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東亜建設工業(1885)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

東亜建設工業とは

東亜建設工業は、日本の建設業界の中でも「海洋土木」に特化した非常に特徴的な企業で、港湾や海上インフラの整備において国内トップクラスの実績と技術力を持つ会社として知られている。一般的なゼネコンが陸上土木や建築を中心にしているのに対して、東亜建設工業は創業以来一貫して海洋分野を強みとして磨き続けており、港湾施設、防波堤、護岸、岸壁、海底トンネル、浚渫・埋立工事など、水に関わるあらゆるインフラ整備を手がける“海のプロフェッショナル”ともいえる存在だ。

この会社の最大の強みは、海洋工事に必要な専用船舶や浚渫船、特殊作業船などを多数保有している点だ。海洋土木は気象や潮流の変化、海底地形など非常に不確実性の高い環境での施工が求められるため、高度な技術と機材が必要になる。東亜建設工業は長年にわたって独自技術を蓄積しており、同業他社が簡単に参入できない分野で優位性を築いてきた。港湾整備は国家的なプロジェクトが多く、安定的な公共工事の受注が見込まれるため、同社の事業は景気変動に比較的強いという特徴を持っている。

また、東亜建設工業は陸上土木の分野でも一定の存在感を持ち、道路・橋梁・河川工事、上下水道設備、ダム、都市インフラなど幅広い工事を手がけている。本来の得意分野である海洋工事と組み合わせることで、大規模な複合工事の施工も可能となり、総合建設会社としての地位をさらに確かなものにしている。

建築事業も手がけており、オフィスビル、商業施設、物流倉庫、マンション、公共施設など幅広い建築物を施工している。特に物流関連施設や倉庫事業は需要が底堅く、同社にとって重要な収益源になっている。海洋工事中心の企業と思われがちだが、建築分野でもしっかりとした実力を発揮している点は見逃せないポイントだ。

さらに東亜建設工業は海外案件にも強く、アジアや中東などの港湾工事・海洋インフラ整備で長い実績を持つ。海外での港湾整備は高度な技術が求められるうえに現地の環境条件も厳しいが、同社はこれらの案件を多数こなしており、国際的にも技術力が評価されている。海外事業は収益源の分散にもつながり、長期的な成長の基盤になっている。

また、海洋土木では避けて通れない“地盤改良”や“浚渫・埋立”技術の開発にも力を入れており、専用作業船を使った海底地盤の改良工事や、港湾の水深確保といったニッチだが重要な工事も得意としている。海底という特殊環境の施工を自社技術で完結できる点は、他社と差別化できる大きな競争力だ。

不動産事業も展開しており、保有地を活用した開発や賃貸事業で安定収益を獲得している。建設事業と相性が良く、グループ全体の収益安定化に寄与している。

総合してみると、東亜建設工業は「海洋土木を核にしつつ、陸上土木・建築・海外・不動産まで一体で運営する、独自色の強い総合建設会社」といえる。港湾整備や海上インフラは日本にとって戦略的に重要な分野であり、老朽化対策、港湾機能の高度化、物流インフラの強化などの需要は長期的に続いていくため、同社の事業環境は今後も底堅いものが見込まれる。景気に大きく振られにくく、専門性の高さによって競争優位が保たれるタイプの企業であり、インフラ関連の中でもやや“守りが強い”ポジションにある会社だといえる。

東亜建設工業 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) EPS(円) 配当(円)
連23.3* 213,569 6,555 6,614 4,835 56.1 22.5
連24.3* 283,852 17,231 16,630 10,517 127.7 40
連25.3 330,472 20,621 20,073 14,908 187.9 76
連26.3(予) 335,000 18,000 17,500 12,500 160.2 76
連27.3(予) 340,000 18,000 17,500 12,500 160.2 76

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023 -13,947 -2,578 12,723
2024 39,350 -2,639 -8,493
2025 -14,255 93 -1,250

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER(実績) PBR(実績)
2023 3.0% 5.4% 2.1%
2024 6.0% 10.9% 3.8%
2025 6.2% 13.9% 4.9% 高値平均:10.4倍
安値平均:6.3倍
1.97倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

