株価
中部電力とは

中部電力は、愛知県・岐阜県・三重県・静岡県・長野県といった中部地方を中心に電力を供給する大手電力会社で、日本の電力業界の中でも中核的な存在となっている。自動車産業をはじめとした製造業が集中する地域を担当しているため、企業向けの電力需要が大きく、国内でも屈指の産業エリアを支えるインフラ企業として重要な役割を果たしている。地域経済とのつながりが非常に強く、「中部地方のライフラインを支える企業」というイメージが最も近い。
事業内容は、発電・送配電・小売という3つの柱を軸に幅広く展開している。発電部門では、火力発電、水力発電、原子力発電といった多様な電源を保有し、それらを組み合わせることで安定的な電力供給を可能にしている。特に静岡県にある浜岡原子力発電所は中部電力の象徴的な設備であり、安全対策の強化や津波対策など長期的な投資を続けている。再稼働に向けては厳しい審査が続いており、電力会社としても慎重な姿勢で対応を進めている。
また近年では、再生可能エネルギーへの取り組みも加速している。太陽光、風力、水力などの再エネ発電所を国内外で開発し、脱炭素社会に向けて事業構造の転換を図っている。特に洋上風力の開発やグリーンエネルギー関連の新規事業にも積極的で、国内電力会社の中では比較的早い段階から“エネルギーの多角化”に取り組んでいる点が特徴だ。
送配電を担当する中部電力パワーグリッドは、中部地方一円に張り巡らされた送電線・電柱・変電所といった膨大なインフラを管理し、24時間体制で安定供給を支えている。電力自由化後は、新電力会社が中部地方で電力販売を行う場合でも、この送電網を使用することになるため、公平で安定したネットワーク運用が求められている。台風や地震の多い地域であることから、災害対策や復旧スピードの向上にも力を入れており、地域の生活インフラとして欠かせない部門となっている。
小売部門の中部電力ミライズでは、家庭向け・企業向けの電力販売に加えて、ガス供給サービス、太陽光との組み合わせプラン、蓄電池サービス、EV向け充電ソリューション、スマートホーム関連事業などを展開。単に電気を売るだけでなく、「地域のエネルギーを最適化するサービス企業」として進化しつつある。とくに省エネ提案や、電気・ガスをまとめた総合サービス提供によって顧客の囲い込みを強めており、電力自由化の競争環境の中でも一定の安定感を保っている。
さらに近年では、海外でのエネルギー開発、脱炭素に向けた技術投資、デジタル技術を活用したインフラ管理など、新しい分野への挑戦も始まっている。火力発電の効率向上技術、カーボンニュートラル燃料の研究、地域の需要予測やエネルギーの最適制御など、電力会社の枠を超えた事業開発も進めている。
総合的に見ると中部電力は、地域の生活と産業を根底から支える巨大インフラ企業でありながら、脱炭素化や電力自由化の時代の流れに合わせて事業の形を変えようとしている、変革期にある企業と言える。電源構成の多様化、送配電の強靭化、サービス事業の拡大、再エネへの転換など、多方面で大きな動きを見せており、電力業界の中でも比較的「攻めの姿勢」を持った企業だという印象が強い。
中部電力 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 3,986,681 | 107,089 | 65,148 | 38,231 | 50.6 | 50 |
| 連24.3 | 3,610,414 | 343,339 | 509,295 | 403,140 | 533.2 | 55 |
| 連25.3 | 3,669,234 | 242,045 | 276,400 | 202,087 | 267.4 | 60 |
| 連26.3予 | 3,550,000 | 190,000 | 250,000 | 185,000 | 245.0 | 70 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算年 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 2.6% | 1.8% | 0.5% | – | – |
| 2024年 | 9.5% | 15.5% | 5.6% | – | – |
| 2025年 | 6.5% | 7.2% | 2.8% | 13.7倍/10.6倍 | 0.60倍 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算年 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 2.6% | 1.8% | 0.5% | - | - |
