大きく崩れず、賃料収入と販売収入の両方が安定して推移する形です。物流施設や海外事業も伸びるものの、金利や景気の影響で伸び方がやや落ち着くケースです。この場合は毎年少しずつ企業価値が積み上がり、株価は 1,900円〜2,200円 程度で推移していくイメージになります。現状の安定成長をそのまま反映したような無難なレンジです。
悪い場合のシナリオでは、金利上昇による不動産評価の調整や、国内市況の停滞、海外市況のブレなど複数の要因が重なるケースです。とはいえ三井不動産の場合、オフィス・商業・物流・ホテルなど複数の収益源があるため、大きな下落リスクは限定的で、株価は 1,500円〜1,650円程度 にとどまる可能性が高いと考えられます。ディフェンシブ性が強いため暴落しにくい点は三井不動産の特徴でもあります。
総合すると、三井不動産の5年間の株価は「大きく跳ねないが、長期では着実に積み上がる」という傾向が強く、安定成長型の大型株らしい動きを見せると考えられます。短期で大きなリターンを狙う銘柄ではありませんが、長期で見れば利益成長・配当・企業価値の積み上がりが株価をゆっくり押し上げる十分な余地がある企業です。
この記事の最終更新日:2025年11月22日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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