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小田急電鉄(9007)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

小田急電鉄とは

小田急電鉄株式会社は、東京都西部から神奈川県、さらに小田原・箱根エリアまで広がる沿線を基盤とする大手私鉄グループで、鉄道・バス・不動産・商業・ホテル・観光など幅広い事業を展開する総合企業である。1948年の設立以来、沿線の価値向上と都市生活の質の向上に注力し、首都圏の公共交通と観光産業を同時に支えてきた。

中心事業である鉄道は、新宿から小田原・箱根方面へ続く約82kmの小田急線が軸となっており、首都圏の通勤・通学を支える大動脈として日々多くの乗客を運んでいる。特に新宿〜町田〜相模大野〜本厚木〜小田原へ続く路線は東京と神奈川を結ぶ重要ルートとして確固たる地位があり、複々線化が完了したことで輸送力や定時性が向上し、混雑緩和と沿線価値の上昇につながっている。この輸送改善は住環境の魅力を高め、不動産の活性化や商業施設の利用増にも良い循環を生み出している。

小田急の象徴ともいえる特急「ロマンスカー」は、長年にわたって新宿と箱根湯本を結ぶ観光輸送の主力として親しまれており、都心から気軽に温泉地へアクセスできる“箱根ブランド”の形成に大きく貢献している。観光需要が高まれば鉄道収益だけでなく、ホテルや観光施設、商業施設の来客増にも直結するため、小田急グループ全体の収益基盤を強化する役割も果たしている。

鉄道だけでなくバス事業も重要な柱で、小田急バスや江ノ電バスグループが沿線の交通インフラを細かく補完し、地域住民の生活を支えている。交通と生活インフラを一体で提供できるのは、小田急グループの大きな強みと言える。

不動産事業においても小田急は高い競争力を持ち、「新宿ミロード」や「海老名ビナウォーク」など駅直結型の大型商業施設を展開し、沿線価値の向上に寄与している。最近では「本厚木ミロード」のリニューアルや沿線再開発にも積極的で、賃貸収益の安定性を高めつつ、不動産ポートフォリオの質を強化している。沿線の賃貸住宅開発やリノベーション事業にも力を入れており、街づくりと安定収益の両立を実現している。

ホテル・リゾート事業も小田急グループの大きな特徴のひとつで、箱根エリアを中心に「ホテルはつはな」「箱根ハイランドホテル」など複数の高評価リゾート施設を運営している。インバウンドが本格的に回復している今、箱根は世界的に注目される観光地となっており、小田急はその恩恵を直接的に受けやすい立場にある。さらに、箱根登山鉄道、ロープウェイ、ケーブルカー、箱根海賊船といった観光インフラも運営しており、「箱根の観光を丸ごと担う企業」として独自の地域価値を築いている。

このように、小田急電鉄は鉄道・バス・商業施設・不動産・ホテル・観光といった事業が互いに連動し、景気の波に大きく左右されにくい安定した事業構造を形成している。都市部の通勤需要と観光資源の両方を持つ多角的な事業モデルは、他の私鉄とは一線を画す強みとなっている。

総合的に見ると、小田急電鉄は都市部の通勤路線としての安定した鉄道基盤を持ち、箱根を中心とした観光・ホテル事業が強さを支えている。また、駅直結型商業施設や再開発を通じた不動産収益、沿線価値を高めながら街づくりを進める戦略、そして公共交通と観光インフラを一体で運営できる独自性が組み合わさり、単なる鉄道会社ではなく“都市生活と観光の総合グループ”として着実に成長を続けている企業だと言える。

小田急電鉄 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 1株益(EPS) 1株配当
連23.3 395,159 26,601 25,119 40,736 112.1 21
連24.3 409,837 50,766 50,670 81,524 225.3 30
連25.3 422,700 51,431 50,474 51,958 147.5 40
連26.3予 425,000 53,000 51,000 35,000 101.4 50

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023 62,928 34,712 -51,056
2024 71,626 23,435 -102,079
2025 55,877 -74,495 -7,040

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER PBR
2023 6.7% 10.5% 3.1%
2024 12.3% 17.7% 6.2%
2025 12.1% 10.8% 3.9% 1.24倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

