株価
フィード・ワンとは

フィード・ワン株式会社は、横浜市に本社を構える日本の大手飼料メーカーであり、三井物産の持分法適用関連会社に位置づけられている。2014年に日本農産工業株式会社と協同飼料株式会社が経営統合して誕生した企業で、畜産・水産向け配合飼料の分野では国内トップクラスの規模を誇る。統合によって生産体制や研究開発力が強化され、現在では飼料から畜産物・水産物の生産、加工、販売までを手がける“総合畜水産バリューチェーン企業”として成長を続けている。
主力となる配合飼料事業では、養鶏向け飼料で国内トップシェアを持ち、養豚用・養魚用飼料でも高いシェアを確立している。畜種別に最適化された栄養設計と長年培った製造技術により、全国の農家・養殖業者から高い信頼を得ている。特に水産分野では、ブリ、マダイ、ヒラメ、サーモンなど多様な魚種に対応する飼料を提供しており、日本の養殖産業に不可欠な存在となっている。
また、フィード・ワンは飼料だけに留まらず、鶏卵の生産、雛の育成、養豚事業、さらには畜産物の食肉加工や製品販売まで幅広い事業を展開している。自社の飼料で育てた畜産物を販売することで安全性とトレーサビリティを確保し、食品メーカーとしての役割も果たしている。水産事業でも魚の養殖、加工、販売まで一貫して行い、“飼料→生産→加工・販売”の川上から川下までをカバーする強固なビジネスモデルを構築している。
動物薬の製造・販売も手がけており、畜産現場の健康管理・生産性向上に貢献する製品を幅広く提供している点も特徴的である。これにより、飼料メーカーとしてだけではなく畜産・水産の総合サポート企業としての色合いが強まっている。また、三井物産との連携を活かし、原料調達、海外展開、技術開発など多方面でシナジーを発揮しており、アジアを中心にグローバル展開も進みつつある。
環境・サステナビリティへの取り組みも積極的で、CO₂削減、持続可能な原料調達、海洋資源の保全、循環型畜産への貢献など、社会的責任を重視した経営を行っている。国内の畜産・水産物の安定供給を支えるインフラ企業としての役割を担いながら、次世代の食料供給モデル構築にも取り組む企業である。
フィード・ワン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 307,911 | 1,422 | 1,711 | 1,030 | 27.0 | 25 |
| 連24.3 | 313,875 | 7,748 | 7,737 | 5,084 | 133.0 | 27 |
| 連25.3 | 296,045 | 6,343 | 6,789 | 5,387 | 140.8 | 35.5 |
| 連26.3予 | 311,000 | 6,800 | 7,000 | 5,200 | 136.0 | 42 |
| 連27.3予 | 327,000 | 7,200 | 7,400 | 5,500 | 143.9 | 42〜45 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | -7,816 | -1,187 | 12,881 |
| 2024 | 11,138 | -2,168 | -5,474 |
| 2025 | 8,570 | -3,088 | -6,011 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 0.4% | 2.3% | 0.8% | – | – |
| 2024 | 2.4% | 10.1% | 3.8% | – | – |
| 2025 | 2.1% | 9.8% | 4.3% | 高値平均 14.3倍 安値平均 11.1倍 |
0.68倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
フィード・ワンの業績推移を見ると、売上高は連23.3期の3,079億円から連24.3期に3,138億円へ微増し、その後連25.3期には2,960億円へやや減少している。これは飼料価格のもとになる穀物市況の変動によるもので、事業縮小というより業界特性に基づく売上の上下と捉えるのが適切である。一方で、利益はむしろ改善傾向にあり、ビジネスの収益構造が強化されている。
営業利益は14.2億円 → 77.4億円 → 63.4億円 → 今期予想68億円と推移し、23年の低収益状態から一気に改善している。経常利益も17.1億円 → 77億円超 → 67.9億円 → 今期70億円の見込みで、安定した利益確保ができる体制に入ってきた。飼料メーカーは原料価格・為替の影響を受けやすいが、フィード・ワンは規模拡大、差別化飼料、水産飼料の拡大、そして飼料から畜産・水産物加工までのバリューチェーン強化によって利益構造が年々強くなっている。
純利益を見ると、10.3億円 → 50.8億円 → 53.8億円 → 今期52億円予想と、24年以降は安定して50億円台に乗せている。EPSも27円 → 133円 → 140円 → 今期136円と高い水準で推移しており、利益の安定化が鮮明である。
利益率の改善も注目点で、営業利益率は0.4% → 2.4% → 2.1%と飼料メーカーとしては十分な改善。ROEは2.3% → 10.1% → 9.8%と資本収益性が大きく改善し、ROAも0.8%から4.3%へ向上している。安定成長型の企業としては良好な改善トレンドにあり、経営の質が明確に上がっていることが読み取れる。
