株価
新日本空調とは

新日本空調株式会社は、東京都中央区日本橋浜町に本社を構える大手総合設備建設会社であり、空調・冷暖房・換気・給排水・衛生・電気・消防・計装といった建築設備全般の設計、監理、施工を行っている。三井グループに属し、三井月曜会や三井倶楽部にも参加する企業で、長い歴史と確かな技術力を背景に、国内外で高い評価を受けている設備エンジニアリング企業である。
基本理念として「空気を中核とする熱・水技術の研究開発を通じて、新しい価値を創造し、社会に信頼される技術とサービスを提供する企業を目指す」ことを掲げており、空調・衛生工学分野において空気調和・衛生工学会から通算30回の学会賞を受賞するなど、技術面での強みは業界内でも群を抜いている。
同社の事業は一般空調設備、産業空調、クリーンルーム、原子力関連空調、環境ソリューションと幅広く展開されている。一般空調設備工事では、COREDO日本橋、東京ミッドタウン、帝国ホテル、さらには海外ではマリーナベイ・サンズなど、国内外の著名なビル・商業施設・ホテルの設備施工を多数手がけてきた。また、過去には南満州鉄道の特急「あじあ」列車で世界初の“全列車空調”を実現したほか、関釜連絡船・興安丸で“全船空調”を世界で初めて施工するなど、空調工事の黎明期から革新的な実績を重ねてきた歴史を持つ。
産業空調分野でも強く、デンソー東日本工場や東芝柏崎工場・四日市工場など大規模工場設備を多数施工しており、半導体・医薬品・食品工場などで重要となるクリーンルームに関しては国内で初めて手がけた企業として知られる。高度な空気制御・微粒子管理が求められる製造業において、先駆者として高い技術力を発揮している。
原子力空調分野でも国内初の実績を持ち、日本原子力研究所(茨城県東海村)で国内初の原子炉空調を施工するなど、特殊環境に対応する高難度の空調技術でも長年の経験を積んでいる。また、独自開発の微粒子可視化システムなどを活用したビジュアルソリューション事業も展開しており、設備工事にとどまらず、環境計測・管理・解析といった周辺サービスも提供する総合設備技術企業として進化し続けている。
なお、空調設備のメンテナンスを中心とする日本空調サービスとは無関係の企業であり、事業領域・組織体系ともに異なる。
新日本空調は、建物の空調・衛生設備の設計から施工、クリーンルームや原子力施設など高度な環境制御が必要な分野に至るまで幅広く対応できる技術力を背景に、国内設備工事業界で確固たる地位を築いている。環境技術・省エネ技術への取り組みも積極的で、建築設備の高度化と持続可能な社会の実現に貢献する企業として成長を続けている。
新日本空調 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3* | 112,234 | 7,124 | 7,914 | 5,597 | 119.9 | 40特 |
| 連24.3* | 127,978 | 9,235 | 9,725 | 7,168 | 155.2 | 50 |
| 連25.3* | 137,684 | 11,346 | 11,976 | 9,656 | 211.6 | 80 |
| 連26.3予 | 144,000 | 12,000 | 12,500 | 8,800 | 193.6 | 80 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 12,820 | -1,168 | -2,266 |
| 2024 | -13,562 | -783 | 2,521 |
| 2025 | 14,238 | 2,048 | -10,184 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 6.3% | 9.6% | 5.1% | — | — |
| 2024 | 7.2% | 10.9% | 6.1% | — | — |
| 2025 | 8.2% | 13.9% | 8.1% | 10.4倍(高値) 6.8倍(安値) |
1.86倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
新日本空調の業績を億円に換算すると、売上は連23.3期で約1,122億、連24.3期で約1,280億、連25.3期で約1,377億、連26.3期予想で1,440億と、毎年着実に増加している。設備工事業の中でも空調・衛生分野は景気変動の影響が比較的軽く、再開発案件や大型ビル、工場、研究施設、クリーンルームなど幅広い分野に強みを持つ同社は、安定した受注に支えられて堅調に成長している。
営業利益は連23.3期で71億、連24.3期で92億、連25.3期で113億、連26.3期予想では120億となり、利益の積み上げが非常に順調である。経常利益も79億、97億、120億、125億と伸びが続いている。純利益も56億から72億、97億へと増加しており、26.3期はやや落ち着いた88億予想ではあるものの、高水準を維持している。設備工事会社としては利益率が高く、営業利益率も6.3パーセント、7.2パーセント、8.2パーセントと着実に改善しており、収益性の向上が見て取れる。
指標面でも改善が際立っており、ROEは9.6パーセント、10.9パーセント、13.9パーセントと年々上昇している。設備工事業でROEが10パーセントを超える企業は多くはなく、資本効率の高さは評価ポイントとなる。ROAも5.1パーセントから8.1パーセントへと伸びており、企業全体としての収益性が強まっていることが明確である。
バリュエーションをみると、2025年のPERは高値水準で10.4倍、安値水準で6.8倍と割安水準にあり、PBRは1.86倍と利益成長を踏まえると許容範囲に入る。収益性と効率性の改善が続いている企業としては、過度に割高とは言えない。
総合的に判断すると、新日本空調は売上・利益ともに安定成長が続き、利益率の改善が顕著で、ROE・ROAの上昇とともに企業の稼ぐ力が大きく向上している。クリーンルーム、原子力空調、ビル空調、高付加価値設備など専門性の高い分野を多く抱えるため、他の設備工事企業と比較して収益力が高く、今後も受注環境と利益率の双方で底堅さが期待できる。
割安なPERと高まる資本効率を考えると、中期的な株価上昇余地も残されており、設備工事セクターの中でも成長性と安定性のバランスが良い銘柄といえる。急騰するタイプではないが、堅実に利益を伸ばし続ける“安定成長株”として評価できる内容となっている。
配当目的とかどうなの?
