株価
東急とは

東急株式会社は、東京都南西部を中心に鉄道・不動産・商業施設・ホテル・通信・交通インフラなど幅広い事業を展開する、日本でも屈指の大規模私鉄グループの中核企業である。田園都市線、東横線、目黒線、大井町線といった沿線人口が非常に多い路線を抱え、通勤・通学需要の高さでは民鉄トップクラスの規模を持つ。沿線には渋谷、自由が丘、中目黒、二子玉川といった人気エリアが並び、「東急沿線」というブランドを形成している。
鉄道事業では、東京メトロや都営地下鉄、横浜高速鉄道との直通運転により、首都圏の広い範囲にアクセスできる利便性の高いネットワークを構築。特に東横線は副都心線経由で埼玉方面までつながり、一方でみなとみらい線を通じて横浜中心部まで延びているため、利用範囲が非常に広い。田園都市線は首都圏でも有数の通勤需要を誇り、安定した輸送人員が長期的な収益を支えている。
不動産・都市開発は東急の最も大きな強みで、渋谷駅周辺を中心とした超大型再開発を長期にわたって進めている。「渋谷ヒカリエ」「渋谷スクランブルスクエア」「渋谷フクラス」などの開業により、渋谷は、日本でも随一の複合都市へと進化している。これらの施設は商業・オフィス・観光の三要素を組み合わせた東急の基幹プロジェクトであり、長期的な賃貸収益を生む重要資産となっている。また、二子玉川ライズなどの大規模再開発は、沿線価値を大きく押し上げ、鉄道利用者増と不動産価値の向上という相乗効果を生んでいる。
商業施設事業でも存在感が大きく、東急百貨店、東急ストア、青葉台東急スクエア、たまプラーザテラス、二子玉川ライズS.C. など多数の商業施設を運営している。沿線人口の多さと購買力の高さを背景に、地域密着型の商業モデルを構築しており、鉄道事業との相乗効果で安定した収益を生み出している。
ホテル・リゾート事業では「東急ホテルズ」を展開し、渋谷セルリアンタワー東急ホテルをはじめ、全国にビジネスホテルからリゾートホテルまで幅広いラインナップを揃える。インバウンド観光が回復する局面では、ホテル部門が強い利益を生む体質を持っており、観光需要の波に乗りやすい事業構造となっている。
交通インフラでは、東急バスの運行をはじめ、地域交通を支える多様なモビリティ事業を実施。さらに、通信・ケーブルテレビ事業ではイッツコムを運営しており、インターネット・テレビ・電話などの通信サービスを沿線住民向けに展開している。近年は、シェアサイクル、カーシェア、スマートシティ関連、シニア住宅、教育関連など新しい事業分野にも広がりを見せ、沿線の生活インフラを幅広く支える企業グループへと進化している。
東急株式会社は、単なる交通企業ではなく、鉄道、不動産、商業、ホテル、通信、生活サービスまで含めた「街そのものをつくる企業」であり、沿線の価値を長期的に高めながら収益を拡大していくビジネスモデルを持つ。渋谷を中心とした巨大都市開発を継続している点は、他の私鉄にはない圧倒的な強みであり、企業価値の根幹となっている。
東急 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 1株益(円) | 1株配(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 931,293 | 44,603 | 47,369 | 25,995 | 42.9 | 15 |
| 連24.3 | 1,037,819 | 94,905 | 99,292 | 63,763 | 105.8 | 17.5 |
| 連25.3 | 1,054,981 | 103,485 | 107,724 | 79,677 | 134.8 | 24 |
| 連26.3予 | 1,075,000 | 102,000 | 108,100 | 81,000 | 141.9 | 28〜30 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 95,404 | -154,431 | 74,608 |
| 2024 | 145,334 | -101,000 | -71,957 |
| 2025 | 155,104 | -114,012 | -25,248 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値〜安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.7% | 3.5% | 0.9% | – | – |
