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若築建設とは

若築建設は、創業100年以上の歴史を持つ海洋土木に強い中堅ゼネコンで、とくに“港湾インフラに強い会社”として知られている。浚渫(しゅんせつ)工事、埋立工事、護岸工事、防波堤の施工など、海に関わる大規模な土木工事を得意とし、港湾物流を支える基盤整備で多くの実績を積み重ねてきた企業だ。浚渫船や起重機船など、海上工事に不可欠な特殊船舶を自社で保有しており、海洋工事で必要な施工体制を自社完結できる点は、同業でも優位性の高いポイントになっている。
一方で、海上土木だけに依存しているわけではなく、陸上土木にも積極的に展開しており、道路、橋梁、河川工事、上下水道工事など、多様な土木工事を手がける総合力も備えている。海洋と陸上の両輪を持つことで、公共インフラ全体に対応できる柔軟さがあり、案件の分散によって収益の安定にもつながっている。
官公庁案件が多い点も同社の特徴で、国土交通省、地方自治体、港湾局などの公共工事を中心に受注している。港湾・防災関連は政策に左右される一面はあるものの、公的予算は安定性が高く、継続的な需要が見込める分野でもある。特に東日本大震災以降は、防潮堤の整備や港湾復旧工事などで同社の役割は大きく、海岸防災や港湾の強靭化という長期テーマとも相性が良い。
民間工事にも取り組んでおり、物流倉庫、製造工場、商業施設など、企業向けの設備工事も徐々に強化している。港湾物流の拡大に合わせた民間投資も取り込めており、従来の公共中心の収益構造から、民間需要も取り込むバランスタイプへ変化しつつある。
さらに海外事業にも積極的で、アジア圏を中心に港湾工事や浚渫工事の実績を持つ。フィリピン、ベトナム、インドネシア、シンガポールなどで施工を手がけており、海洋土木分野では海外でも通用する技術力を持つのが強み。自社船を保有しているため、競争力がそのまま海外へ持ち込める点が大きなメリットとなっている。
総合すると、若築建設は「海洋土木を強みにしつつ陸上土木も展開する総合土木会社」であり、海・陸・海外の三本柱で事業を広げているのが特徴。官公庁案件が多く事業基盤は安定しており、物流インフラや港湾整備、防災関連といった国の長期政策とも深く連動している。さらに海外でも浚渫工事の技術力を武器に受注を伸ばす姿勢が見られ、専門性を持ちながらも事業の裾野を広げている、独自色の強いインフラ企業と言える。
若築建設 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | EPS(円) | 配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 84,004 | 6,236 | 6,546 | 5,442 | 426.8 | 100 |
| 連24.3 | 94,917 | 6,976 | 7,699 | 5,092 | 399.3 | 120 |
| 連25.3 | 86,462 | 5,220 | 5,228 | 3,690 | 290.0 | 126 |
| 連26.3(予) | 100,600 | 5,750 | 5,500 | 3,700 | 291.1 | 131 |
| 連27.3(予) | 110,000 | 6,500 | 6,250 | 4,300 | 338.3 | 135〜142 |
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 15,140 | -1,328 | -2,970 |
| 2024 | -3,964 | -3,606 | -1,380 |
| 2025 | -10,211 | -1,854 | 6,399 |
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 7.4% | 13.1% | 6.1% | ― | ― |
| 2024 | 7.3% | 11.0% | 5.6% | ― | ― |
| 2025 | 6.0% | 7.6% | 4.0% | 高値平均:11.5倍 安値平均:7.1倍 |
1.20倍 |
投資判断
若築建設の直近の業績を見ると、まず売上・利益ともに比較的安定して推移していることが分かる。売上高は840億円 → 949億円 → 864億円 → 1006億円予想と、海洋土木主体の企業としては標準的な上下の範囲に収まっており、景気の急変に左右されにくいインフラ系らしい動きになっている。
利益面では、営業利益が62億円 → 69億円 → 52億円 → 57億円予想と推移し、多少のブレはあるものの“大きく崩れることなく推移している”という印象が強い。経常利益や純利益もほぼ同じような動きで、純利益は54億円 → 50億円 → 36億円 → 37億円予想と、海洋土木の案件ミックス次第で上下しつつも黒字をしっかり維持している。
EPSは426円 → 399円 → 290円 → 291円予想と減少傾向があるが、これは利益率の調整と工期のタイミングが重なったことが大きく、構造的に収益が弱くなっているわけではない。ただ、EPS上昇の勢いはやや弱まっており、強烈な成長株というより“安定黒字を維持するタイプの海洋土木企業”という印象が正しい。
営業利益率は7.4% → 7.3% → 6.0%と推移し、海洋土木企業としては平均〜やや良いレベル。ROEも13.1% → 11.0% → 7.6%と落ちてきているが、それでも建設系企業としては十分に悪くない水準で、利益体質自体は健全。ROAも6.1% → 5.6% → 4.0%と低下しているが、負債が重い業態ではなく、資産効率は一定の範囲に収まっている。
バリュエーションを見ると、PERは高値平均11.5倍・安値平均7.1倍というレンジで、建設株としては適正〜やや割安レベル。PBR1.20倍は同業と比較すると少し高めではあるが、港湾・海洋土木という“競争が少ない専門領域”を持つ企業としては妥当な評価ともいえる。
事業構造面では、海洋土木を中心にしつつ、陸上土木・建築・海外工事も展開しており、官公庁工事が多く公共予算の安定性に支えられている。特に浚渫や護岸工事は長年の実績があり、防災ニーズや港湾強靭化政策と相性が良い。さらに海外の港湾整備にも強く、特殊船舶を持っている点も他のゼネコンとの差別化につながっている。
総合すると、若築建設は「大きく成長し続ける会社」ではないものの、「大きく崩れにくい安定インフラ企業」と評価できる。利益の上下はあるが、赤字リスクが小さく、海洋土木という専門領域の強みがあるため、一定の利益を安定して確保できる体質を持っている。株価面でも極端に割安でも割高でもなく、配当も継続的に増やしており、長期で保有して安定したリターンを狙いたい投資家には向いている銘柄といえる。
配当目的とかどうなの?