新日本空調の予想配当利回りは連26.3期・連27.3期ともに2.64%で、設備工事業界としては標準からやや高めの水準に位置する。3%を超えるような明確な高配当株ではないものの、同社が主力とする空調・衛生設備の分野は需要が底堅く、景気による振れ幅も比較的小さいため、配当が大きく減るリスクは低い。純粋な建設業が景気に左右されやすいのに対し、新日本空調は大型ビル、工場、研究施設、クリーンルームなど更新需要が継続的に発生する領域を広くカバーしており、このことが安定した利益と配当の基盤を支えている。
業績推移を見ると、営業利益・純利益ともに右肩上がりで、一株利益(EPS)も119円、155円、211円と着実に成長している。利益の積み上げが順調であることは、将来的な増配余地が広がっていることを意味し、企業の稼ぐ力が強まっていることを示している。利益率が向上していることに加え、ROEも9.6%から13.9%へと改善しており、資本効率の上昇が企業全体の成長性の高さを裏付けている。
同社は空調設備工事の中でも特に高付加価値分野に強みを持ち、クリーンルーム、原子力関連空調、都市再開発、超高層ビルの空調など、技術力が求められる領域で長年実績を積んできた。こうした技術優位性は価格競争に巻き込まれにくく、利益率が落ちにくい構造を形成している。環境技術や高度な空調システムに対する需要が続く限り、事業の安定性は今後も維持されやすい。
配当利回り自体は2.6%台と控えめな印象を受けるかもしれないが、その裏側には業績の底堅さ、収益性の改善、減配耐性の高さがあり、長期保有で着実に配当を受け取りたい投資家にとっては十分に魅力的な選択肢となる。株価が極端に上下しにくい点も、安定した配当収入を求める投資スタイルとは相性が良い。
総合的に見ると、新日本空調は安定した2.6%前後の利回りと、利益成長による将来の増配余地、減配リスクの低い安定収益体質、そして技術力に支えられた高収益分野の広さを備えており、長期的に安心して配当を受け取ることができる銘柄といえる。配当利回りが特別高いわけではないが、業績の伸びと企業の安定性を踏まえると、堅実な配当株として十分に評価できる内容になっている。
今後の値動き予想!!(5年間)
新日本空調の株価は現在3,030円で、空調・衛生設備工事の分野で高い技術力を持つことから、事業の安定性が高く、株価も極端に大きく動きにくいタイプの銘柄といえる。クリーンルーム、原子力空調、大型再開発、工場・研究施設の更新など、景気の影響を受けにくい分野に強みを持っており、利益率やROEも改善傾向にあるため、5年というスパンで見れば着実に価値を積み上げていくタイプの動きが想定される。
良い場合は、利益の増加が続き、営業利益率が8〜9パーセント台を安定的に維持し、ROEが14〜15パーセント前後まで上昇するケースで、クリーンルームや再開発案件の増加が追い風となる。市場が収益性の改善を評価すれば、PERが12〜14倍程度まで上昇する可能性があり、その場合の株価は3,500〜4,000円のレンジが見えてくる。外部環境が想像以上に追い風になれば4,200円台をうかがう可能性もあるが、急騰ではなく時間をかけて段階的に水準を切り上げていく展開となる。
中間の場合は最も現実的なシナリオで、売上・利益が緩やかに増え続ける一方、年度ごとに受注時期のズレや案件の偏りで利益に多少の上下が出るケースである。この場合、PERは9〜11倍程度に収まりやすく、株価レンジは2,900〜3,300円あたりが中心になる。現在値3,030円に対して大きな乖離は予想しづらく、安定配当を受け取りながら横ばいからやや上向きに推移していく堅実な動きとなる。
悪い場合は、資材高騰や人件費上昇、大型案件の遅延、工事採算の悪化などが重なり、営業利益率が6パーセント台前半に戻るような展開である。この場合、PERが7〜8倍程度まで低下し、株価は2,400〜2,600円あたりまで調整する可能性がある。さらに外部環境が悪化した場合には2,300円台に触れる可能性もゼロではないが、空調・衛生設備は更新需要が必ず発生するため、長期での下落リスクは比較的小さい。
総合すると、新日本空調は急伸する成長株ではないが、利益率の改善と技術力の高さに支えられて堅実に企業価値を積み上げるタイプで、株価も事業の安定性に沿って緩やかに推移しやすい。上昇しても急激ではないが、下落もしにくい銘柄であり、5年間を見据えると横ばい〜じわじわ上昇の動きが最も現実的で、中長期の安定資産として保有しやすい企業といえる。
この記事の最終更新日:2025年11月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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