株価
東京建物とは

東京建物株式会社は、1896年に創業した日本で最も歴史ある総合不動産会社の一つで、三井不動産・三菱地所と並んで「三大デベロッパー」の一角として長年にわたり日本の都市開発をリードしてきた企業である。特に東京の都心部、丸の内・八重洲・日本橋・京橋・大手町といった“日本の中枢エリア”で多くのオフィスビルや商業施設を扱い、都心の再開発プロジェクトでは常に主戦力として参加している。再開発は数十年規模の大型プロジェクトが多く、長期的に安定した賃貸収入を生むアセットが積み上がりやすい点が東京建物の強みである。
同社の収益の柱は、オフィスビルを中心とした「ビル事業」で、完成後の物件を自社保有し、長期的にテナント賃料を受け取る”ストック型”の収益モデルになっている。保有ビルは都心の一等地が多く、景気後退時でもテナントが比較的埋まりやすいため、事業全体の安定力に大きく貢献している。また、大規模複合開発やオフィスと商業、ホテルを組み合わせた街づくりにも積極的で、街区全体を自社で管理することで長期的なブランド価値の向上にもつなげている。
住宅部門ではマンションブランド「Brillia(ブリリア)」が特に有名で、分譲マンション事業は国内でも高い知名度を持つ。最近では駅前再開発やタワーマンション、大規模複合再開発などに参画し、住居だけでなく商業・公共施設を含めた街全体の価値向上を狙う方針が強くなっている。戸建て事業やコンパクトマンションなど、多様なニーズに合わせた商品開発も行っており、都心部を中心に高い顧客評価を確保している。
不動産ソリューション事業では、中古ビルのバリューアップや企業のCRE戦略(企業が保有不動産を有効活用する戦略)支援、収益不動産の開発・売却、さらには不動産ファンドの運用など、資産運用型の事業も拡大している。東京建物リートマネジメントを通じて私募ファンド・REITの運用も行っており、投資家から資金を集めて不動産価値を高め、運用益を生み出すビジネスに力を入れている。単なるデベロッパーから、金融×不動産の領域で収益の多角化を進めている点も特徴だ。
海外では特に東南アジアに注力し、タイ・ベトナム・フィリピンなどでマンション開発、オフィス、商業施設のプロジェクトを展開している。日本企業の中では比較的早い段階から海外事業に取り組み、現地パートナーとの連携を深めながら安定的な収益モデルを築きつつある。人口増加や都市化が進む東南アジアは今後も需要が高いため、海外事業は長期の成長ドライバーとして期待されている。
そのほか、ホテル事業、リゾート事業、駐車場(パーク24と連携)、ビル管理、資産運用など、多岐にわたる不動産関連ビジネスを展開している。複合開発を通じた「街づくり」を中心に、長期保有資産を増やしながら安定収益モデルを強化し、景気に左右されにくい体質を構築している点が、東京建物という会社の最大の特徴である。
歴史の長さから得られるブランド力、東京中心部という価値の落ちにくい不動産群の保有、再開発への継続的な参画、Brilliaブランドの住宅事業、資産運用ビジネスの拡大、海外展開による成長余地など、複数の収益源を持つことで安定しながら成長を続けている。長期投資家からの評価も高く、地味だが着実に企業価値を積み上げるタイプの企業と言える。
東京建物 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 349,940 | 64,478 | 63,531 | 43,062 | 206.2 | 65 |
| 連23.12 | 375,946 | 70,508 | 69,471 | 45,084 | 215.8 | 73 |
| 連24.12 | 463,724 | 79,670 | 71,722 | 65,882 | 315.5 | 95 |
| 連25.12予 | 503,000 | 86,000 | 74,000 | 55,000 | 264.9 | 97 |
| 連26.12予 | 520,000 | 93,000 | 81,000 | 57,000 | 274.6 | 97〜100 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位:百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | -3,332 | -21,204 | 18,421 |