| 2024 | 9.1% | 8.0% | 2.4% | – | – |
| 2025 | 9.8% | 9.6% | 2.9% | 25.6倍〜20.3倍 | 1.20倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
東急の直近4期間の業績推移を見ると、この会社が非常に安定した成長を続けており、特に収益力が大きく改善していることが数字からはっきり読み取れる。売上高は 9,312億 → 1兆379億 → 1兆549億 → 1兆750億(予想) と、鉄道会社としてはかなり順調な伸び方をしている。沿線の人口が多く、渋谷・二子玉川などの再開発効果が強いため、鉄道・不動産の両方が堅調に成長していることが背景にある。
営業利益は 446億 → 949億 → 1,034億 → 1,020億(予想) と、23年度から大きく飛躍しており、営業利益率も 4.7% → 9.1% → 9.8% と倍以上に改善している。東急は鉄道会社である一方、渋谷や二子玉川を中心とした都市開発が強力な収益源になっており、特に不動産賃貸や商業施設収入の伸びが利益の底上げに寄与している。
経常利益も 473億 → 992億 → 1,077億 → 1,081億(予想) と堅調で、財務面でも大きなブレがない。純利益は 259億 → 637億 → 796億 → 810億(予想) と非常に強く伸びており、EPSも 42円 → 105円 → 134円 → 141円(予想) と右肩上がりの改善が続いている。東急の利益成長は一時的なものではなく、渋谷再開発の賃料収入や沿線商業施設の安定した集客が支えており、継続性のある“質の高い成長”となっている。
収益性の面でも、ROEは 3.5% → 8.0% → 9.6% と改善を続け、ROAも 0.9% → 2.4% → 2.9% と鉄道会社としては非常に優秀な水準に達している。鉄道+都市開発+商業+ホテルの多角化モデルがうまく機能し、固定資産の重さに対して効率よく利益を生み出せている点が大きな特徴だ。
バリュエーションを見ると、2025年のPERは高値基準25.6倍・安値基準20.3倍というレンジで推移している。これは鉄道株としてはやや高めのバリュエーションだが、東急は他の私鉄(小田急・京王など)とは異なり、渋谷という日本屈指の収益地盤を持っているため、その強みがPERに織り込まれている形だ。一方でPBRは1.20倍と比較的落ち着いた水準で、極端な割高感はない。
総合すると、東急は鉄道会社でありながら都市開発や商業・ホテルといった多角化を強みに成長を続けている企業で、利益体質の改善も明確で安定感がある。特に渋谷再開発の賃料収入は長期的な収益源となり、今後も利益の底上げが期待できる。一方でPERがやや高めな点を考えると、短期で爆発的に上がるタイプではないが、都市開発の進展に合わせて堅調な成長を続ける“中長期向けの安定株”として魅力が高い。
結論として、東急は「利益の質が年々改善し、都市開発による長期成長が期待できる安定成長株」という投資判断が適しており、鉄道株の中でも“成長力のある部類”に入る企業と言える。
配当目的とかどうなの?
東急を配当目的で考える場合、まず押さえておきたいのは、予想配当利回り(2026・2027年度)が1.5%台にとどまっているという点だ。1.53%という利回りは決して悪くはないものの、配当で安定収入を得たい人に向けた“高配当銘柄”というよりは、あくまで成長企業としての側面が強い。日本株の中には3〜4%の利回りを普通に出す銘柄も多いため、利回りだけで銘柄を選ぶ場合、東急は優先順位が高いとは言えない。
ただし、利回りが低いからといって株主還元が弱いというわけではない。東急はもともと、配当を厚くするよりも成長投資や都市開発に資金を振り向ける傾向が強い企業で、渋谷エリアを中心とした大規模開発を継続して行うには相応のキャッシュが必要になる。そのため、利益を内部留保しながら投資余力を高め、企業価値そのものを押し上げるスタイルを長年貫いている。
実際に数字を見ても、その傾向がはっきり出ている。EPSは 42円 → 105円 → 134円 → 141円予想 と力強く伸びている一方で、1株配当は 15円 → 17.5円 → 24円 → 28〜30円 と、増配のペースは緩やかだ。つまり「利益は順調に増えているが、それをすぐに配当に回すのではなく成長に投資している」という構図で、東急が成長重視の会社であることが数字でも裏付けられている。