| 2024年 | 9.5% | 15.5% | 5.6% | - | - |
| 2025年 | 6.5% | 7.2% | 2.8% | 13.7倍/10.6倍 | 0.60倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
中部電力の直近の業績推移を見ると、この企業が「電力自由化の難しい環境の中でも比較的安定した収益基盤を維持している電力会社」であることがわかる。売上高は毎年3.5~4兆円規模で推移しており、これは日本の電力会社の中で上位に入る大きさだ。もちろん燃料価格の乱高下や原発停止など外部要因の影響を強く受ける業界ではあるが、中部電力はその中でもブレ幅が比較的少なく、安定感のある決算が続いている。
23.3期は営業利益1070億円、経常利益651億円、純利益382億円と控えめな数字だったが、24.3期には営業利益3433億円、経常利益5092億円、純利益4031億円と大幅に収益が改善している。これは燃料価格の落ち着きや電気料金の調整効果などが表れた結果であり、電力会社としての収益体質がうまく機能した年だったと言える。
25.3期では営業利益2420億円、経常利益2764億円、純利益2020億円と、24.3期と比較すれば利益は落ちているものの、それでも十分に黒字を維持しており、EPSも267.4円と安定している。さらに、26.3期予想でも営業利益1900億円、経常利益2500億円、純利益1850億円を確保する見込みで、赤字転落の懸念はなく“安定黒字の電力会社”としての位置付けは変わらない。
利益率の面を見ると、営業利益率は23.3期の2.6%から24.3期に9.5%へ急回復し、25.3期も6.5%を維持している。電力会社はもともと利益率が低くなりやすい業種だが、その中でこの水準はかなり健全な方だ。さらにROEも1.8% → 15.5% → 7.2%と推移しており、24.3期の高収益年度の反動で25.3期は落ちているものの、総じて悪い数値ではない。ROAについても0.5% → 5.6% → 2.8%と推移し、過度な借入依存でもなく、財務の安定感が伺える。
PBRも0.6倍という水準で、純資産に対して株価が割安に評価されている状態で、電力株特有の“低PBR銘柄”に該当する。PERも直近では10.6〜13.7倍が目安となっており、利益が安定している中でのこの評価は、過熱感がない適正〜やや割安圏と言える。
これらを総合すると、中部電力は「安定黒字+割安評価+着実な配当」の3つが揃った、堅実な電力株という印象が強い。燃料価格や原発関連の話題で一時的に利益はぶれるが、赤字リスクは低く、事業基盤もしっかりしているため、長期保有にも耐えられる銘柄だと言える。
また、配当についても、23.3期の50円から年々増配し、26.3期予想では70円となっており、配当性向もしっかり維持されている。東京電力のように長期の無配企業ではなく、安定配当を継続できている点も魅力だ。再エネ事業や海外事業にも積極的で、電力会社としては比較的“攻めの姿勢”が見られることもプラス要素になる。
結論として中部電力は、安定した収益と配当を求める投資家に向いており、過度な急騰は期待しづらいが、底堅くジワジワと価値が積み上がるタイプの銘柄と言える。割安性・配当・業績の安定感を総合すると、電力セクターの中では比較的“扱いやすい良株”という印象が強い。
配当目的とかどうなの?
中部電力を配当目的で考える場合、この銘柄は電力株の中でも比較的バランスが良く、長期で安定的に保有しやすいタイプの企業だと言える。まず配当利回りを見ると、26.3期で3.00%、27.3期では3.43%となっており、飛び抜けて高い水準ではないものの、安定したインフラ企業としては十分実用的な利回りになっている。日本株全体の平均利回りが2%前後であることを考えると、3%台というのは、過度なリスクを取らずに着実なリターンを狙える比較的堅実な水準で、配当投資としては扱いやすい。
中部電力は東京電力のように廃炉・賠償コストの影響で無配が続く企業とは異なり、業績が安定して黒字を維持できているため、配当を継続できるだけの体力がしっかりある。実際、23.3期の50円から24.3期に55円、25.3期に60円、そして26.3期予想では70円と、毎年着実に増配を重ねており、減配リスクも比較的低い。黒字基調が続いているだけでなく、キャッシュフローも安定しているため、今後も無理のない範囲での配当維持が期待できる。