| 2023 | 20,588 | -54,069 | 77,908 |
| 2024 | 18,894 | -142,089 | 105,636 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROE | ROA | 実績PER(高値/安値) | 実績PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 18.7% | 9.0% | 2.3% | – | – |
| 2024 | 17.1% | 12.2% | 3.1% | – | – |
| 2025 | 19.6% | 10.8% | 2.7% | 9.9倍 / 7.0倍 | 1.25倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
東京建物の直近3期間の業績推移をあらためて眺めると、まず強く感じるのは「とにかく業績の伸び方が安定していてブレがない」という点である。連23.12から連24.12、そして連25.12の予想値まで並べると、売上も利益も非常に素直に上向いており、典型的な“堅実な不動産大手の成長パターン”に当てはまっている。
営業利益は 705億 → 797億 → 860億 と着実に増えており、不動産会社にありがちな年度ごとの大きなブレがほとんど見られない。これは大型分譲に依存しすぎず、ビル賃貸などのストック収益がしっかりと会社の土台になっていることを示している。景気が多少悪化したとしても一定の賃料収入が入るため、利益が崩れにくい構造が確立している。
経常利益も 694億 → 717億 → 740億 とほぼ教科書どおりの右肩上がりで、財務コストが重い不動産企業にしては非常に落ち着いた推移を見せている。為替や金利の影響があっても揺れ幅が小さく、個別プロジェクトの成否に左右されにくい“平均点の高い稼ぎ方”ができている印象だ。
純利益は 450億 → 658億 → 550億(予想) と24.12がやや突出して高い分、25.12予想が一見下がって見えるが、これはあくまで一時的な分譲計上の影響であり、企業の根本体質が悪化しているわけではない。EPSの推移を見ても、3期平均で確実に増加しているため、株主価値は着実に積み上がっている。
配当に関しても 73円 → 95円 → 97円 と段階的に増配が続いており、利益の成長に合わせた無理のない還元が行われている。急なジャンプではなく、堅実に積み上げていくタイプの増配なので、長期保有者にとって非常に安心感がある企業だと言える。
さらにバリュエーション面を見ると、2025年のPERが高値平均9.9倍、安値平均7.0倍と、依然として“割安”と言える領域に位置している。不動産セクターの一般的なPERが10〜14倍であることを考えると、東京建物は市場からやや過小評価されている状態といえる。PBRも1.25倍と控えめで、都心に優良資産を多数抱える企業としてはまだ割安感がある。
収益性の面でも、ROEが10%前後、ROAが2〜3%台を維持しており、巨額の資産を抱える不動産業としては非常に高い効率で収益を生み出している。資産を“ただ持っているだけ”ではなく、しっかりと利益につなげている企業体質であることが数字から見てとれる。
こうした要素を総合して判断すると、東京建物は利益が安定して伸び続け、ビル賃貸を中心としたストック収益で業績のブレが小さく、ROE・ROAなどの資本効率も非常に高い水準にある。一方で、株価指標であるPER・PBRは依然として割安圏に位置しており、さらに配当も毎年着実に増えている。まさに“地味に強い優良バリュー株”の典型と言える。
短期で大きく跳ねるタイプではないものの、中長期で見れば確実に株主価値が積み上がるタイプであり、今後進捗する再開発案件が収益に本格的に反映されるタイミングでは、現在の割安評価が見直される可能性も十分にある。
最終的には、東京建物は「割安で実力があり、長期でじっくり持つと報われる堅実な銘柄」という評価がもっともふさわしいと言える。
配当目的とかどうなの?