東亜建設工業の直近の業績を見ると、まず売上高の伸びが非常に分かりやすい。2135億円 → 2838億円 → 3304億円と、わずか3年で約1.5倍近い規模まで拡大しており、建設会社としてはかなり強い成長ペースだ。特に海洋土木・港湾工事が同社の主力であり、国のインフラ補強・港湾強靭化の需要が継続していることが大きな追い風になっている。

利益面でも伸びが目立っていて、営業利益は65億円 → 172億円 → 206億円と急増している。規模の拡大とともに利益率も改善し、営業利益率は3.0% → 6.0% → 6.2%と倍以上に改善している。海洋土木は採算管理が難しい分野だが、専用船舶や独自ノウハウを持つ同社は他社よりも安定して利益を稼ぎやすく、利益率の改善はまさに“強みがそのまま数字になって表れた”と言える。

経常利益と純利益もほぼ同じように上昇しており、純利益は48億円 → 105億円 → 149億円と急拡大している。EPSも56.1円 → 127.7円 → 187.9円と力強い伸びを見せ、企業の稼ぐ力が明確にステップアップしていることが分かる。連26.3予では利益がやや減る見込み(純利益125億円)が出ているものの、これは増えすぎた反動というより、受注案件のミックスや工期のタイミングによるもので、構造的な失速ではないと判断できる水準だ。

収益性指標を見ると、ROEは5.4% → 10.9% → 13.9%と明らかに高まっており、かなり質の良い水準に成長している。建設会社でROE二桁は優秀で、資本効率が大きく改善している証拠だ。ROAも2.1% → 3.8% → 4.9%と大幅に向上しており、総資産を使った利益の生み出し方が明確に良くなっている。

バリュエーションを見ると、PERは高値平均10.4倍、安値平均6.3倍と適正〜やや割安のレンジ。成長株というよりは“安定成長+インフラ強み”の会社のため10倍前後は妥当だが、EPSの伸びとROE改善を考えると、PER10倍はむしろ割安に見える。PBR1.97倍は建設株としてはやや高いが、これは業績急伸に伴う評価の正常化とも言える。成長性が一段上のフェーズに入った企業がPBR2倍近くつくのは自然な流れだ。

総合すると、東亜建設工業はここ数年で業績と利益率が急改善し、明らかに“ワンランク上の収益体質”に変わってきた成長型インフラ企業と言える。海洋土木や港湾インフラという専門領域に強く、他社が簡単に真似できない技術力と施工力を持つため、今後も継続的に安定した受注が期待できる状況にある。

利益が急伸し、ROE・ROAが改善し、EPSも大きく伸びている一方、PERはまだ10倍前後に留まっているため「業績の割に株価評価が追いついていない銘柄」に分類される。短期的な派手さより、着実な利益成長と需給の安定性を評価するタイプの投資家に向いており、中期〜長期での企業価値上昇が狙いやすい銘柄だと考えられる。

配当目的とかどうなの?

東亜建設工業の予想配当利回り(2026・2027年度)は2.81%と、いわゆる高配当銘柄と比べると突出して高いわけではないが、建設会社としては標準〜やや良いラインに位置している。利回りだけを見ると「可もなく不可もなく」という水準だが、同社の特徴は利回りよりも“配当の安定性”と“業績の改善スピード”にある。

まず、配当原資となる利益の推移を見ると、純利益は48億円 → 105億円 → 149億円と急成長してきており、配当を支えるEPSも56円 → 127円 → 187円と非常に力強い伸びになっている。つまり、利回りが2.8%でも、背後にある利益水準は年々厚くなっており、配当の持続可能性という点ではむしろ安心感が強いタイプの銘柄といえる。

さらに、連26.3・連27.3で配当が「76円」に固定されているのは、一見すると横ばいだが、これは業績が急伸した反動でEPSが一時的に160円台へ落ち着く見通しになっている影響が大きい。配当性向としては無理のない範囲に留まっており、利益が伸びていた23〜25年度には増配が続いている点を考えると、会社としては利益と連動した“普通の増配姿勢”を持っていると判断できる。

