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東洋建設(1890)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

東洋建設とは

東洋建設は、日本の建設会社の中でも特に“海上土木に圧倒的な強みを持つ大手クラスの海洋土木企業”として長く知られている。港湾工事、浚渫工事、埋立、防波堤、人工島造成といった海洋インフラの中核となる工事を主力としており、巨大な浚渫船や起重機船、作業船など、多数の特殊船舶を自社で保有している点が最大の特徴。これにより海洋工事の計画から運用、施工までを一貫して自社で行うことができ、国内の海洋土木分野では他社の追随を許さないレベルの技術力・施工力を持っている。

中でもフィリピンをはじめとしたアジア圏での実績は群を抜いており、フィリピンでは港湾整備や埋立造成で長年強みを発揮してきた。マニラ港や周辺沿岸部の浚渫・改善工事など、多数の実績が積み上がっており、同国では“海洋土木の東洋建設”というブランドが確立している。日本国内に加え、アジアでも現地企業から信頼を得ていることから、海外案件は今後も安定的に受注が期待される領域となっている。

さらに近年は、洋上風力発電にも積極的に投資しており、海洋施工のノウハウをそのまま再生可能エネルギー分野に活かす戦略を強めている。洋上風力は今後数十年規模で拡大が見込まれる国家的プロジェクトであり、海上での基礎工事や海底地盤の整備、洋上構造物の施工などはまさに東洋建設の得意分野と重なる。海洋土木のスペシャリストとして、再エネ分野に本格参入しつつある点は中長期の重要な成長テーマになっている。

事業領域としては海上工事が中核にあるが、陸上土木や建築事業にも取り組んでいる。道路や橋梁、トンネル、河川工事、上下水道、公共建築など幅広いインフラ整備に対応しており、“海洋に強い総合ゼネコン”という立ち位置になっている。官公庁案件が多いことも特徴で、国や自治体の公共工事に強く、防波堤整備・港湾強靭化・高潮対策などの防災工事を多数手がけてきた。

こうした強い専門性と安定した事業基盤を背景に、2023年には大成建設が東洋建設にTOB(株式公開買付)を実施し、同社は大成建設グループの傘下に入った。大成建設はスーパーゼネコンのひとつであり、グループ入りすることで資本力・ブランド力・大型案件への参入余地が広がり、東洋建設の経営基盤は一段と安定したものになった。特に海洋工事や洋上風力など、「大成建設の総合力 × 東洋建設の海洋技術」の組み合わせは非常に相性が良く、今後の事業規模拡大にもプラスに働くと見られている。

総合すると、東洋建設は海洋土木のトップランナーとしての技術力と実績を持ちながら、陸上・建築・海外・再エネまで事業を広げる総合インフラ企業であり、海と陸の両面に強い独自の立ち位置を築いている。フィリピンを中心とした海外での信頼性、洋上風力という新しい成長テーマ、大成建設のグループ入りによるシナジーなど、短期・中期・長期の複数の成長要素を抱えた企業と言える。

東洋建設 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) EPS(円) 配当(円)
連23.3 168,351 8,995 8,551 5,656 60.2 25
連24.3 186,781 10,887 10,057 7,016 74.5 74
連25.3 172,605 11,651 11,071 8,311 88.5 88
連26.3(予) 200,000 12,000 11,100 8,500 90.5 0
連27.3(予) 210,000 11,800 10,700 8,300 88.3 0

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023 11,785 -485 -2,872
2024 -8,512 -7,881 572
2025 2,822 -11,191 5,893

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER(実績) PBR(実績)
2023 5.3% 7.8% 3.6%
2024 5.8% 8.9% 4.2%
2025 6.7% 10.7% 4.6% 高値平均:17.8倍
安値平均:12.9倍
2.22倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

東洋建設の直近数年の業績を並べて見ると、まず売上・利益ともに安定した成長基調にあり、海上土木に強い企業らしい“底堅さ”が際立っている。売上高は1,683億円 → 1,867億円 → 1,726億円 → 2,000億円予想と推移し、多少の上下はあるものの、海洋工事・港湾インフラ整備という長期需要の強い分野を背景に、全体として右肩上がりの流れが続いている。