小田急電鉄の直近3期間の数字を並べて見ると、この企業が持つ特徴が非常にわかりやすく浮かび上がってくる。まず売上は 3951億 → 4098億 → 4227億 と堅実に伸びており、交通インフラ企業としては標準的な成長ペースだが、利益面はそれ以上に改善が際立っている。

営業利益は 266億 → 507億 → 514億 と3年でほぼ倍増しており、営業利益率も 6.7% → 12.3% → 12.1% と大きく改善している。交通業は人件費・設備維持費が重く利益率が出にくいビジネスだが、小田急は鉄道だけでなく、不動産、商業、ホテル、箱根の観光インフラといった複数の事業が強く機能しており、利益率の改善につながっている。

経常利益も 251億 → 506億 → 504億 と安定しており、財務コストの負担はあるものの、観光需要や商業施設の回復が下支えしている構造が数字に表れている。特に箱根エリアのホテル・ロマンスカー需要、商業施設の回復は利益の底上げに大きく寄与している。

純利益については 407億 → 815億 → 519億 と、24.3期だけ飛び抜けて強かったが、これは一時的な利益要因が乗った影響で、25.3期にかけてはやや落ち着いてきている。とはいえEPSは 112円 → 225円 → 147円 と高い水準を維持しており、依然として企業としての稼ぐ力は十分に強い。

収益性も年々改善が見られ、ROEは 10.5% → 17.7% → 10.8%、ROAは 3.1% → 6.2% → 3.9% と鉄道会社としてはかなり優秀な部類に入る。特に2024年の水準は高く、小田急が持つ観光・不動産の利益体質が他の私鉄と比べても非常に強いことを示している。

バリュエーション面では、PERが“—”で明確な目安は示されていないが、PBRが 1.24倍 程度である点はポイントだ。小田急は広大な沿線不動産、箱根の観光資産、商業施設を多数抱えている企業のため、資産価値の観点からすると割高感は小さく、むしろまだ再評価の余地があるとも見られる。

総合すると、小田急電鉄は鉄道会社の中でも「交通 × 不動産 × 観光」という多角的な利益構造を持ち、それが収益改善の原動力になっている企業である。鉄道単体の利益に依存していないため、景気回復やインバウンド増の恩恵を受けやすく、利益の振れ幅も比較的小さく安定しやすい。

株価が大きく跳ねるタイプの銘柄ではないものの、堅実に利益体質を改善し続けている点から見て、中長期では企業価値の積み上がりによる株価の見直しが期待できるタイプの銘柄と言える。結論として、小田急電鉄は「鉄道・不動産・観光が三位一体で成長し、安定した収益力を持つ中長期向けのバリュー寄りの優良株」という投資判断になる。

配当目的とかどうなの?

小田急電鉄を配当目的で考える際にまず押さえておきたいのは、予想配当利回り(2026・2027年度)が2.81%前後で推移しているという点だ。私鉄株としては“普通〜やや高め”という位置で、利回りだけで見ても東急や京王などと比較して小田急はやや有利な水準に入ってくる。ただし、高配当株として積極的に選ばれるレベルかというとそこまでではなく、あくまで「安定した配当をもらいながら、ほどほどの利回りを享受する」というタイプの銘柄だと言える。

重要なのは、小田急がどのような配当スタンスを取っているかという点で、小田急は安定配当を維持しながら業績の改善に合わせて少しずつ引き上げていくという、非常に堅実な姿勢を取ってきた。実際にここ数年間の推移を見ると、配当は21円 → 30円 → 40円 →(予想)50円と着実に増えており、利益が伸びた分をしっかり株主にも還元するという安定した方針が読み取れる。

また、小田急は鉄道だけでなく、商業施設や不動産、ホテル、箱根の観光インフラなど複数の収益源を持っているため、景気の変動に左右されにくい。特にインバウンド需要が戻り、箱根エリアの観光復活が鮮明になってきている現在、ホテル事業やロマンスカー、観光施設の稼働が配当の安定感をさらに高める要因になっている。こうした多角的な利益構造を考えると、減配リスクは比較的低い部類に入る。

