株価
中電工とは

中電工は、1944年(昭和19年)に「中国電気工事株式会社」として設立され、中国地方の電力インフラ整備を担う企業としてスタートした。1990年(平成2年)には現在の社名である「株式会社中電工」へと改称し、事業領域を電気設備工事から通信・空調・防災設備などへ広げながら、総合設備企業として成長を続けている。組織は技術本部・営業本部・電力本部・業務本部・企画本部の5本部体制で運営されており、電力会社向け工事を基盤としながら、公共施設・オフィス・商業施設・工場といった幅広い分野の電気・通信インフラ工事を手掛けている。
営業網は本社のある中国5県を中心に、東京本部・大阪本部・名古屋支社・四国支社・九州支社・沖縄営業所など全国に展開されていて、151の事業場を拠点に全国規模で営業活動を行っている。過去には苫小牧、仙台、筑波、金沢、滋賀、京都、神戸、高知、大分、熊本、鹿児島などにも事業場を構えていたが、その後これらは廃止されている。2010年(平成22年)には新規領域への挑戦として農業分野に進出し、子会社「合同会社あぐりこるWEST」を設立して、島根県浜田市で農園事業を展開している。
企業文化としてスポーツ振興にも力を入れており、1990年創設の陸上競技部は、全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)に1995年から連続出場を続けている。2023年に開催された第67回大会では初の7位入賞を果たすなど、競技レベルの高さでも知られている。また、事業面では電気設備・通信インフラ工事に加えて、IPカメラやAI、VIXクラウドを活用した画像センシングによるCaaSソリューション事業など、デジタル技術を活用した新しいサービスにも取り組んでおり、監視・見守り・設備管理の高度化といった分野で新たな価値提供を進めている。
中電工は、電力インフラを中心とした長年の技術・安全・品質を強みにしながら、通信・空調・防災・再エネ・ICTといった成長分野へ領域を広げることで、地域インフラを支える企業から総合ライフライン企業へと進化している。
中電工 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 189,032 | 8,361 | -1,905 | -6,913 | -125.6 | 104 |
| 連24.3 | 201,025 | 11,947 | 12,742 | 7,937 | 145.4 | 104 |
| 連25.3 | 221,885 | 21,698 | 23,434 | 19,895 | 366.9 | 120 |
| 連26.3予 | 230,000 | 23,000 | 24,800 | 16,400 | 302.8 | 130〜132 |
| 連27.3予 | 235,000 | 24,000 | 26,000 | 17,000 | 313.8 | 130〜140 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 6,181 | 4,843 | -7,512 |
| 2024 | 13,721 | -6,098 | -7,316 |
| 2025 | 22,754 | -11,525 | -7,643 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.4% | -2.6% | -3.5% | — | — |
| 2024 | 5.9% | 2.8% | 3.7% | — | — |
| 2025 | 9.7% | 6.7% | 8.7% | 高値15.7倍/安値10.8倍 | 1.02倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
中電工のここ数年の業績推移を見ると、まず売上高は23.3期が1,890億円、24.3期が2,010億円、25.3期は2,219億円と、着実に増収が続いている。さらに26.3期予想では2,300億円と、電気設備工事を中心とした安定した受注環境が数字に反映されている。
営業利益も23.3期の約84億円から24.3期に119億円、25.3期には217億円へと大きく伸びており、利益率の改善が明確に見られる。26.3期予想でも230億円が見込まれており、利益体質が年々強化されているのが特徴。
経常利益は23.3期がマイナス19億円と落ち込んだが、24.3期に127億円、25.3期に234億円と急回復し、正常な利益水準へ戻っている。純利益も同様で、23.3期のマイナス69億円から、24.3期に79億円、25.3期には199億円まで改善し、26.3期予想でも164億円を確保する見通し。赤字は一時的で、その後の利益回復は非常に安定している。
EPSは23.3期のマイナス125円から、24.3期に145円、25.3期に366円と急増し、利益回復の流れが株主価値の伸長にも反映されている。26.3期予想でも302円が見込まれ、安定的に高水準を維持している。
営業利益率も23.3期の4.4パーセントから24.3期に5.9パーセント、25.3期には9.7パーセントへと改善し、利益率の底上げがはっきりしている。ROAは23.3期のマイナス2.6パーセントから25.3期には6.7パーセントまで改善し、ROEもマイナス3.5パーセントから8.7パーセントへ回復し、資本効率の改善も顕著。
バリュエーションを見ると、25.3期の実績PERは高値平均15.7倍、安値平均10.8倍で、業界水準としては過度な割高感はない。PBR1.02倍は純資産価値と近い水準で、利益改善が継続するのであれば妥当からやや割安寄りの評価になる。
総合すると、中電工は23.3期の一時的赤字を乗り越え、24.3期以降は売上・利益・資本効率がすべて改善方向に戻っている状態。設備工事は派手な成長をしないが、その代わりに業績が大崩れしにくく、長期的に利益が積み上がる特徴がある。営業利益率とROEの改善トレンドを見る限り、企業体質が強化されてきている点は大きなプラス材料。
リスクとしては、公共工事や電力会社関連工事の動向、設備投資の周期に左右される点だが、直近では需給が安定し、利益も持続的に積み上がっている。総じて、中電工は中長期で堅実に保有するタイプの銘柄と言える。
配当目的とかどうなの?
