株価
セコムとは

セコムは、日本の警備業界を代表するトップ企業で、企業・店舗・工場・オフィスから一般家庭まで、あらゆる場所の「安全と安心」を提供している。単なる警備会社という枠を超え、今では防犯・防災・医療・情報セキュリティまでカバーする“総合安全サービス企業”として進化しており、日本の社会インフラに近い立ち位置を確立している。
セコムの根幹となっているのは、24時間365日稼働するオンラインセキュリティサービスである。全国に配置された緊急対処員と指令センターがネットワークで連携し、顧客の施設・住宅で異常が発生すると瞬時に対応する仕組みになっている。このオンライン警備はセコムが国内で最初に展開したビジネスモデルで、現在では数百万件規模の契約件数を誇り、業界の圧倒的シェアを維持している。法人向けでは入退室管理システム、監視カメラ、センサー、耐火金庫、セキュリティゲートなど多様な設備と組み合わせて提供しており、企業の「設備・人の安全」を丸ごとサポートできる総合力がある。
また、防災・消防分野でも強い存在感を持ち、ビル・工場・大型施設向けの防火設備・スプリンクラー・消火設備の設計・施工・保守まで一貫して手がけている。消防法が厳しくなる中で、セコムの防災ソリューションは重要性を増しており、“企業がセキュリティと防災をワンストップで任せられる会社”として評価が高い。
金融機関向けサービスもセコムの大きな柱のひとつで、ATMの管理・障害対応、現金輸送、現金処理センターの運営まで行っている。銀行の有人業務を効率化する役割を担っており、金融インフラの一部を支える存在でもある。現金輸送や貴重品運搬は長年のノウハウが必要な高難度業務のため、セコムの強力な参入障壁となっている。
さらにセコムは医療・介護事業にも力を入れており、電子カルテシステム、医療情報ネットワーク、在宅医療支援、介護サービスなどを提供している。少子高齢化と医療の情報化が加速する中で、医療・介護分野のITとセキュリティを結びつけたビジネスモデルは、セコムの新たな収益源として拡大しつつある。
デジタル領域では、サイバーセキュリティサービスやデータセンター運営、無人店舗向けAIセキュリティシステムなど、社会のDX(デジタル化)に対応したサービスを積極的に展開している。オンラインとリアル警備を統合した「ハイブリッド警備」はセコムの強みで、AIカメラやIoTデバイスと組み合わせた高度なセキュリティプラットフォームの開発も進む。
海外展開も進めており、アジア・豪州・欧州などでセキュリティ事業を展開。国内市場が成熟していく中で、海外での拡大余地は依然として大きく、中長期の成長ドライバーのひとつとなっている。
総合すると、セコムは「警備企業」から「総合安全インフラ企業」へと進化した存在であり、事業範囲の広さ・ブランド力・技術力・人的ネットワークが非常に強い。企業向けも個人向けもどちらも強く、社会がどれだけデジタル化しても、「安全・安心」という普遍的な需要が続く限り、セコムの事業価値は揺るがない。景気変動の影響も受けにくく、長期的に安定した収益を生み続ける強固なビジネスモデルを持つ企業である。
セコム 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 1,101,307 | 136,700 | 156,124 | 96,085 | 222.5 | 92.5 |
| 連24.3 | 1,154,740 | 140,658 | 166,859 | 101,951 | 241.0 | 95 |
| 連25.3 | 1,199,942 | 144,297 | 175,123 | 108,109 | 260.0 | 97.5 |