利益面でも、営業利益は89億円 → 108億円 → 116億円 → 120億円予想と着実に増加しており、経常利益・純利益もほぼ同じトレンドで推移している。海洋土木は一件一件の案件規模が大きく、採算管理も難しい分野だが、ここ数年の利益の伸びを見ると、同社の施工管理能力や採算意識はかなり堅実で、単なる売上規模拡大ではなく“利益体質そのものが強化されている”ことが読み取れる。

EPSも60.2円 → 74.5円 → 88.5円 → 90.5円予想と安定して増えており、今期予想でもほぼ高水準を維持している。特別な急成長ではないものの、長期的にじわじわと利益が積み上がる“堅実な稼ぐ力”が見えている状態。

収益性指標に目を向けると、営業利益率は5.3% → 5.8% → 6.7%とじわじわ改善しており、海洋土木業界では十分優秀な水準。ROEも7.8% → 8.9% → 10.7%と着実に向上し、資本効率の改善が続いている。ROAも3.6% → 4.2% → 4.6%と推移しており、総資産に対する収益性は無理なく年々強まっていることがわかる。

一方でバリュエーションを見ると、PERの高値平均17.8倍・安値平均12.9倍という水準は、一般的な建設株よりはやや高い。しかし海洋土木という参入障壁の高い分野を主力とし、海外での強み(特にフィリピン)も評価されているため、“割高というより適正評価”に近い。PBR2.22倍も建設株としては高水準だが、高い技術力・専用船舶という資産・大成建設傘下の信頼性を考えると違和感はない。

そして東洋建設の今後の企業価値を左右する重要なポイントが、「洋上風力発電への本格参入」「大成建設によるTOBでグループ入り」の2点。

洋上風力は今後の国家的プロジェクトであり、海洋土木の技術をそのまま活かせるフィールドのため、東洋建設にとって成長機会が大きく広がる分野。さらに大成建設の傘下入りにより、資本力・案件規模・ブランドが強化され、より大型の洋上案件に参入しやすくなっている。

総合すると、東洋建設は“急成長株”ではないが“盤石に強くなるタイプの安定インフラ企業”で、海洋土木と洋上風力の相性の良さから中長期の成長期待も十分ある。利益体質は安定していてROEも改善が続いているため、長期で持ってじっくり資産を増やすタイプの投資先として優れていると評価できる。

配当目的とかどうなの?

東洋建設の配当利回りを見ると、連26.3の配当予想は「―」、連27.3では「0.00%」となっており、事実上無配もしくは業績ではなく企業再編に伴う特殊事情で配当が止まっている状態といえる。これだけ見ると、配当目的の投資としては魅力がほぼ無いように見えるが、背景を理解すると状況は少し違う。

東洋建設は2023年に大成建設がTOB(株式公開買付)を行い、大成建設グループの一員となっている。TOB後の企業は、将来的に上場廃止が視野に入る場合、配当政策を通常モードに戻さず、内部留保を優先するケースが多い。東洋建設の場合もこのパターンに当てはまり、現在の「無配」は経営悪化によるものではなく、TOB後の資本政策として意図的に配当を停止しているという側面が強い。

実際、業績自体は好調で、売上は2,000億円台、利益も安定して増えており、EPSも90円前後と堅調。通常であれば配当を出せる体力は十分にある。しかし、洋上風力投資や大型船舶更新など海洋土木特有の設備投資が大きいこと、そしてグループ内での資金効率を重視する戦略の中で、配当より内部留保を優先しているという構造がある。

そのため、東洋建設を「配当で稼ぐ銘柄」として保有するのは現時点では適していない。少なくともTOB後の再編方向が固まり、グループ内での資本政策が落ち着くまでは、配当回復の見込みはあまり高くないと考えられる。

一方で、無配であることの裏側には“将来的に企業価値を高めるための投資を優先している”という意味合いもあり、特に洋上風力や海外海洋土木での成長余地を拡大させる方針が強く見える。つまり、配当ではなく株価上昇や事業価値の向上を期待するタイプの銘柄に性格が変わってきているといえる。

