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ニップン(2001)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

ニップンとは

株式会社ニップンは、製粉業と食品業を中心に事業を展開する、日本でもっとも歴史のある総合食品メーカーの一つである。1873年に官営札幌製粉所として創業し、日本で初めて欧米式の製粉機械を導入した近代製粉業のパイオニア企業でもある。日本の食文化がまだ発展段階にあった時代から小麦粉の安定供給に取り組み、日本の製粉・製パン・製菓産業の土台をつくった企業としての役割は大きい。製粉分野では日清製粉に次ぐ国内シェア第2位を長年維持しており、国内外で高い技術力と信頼を築いてきた。

ニップンは第一次大戦後の不況期に経営が悪化した際、三井物産の支援を受けて再建された背景を持ち、以降は三井グループに属する食品企業として発展を続けてきた。創業時から行ってきた小麦粉・ふすま・そば粉の製粉事業を基盤に、時代の消費者ニーズに合わせて加工食品の開発を本格化させ、現在では総合食品メーカーとしての存在感がより強まっている。2021年に社名を日本製粉株式会社から「ニップン」へ変更したのも、製粉にとどまらない事業拡大を象徴するもので、1996年からコミュニケーションネームとして浸透していた「NIPPN」が正式名称となった。

商品ブランドも幅広く、「ニップン」「オーマイ」「REGALO(レガーロ)」といったブランドは家庭用食品として非常に認知度が高い。とりわけパスタ事業は国内上位のシェアを持ち、ロングパスタ・ショートパスタ・ソース類まで幅広く展開している。2017年までは、世界的パスタブランド「バリラ」の日本国内独占販売契約を結び、日本市場におけるパスタ文化の普及にも大きく貢献した。

食品事業は売上構成比でも54.4%を占める主力部門となっており、パスタや冷凍パスタ、冷凍グラタン・ドリア、惣菜など家庭向け食品のほか、外食産業や製パン・製菓企業向けの業務用食材も手がけている。レンジ調理需要の拡大に合わせた冷凍食品の強化、調理済み食品の開発、外食向けメニュー提案など、多様なチャネルに対応している点が強みである。家庭用パスタでは「マ・マー」に代表される日清製粉系ブランドが有名だが、ニップンの「オーマイ」も長く愛される定番で、自社ブランドによる収益力が高い。

また、健康志向の高まりに合わせて、低糖質食品、ブラン食品、植物性たんぱく質を取り入れた商品、栄養補助食品、サプリメントなど、健康関連事業の強化も進んでいる。食品以外の分野では、ペットフード、バイオ関連、食品機械の製造、不動産事業、そしてグループ内でミスタードーナツなどの外食ビジネスも展開しており、事業の多角化が進んでいることは安定した利益構造につながっている。

ニップンは150年を超える歴史で培った製粉技術、食品加工技術、原料調達ネットワークを武器に、食品原料から加工食品まで一貫した事業体系を整えている点が大きな特徴である。安定した製粉事業を土台に、消費者向け食品や冷凍食品で確かなブランド力を築き、業務用食品や外食関連も加わって多角的な収益基盤を構築している。近年は海外展開や健康食品分野にも注力しており、国内食品メーカーの中でも中長期的な成長が期待される企業の一つである。

ニップン 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

年度 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益EPS(円) 一株配当DPS(円)
連23.3 365,525 12,288 14,816 10,260 132.2 40
連24.3 400,514 20,340 23,280 26,367 338.2 66
連25.3 410,878 21,486 24,393 24,757 317.3 66
連26.3予 424,000 21,500 24,500 20,200 239.9 66
連27.3予 430,000 22,500 25,500 20,500 243.5 66〜68

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期 営業CF(百万円) 投資CF(百万円) 財務CF(百万円)
2023 15,055 -5,026 -8,402
2024 24,022 -9,489 -7,241
2025 18,768 -7,807 -10,533

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

年度 営業利益率 ROE ROA PER(実績) PBR(実績)
2023 3.3% 5.4% 2.9%
2024 5.0% 11.7% 6.8%
2025 5.2% 10.2% 6.2% 13.0倍(高値平均)
11.5倍(安値平均)
0.75倍

出典元:四季報オンライン

投資判断

ニップンの直近の業績を見ると、売上高は連23.3期の3,655億円から連25.3期の4,108億円へと着実に成長している。食品メーカーとしては安定感の強い伸び方で、特に連24.3期に利益が大きく増えたのは冷凍食品、パスタ、業務用食品などの収益性が改善したことが背景にある。営業利益は122億円 → 203億円 → 214億円と増加し、営業利益率も3.3% → 5.0% → 5.2%へと改善しており、食品メーカーとしては十分に安定した水準で推移している。

経常利益も148億円 → 233億円 → 243億円と堅調に増えており、収益基盤の広がりがうかがえる。純利益は102億円 → 263億円 → 247億円と24.3期に大きく伸びたが、これは持分法関連や一部一過性要因の寄与も大きく、25.3期はやや平常ベースに戻っている。それでも過去と比べれば十分に高い水準を維持しており、安定した収益力が続いているといえる。

EPSは132円 → 338円 → 317円と大幅成長しているが、今期予想(239.9円)は増加要因の反動で減益見込みとなっている。ただし減益といっても企業の実態として悪化しているわけではなく、利益水準自体は高めで推移しているため、企業価値が崩れるタイプの減益ではない。配当は40円 → 66円 → 66円と増配後に維持する姿勢で、還元意欲は比較的高い。