一方で、鉄道インフラの維持や駅周辺の再開発、大型商業施設の刷新など、多額の投資が必要な事業を抱えているため、配当に利益の大半を回すスタイルではない。配当性向もそこまで高くなく、高利回りを第一目的とする投資家にはやや物足りなく映る可能性がある。ただその分、企業価値の中長期的な伸びと安定配当をセットで狙える“バランス良いインカム銘柄”としての魅力が強い。

総合して見ると、小田急電鉄は配当が安定していて減配のリスクが低く、増配傾向も続いており、利回りは私鉄の中では悪くない水準にある。ただし本格的な高配当株というより、成長と安定配当を両立したタイプの企業で、配当でガッツリ稼ぐというよりは、配当を受け取りながら企業の成長にも期待して長期で保有するスタイルに向いているといえる。

結論として、小田急電鉄は“高配当株ではないものの、安定配当と緩やかな増配が期待できる、中長期向けのバランス型インカム銘柄”という評価が最も適切だと言える。

今後の値動き予想!!(5年間)

小田急電鉄の現在値は1,774円だが、この水準を起点に今後5年間の値動きを考えると、小田急が持つ「都市交通 × 不動産 × 観光」という独自のポートフォリオが、そのまま株価の方向性を決める大きな要因になる。鉄道会社の中でも小田急は特に観光色が強い企業で、箱根エリアのホテル・観光インフラ・ロマンスカーといった需要に左右される側面が大きい。そのため、今後の株価はインバウンド動向、国内旅行需要、沿線再開発の進み具合など複数の軸から評価する必要がある。

まず、良い場合のシナリオから見ていくと、インバウンドが向こう数年にわたって強いトレンドを維持し、箱根の宿泊需要や観光需要が旺盛に続くケースが考えられる。箱根ハイランドホテルやホテルはつはなといった高単価の宿泊施設は、外国人観光客の増加をダイレクトに利益へとつなげる力を持っているほか、箱根登山鉄道・ロープウェイ・箱根海賊船といった観光インフラ全体がフル稼働すれば、グループ全体の収益は確実に押し上げられる。また、足元で進んでいる商業施設や沿線住宅開発のリニューアルがうまくはまり、賃貸収益や商業収入が増えていけば、非鉄道領域の収益体質もさらに強化される。このような好条件が重なり、PBRが1倍に近づくような評価見直しが起きれば、株価は5年後に 2,300〜2,600円 程度まで上昇しても不思議ではない。

次に、中間シナリオとしては、鉄道利用者が横ばいで推移しつつ、観光需要も現状維持〜やや増程度にとどまり、極端な上振れも下振れも起きないケースが想定される。小田急は定期収入と観光収入のバランスが良い企業のため、景気がやや弱くても極端に崩れにくい安定性がある。沿線の住環境の良さや複々線化による輸送改善も続いており、人口流入が急減しない限りは堅調な収益が期待できる。こうした「安定だが大きく伸びない」環境が続いた場合には、株価はゆるやかに現在値近辺を中心に推移し、5年後の水準は 1,900〜2,100円 程度に収まる可能性が高い。特に私鉄株は大幅に評価が変わりづらく、景気が中立なら株価も中立に近い動きを取りやすい。

一方で悪い場合のシナリオでは、インバウンドの減速や景気後退によって観光事業が悪影響を受けるほか、鉄道利用者数も伸び悩み、非鉄道領域の利益も圧迫される可能性がある。小田急は箱根観光に依存する比率が比較的高いため、観光需要の冷え込みは利益に直結しやすい。加えて、鉄道会社特有の設備投資負担は避けられず、不動産市況が悪化すれば賃貸収益にも影響が出る。このようなマイナス要因が重なると、株価は割安なまま放置され、5年後に 1,400〜1,600円 程度まで下落するシナリオも考えられる。

総合的に見ると、小田急電鉄は高速に株価が伸びるタイプの企業ではないが、複合収益モデルがしっかりしているため下値も崩れにくい。観光需要が継続して強ければ緩やかな上昇が期待でき、逆に観光が弱りインフラ投資が重荷になると伸び悩むという特徴がはっきり出る銘柄でもある。現在の1,774円という株価水準は、割安でも割高でもない“中立寄り”の価格帯であり、ここからは観光需要の強弱と沿線開発の進展が株価方向を決めていくことになるだろう。

この記事の最終更新日:2025年11月22日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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