| 連26.3予 | 1,251,000 | 150,000 | 168,700 | 103,400 | 253.1 | 100 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 146,426 | -70,446 | -77,836 |
| 2024 | 165,760 | -162,269 | -95,488 |
| 2025 | 167,842 | -100,798 | -85,246 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 12.4% | 8.2% | 4.8% | – | – |
| 2024 | 12.1% | 8.3% | 4.8% | – | – |
| 2025 | 12.0% | 8.5% | 5.0% | 22.5倍 / 16.6倍 | 1.77倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
セコムの直近の業績推移を見ると、売上・利益ともに非常に安定しており、典型的な「優良ディフェンシブ企業」の姿がはっきりと表れている。売上高は23.3期の1兆1,013億円から、26.3期予想では1兆2,510億円と、年々着実に増加している。景気に左右されにくいセキュリティサービスを基盤としているため、売上のブレが極めて小さく、長期的に右肩上がりの成長を維持している点が大きな特徴だ。
利益面でも同様に安定しており、営業利益は23.3期の1,367億円から26.3期予想の1,500億円へと、堅実な伸びを見せている。経常利益も年々増加傾向にあり、本業の強さとコスト管理の良さがうかがえる。純利益に関しては24.3期 → 25.3期で増加し、26.3期はやや減益予想となっているものの、それでも1,000億円を超える利益を確保しており、極めて高い収益基盤を維持している。
EPSの推移を見ても、222.5円 → 241.0円 → 260.0円 と安定した増加が続いており、26.3期予想でも253.1円と非常に高水準だ。EPSが長期的に積み上がる企業は、株主価値の向上という点で優秀な企業が多く、セコムもその典型といえる。
一方で指標面を見ると、PERは高値平均で22.5倍、安値平均で16.6倍と、全体的にやや割高な評価を受けている。この点は「ディフェンシブで利益が安定する企業は高めに評価されやすい」という投資家の嗜好を反映したもの。PBRも1.77倍と、純資産に対して市場からしっかり評価されている。ROEは8%台、ROAは約5%と、極端に高いわけではないが、事業の安定性を考えれば十分な水準であり、堅実な収益性を確立している。
営業利益率は12%前後で推移しており、警備・サービス業としてはかなり高水準。オンラインセキュリティのストックビジネス比率が高く、固定収入が積み上がるビジネスモデルが強固な利益率を支えている。大きな利益の落ち込みもなく、四半期ごとの変動も少ないため、長期保有を前提とした投資家には扱いやすいタイプの企業といえる。
総合的に見ると、セコムは「安定成長+高いブランド力+強固なストック収益」という、優良ディフェンシブ株の条件をしっかり満たしている。景気後退局面でも業績が崩れにくく、大幅な減益や赤字の可能性は極めて低い。株価が急騰するタイプではないが、長期的にじわじわと上がりながら、安定した配当とEPS成長を享受できる“王道の長期投資向き銘柄”と言える。
市場からの評価はやや高め(PER16〜22倍)だが、利益の安定性・事業の独占的ポジションを考えると妥当であり、長期投資のポートフォリオに入れるには非常に扱いやすい銘柄だ。短期で大きなリターンを狙う銘柄というよりは、10年単位でじっくり育てることで価値を発揮するタイプの優良株と評価できる。
配当目的とかどうなの?