東京建物を配当目的で考える場合、まず目につくのは予想配当利回り(2026・2027年度)が約3.08%という点だ。突出した高配当というわけではないが、不動産大手としては十分に魅力的な水準で、安定運用を重視する投資家にとってはちょうどバランスのとれた利回りと言える。利回りが4〜5%台の“いかにも高配当株”とは違って、東京建物は業績の堅さと配当の安定性を売りにしているタイプなので、安心して長期で持てるという点に価値がある。
配当の推移を見ると、73円 → 95円 → 97円と着実に増えており、利益の積み上がりと連動した自然な増配が続いている。企業によっては無理に増配して利回りだけを良く見せるところもあるが、東京建物は実際の利益が伸びているから配当も増えているという非常に健全な形で、長期保有を前提にする投資家にとっては安心材料が多い。
また、東京建物はビル賃貸を中心としたストック収益の比率が高く、景気が悪化しても一定の賃料が入るため、減配リスクが比較的低いという特徴がある。不動産業界は外部環境の影響を受けやすいとイメージされがちだが、東京建物は賃料収入が業績の基盤になっているため、収益の下振れ幅が小さく、配当の安定性にもつながっている。
さらに、現在は再開発案件が多数進行しており、これらのプロジェクトが収益に本格的に寄与してくるタイミングが近づいている。利益成長の余地がまだ残っているため、将来的に配当を引き上げる余力も十分にあると見て良い。つまり、現時点でも安定しているうえに、将来的な増配の可能性も期待できる、という二重の安心感を持てる銘柄になっている。
配当利回りだけを見ると派手さはないが、業績の伸び方、ストック収益の強さ、資本効率の高さ、そして無理のない増配方針を考えると、東京建物は「長期で配当を積み上げていきたい投資家」にとって非常に相性が良い。高配当株のように短期で大きく配当を稼ぐタイプではなく、着実に配当と株価の両方を育てていく“堅実な配当銘柄”という立ち位置だと言える。
一言でまとめるなら、東京建物は『安心して長く持てる、じわじわ増配型の堅実な配当株』と評価するのが最も近い。
今後の値動き予想!!(5年間)
東京建物の現在値3,337円を基準に今後5年間の値動きを考えると、まず意識すべきなのはこの企業の業績が極めて安定しており、しかも右肩上がりを続けているという点である。営業利益も経常利益もほとんどブレなく伸びているうえ、都心の再開発案件が複数同時進行しており、これらが収益に本格的に寄与してくるフェーズに入っている。さらに、ビル賃貸というストック収益が業績を下支えしているため、景気悪化の影響を受けにくいのも大きな特徴だ。こうした背景を踏まえつつ、5年間のシナリオを良い場合・中間・悪い場合に分けて考えていく。
まず 良い場合を想定すると、都心の大型開発が順調に完成し、テナント需要の堅さも相まって賃料収入がさらに積み上がる展開だ。再開発エリアは日本橋・八重洲・京橋など、日本でも屈指の優良立地ばかりで、完成後には資産価値だけでなく収益力も大きく高まる可能性がある。現在はPERが7〜10倍の割安圏に放置されているが、収益の伸びがはっきり見えてくれば市場の目線も変わり、12〜14倍程度まで見直されても不思議ではない。その場合、株価は4,800〜5,300円前後を視野に入れられ、5年間で45〜60%ほど上昇するシナリオも十分にあり得る。地味な会社だが、業績の堅さを背景に評価が一段階上がる“静かな re-rating(再評価)”が起きるイメージだ。
次に 中間の場合では、定番のストック収益が堅調に伸び、再開発効果も徐々に織り込まれるものの、市場全体の金利動向や不動産セクターの需給によって株価が一気に跳ね上がるほどの勢いは出ないケースだ。それでも東京建物は元々の業績が安定しており、ビル賃貸の底力が効いてくるため、じわじわと株価が切り上がる展開が予想される。5年間で3,800〜4,200円程度までの上昇が現実的で、最も実現しやすいのはこの“緩やかに伸びるシナリオ”だと見るのが妥当だ。値動きの派手さはないが、長期で見れば安心感を持って保有できる。
最後に 悪い場合を考えると、不動産市況が冷え込んだり、金利が上昇したりして業界全体が売られるパターンだ。この場合はPERがさらに圧縮され、株価が一時的に割安のまま放置される可能性がある。ただし、東京建物は分譲に依存せず賃料収入が強く、不況下でも売上や利益が大きく落ち込む企業ではない。そのため、株価が崩れるにしても2,700〜3,000円あたりで下げ止まりやすく、他の不動産株ほど急激な下落にはなりにくい。むしろ、悪材料が落ち着けば買い戻しが入りやすいタイプでもある。
総合すると、東京建物は“安定した収益基盤を持つ割安株”という非常に独特な立ち位置にあり、良い場合は大きく伸び、中間でも堅実に上がり、悪い場合でも大崩れしにくいという、リスクとリターンのバランスが非常に良い銘柄だと言える。現在の3,337円という株価水準は、今後再開発の成果が収益に反映されてくる時期を考えると、長期的に見れば割安感が残っている位置にある。派手さこそないが、5年間というスパンで見れば十分に報われる可能性が高い銘柄だと評価できる。
この記事の最終更新日:2025年11月22日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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