中電工の配当利回りは26.3期、27.3期ともに2.94パーセントと、おおむね日本株の平均利回り(およそ2パーセント前後)よりは高めの水準にある。ただし高配当株と言えるほど突出しているわけではなく、ほどほどに利回りが確保されている「準高配当寄りの中間タイプ」という位置付けになる。
安全性という視点では、中電工は23.3期に一時的な赤字が発生したが、その後は利益が大きく回復し、24.3期・25.3期と純利益は順調に増えている。25.3期の純利益は199億円に達しており、EPSも366円まで伸びているため、配当の安定性という面では以前より明らかに改善している。26.3期予想の純利益164億円でも、配当の原資は十分確保されている。
配当性向については、EPS302円〜313円程度に対して、配当130〜140円という水準なので、概ね40パーセント前後のラインに近く、過度な負担をかけずに支払える範囲。内部留保と株主還元のバランスが比較的健全で、業績が急悪化しない限り減配リスクは限定的と判断できる。
設備工事業は大きな成長産業ではないものの、電力・通信・空調などインフラに近い需要が中心で、大きな景気後退でもなければ業績が急落しにくい特徴がある。そのため、派手な増配株ではないが、毎年安定した配当をもらい続けるというスタイルとは相性が良い。
総合すると、中電工は配当だけを目的とした「高配当株」ではないが、安定して3パーセント前後の利回りが得られ、事業基盤も安定的で、業績改善が進んでいる点を加味すると、配当目的としては「安定配当を狙う中長期保有向け」という評価になる。減配リスクが低く、安心感のあるタイプだが、利回り自体はそこまで高くないため、キャピタルゲインよりはインカムを重視しつつ堅実に持つのが向いている銘柄と言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
中電工の株価は現在4,415円だが、ここ数年の業績推移を見ると、売上は緩やかな増収が続き、利益面も23.3期の一時的な赤字を完全に脱して、24.3期・25.3期と利益率改善を伴った確実な回復が進んでいる。特に25.3期は営業利益217億円・純利益199億円と大幅改善が見られ、資本効率を示すROE・ROAも8.7パーセント、6.7パーセントまで戻ってきた。これは設備工事セクターとしては十分高いレベルで、企業体質が明らかに強くなっている。
事業の中核は電気設備工事・通信設備・空調設備・防災設備といったインフラ寄りの分野であり、景気の影響は受けるものの、建設業や重工系と比べると需要が比較的安定しやすい構造になっている。さらに電力会社向けの工事が基盤として存在するため、受注の底堅さは同業他社と比べても強い部類に入る。加えて、最近はIPカメラ・AI・クラウドを組み合わせた画像センシングのCaaS領域にも踏み込み、新規分野を育てる動きもある。こうした非電力系の売上拡大ができると、長期的な成長源としてはプラスになる。
一方で、設備工事会社は急成長するタイプではなく、短期間で株価が跳ねるというより、長い時間をかけて少しずつ企業価値が積み上がる傾向が強い。そのため株価は極端に上にも下にも振れにくく、ある意味で「じわじわ積み上がっていくインフラ企業の典型」という性質を持つ。配当利回りも26.3期・27.3期ともに2.94パーセントと、極端に高いわけではないが安定しており、EPSも300円台で推移するため、今後も急な減配が起きる可能性は低い。
こうした事業特性・業績推移・財務の安定性を踏まえると、5年後の株価は以下のレンジが現実的となる。
良い場合
電気工事・通信工事の受注が堅調に推移し、営業利益率が10パーセント前後で安定、ROEも8〜10パーセント台を維持できるケース。PERが市場平均並みの15倍前後で評価される可能性が高まり、株価は5,500〜6,200円に到達するイメージ。配当も130〜140円台を維持、もしくは増配があれば、実質的な総合リターンはさらに高くなる。中電工特有の“下値の硬さ”が生きて、じわじわ右肩上がりに株価が進む展開。
中間の場合
業績は微増だが利益率は安定、売上も少しずつ伸びる通常想定。PER12〜14倍程度の評価で、株価は4,600〜5,200円あたりに収まる。派手さはないが、事業の安定性と財務体質の良さから大きく崩れず、現在値の4,400円±10%のレンジで推移する、典型的なインフラ工事株らしい動きになる可能性が高い。
悪い場合
公共工事・電力関連工事が弱含み、利益率が低下するケースや、景気後退で設備投資が鈍化するケース。PERは控えめに見られ10倍前後となり、株価は3,700〜4,100円程度までの調整が想定される。ただし電気設備工事という業態は完全に需要が消える産業ではなく、最低限の受注も確保されるため、2,000円台に突っ込むような極端な暴落を起こす可能性は低い。
総じて、中電工は一般的な成長株とは異なり、派手に跳ねるタイプではなく、収益の安定性を背景に5年を通じて緩やかに企業価値が積み上がっていくタイプの銘柄。現在の4,415円は割高ではなく、利益とROEの改善が続く限り、時間をかけて自然と評価が上がりやすい位置にある。インフラ系の底堅い事業に加えて、新規事業(AI監視・クラウド関連)が育てば、良いシナリオでは上限も広がりやすい。総合すると、極端な上昇も下落も起きにくい中で、堅実に配当を受け取りながら中長期でじわじわと価格上昇が期待できる銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2025年11月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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