株価
東宝とは

東宝は、日本を代表する映画会社であり、映画の製作・配給・興行を中心に、演劇事業や不動産事業まで幅広く展開する総合エンターテインメント企業である。1932年に設立され、長年にわたって日本映画業界の中心的存在として知られ、映画館チェーン「TOHOシネマズ」を全国に展開している。製作から配給、興行までを一貫して手がけるビジネスモデルは国内でも数少なく、業界内で非常に強い競争力を持つ。
映画事業では、「ゴジラ」シリーズをはじめとする自社IP(知的財産)を活用した映画製作が大きな柱となっており、国内映画市場でトップシェアを誇る。邦画だけでなく洋画の買付・配給も行っており、アニメ・実写映画・ファミリー向け作品まで幅広いジャンルを取り扱う。劇場向け作品だけでなく、動画配信プラットフォーム向けコンテンツや海外市場への展開も強化しており、多様な収益源を確保している。
映画興行では、傘下の「TOHOシネマズ」を通じて全国に多数の映画館を運営し、国内トップクラスのシェアを持つ。最新設備を備えたシアターやIMAX・ドルビーシネマなどの高付加価値スクリーンの導入に積極的で、興行収入の拡大と顧客満足度の向上を目指している。映画館事業と製作・配給のシナジーは大きく、自社作品を自社シアターで上映できる強みが収益の安定につながっている。
演劇事業も東宝の重要な柱であり、帝国劇場、シアタークリエなどの自社劇場を運営し、ミュージカルや舞台作品の制作・上演を行っている。特に『レ・ミゼラブル』や『エリザベート』『ミス・サイゴン』など世界的に人気の高い演目を長年にわたり日本で上演しており、安定した収益基盤を持つ分野となっている。
さらに、不動産事業では、映画館や劇場周辺の不動産開発・賃貸を行っており、これも収益の安定化に大きく寄与している。東京・日比谷地区や新宿エリアを中心に、商業施設・オフィスビル・複合施設の開発を行い、エンターテインメントと不動産を組み合わせたビジネスモデルが特徴となっている。
総合すると、東宝は映画製作・配給・興行、演劇、不動産といった複数の領域で安定した収益を持つ、日本のエンターテインメント企業の中でも圧倒的な存在感を誇る企業である。長年蓄積したブランド力と自社IP、映画館ネットワーク、劇場運営などが強固な競争力を生み出しており、映像・舞台・不動産がバランス良く収益を支えるビジネス構造が大きな特徴となっている。
東宝 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 1株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.2 | 244,295 | 44,880 | 47,815 | 33,430 | 190.4 | 60 |
| 連24.2 | 283,347 | 59,251 | 63,024 | 45,283 | 259.5 | 85 |
| 連25.2 | 313,171 | 64,684 | 64,455 | 43,357 | 254.8 | 85 |
| 連26.2予 | 305,000 | 60,000 | 58,000 | 45,500 | 268.3 | 85〜94 |
| 連27.2予 | 320,000 | 63,000 | 63,000 | 43,000 | 253.6 | 90〜95 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 45,404 | -9,175 | -19,125 |
| 2024 | 43,350 | -62,706 | -11,630 |
| 2025 | 51,617 | -18,465 | -39,298 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 18.3% | 8.1% | 6.2% | — | — |
| 2024 | 20.9% | 9.8% | 7.3% | — | — |
| 2025 | 20.6% | 9.0% | 6.6% | 高値平均 26.9倍 安値平均 19.4倍 |
3.04倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
東宝の直近の業績推移を確認すると、この企業が「安定感のあるエンタメ・不動産ハイブリッド企業」であり、映画興行の波を受けつつも大きく業績が崩れにくい体質を持っていることがよく分かる。まず売上高は23.2期の2,442億円から25.2期には3,131億円まで拡大し、26.2期予想でも3,050億円と高い水準を維持している。映画やアニメ市場が好調であることに加え、TOHOシネマズの回復、そして不動産部門の安定収益が全体を下支えする構造が続いている。
利益面を見ると、営業利益は23.2期の448億円から24.2期592億円、25.2期646億円と緩やかに成長し、26.2期予想も600億円と高い水準を維持している。経常利益も同様の推移で、63,024百万円 → 64,455百万円 → 58,000百万円と、ほぼ横ばいながら安定した収益力を確保している点は非常に強い。純利益も常に400億円前後で推移しており、映画興行の波があっても利益が急落しないのは東宝ならではの特徴だ。
この安定感の背景にあるのが、映画製作・配給・興行という“川上から川下まで”を全部持つビジネスモデルだ。ゴジラ、名探偵コナン、シン・シリーズといった強力なIPを多数抱えており、映画館(TOHOシネマズ)を自社で運営しているため、ヒット作が出れば利益が一気に伸びる。映画不調でも不動産収益でカバーできるため、事業全体のボラティリティ(ブレ)が小さくなる。
EPSを見ると、190円 → 259円 → 254円 → 268円予想 と安定して高水準を維持しており、株主価値が確実に積み上がっていることがわかる。配当も60円から85円へ増配し、26.2期は85〜94円の予想となっており、株主還元姿勢は非常に強い。
指標面を見ると、営業利益率は18〜21%台とエンタメ企業としてはトップクラスの高さ。ROEは8〜10%、ROAは6〜7%台と、資本効率も安定して優良水準にある。PBRは3.0倍台と高めだが、東宝のブランド価値や保有不動産、安定収益力を考えればケタ違いに割高というほどではない。ただしPERは19〜27倍のレンジで推移しており、バリュー株というより“高評価の優良株”として扱われている銘柄である。
総合的に見て、東宝は「業績の安定・ブランド力・IP資産・不動産収益」という強烈な4本柱に支えられた鉄板企業であり、長期的な成長力と堅実性を兼ね備えた投資対象として非常に優秀だ。映画業界の波は多少あっても、不動産事業や劇場収入が安定しているため、利益が大きく崩れるリスクが低い。市場全体の景気に左右されにくく、長期保有で価値が積み上がるタイプの銘柄であり、地味ではあるが非常に強い。
配当目的とかどうなの?