結論として、東洋建設は 配当目的の投資先には向かない。しかし、海洋土木の技術力・海外実績・洋上風力の成長性・大成建設とのシナジーなどを考えると、配当よりも中期的な企業価値の上昇を狙う投資家には依然として十分魅力がある銘柄といえる。

今後の値動き予想!!(5年間)

東洋建設の現在株価1,747円は、海上土木の大手としての実力や技術資産、さらに洋上風力や海外事業の成長余地を踏まえると、比較的落ち着いた水準に位置している。同社は港湾浚渫・埋立・防波堤・海岸防災など、参入障壁の極めて高い工種に強く、巨大な浚渫船や起重機船を自前で運用できる国内数少ない専門企業。こうした「代替の効かない技術」を持つ企業は、景気に左右されにくい長期インフラ需要を背景に、安定性の高い業種として評価されやすい。

とくに海外、とりわけフィリピンでは過去からの豊富な実績があり、現地からの信頼も厚い。アジアの港湾整備は今後も一定の需要が続くと見られており、長年培ってきた施工能力が今後の受注にもつながりやすい。また洋上風力発電への本格参入という新しい成長軸を持っている点は、他の中堅ゼネコンとは明確に違う強みだ。洋上風力は国策級の拡大が予定されており、海洋土木の技術を持つ企業にとっては“未来に向けた大型テーマ”でもある。

さらに大成建設によるTOBを経てグループ入りしたことで、資金調達力・受注力・ブランドの信頼性が向上し、単体の時よりも業務の幅が広がりやすい環境が整った。大成建設との連携で大型案件に参画しやすくなる可能性もあるため、中長期的には「以前よりも事業安定性と成長性が増している」企業といえる。こうした事業環境を背景に、株価の5年間の姿を“良・中・悪”の3つのシナリオで整理してみる。

まず「良い場合」は、海洋土木・洋上風力・海外案件のすべてがバランスよく伸び、 EPSが100円前後まで伸びるケース。大成建設グループ内でのシナジーにより、施工効率や大型案件の受注が拡大し、利益率がじわじわ改善していく状況だ。市場が東洋建設を“成長+安定”と評価し、PER12〜15倍程度を許容すると、株価は2,200〜2,800円程度まで水準を切り上げる展開が期待できる。洋上風力関連のテーマ性から、一時的には3,000円台に乗る可能性も十分ある。

次に「中間のシナリオ」は、最も現実的なケース。海洋工事は安定的に推移し、海外案件も堅調。売上規模は2000億円前後で維持しながら、利益は安定だが大幅増益とはいかない状態。EPSは80〜95円のレンジで横ばい〜微増となり、PERは現在と同じく9〜12倍あたりが市場の妥当評価。株価は1,600〜2,000円程度を中心に推移するイメージで、大きく下にも大きく上にも行きにくい“安定水準”が続く見込み。配当は期待できないが、安定した事業を背景に株価の大崩れも起こりにくい。

そして「悪い場合」。これは海外案件の採算悪化や大型浚渫工事のコスト増、資材価格の上昇などが重なるケースで、EPSが70円台まで落ちる可能性がある。海洋土木は案件ごとの利益ブレが大きいため、悪い年が出ると市場の評価も一段低くなることがある。PERが8〜9倍の評価しか付かなくなると、株価は1,300〜1,500円程度まで調整する可能性がある。ただし、港湾強靭化や海岸保全といった“消えない需要”を扱っている企業のため、長期的に株価が深く沈み続けるリスクは限定的で、1,000円割れのような極端な下落は考えにくい。

総合すると東洋建設は、海洋土木という強い専門性、海外での強み、洋上風力という新しいテーマ、大成建設グループ入りのプラス効果の4つが重なっており、大きなジャンプはないが「着実に強くなり続けるタイプの企業」。5年後の株価は良い場合で2,800円前後、中間で1,800円周辺、悪い場合でも1,300〜1,500円程度と、下値は比較的固い印象。値上がりはゆっくりだが、事業基盤の強さや成長余地を考えると“低リスクでじっくり構えるタイプの銘柄”として適している。

この記事の最終更新日:2025年11月25日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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