株価
中外炉工業とは

中外炉工業株式会社は、大阪府に本社を置き、工業炉や産業機械の製作・販売・施工設置までを一貫して行う総合エンジニアリング企業である。日本の工業炉メーカーの中でも特に長い歴史を持ち、金属の熱処理技術や燃焼技術における高い専門性で知られている。主力となる工業炉は、金属熱処理用炉、加熱炉、真空熱処理炉、高温炉など多種多様で、自動車部品、鉄鋼、機械部品、電子部品、化学製品、食品加工など、幅広い産業の製造ラインで採用されている。同社は関西企業の経済団体「大輪会」に所属しており、地域産業との結びつきも強く、長年にわたり製造業の発展に関わってきた。
中外炉工業は工業炉を中心としたエネルギー関連分野に強みを持つが、その事業領域は非常に幅広い。工業炉分野では、加熱炉や真空炉、高温炉などの製造設備の心臓部となる熱処理技術を提供しており、特に温度分布の均一性や短時間での正確な温度立ち上げが求められる工程で多くの実績を有している。ガスバーナーをはじめとした燃焼装置などの熱源機器にも高い技術力を持ち、省エネ型燃焼システムや高効率加熱技術など、環境負荷を抑えながら高い生産性を実現する設備を多数開発してきた。
情報通信・電子分野では、精密塗工装置やフィルム製造関連設備など、薄膜加工や温度管理が重要となる高度な装置を提供している。電子部品、光学フィルム、リチウムイオン電池関連など、成長分野での採用も増えており、工業炉とは別の収益源として事業の安定性を支えている。
環境保全の領域では、蓄熱式脱臭装置(RTO)、キルン、排ガス処理設備など、環境規制に対応した装置を多数提供している。特にRTOは揮発性有機化合物(VOC)の除去に有効で、化学工場や食品工場などで需要が伸びている。環境規制が年々厳しくなる中、同社の環境装置は安定した市場を持ち、設備更新需要も継続することから、同社の事業基盤を強固にしている。
中外炉工業のもう一つの特徴は、単なる設備メーカーではなく「設計・製作・据付・試運転・保守」までを一貫対応できる点である。工業炉のような大型設備は、導入後も定期的な点検や修繕、改修工事が必要となるため、このアフターサービス分野は安定的な収益源となる。また大型設備は数十年単位で運用されるケースも多く、一度導入されれば長期的な関係が続きやすいことから、顧客基盤の強さにもつながっている。
技術面では、高温技術、燃焼制御、熱エネルギーの効率利用、省エネ炉の設計など、同社の基盤となる技術が複数の産業に応用できる点が大きな強みである。加えて、日本の製造業が重要視する品質面でも信頼性が高く、精度の高い温度管理や長寿命の炉体構造など、競合他社との差別化要因となる技術を数多く持っている。
市場環境としては、自動車・電子部品・金属加工など基幹産業の設備投資が増えれば追い風となり、環境規制強化や省エネ需要も同社の成長を後押しする。一方で景気動向に左右される部分はあるものの、環境装置やメンテナンス事業など、景気に左右されにくい分野も持ち合わせており、全体としてバランスの良い事業構造を築いている。
総合すると、中外炉工業は工業炉を核にエネルギー、電子、環境といった関連分野に広く展開する総合エンジニアリング企業で、長年培った熱処理・燃焼技術を背景に、日本の製造業を支える基盤設備を提供し続けている。老舗でありながら技術開発に積極的で、環境配慮型設備や精密加工装置など成長分野にも対応しており、今後も安定した需要が期待できる企業と言える。
中外炉工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当りの配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 27,977 | 1,309 | 1,575 | 1,231 | 162.0 | 70 |
| 連24.3 | 29,283 | 1,477 | 1,714 | 2,197 | 293.8 | 80 |
| 連25.3 | 36,247 | 2,735 | 3,003 | 2,998 | 407.6 | 150 |