東宝を配当目的で検討する場合、この銘柄は「安定感は抜群だが、利回りはかなり低い」という、インカム投資としてはわかりやすい特徴を持っている。予想配当利回りを見ると、26.2期で0.92%、27.2期で0.98%と、1%前後にとどまっており、日本株の平均利回り(2%前後)を大きく下回る水準だ。つまり、東宝は“配当で儲ける銘柄”ではなく、“安定成長と株価の値上がりを狙う銘柄”という位置づけが強い。
東宝の場合、利益水準は安定しているが、配当は過度に増やすのではなく、“着実・慎重な増配”を基本姿勢としている。23.2期の60円から現在は85円〜94円へと増配はしているものの、EPS250円前後という水準に対して配当性向は30%未満と控えめだ。これは企業として財務健全性や投資余力を重視しており、安定したキャッシュフローを維持しながら長期の事業展開を狙う東宝らしい方針と言える。
配当利回りが低い最大の理由は「株価が高い」ことにもある。東宝は安定収益とブランド価値、強力なIP、そして質の高い不動産収益によって、常に高い株価評価を受ける優良株だ。PBR3倍、PER20〜27倍のレンジで推移しており、投資家から“割安株”としてではなく“優良株プレミアム”として買われている。そのため、配当利回りが上がりにくい状態が続きやすい。
ただし、東宝は配当そのものは非常に安定している。業績は長期的に右肩上がりで、映画が不調の年でも不動産事業や劇場収益が下支えになり、減配リスクは極めて低い。増配基調にあることも確かで、株主還元の姿勢は継続的に見られる。利回りは低くても“安定して受け取れる配当”という点では安心感は高い。
しかし、配当だけを目的に東宝を選ぶというのは現実的ではない。インカム狙いなら他にもっと利回りの高い銘柄が多数あるため、東宝は配当投資の主役にはならない。むしろ、東宝に投資する価値は「長期での株価上昇」「IP価値の向上」「不動産事業の安定」「エンタメ市場全体の成長」といったキャピタルゲイン側にある。
まとめると、東宝は“配当をメイン目的に買う銘柄”ではないが、“安定成長銘柄として長く持ち、その中で安定した配当も受け取りたい”という投資家には相性が良い。利回りを追う人よりも、東宝ブランドの安定性と長期的な企業価値の向上に魅力を感じる投資家向けの銘柄と言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
東宝の株価は現在9,155.0円だが、この先5年間の値動きを考えるうえで重要なのは、映画興行の動向、自社IP(ゴジラ・コナン・シンシリーズなど)の強さ、動画配信との競合、さらに不動産事業の堅調さといった複数の要因だ。東宝は映画・演劇・不動産の“三本柱”で構成される企業であり、エンタメ株の中でも利益のブレが小さく、大崩れしにくい安定銘柄として知られている。
まず良い場合を考えると、映画市場の拡大が続き、東宝の自社IP作品が国内外でヒットするケースだ。ゴジラシリーズの世界的ヒットや、名探偵コナンの興行記録更新が続くような状況になれば、映画部門が大きく伸びる。さらにTOHOシネマズの来場者数が回復し、劇場の高付加価値スクリーン(IMAX・ドルビーシネマなど)も収益改善につながる。不動産事業も好調継続となれば、企業価値はさらに上昇し、PERの見直しも起きやすい。この場合、5年後の株価は 10,500〜12,000円 のレンジに到達する可能性がある。自社IPの強さがもっとも株価に効くシナリオで、東宝の“ブランド力プレミアム”がそのまま株価へ反映される形だ。
次に中間の場合は最も現実的で、映画市場は拡大も縮小もしない安定状態が続き、ヒット作もあるが平均的な年もあるというパターンだ。興行収入と劇場事業は安定し、不動産収益も堅調だが、爆発的な成長材料は出ないケースである。この場合、株価は現在値を中心に上下しやすく、5年後のレンジは 8,500〜10,000円 程度に収まりやすい。東宝のビジネスは景気に左右されにくく、利益率も安定しているため、株価が大きく下に崩れにくいのが特徴である。長期保有でじっくり堅実に構える投資家にとっては、このシナリオが最も馴染みやすい。
最後に悪い場合のシナリオでは、映画館来場者数が減少するケース、配信サービスとの競争激化で興行収入が伸びにくくなるケース、海外IP展開の失敗、不動産市況の悪化などが重なる可能性がある。特に映画は良い年と悪い年の差が大きいため、ヒット作の不足が続くと収益はじりじりと下がりやすい。この場合、株価は 7,000〜8,000円 程度まで調整するリスクがある。ただし東宝の場合、不動産部門が安定収益を提供するため、そこからさらに大崩れする可能性は低い。
総合すると、東宝は“急成長株ではないが、安定して保有しやすい優良株”であり、株価の上下幅も比較的小さく、長期で見ればじわじわと価値が積み上がるタイプの銘柄である。現在の9,155円は全体から見ると「やや中間〜強めゾーン」にあり、大きく下落しにくい一方、映画市場の追い風が吹けば上振れ余地も十分残している。
この記事の最終更新日:2025年11月23日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す