若築建設の予想配当利回りは、連26.3で2.88%、連27.3で2.97%と、だいたい3%前後の水準になっている。建設株の中でも海洋土木に強みを持つ会社で、利益が極端に上下するタイプではないため、配当利回りの「安定感」は比較的高いほうに入る。
直近の配当推移を見ても、100円 → 120円 → 126円 → 131円 → 135〜142円予想と、配当を減らすことなくしっかり増やしており、建設業界の中では“安定増配寄り”の銘柄と言える。EPSが一時落ちている時期でも配当は下げずにキープしており、株主還元姿勢はかなり強い。
事業の性質として、若築建設は官公庁工事が中心で、港湾・海洋土木という国の予算に強く連動する領域が多い。国の港湾強靭化、浚渫・防潮堤整備、海岸保全工事などは継続的に需要が見込めるため、利益が極端に減りにくい点は配当投資としてプラス材料になる。
また、PBR1.2倍前後と資産バリュー具合もちょうど良く、過度な割高感がない点も安心材料。今後も売上はゆっくり伸び、利益も上下しながら大きく崩れにくいと考えられるため、長期で持つことで“ある程度安定した配当+軽い値上がり期待”を狙えるタイプの銘柄になっている。
一方で、利回り3%のラインは「高配当株」と呼べるほどではないため、がっつり配当で稼ぎたい投資家には少し物足りないかもしれない。ただし、逆に減配リスクが低いという点では非常に優秀で、インフラ系の安定性を求める投資家にはしっくりくる銘柄だと言える。
総合すると、若築建設は配当目的として「安定した3%前後の利回りを長期で受け取りたい人」に向いている銘柄で、減配しにくい業態+長期需要のある海洋土木という組み合わせが魅力。大きくは増えないが、大きく減らない。そんな“堅実なインフラ配当株”として評価できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在株価の4,535円を起点に、若築建設の今後5年間の値動きを考えると、まずこの会社の特徴として「海洋土木の専門性」と「官公庁工事の安定性」が非常に大きい。港湾の浚渫工事、防波堤・護岸整備、埋立造成といった特殊領域を主力とし、さらに海外でも長年の実績を持つため、通常の総合ゼネコンより景気に左右されにくい“底堅い収益構造”がある。
そのため、株価も極端な乱高下はしにくく、比較的穏やかなレンジで推移しやすいタイプの銘柄といえる。
まず「良い場合」のシナリオでは、国のインフラ投資が継続されて港湾の強靭化事業や海岸保全工事が増え、さらにアジアの港湾整備需要が増えると、若築建設は直接その恩恵を受ける。海洋土木は競合が限られているため、専門性の高い企業ほど受注環境が改善しやすく、利益率も上がりやすい。EPSが300円台半ばまで回復すれば、PER10〜12倍の評価が乗る可能性があり、株価は5,200〜5,800円程度まで上昇していく展開が十分に考えられる。急騰ではなく、じわじわと水準が切り上がっていくようなイメージだ。
「中間シナリオ」では、これまでと同じように官公庁工事が主軸となり、一定の売上を維持しながら利益は年によって上下しつつも黒字をきちんと確保する、という若築らしい安定型の業績が続く。大幅増益にはならないが、大幅赤字にもならない安定感があり、EPSは280〜320円のゾーンを中心に推移する。PERも現在と同じ8〜10倍あたりが妥当で、株価は4,300〜4,900円あたりを中心に横ばい〜やや上昇のレンジで推移する可能性が高い。配当も毎年コツコツ積み上がるため、横ばいでも配当込みのトータルリターンはそれなりに期待できる。
一方で「悪い場合」では、海洋工事の採算悪化や資材費高騰、工期ズレによる原価増などが重なり、毎年の利益が縮小するケース。特に海外案件は採算が読みづらいため、一度大きな損失が出ると利益率を押し下げる可能性がある。ただし若築はインフラ系の会社で、港湾工事の基礎需要はなくならないため、長期的な赤字が続くような企業ではない。EPSが250円を下回るような年が出ればPERの評価も下がり、株価は3,500〜4,000円あたりまで調整するシナリオもある。ただ、それでも大きく崩れ切らないのがこの会社の特徴ともいえる。
総合すると、若築建設の5年間の株価は、景気敏感株のように大きく跳ねる銘柄ではないものの、海洋インフラという長期需要が続く事業に支えられ、「落ちにくい・安定しやすい」という投資家に優しい性質を持っている。良いシナリオでも悪いシナリオでも、極端な変動が起こりづらく、配当利回りも毎年3%前後を維持しているため、配当を受け取りながら安定的に保有するスタイルに向いている。
この記事の最終更新日:2025年11月24日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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