もちろん電力株には特有のリスクがあり、燃料価格の乱高下や原発の安全対策費、再生可能エネルギーへの投資負担など、利益が波打つ要因はいくつもある。しかしその中にあっても、中部電力は利益の振れ幅が比較的小さく、23.3期から26.3期予想まで一貫して黒字を保っている。電力自由化や燃料市況の影響を受けつつも、損益が極端に悪化しづらいのは大きな強みであり、安定配当株として評価できるポイントとなる。
また、中部電力はPBRが0.6倍と低く、市場から割安に放置されている状態でもあるため、資産価値を考慮すれば“過度に買われていない手堅い大型株”という見方もできる。急激な株価上昇は期待しにくいものの、景気が悪化しても暴落しにくいタイプの銘柄で、資産の一部を守りながら配当を受け取る長期の資産形成には相性が良い。
総合すると、中部電力は高配当株のように派手な利回りを狙う銘柄ではないものの、安定した黒字と増配傾向を背景に、確実性の高い配当を受け取りながら安心して長期で保有できる堅実なインフラ株という位置付けになる。値上がり益を大きく狙うというよりも、安定配当を軸に着実に資産を積み上げたい投資家に向いており、リスクを抑えながら収益を得たい人にとっては扱いやすく、バランスの取れた銘柄だと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
中部電力の株価を、現在の2,328.5円から今後5年間でどのように推移していくかを考えると、この銘柄は電力会社の中でも比較的安定した動きをしやすいという特徴が見えてくる。電力株というのは本来、燃料価格や政策の影響を受けやすく、業績が外部環境に左右される面が大きいのだが、中部電力の場合は黒字基調が続いていること、賠償などの特殊な負担を抱えていないこと、そして配当も増配傾向にあることから、株価が大きく崩れにくいという“底堅さ”がある。
とはいえ、浜岡原発の再稼働問題や、火力発電燃料であるLNGや石炭の市況、そして電気料金改定といった要素は、これからの株価を左右する重要なポイントになる。中部電力は特に原発関連のニュースで株価が動きやすく、再稼働が進むという情報が出れば一気に見直し買いが入る一方、逆に安全対策の遅れが出れば重しになる。この辺りは他の電力会社と同様、政策の方向性がダイレクトに株価に影響する部分だ。
そんな中で、今の株価から考えられる5年間のシナリオを強気・中間・弱気の3つに分けてみると、かなり現実的なラインが見えてくる。
まず良い場合、つまり燃料価格が落ち着き、電気料金の調整もスムーズに進み、原発関連でも前向きなニュースが出てくるような環境が続けば、利益が安定して増えやすくなり、株価がしっかりと評価される展開になりやすい。もともとPBRが0.6倍と割安に放置されている銘柄であるため、条件が整えば2,800円から3,400円あたりまで見直される可能性が十分にある。
一方で最も起こりやすいのは、良くも悪くも決定打のない“中間”的な展開だ。原発再稼働が大きく進まず、燃料価格も上がりも下がりもせず、業績は黒字を維持するが爆発的に伸びるわけでもない。こうした状態が続くと、株価は2,200〜2,700円台の範囲で徐々に上下を繰り返し、最終的には今の株価から大きく離れない形で推移していくことが多い。配当が増配基調にあるため、下がったところでは拾われやすく、大幅な下落は生じにくい。
逆に悪い場合を考えると、燃料価格が大きく跳ね上がったり、原発関連で新たな安全対策費が発生したり、再エネ投資が想定以上に重荷になったりすると、利益が圧迫されて株価が下方向に振れやすくなる。ただし、中部電力は東電のように極端なリスクを抱えているわけではないため、企業そのものが揺らぐような展開は現実的ではなく、株価が1,600〜2,000円くらいの範囲で踏みとどまるパターンがほとんどだ。このあたりまで下がるとPBRは0.5倍前後となり、さすがに割安感から買い戻しが入りやすい。
総合すると、中部電力は派手な値動きをするタイプの銘柄ではないものの、安定した黒字や増配傾向を背景に大きな下落を起こしにくいという特徴を持っている。再稼働や燃料価格の落ち着きといった外部環境がそろえば株価が上向く可能性は十分にあるし、逆に環境が悪化しても底が抜けるような下落にはなりにくい。長期的に見れば、安定感を重視しながらじっくり保有していくには向いている銘柄だと言えるし“暴落しづらく大崩れもしにくい中堅インフラ株”という位置づけがもっとも近い。
この記事の最終更新日:2025年11月23日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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