財務指標を見ても、ROEは5.4% → 11.7% → 10.2%と改善傾向で、食品企業としては十分に優秀な数字である。ROAも2.9% → 6.8% → 6.2%と改善しており、資産効率も上がっている。PBRは0.75倍と割安感が強く、製粉・食品業界の中でも株価水準は低めに評価されている。PERも11〜13倍のレンジで推移しており、食品セクターとしては適正〜やや割安寄りに位置している。

これらを総合すると、ニップンは「急成長ではないが安定性が高く、株価バリュエーションは割安で、長期保有向き」の銘柄といえる。食品メーカーは景気変動に強く、外食・業務用・冷凍食品と多角化しているニップンは特に業績が崩れにくい。PBR0.7倍台は資産価値から見ても安く、ROEが10%前後で安定していることを考えると、現株価は割安放置の可能性が高い。

中長期で見れば、冷凍食品や健康食品などの高付加価値商品の伸びにより、営業利益率が5%台後半へさらに改善する余地もある。安定成長と割安性を同時に求める投資家には適した銘柄で、長期にじっくり保有しつつ、配当と株価の見直し両方を狙えるタイプの企業といえる。

配当目的とかどうなの?

ニップンの予想配当利回りは連26.3期・連27.3期ともに2.79%で、日本株全体の平均利回り(およそ2%)は上回るものの、高配当株とされる3〜4%台にはわずかに届かない。利回りの数字だけを見ると“やや高めだが魅力的とまでは言い切れない”中間的な位置づけになる。ただしニップンの場合、配当の継続性や収益基盤の安定性を考えると、利回り以上に評価できるポイントが多い。

まず、本業が食品事業であるため景気変動に強く、売上も利益も比較的ブレが小さい。特にパスタ、冷凍食品、プレミックス、業務用食品など生活に密着した商品を多く扱っているため、経済環境が悪化しても急激な収益悪化が起こりにくい。こうしたディフェンシブな事業構造は、継続的な配当を狙う投資家にとっては大きな安心材料になる。

配当の推移を見ると、40円 → 66円 → 66円と大きく増配したあと、その水準を維持している。今期・来期も66円前後で据え置き予想となっているが、これは安定性を優先した配当政策であり、利益の変動に合わせて極端に増減することがない点が評価できる。EPSは一時的な利益増で高く見えた年もあるが、平常時でも230〜300円台を維持しており、配当性向は20〜30%台と無理のない水準になっている。減配リスクが低いことは配当目的の投資において非常に重要である。

また、PBRが0.75倍と資産価値から見ても株価が割安な点も見逃せない。財務体質が安定している企業でPBR1倍割れが続いている場合、長期的には株価の見直しが起こる可能性があるため、配当と株価上昇の“両取り”ができる余地が残っている。

総合すると、ニップンは「利回りはそこそこ、高い安定性、割安株」という組み合わせで、配当を重視する投資家に向いた銘柄といえる。高配当株のような派手さはないものの、景気に左右されにくく、減配リスクも小さいため、長期で安心して保有しながら配当を積み上げていくスタイルに適している。利回りだけで選ぶ銘柄ではないが、安定性と割安性を重視する投資家にとっては十分に検討価値のある企業である。

今後の値動き予想!!(5年間)

ニップンの現在値は2,364円で、PBR0.75倍・PER11〜13倍のレンジにあることを考えると、食品メーカーとしては割安寄りの位置にある。今後5年間の株価を考える際には、パスタや冷凍食品など主力分野の成長性、食品価格の上昇分を利益にどこまで押し込めるか、そして業務用・外食向け需要の回復度合いがポイントとなる。

まず良い場合は、冷凍食品事業や業務用食品が順調に伸び、営業利益率が現在の5%前後から5.5〜6%に改善するシナリオである。この場合、EPSは260〜300円台を安定して確保し、PERも食品セクター平均の13〜15倍まで見直される可能性がある。すると株価は3,300円から3,900円程度まで上昇する余地があり、PBRも1倍近くまで評価されることで、“割安株から適正評価へ戻る”動きが起きやすい。主力ブランドの認知度が高く、外食や業務用需要が回復すれば、長期で株価が見直される可能性は十分ある。

次に中間の場合は、売上が緩やかに増加しつつ、営業利益率が5%前後で横ばい推移するケースである。EPSは230〜260円程度で推移し、PERも11〜13倍の現在のレンジが維持されると仮定すると、株価は2,600円から3,100円程度に収まる。食品メーカーの安定性を考えると、この中間シナリオが最も現実的で、急騰も急落もないものの、配当と小幅な株価上昇の両方を取りに行ける安定的な展開になる。

悪い場合は、原材料価格高騰や為替影響によりコスト圧力が強まり、営業利益率が4%台へ低下するケースである。EPSが200〜220円台にとどまり、PERも市場からの評価が抑えられて10〜11倍にとどまると、株価は2,000円から2,300円程度のレンジで推移する可能性がある。現状の株価2,364円からはやや下方向の調整が想定されるが、食品企業は需要が比較的安定しているため、大崩れして1,500円台まで下がるような可能性は高くない。

総合すると、良い場合は3,300〜3,900円、中間では2,600〜3,100円、悪い場合でも2,000〜2,300円というレンジが見込まれる。ニップンは食品企業らしく大きな成長は見込みにくいが、事業の安定性が高く株価が割安なため、時間をかけてじっくり評価が戻るタイプの銘柄である。派手さはないが、長期保有で堅実にリターンを積み上げたい投資家には向いている。

この記事の最終更新日:2025年11月27日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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