株価
ANAホールディングスとは

ANAホールディングスは、日本最大規模の航空グループであり、全日本空輸(ANA)を中心に、国内外の航空ネットワークを幅広く展開する企業である。1952年に創業して以来、日本航空(JAL)とともに日本の空のインフラを支え続けてきた存在で、現在は持株会社体制のもと、旅客輸送・貨物輸送・整備・旅行・システムサービスなど、多岐にわたる事業をグループ全体で運営している。
ANAの中核である旅客事業には国内線と国際線があり、国内線では羽田・成田・伊丹・新千歳・福岡を中心に、全国各都市を縦横に結ぶ最大級のネットワークを持つ。ビジネス路線から地方の生活路線まで幅広くカバーし、日本の移動インフラとして欠かせない存在となっている。一方、国際線ではアジア・欧州・北米を中心に長距離路線を運航しており、特に北米線と東アジア線で強い競争力を持っている。コロナ禍による国際需要の落ち込みからの回復でも、ANAは比較的速いペースで路線を再開し、海外旅行やビジネス需要の戻りに合わせて収益を取り戻しつつある。
またANAはスターアライアンスに加盟しており、世界の主要航空会社との連携により、単独では提供できない巨大な世界ネットワークを構築している。これにより、国際線の乗り継ぎ利便性が向上し、世界中の都市へスムーズにつながるグローバルな輸送網を実現している。
貨物事業もANAの大きな柱の一つだ。ANAカーゴを中心に航空貨物輸送を手掛け、半導体・医薬品・精密機器・EC物流など、時間的制約が大きい商材の輸送で高い信頼を得ている。国際物流の需要増やサプライチェーンの再編が進む中で、ANAの貨物事業は安定した収益源として重要性を増している。
さらにANAグループは、航空運送を支える周辺事業でも広い領域をカバーしている。機体整備やエンジン整備を行う整備事業、空港での搭乗手続き・手荷物取り扱いなどを行う地上支援業務(ハンドリング)、機内食の製造、旅行商品を企画・販売するANAセールス、航空券予約・運行管理などのシステム開発事業など、多様なグループ会社が航空事業を支える形で運営されている。これにより、運航品質の維持だけでなく、コスト面でも効率的なグループ運営が可能となっている。
近年では、デジタル技術の強化やマイレージサービスの拡充、海外拠点の戦略的強化、環境対応(SAF=持続可能な航空燃料の導入、CO₂削減施策の推進)など、航空業界が抱える新たな課題にも積極的に取り組んでいる。世界的な脱炭素の動きが加速する中で、ANAは環境戦略を重要テーマとして掲げ、長期的な競争力強化に向けた投資も進めている。
総合すると、ANAホールディングスは日本国内最大の航空ネットワークと国際的なブランド力を背景に、旅客・貨物・航空サービス・旅行・ITなど多角的な事業展開を行う巨大航空グループであり、日本と世界を結ぶ基盤インフラとして極めて重要な役割を果たしている企業だといえる。
ANAホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 1,707,484 | 120,030 | 111,810 | 89,477 | 190.2 | 0 |
| 24.3 | 2,055,928 | 207,911 | 207,656 | 157,097 | 335.1 | 50 |
| 25.3 | 2,261,856 | 196,639 | 200,086 | 153,027 | 325.6 | 60 |
| 26.3(予) | 2,550,000 | 205,000 | 195,000 | 145,000 | 306.0 | 60 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 449,822 | -204,026 | -142,909 |
| 2024 | 420,622 | -399,525 | -136,045 |
| 2025 | 373,034 | -343,656 | -170,154 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 7.0% | 10.3% | 2.6% | ― | ― |
| 2024 | 10.1% | 15.0% | 4.4% | ― | ― |
| 2025 | 8.6% | 13.5% | 4.2% |
高値平均 12.1倍 安値平均 9.5倍 |
1.16倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