業績の安定性という点でも、港湾・海洋土木という専門領域を主力とする東亜建設工業は、一般的な景気敏感型建設株とは違い、公共インフラの大型案件に強い。海洋土木は民間依存度が低く、国の港湾強靭化や物流インフラ整備といった長期政策に支えられているため、ビジネスの底が非常に堅い。これは“減配リスクが低い”という配当株として最も重要な部分で、利回り以上の価値を生み出しているポイントだ。

利回り2.8%は、配当だけを追い求める投資家にとっては突出した数字ではないが、同社の成長性や収益改善を踏まえると「配当+中長期の株価上昇」を狙えるタイプの銘柄といえる。建設株の中には利回りが高いだけで成長がないものも多いが、東亜建設工業はEPSやROEの改善がはっきり見られるため、長期保有によってトータルリターンが積み上がりやすい。

総合すると、東亜建設工業は“安定して配当をもらいながら、同時に業績成長による株価上昇も期待したい投資家向け”の銘柄といえる。利回りだけなら他に高配当株は多いが、安定性・成長性・専門性を兼ね備えたバランスの良さは東亜建設工業ならではで、配当目当ての長期投資として十分選択肢になる企業だと言える。

今後の値動き予想!!(5年間)

現在の株価2,699円という水準は、直近の業績急改善とEPSの大幅成長に対して、まだ株価評価が追いつききっていない印象がある。東亜建設工業は海洋土木という専門性の高い分野で強みを持つため、一般的な建設株よりも競合が少なく、港湾整備や海上インフラの長期需要を取り込みやすい。そのため、下値は固くなりやすく、長期視点の予想も比較的読みやすい。

ここからの5年間は、業績の伸びと市場の評価がどの程度進むかで株価レンジが決まると考えられる。良い場合、中間、悪い場合の順に想定すると以下のようになる。

まず良いケースでは、港湾強靭化や物流インフラ更新の大型案件が堅調に続き、同社の強みである海洋土木がフルに活かされるパターンだ。売上が3500億円台に、営業利益も200億円前後を安定して維持し、EPSが180円台から200円以上に再びのせてくると、PERの適正ラインは10〜12倍へ再評価される可能性が高い。そうなると株価は3,000円〜3,500円のゾーンが見えてきて、強気な市場環境では3,600円前後まで伸びるシナリオも十分にあり得る。

中間シナリオでは、売上・利益ともに横ばい〜微増の状態が続き、EPSが150〜180円前後で推移するケースだ。海洋土木の受注は堅いものの、案件のタイミングや利益率のぶれで成長速度が落ち着く状況で、この場合PERは8〜10倍程度にとどまりやすい。株価は2,700円〜3,000円のレンジが中心となり、ときどきインフラ関連に資金が向かう局面で3,100円あたりまで買われるが、急騰まではしないという落ち着いた動きがメインになる。現状の株価位置からすると、この中間シナリオが最も現実的で、配当を受け取りながらじわじわとした値上がりを狙うような形になりやすい。

悪い場合は、工期のずれや資材価格の変動が収益を圧迫し、EPSが120〜140円程度に落ち込むようなケースだ。ただし海洋土木という領域は公共性の高い案件が多く、需要が急に消えることはほぼないため、大きく崩れるシナリオは考えにくい。それでも業績が一段落ちるとPERは6〜8倍程度で評価され、株価は2,000〜2,300円が主なレンジになる。長期不況でもなければ1,900円を割るような極端な下落は起きにくいと見られるが、リスクシナリオとしてはこのレンジが妥当だろう。

総合すると、良い場合は3,000〜3,600円、中間では2,700〜3,100円、悪い場合は2,000〜2,300円というイメージになり、現在の株価2,699円は“中間シナリオの下限付近で、割安感がまだ残っている位置”にある。安定した海洋インフラ需要とEPS成長の余地を考えると、強い下落リスクを抑えつつ、じっくりと中長期で値上がりを狙いやすい銘柄だと言える。

この記事の最終更新日:2025年11月24日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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