バリュエーションをみると、2025年実績PERは高値平均14.3倍、安値平均11.1倍、PBRは0.68倍と割安水準にある。PBRが1倍を大きく下回っているのは市場がまだ同社の収益改善を十分に織り込んでいない証拠でもあり、中長期で評価修正が入りやすいポジションだといえる。特にROEが10%近くある企業でPBR0.6〜0.7倍台は“明確に割安”であり、資産価値から見た下値の硬さが強い。
総合すると、フィード・ワンは成長株ではないものの“利益が安定して伸びるタイプの改善株”であり、ディフェンシブな飼料・畜産・水産バリューチェーン企業として安定感が強い。大幅な売上成長は見込みにくいが、EPS水準と財務指標の改善、そしてPBRの割安性から、中長期で株価の評価が上がる可能性が高い銘柄といえる。特に、飼料事業の安定感、畜産・水産の川上から川下までの一貫構造、そして利益体質の改善が進むフィード・ワンは“割安放置されている安定企業”として長期保有と非常に相性が良い。
投資判断
フィード・ワンの予想配当利回りは連26.3期で4.08%、連27.3期も4.08%と高水準を維持している。飼料メーカーというディフェンシブな業種の中で利回り4%台というのは相対的に見ても魅力が大きく、株主還元の姿勢がはっきりしている点が強みといえる。しかも同社は利益の上下はありつつも、EPSが133円→140円→136円と安定しており、配当の維持力・増配余力が十分ある水準になっている。
配当政策を見ると、25円 → 27円 → 35.5円 → 42円と継続的に増配が進んでおり、今後も利益水準が現在の50億円前後で安定するなら高配当を維持しやすい構造になっている。飼料メーカーは穀物相場の影響を受けるため短期的には利益がぶれるが、フィード・ワンは畜産・水産の川上から川下まで事業を広げており、原料価格の変動による収益悪化をある程度吸収できる体質に変わってきている。この点も高配当維持の強さにつながる。
財務面でも、ROE9〜10%前後、PBR0.68倍と資本効率に対して株価が割安で、長期保有での評価見直しが入りやすいポジションにある。PBR1倍以下で高配当という組み合わせは“下値が堅い高配当株”の典型であり、急落耐性に優れている点は配当目的の投資家にとって大きな安心材料となる。
総合すると、フィード・ワンは「長期保有向けの高利回りディフェンシブ株」として非常に相性が良い銘柄であり、利回り4%台を安定して出しつつ増配余力も内包しているため、配当目的の投資として十分に適していると言える。大きく値上がりするタイプではないものの、着実に配当を受け取りながら、適正評価に戻った際の株価上昇も狙える“優良なインカム銘柄”である。
今後の値動き予想!!(5年間)
フィード・ワンの現在値1,027円はPBR0.7倍、PER8〜10倍と明確に割安で、業績に比べて市場評価が低い状態にある。飼料メーカーは穀物市況や為替の影響を受けやすいが、同社は飼料だけでなく養豚・養鶏・養魚、生産物の加工販売まで手掛けることでバリューチェーンを強化し、事業の安定度が大きく向上している。
営業利益は14億円台から77億円台へ改善し、その後も60億円台を維持。純利益も50億円前後で安定し、EPS130〜140円台の高水準が続いている。利益率改善と川下事業の寄与で“稼ぐ力”が明確に強くなった。一方、市場ではPBR0.7倍と依然割安に放置されており、ROE10%前後の収益性を考えると中長期で見直し余地は大きい。配当利回りも4%超で、25円→27円→35.5円→42円と増配が続くなど、増配・高配当・割安の三拍子が揃った長期向きの銘柄である。こうした背景を踏まえて、今後の株価を「良い場合・中間・悪い場合」の3つのシナリオで考えると次のようになる。
良い場合は、世界的な穀物価格が安定し、為替も大きく荒れず、畜産・水産物の需要が堅調に伸びる環境。EPSが140〜150円へ向かって増え、PBRが1倍前後に戻る可能性がある。PBR1.0倍は本来の適正評価であり、その場合の株価は1,500〜1,800円程度が視野に入る。過去のパフォーマンスを見る限り、5年という期間を考えれば十分現実的なシナリオである。
中間の場合は、現在の利益水準(EPS130〜140円)が維持され、配当も増配基調を続けながら、株価評価は現在のPER8〜10倍ラインに留まるパターン。この場合の株価は1,100〜1,350円のレンジで安定しやすい。値動きは激しくないが、配当利回り4%台を確保しながらじわじわと株価が見直される展開になり、トータルで見ると非常に手堅いリターンが期待できる。
悪い場合は、世界的な穀物価格が急騰するとともに円安が続き、飼料原料の調達コストが圧迫されるパターン。この場合、EPSは110〜120円程度まで下がり、評価倍率も縮小して株価は800〜950円程度のレンジに沈む可能性がある。ただしフィード・ワンは国内の飼料メーカーとしてトップクラスのシェアを持ち、水産飼料の強さや生産事業による利益補完もあるため、700円台のような極端な下落は起きにくいと考えられる。
こうした3つのシナリオを総合すると、フィード・ワンの株価は「悪いシナリオでも下値が限定的、中間〜良いシナリオでじわじわ上昇」という性格が強く、長期保有と非常に相性が良い銘柄と言える。高配当・割安・事業安定化という3つの特徴を持っているため、ポートフォリオの中で“安定系の収益源”として確実に働くタイプの銘柄で、特にインカム投資家にとって長期で持つ価値が大きい。
この記事の最終更新日:2025年11月27日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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