ANAホールディングスの直近3年間の業績を見ると、コロナ禍からの回復が確実に進んでおり、その勢いは売上・利益の両面に表れている。2023年3月期の営業利益は1,200億円規模だったが、2024年には2,000億円超へと急回復し、2025年3月期も2,000億円近い水準が維持されている。売上高も順調に拡大しており、コロナ前の水準を完全に超えて成長軌道に戻ったことが数値から明確に読み取れる。
経常利益・純利益もほぼ同じ動きをしており、2023年の純利益約895億円から、翌2024年には1,570億円へと大幅に改善し、2025年も1,530億円と高水準を維持している。これは国際線の大幅な回復、航空需要全体の正常化、貨物事業の安定収益化が相まって、収益構造そのものが強くなってきている証拠だといえる。
利益率の面でも改善が進んでおり、営業利益率は2023年の7%から2024年には10%を超え、2025年は一時的に8%台へやや落ち着くものの、依然として高い水準を維持している。航空会社は原価が重く利益率が出にくい業種だが、ANAは固定費の管理が進み、燃油効率の改善や機材更新の効果も出ているため、数字としてまずまず健全なレベルを保っている。
さらにROE・ROAなど資本効率の指標も、2023年にROE10.3%、ROA2.6%だったものが、2024年にはROE15.0%、ROA4.4%へと改善。2025年もこれに近い数値を維持しており、過去のような赤字期とは完全に別物の収益体質に戻ったと言ってよい。資本を使ってしっかり利益を生み出せている点は、投資判断において非常にポジティブだ。
バリュエーション面では、2025年の実績PERが高値平均12.1倍・安値平均9.5倍と“標準的〜やや割安寄り”の水準にあり、航空セクターの平均感と比較しても妥当な評価に見える。PBRも1.16倍と、極端な割高感がなく、業績の回復度合いを考えればむしろ適正〜少し割安と受け止める投資家も多いだろう。利益が安定している中でこの評価水準なら、過度にリスクを感じる必要はない。
総合的に見るとANAは、コロナ収束後の需要回復にしっかり乗りながら、収益体質も改善しているため、業績面では安定性と成長性を両立できている銘柄といえる。燃油価格・為替・世界景気・地政学リスクなど外部要因には依然として左右されるが、そのリスクを踏まえても“堅実に復活を遂げた航空大手”という評価が妥当だろう。
株価的にもPER・PBRが落ち着いた範囲に収まっているため、過度に割高でも割安でもなく、今後数年間は業績のブレに合わせて素直に株価が動いていくタイプの銘柄になると考えられる。短期的に爆発的に上がるタイプではないが、中長期ではじわじわと評価が戻りやすく、航空需要が大きく崩れない限りは“安定して保有しやすい銘柄”として位置づけられる。
配当目的とかどうなの?
ANAホールディングスの配当利回りを見ると、2026年3月期・2027年3月期ともに予想配当利回りは2.03%とされており、日本の大型株の中では「特別高いわけでもなく、やや控えめな利回り」という印象になる。数字だけを見ると強い魅力を感じる水準ではないものの、航空会社という業種の特性を踏まえると、この利回りにどう評価をつけるかがポイントになる。
まず確認しておきたいのは、ANAがコロナ禍で無配に転落した経緯があり、その後、業績の回復に合わせてようやく配当を再開したという点である。2023年までは無配が続いていたが、2024年に50円、2025年に60円と復配が実現し、収益体質の回復を反映した形で配当が戻ってきた。配当再開までの足取りを見ると、ANAが「無理のない範囲で配当を出し始めた」という姿勢が強く、今後についても慎重に配当を設定していく傾向が読み取れる。
利回りが2%前後にとどまっている背景には、航空業界の構造的なリスクがある。燃油価格の変動、為替の急変、世界景気や地政学リスクなど、外部要因が収益に与える影響が非常に大きいため、高配当政策を取りづらい事情がある。ANA自身も、配当よりまず財務基盤の強化を優先する姿勢が根強く、借入金の圧縮や設備投資の確保など、内部留保を厚くしたい局面が続いている。
ただし、業績は確実に回復しており、営業利益率やROEも改善が進んでいるため、現時点での2%前後の利回りには一定の安定性が感じられる。大きな増配を期待するタイプではないものの、今の収益体質であれば「減配リスクが極端に高い」といった不安は薄い。むしろ、業績が落ち着いた範囲で推移すれば、長期的に緩やかな増配が続く可能性も残されている。
