株価
日本電設工業とは

日本電設工業株式会社は、東京都台東区に本社を置く電気設備工事会社で、特に鉄道電気工事に強みを持つインフラ系の総合電設企業である。1942年(昭和17年)12月15日、鉄道省の電気工事指定業者121社と、電気機器・電線などの指定製造業者15社による共同出資のもと、「鉄道電気工業株式会社」として設立された。鉄道省(のちの国鉄)が行う鉄道電気工事を独占的に請け負う企業として発足した経緯を持ち、鉄道インフラ工事に特化した技術と経験は業界内でも屈指のものとなっている。
1949年(昭和24年)、国鉄発注が一般競争入札に切り替わったことを契機に、事業領域を鉄道以外にも広げ、社名を現在の「日本電設工業株式会社」へ変更。以降は鉄道電気工事を基盤にしながらも、一般電気工事、情報通信工事へと取扱領域を拡大し、総合設備工事会社として成長を続けてきた。
現在の事業区分は「鉄道電気工事」「一般電気工事」「情報通信工事」の3部門で構成されており、売上の5割以上を鉄道電気工事が占める。鉄道工事分野では、在来線や新幹線だけでなく、地下鉄、新交通システム(モノレール・自動案内軌条式など)まで全国的に工事を展開しており、鉄道インフラ電気工事のリーディングカンパニーとして確固たる地位を築いている。
鉄道電気工事の内容は幅広く、架線設備、信号装置、変電設備、駅務設備、通信ケーブル、トンネル照明、防災設備、電力供給システムなど、鉄道の安全運行に直結する設備の新設・改良・保守を一括して担う。鉄道インフラは安全性と確実性が最重要となるため、高度な技術力と長年の経験を持つ同社は鉄道会社からの信頼が厚く、鉄道インフラ更新需要の増加にも対応できる体制を整えている。
また、一般電気工事や情報通信工事にも積極的に取り組んでおり、ビル・工場・商業施設・公共施設の電気設備、空調設備、防災設備、防犯設備、ネットワークインフラ、光通信ケーブル敷設、監視システムなど、多様な設備工事を行っている。鉄道以外の領域にも事業を広げており、社会インフラ全般を支える電設企業としても存在感が増している。
人材育成にも強い力を入れており、千葉県柏市には「中央学園」という研修施設を所有している。さらに「NDK技術学園」という認定職業訓練校も併設しており、自社社員だけでなく協力会社や同業他社の社員も受け入れている。鉄道電気工事は専門性が高く高度な技能が求められるため、教育体制の充実が同社の競争力につながっており、業界全体の技術力向上にも寄与している。
日本電設工業は、鉄道電気工事における圧倒的な専門性と長い歴史を基盤に、一般電気設備、情報通信設備などへ領域を拡大し、インフラ需要の拡大とともに安定した成長を続ける電設企業である。
日本電設工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 172,100 | 9,658 | 10,903 | 7,171 | 116.7 | 37(記) |
| 連24.3 | 194,031 | 13,448 | 14,900 | 10,042 | 164.4 | 47(特) |
| 連25.3 | 216,922 | 17,934 | 19,400 | 13,192 | 223.8 | 90 |
| 連26.3予 | 230,500 | 17,700 | 18,900 | 13,400 | 229.6 | 92 |
| 連27.3予 | 238,000 | 18,400 | 19,600 | 14,000 | 239.8 | 92〜95 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 13,234 | -12,441 | -2,342 |
| 2024 | 7,383 | -4,178 | -7,932 |
| 2025 | -4,341 | -5,774 | 169 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.6% | 2.7% | 4.0% | ― | ― |
| 2024 | 6.9% | 3.5% | 5.4% | ― | ― |
| 2025 | 8.2% | 4.4% | 6.7% | 13.5~9.6倍 | 0.93倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
日本電設工業の業績を見ると、売上は連23.3の1,721億から連25.3の2,169億へと着実に伸びており、連26.3予でも2,305億と増収が続く見通しになっている。鉄道電気工事を中心とした事業構造は景気変動の影響を受けにくく、JRや地下鉄など公共性の高い案件が多いため、安定した受注基盤が業績の底堅さにつながっている。
営業利益は連23.3で約97億、連24.3で約134億、連25.3で約179億と順調に増えており、連26.3予では177億とほぼ高い水準を維持する計画になっている。経常利益も同様に右肩上がりで、利益体質が年々改善していることがわかる。鉄道工事の高い専門性と安定案件に支えられ、収益は年々強化されている。
純利益も連23.3の71億から連24.3で100億、連25.3で132億へと着実に増加しており、連26.3予でも134億と引き続き安定した成長が見込まれている。利益のブレが比較的小さく、減益リスクが相対的に低い点は大きな強みと言える。
指標面を見ると、営業利益率は5.6パーセント、6.9パーセント、8.2パーセントへと上昇しており、設備工事業としては比較的高い収益性に入ってきている。ROEも4.0パーセントから5.4パーセント、6.7パーセントへ改善しており、ROAも2.7パーセントから4.4パーセントへ向上していることから、資本効率は着実に良くなっている。
また、2025年の実績PERは13.5〜9.6倍のレンジと、同業他社と比べても割高感はなく、PBRも0.93倍と資産価値から見ても割安に近い水準にある。利益成長と安定したインフラ需要を考えると、バリュエーション面では十分に評価余地がある。
総合的に見ると、日本電設工業は鉄道インフラという需要の継続しやすい分野を中心に事業を行い、売上と利益の両面で安定した成長を続けている。利益率やROEも改善傾向にあり、財務的にも堅実な企業である。過度な急成長をするタイプではないものの、安定的に利益を積み上げていく企業で、株価も業績に沿って堅調な動きをしやすい。安定成長・堅実な収益・割安寄りの指標という点から、長期投資向けのディフェンシブな電設株として評価できる銘柄である。
配当目的とかどうなの?