| 連26.3(予) | 37,500 | 3,000 | 3,150 | 3,100 | 428.3 | 150 |
| 連27.3(予) | 41,500 | 3,620 | 3,720 | 2,450 | 338.5 | 165 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | -2,500 | -63 | -727 |
| 2024 | -891 | 550 | 2,451 |
| 2025 | -3,696 | 654 | -2,701 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値 / 安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.6% | 5.1% | 2.9% | – | – |
| 2024 | 5.0% | 7.9% | 4.4% | – | – |
| 2025 | 7.5% | 10.5% | 6.1% | 10.9倍 / 7.1倍 | 1.15倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
中外炉工業の業績を億円ベースで見ていくと、売上は279億円から292億円、362億円へと順調に伸びており、最新予想では375億円と増加傾向が続いている。大企業ではない中堅規模の工業炉メーカーでありながら、売上の伸びが比較的安定しているのは、主力の工業炉に加えて環境装置や精密塗工装置など複数の事業がバランス良く機能しているためと考えられる。
利益面を見ると、営業利益は13億円から14億円と小幅な増加にとどまっていたが、連25.3期に27億円まで大きく伸び、その後の予想では30億円としっかりと増益傾向が続いている。営業利益率も4.6%、5.0%、7.5%と改善しており、製品構成の変化や高付加価値設備の比率増加によって採算が良くなっていることがわかる。工業炉という専門性の高い分野で利益率が改善しているのは、価格競争型のビジネスではなく「技術力で選ばれる案件」が増えていることを示している。
経常利益も15億円、17億円、30億円と大幅に増加しており、本業の採算改善に加えて全体の収益構造が強くなっている印象がある。純利益も12億円→21億円→29億円→31億円予想と右肩上がりで、不安定さが少ない。“小型株でありながら安定感がある”というのは中外炉工業の大きな特徴だ。
EPSは162円から293円、407円、428円と大きく伸びており、株主価値の増加がはっきりと数字に表れている。配当も70円→80円→150円へ大幅に増配され、その後150円で据え置かれているが、EPSにゆとりがあるため配当余力自体は十分に残っている。
資本効率の面ではROEが5.1%→7.9%→10.5%へと改善しており、ROAも2.9%→4.4%→6.1%とバランス良く上昇している。工業炉メーカーという業態を考えると、ROE10%台はかなり優秀な部類に入る。利益率と成長率が中小企業としては高く、財務面の改善も綺麗に進んでいる。
バリュエーションを見ると、2025年実績PERは7.1倍〜10.9倍のレンジで、PBRは1.15倍。利益成長がこれだけ強い企業としてはPER7倍台は明らかに割安であり、PER10倍台前半でも妥当と言える水準。PBR1.15倍は資産内容から見て割高ではなく、成長を織り込めば適正〜やや割安と判断できる。
総合すると、中外炉工業は小型株ながら売上・利益がしっかりと伸び、利益率も改善し、ROE・ROAも上昇しているという“業績改善局面の企業”で、現在のバリュエーションを踏まえても割安感が強い。配当も150円水準と十分な利回りがあり、EPSの伸びを考えると今後の増配余地も残っている。
派手な成長株ではないが、技術力を背景に安定した需要があり、環境装置や省エネ炉などの成長分野も持つため、長期的には堅い上昇が期待できるタイプの銘柄と言える。PER7〜10倍の範囲にいる間は比較的買いやすく、下値の限定性と安定成長が魅力の企業と判断できる。
配当目的とかどうなの?