総合的に見ると、ANAは“配当利回りだけを目的に買う銘柄”ではないが、配当を受け取りながら安定的に保有したい投資家には一定の選択肢になり得る。ただし、利回りはあくまで控えめであり、高配当株の代替として選ぶには弱い水準である。どちらかといえば、業績回復と株価安定をメインにしつつ、ついでに2%前後の配当を受け取る というような位置づけが現実的だろう。
今後の値動き予想!!(5年間)
ANAホールディングスの株価は現在 2,941.5円。今後5年間というスパンで株価の方向性を考えるうえでは、航空需要の回復状況、国際線の収益改善、燃油価格や為替の動き、さらには世界景気や地政学リスクといった外部要因が非常に重要になる。ANAはすでにコロナ禍の局面を脱し、売上・利益ともに大幅に回復しているが、航空業界自体が景気変動の影響を受けやすい業種であるため、株価がどこまで伸びるかは業績の継続性と外部環境の安定度に左右される構造になっている。
まず現在の業績を見ると、売上は2019年の水準を超え、国際線の搭乗率も高いレンジへ戻ってきている。国際線収入はANAの収益の柱であり、特にアジア〜欧米路線の回復は今後もプラス材料になる。また、経営側がコスト改善を継続しており、機材効率の改善や固定費削減が進んだことで、過去より利益率が高い水準に落ち着きつつある。これによって、航空株特有の“薄利構造”がやや改善しているのも追い風だ。
ただし、航空会社は景気敏感株であると同時に、燃油価格の変動、為替の急変、地政学リスクなどに大きく影響を受ける業界でもある。特に燃油費はコストの3〜4割を占めるため、原油価格が上がると利益を直撃する。また円高になれば海外収入が目減りし、逆に円安なら燃油費が増えるというジレンマもある。こうした外部要因は5年スパンでも株価のボラティリティを生む要素となる。こうした背景を踏まえたうえでの5年株価予想は以下のようなシナリオが想定される。
【良い場合】
国際線の需要が継続して回復し、アジア・欧米路線の収益性が安定するケースでは、ANAの利益成長はさらに進む可能性がある。世界景気が拡大し、旅行需要が高水準のまま推移すれば、高収益の長距離路線が利益を押し上げる。さらに燃油価格が落ち着き、円安が適度に続けば、収益面の追い風が続き、業績は堅調に増加基調となる。こうした好環境が続く場合、株価は徐々に評価が高まり、現在値から5年後には 3,600〜4,400円程度 まで十分狙える。コロナ前の高値を更新しながら、中長期的にゆるやかな上昇トレンドを描くイメージだ。
【中間の場合】
国際線は一応回復するものの、燃油価格の上昇や為替の揺れが続き、コスト負担が重くなるケース。収益は維持できるものの、劇的な増益にはつながらない状況では、株価は大きく跳ね上がらない。業績は安定しているため下値は固いが、成長株のような勢いもない。こうした中庸の環境では、株価は 2,500〜3,200円前後 の範囲で推移する可能性が高く、長期で持つにしても“じわじわ保有タイプ”の銘柄という印象になる。配当も2%前後で大きな魅力には欠けるが、安定性は評価できる。
【悪い場合】
世界景気が悪化し、旅行需要が落ち込む可能性も無視できない。特に中国・欧州・米国の景気悪化が重なると国際旅客数は大きく低下し、航空会社の収益は直撃を受ける。また燃油価格が再び高騰したり、円高が進行したりすると、利益率が急低下するリスクがある。さらに地政学リスク(中東・台湾情勢など)が悪化すると航空路線の見直しやコスト増にもつながり、業界全体が逆風にさらされる。このようなケースでは株価は 2,000〜2,400円台 まで調整し、長期的にも回復に時間がかかる展開が想定される。
【まとめ】
ANAホールディングスの株価は、良い場合で3,600〜4,400円、中間の場合で2,500〜3,200円、悪い場合で2,000〜2,400円というレンジが現実的な予想となる。業績自体はしっかり改善しているものの、航空会社は外部リスクが非常に多いため、強気一辺倒のシナリオを描きにくい。総じて、ANAは短期で急騰する銘柄ではなく、中長期で“業績に合わせて素直に株価が動く安定型の大型株”という位置づけとなるだろう。
この記事の最終更新日:2025年11月23日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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