セコムの配当を純粋に「配当目的」で評価する場合、この銘柄は“高配当株”というより「安定配当を長期で受け取るタイプの優良企業」という位置づけになる。予想配当利回りは26.3期・27.3期ともに1.82%となっており、日本株全体の平均(約2%)と比較するとわずかに低めの水準だ。利回り重視の投資家から見るとやや物足りない数字ではあるが、この利回りの低さには理由がある。
まず、セコムは利益のブレが非常に小さく、EPSも年々積み上がる安定成長企業であるため、株価が高く評価されやすい。株価が割高に推移しがちなため、自動的に配当利回りが低く見える構造になっている。これは「市場から期待されている優良株」の典型的な特徴で、利回りの低さが企業の質の低さを意味しているわけではない。
また、セコムは長年にわたり安定的に増配を続けてきた企業でもある。23.3期の92.5円から24.3期に95円、25.3期に97.5円と、毎年わずかずつではあるが確実に配当を増やしている。さらに26.3期予想は100円と、節目となる「年間配当100円」に到達している。増配を止めず、無理のないペースで持続可能な株主還元を続けている点は、高配当株とは別の意味で安心感がある。
財務面を見ても、セコムは自己資本比率が高く、営業キャッシュフローも毎年安定して流入するため、“減配リスクが極めて小さい”という強みを持っている。配当性向も比較的保守的で、利益の大部分を成長投資に回しており、企業価値の積み上げが配当以外の形でも株主に還元されている。
ただし、配当収入そのものを大きく狙う投資家にとっては、利回り1.8%前後という水準は物足りない。例えば電力株や商社株のように3〜5%台の配当を狙うというスタイルとは根本的に合わない銘柄だ。高配当がほしい人にとっては、より利回りの高い銘柄を選んだ方が効率的だろう。
しかし、資産を安全に増やしたい、景気に左右されにくい銘柄を長期で保有したいという投資家にとっては、セコムの「安定した小型の増配+株価の長期的成長」は十分魅力がある。企業の信頼性と安定収益に支えられた“堅実配当株”としては非常に評価が高い。
総合すると、セコムは「高利回りを狙う銘柄ではないが、長期的に安定した配当と着実な企業成長を期待できる、安全性の高いディフェンシブ株」として適している。配当を殖やすというより、安心して長く持ちながらじわじわと資産が増えていくタイプの銘柄と言えるだろう。
今後の値動き予想!!(5年間)
セコムの現在株価5,479円を基準に、今後5年間の株価推移を「良い場合」「中間の場合」「悪い場合」で予想すると、以下のようなシナリオが考えられる。まず前提として、セコムは業績のブレが小さく、EPSも安定して積み上がっていくタイプの企業であるため、短期で急騰するよりも、長期でゆっくり成長していく傾向が強い。また、PERは16〜22倍前後で評価されることが多く、利益の安定性から株価が大きく崩れる可能性は比較的低い。こうした特徴を踏まえたうえで、将来の値動きを3パターンに分けて考えてみる。
【良い場合】
海外事業の拡大、サイバーセキュリティや医療分野での成長が順調に進み、EPSも現在より大きく伸びていくシナリオである。またAIカメラ・無人店舗など新しいセキュリティ需要が本格化し、ストック収入が増加すれば、PERも高めの22〜24倍が維持される可能性がある。この場合の5年後の株価は7,000円〜8,000円台が視野に入る。特に円安やインフレ下で「ディフェンシブ銘柄への資金シフト」が起きると、株価はさらに上値を追いやすい。
【中間の場合】
現在のセコムの業績トレンドがそのまま続き、売上・利益ともに緩やかに成長を続けるシナリオ。大きな追い風も逆風もなく、堅調にEPSが積み上がる通常ケースである。PERは過去の平均的な16~20倍程度に落ち着き、株価はおおむね横ばい〜緩やかに上昇する形になるだろう。この場合、5年後の株価は6,000円〜6,500円前後が現実的なラインになる。派手ではないが、ディフェンシブ銘柄としては十分に堅実な推移だと言える。
【悪い場合】
景気後退や災害・不景気の影響で法人のセキュリティ投資が一時的に落ち込み、海外事業の伸びが鈍化するケース。また、賃金・設備投資のコスト増が利益圧迫につながり、EPSが伸び悩む可能性もある。さらに市場全体が割安方向に調整した場合、セコムのPERも14〜16倍程度まで低下することがある。この場合の5年後の株価は4,800円〜5,300円あたりが想定され、現在値に対してやや下方向のリスクを意識する展開となる。ただし、大幅な赤字や急落が起きにくい企業であるため、崩れ方は限定的になりやすい。
総合すると、セコムは急騰・急落タイプではなく、企業価値とともにじっくり株価が上がっていく“ディフェンシブ成長銘柄”である。良い場合は7,000〜8,000円、中間なら6,000〜6,500円、悪い場合でも4,800〜5,300円程度と、比較的読みやすいレンジで推移しやすいのが特徴だ。長期的には安定成長と堅実な増配を背景に、ゆっくりと資産形成に貢献してくれるタイプの銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2025年11月23日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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