中外炉工業の予想配当利回りは連26.3期で3.33%、連27.3期では3.66%となっており、配当目的の投資としては十分魅力的な水準に入っている。3%台半ばの利回りであれば、一般的には「高配当寄りの中堅株」として扱われ、銀行株や商社株のような高配当銘柄とまではいかないが、インカム狙いでポートフォリオに組み込みやすい位置にある。
この会社の場合、単に配当利回りが高いだけでなく、利益とEPSがしっかり伸びてきている点が重要で、減配リスクの低さと配当の持続性という点でも評価できる。実際、純利益は12億円から21億円、29億円、そして予想31億円と安定した増加が続いており、EPSも162円→293円→407円→428円と急拡大している。EPSに対して配当150円という水準は配当性向としてまだ余力があり、配当を無理に支えている印象はない。
また、工業炉や環境装置などの設備は納品後も保守・点検・更新工事などが継続的に発生するため、アフターサービス収入が比較的安定しており、業績が大きく崩れにくい。こうした安定性を背景に、3%台半ばの利回りが「維持されやすい利回り」である点は、配当目的の投資家にとって非常に大きなメリットになる。
さらに、PBRが1.15倍と低めであることや、PERが7.1〜10.9倍という比較的割安なレンジで推移している点を踏まえると、株価が大きく下落しづらい構造があり、利回り4%前後に近づくほど“割安感のある買い場”になりやすい。増配余地も残っているため、長期で持っていると配当自体が増えていき、実質利回り(取得単価ベースの利回り)が上昇していくタイプの銘柄でもある。
総合すると、中外炉工業は利回り3%台前半〜後半を確保しながら、利益成長と財務改善が同時に進んでいる企業で、配当目的の長期保有に適した中小型株の一つと言える。短期的に高利回りを求めるタイプではないが、減配リスクが低く、中・長期で安定して配当を積み上げたい投資家にとっては十分魅力がある銘柄となっている。
今後の値動き予想!!(5年間)
中外炉工業の株価が今後5年間でどう動くかを考えると、まず前提となるのはこの会社が工業炉、脱臭装置、環境設備などニッチで専門性の高い分野を扱っており、受注状況や設備投資サイクルの影響を受けやすいことだ。その一方で、利益率が改善し続けていることや、EPSが安定して伸びていること、配当がしっかり維持されていることなど、長期で評価しやすいポイントも多い。現在株価が4,500円という位置は、業績の伸びを踏まえると割安感がある位置で、ここからの上下どちらにも動きやすい“過渡期の価格帯”と言える。
良い場合を想定すると、工業炉や環境装置の需要が伸びて受注が増え、利益率の改善がさらに続くケースだ。中外炉工業は薄利多売ではなく、技術力で選ばれるタイプの高付加価値設備が多いため、売上がそこまで急伸しなくても利益が積み上がりやすい。これが継続するとEPSがさらに伸び、PER評価も上向きやすくなり、株価は将来的に6,000円から7,000円、さらに市場が強気なら7,500円台も見えてくる。特に環境規制の強化や工場の脱炭素化需要が追い風になると、業績は予想以上に強くなり、株価も素直に評価される展開になりやすい。
中間の場合は、売上も利益もそこまで大きくは伸びないが、現状と同じように安定成長が続くケースである。中外炉工業はニッチ企業でありながら顧客層が広く、景気が悪くても保守・更新需要があるため、完全に落ち込むことが少ない。このため、緩やかに増収増益が続くと、市場からは“安定した実質割安株”として評価され、株価は5,500円から6,200円前後のレンジで推移していく可能性が高い。上下に大きく振れにくく、配当も3%台後半が維持できることから、長期保有には向いた展開だろう。
悪い場合は、設備投資全体が冷え込み、高温炉や脱臭装置など大型設備の導入が一時的に停滞してしまうケースだ。工業炉メーカーは好不調の波があり、受注が減ると利益率が下がりやすい。また、小型株のため市場の流動性も高くないことから、売りが続くと値動きが重くなり、PERが低めで放置される可能性もある。この場合、株価は3,500円から4,200円のレンジまで下押しされるリスクがある。ただし、赤字になるような企業ではなく、環境設備やメンテナンス収入が安定しているため、長期での業績崩壊は考えにくいのが救いでもある。
総合すると、中外炉工業は大きく跳ねる成長株ではないが、利益率の改善、EPS成長、堅実な配当水準など、長期でじわじわ評価されるタイプの企業であり、現在の株価から下値は比較的限定的。一方で、環境関連需要が伸びれば上振れ余地もあり、5年間というスパンで考えるなら“中庸〜やや強気寄り”の読みがしやすい銘柄と言える。短期の値幅よりも、着実な利益成長を見守りたいタイプの企業となっている。
この記事の最終更新日:2025年11月26日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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