また、東急の事業構造は鉄道だけに依存せず、商業施設、ホテル、通信、そして渋谷再開発を軸とした都市開発など多方面に広がっているため、事業規模をさらに拡大するには継続的な投資が欠かせない。だからこそ配当性向もそこまで高くなく、株主には「高配当より企業価値の上昇で応える」タイプの企業といえる。
こうした背景を踏まえると、東急は配当目的で買うには適していないが、企業価値の積み上がりや中長期の成長性を重視する投資家にとっては十分に魅力のある銘柄だといえる。特に渋谷の再開発がひと段落し、収益が本格的に反映され始めれば、将来的な配当余力が高まる可能性もある。
結果として、東急は配当で大きく稼ぐ銘柄ではなく、利回り1.5%は“おまけ程度”と考える方が現実的だ。その代わり、企業価値の成長が継続するタイプの企業であり、毎年の配当収入を目的にするよりも、値上がり益や将来の事業成長を重視する長期投資で魅力が出やすい銘柄と言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
東急の現在値1,822円から今後5年間の株価推移を考えるうえで重要になるのは、同社が「鉄道会社」である以上に、「東京・渋谷を中心とした巨大都市開発企業」であるという点だ。鉄道事業は安定的だが急成長はしない。その一方で、商業施設・オフィス・ホテル・不動産開発の柱が年々強まり、ここ数年で利益の質が大きく変化しつつある。この“複合都市インフラ企業”という特殊なポジションが、5年先の株価を左右する大きなポイントになる。
まず良い場合のシナリオから見ていくと、最大のドライバーはやはり渋谷エリアの再開発群だ。渋谷スクランブルスクエア、渋谷ストリーム、渋谷ヒカリエ、桜丘地区など、東急は「日本の中でも最も地価が上がり続けているエリア」をほぼ独占的に開発している。このエリアの賃料単価は今後も堅調に推移する可能性が高く、特にオフィス・商業ともにテナント需要は強い。インバウンドが本格回復した今、ホテル部門もかなりの恩恵を受けており、都市型ホテルの客単価はコロナ前を超える水準にまで戻っている。
加えて、東急は「鉄道×不動産×商業×ホテル」の複合シナジーを最も効率よく生かせる会社で、渋谷はその象徴的エリア。これが継続して成長すると、EPSは150〜180円台に乗る可能性があり、市場が東急を“成長株寄りの不動産複合企業”として評価し始めれば、PERは17〜20倍も十分視野に入る。その場合、株価は 2,600〜3,300円、東京再開発ブームが再加速する局面では 3,500円超え という強い上昇も想定できる。
そして現実的に最もあり得る 中間シナリオでは、鉄道は安定、商業・ホテルは堅調、不動産はやや波があるものの平均すればプラス成長というパターンだ。渋谷の大型物件はすでに稼働済みのものも多く、今後はその賃貸収益が安定的に積み上がる段階に入ってくる。EPSは150円前後、PERは13〜16倍程度の評価が続き、株価は 2,100〜2,500円 辺りを中心とする価格帯で動く可能性が高い。今の1,822円からはじわじわと評価が戻り、地味ながら右肩上がりを描くイメージになる。
逆に悪い場合のシナリオでは、景気の後退や金利上昇が悪影響を及ぼし、オフィス・商業の賃料が伸び悩んだり、ホテル需要が一時的に鈍化したりするケースだ。不動産事業は金利に敏感で、資金調達コストが上がると利益が大きく削られる。また、渋谷の再開発は巨額投資を必要とするため、計画の遅延やコスト超過が続くと市場評価が下がりやすい。こうした流れが複合的に重なると、PERは10〜12倍まで低下し、株価は 1,400〜1,600円台 へ調整する可能性がある。情勢次第では1,300円台へ下ぶれする局面も否定できない。
総じて、東急は短期で爆発的に上がる銘柄ではないが、事業の幅が広く、特に渋谷という“強すぎる地盤”を持っている点が非常に大きい。都市型不動産は一度収益基盤ができると長期的に利益を生み続けるため、5年というスパンで見れば、じっくり資産価値が積み上がる可能性が高い企業だといえる。
この記事の最終更新日:2025年11月22日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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