日本電設工業の予想配当利回りは連26.3期・連27.3期ともに2.92パーセントとなっており、電設業界の中では「中くらいの利回り」という位置づけになる。高配当株とまでは言えないものの、鉄道電気工事を主力とする企業らしく業績のブレが大きくないことから、配当も比較的安定して受け取りやすいのが特徴になっている。売上の柱である鉄道電気工事は国やJRグループ、地方の鉄道会社など公共性の高い案件が多く、長期的に一定の需要が続くため、極端に業績が崩れて減配に追い込まれるといったリスクは大きくない。
実際に、純利益は71億から100億、132億へと順調に増えており、会社は利益に応じて段階的に配当水準を引き上げてきた。記念配当や特別配当が入る年もあるが、基本的には右肩上がりの利益に合わせて着実に還元幅を広げている。連26.3期と連27.3期では配当を92円前後に据え置く見込みだが、EPS自体が伸びているため、実質的には配当負担率を適正に保ちながら無理のない水準で還元している印象が強い。
一方でROEはまだ6〜7パーセント台と突出して高いわけではなく、積極的に配当を増やしていくタイプの企業とも言いにくい。どちらかといえば、利益を内部に貯めて堅実に財務体質を強めながら、安定配当を継続するスタイルの企業という位置づけになる。
総合すると、日本電設工業は高配当株というより、安定感を重視した“準ディフェンシブの配当銘柄”に当てはまる。派手さはないが、鉄道インフラ需要を背景に利益が毎年積み上がりやすく、大幅減配のリスクが小さいため、長期で安心して持てるタイプの配当株として評価できる。将来的に利益の増加が続けば、じわじわと増配する可能性もあるため、安定志向の投資家には相性が良い銘柄と言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本電設工業の株価は現在3,150円で、鉄道電気工事を中心に安定した収益基盤を持つ企業らしく、株価の振れ幅も比較的落ち着いた動きになりやすい。売上は毎年着実に増えており、利益率も5.6パーセントから8パーセント台へと改善してきているため、長期的な業績の安定性は高い部類に入る。JRグループや地下鉄、公共インフラに関わる工事が多いことから、景気悪化局面でも極端に業績が落ち込みにくいディフェンシブな特徴を持っている。
こうした安定性と収益力を踏まえて、今後5年間の株価の動きをシナリオ別に見ていきます。
まず良い場合は、鉄道インフラの更新需要が強く続き、加えて一般電気工事や通信設備工事の受注も着実に増えるケースになる。利益率が安定して高まり、ROEが7パーセント後半〜8パーセント近くで推移するようになれば市場評価はさらに上向く可能性があり、この場合は株価が3,600円から4,000円程度まで上値を伸ばしていくシナリオが考えられる。設備工事業は大きな成長テーマが出ると評価が上がりやすいため、大規模な鉄道更新計画や再エネ・防災関連工事の増加が追い風になる。
次に中間のケースは最も現実的で、売上と利益が毎年緩やかに増えていきながらも、案件状況によって年度ごとに多少の上下がある展開となる。鉄道工事は継続性がある一方、一般電気工事や通信工事は景気の影響も受けるため、この場合、株価の中心レンジは3,000円から3,300円あたりに収まりやすい。現在の株価水準と大きな乖離は出にくく、配当を受けながら安定した推移を見せるタイプの動きになる。
悪い場合は、資材価格や人件費の上昇、不採算案件の発生、鉄道や公共インフラの工事計画の遅延などが重なり、利益率が低下するケースである。営業利益率が6パーセントを割り込むような展開になると市場の見る目はやや厳しくなり、株価は2,600円から2,900円程度までの下落余地が出てくる。ただし、鉄道インフラ工事は需要が途切れにくく、長期的には必ず更新が必要になる分野であるため、株価が大崩れし続けるリスクは限定的で、どこかで下値が固まりやすい特徴を持っている。
総合すると、日本電設工業は急成長して大きく跳ねるタイプの銘柄ではないが、鉄道関連工事の安定性と、利益率改善による収益力の上昇が魅力の“堅実なインフラ系株”である。株価も大きく乱高下しにくく、中長期で安定した資産形成を狙う投資家とは相性が良い。5年後の株価は、大きな下落リスクが小さい一方で、成長の積み上げに応じてゆっくりと評価されていくタイプと言える。
この記事の最終更新日:2025年11月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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