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中部飼料とは

中部飼料株式会社は、戦後に創業した独立系の飼料メーカーで、配合飼料業界では上位に位置する中堅大手である。養豚、養鶏、養牛、養魚向けの各種飼料を製造・販売しており、2003年度の配合飼料出荷量シェアでは業界4位の9.3%を占めるなど、全国的にも存在感のある企業である。愛知県名古屋市中村区に本社を構え、東海地方を中心に全国へ事業を展開し、畜産農家の生産性向上や安定生産に貢献している。
主力の飼料事業では、安全性・栄養設計・品質管理を重視した製品づくりに取り組んでおり、牛・豚・鶏・魚類といった各畜種に最適化した飼料を幅広く提供している。畜産現場との密なつながりを重視し、需要家の課題を直接汲み取った差別化製品の開発にも積極的だ。直系農場を持たないスタイルを貫き、あくまで“独立系メーカーとして中立性を保ちながら現場に寄り添う”という姿勢が特徴となっている。
飼料以外の事業も多角化しており、特に有名なのが高栄養価鶏卵ブランド「ごまたまご」である。セサミンやビタミンEを強化した機能性卵として人気が高く、東海ラジオの時報CMでも広く告知されている。また、名古屋市とネーミングライツ契約を締結し、名古屋市東区・古出来町交差点の歩道橋は「ごまたまご歩道橋」と名付けられ、地域にも深く浸透している。このほかにも、有機配合肥料の製造・販売、畜産用機器・設備の販売など、畜産を取り巻く幅広い分野に展開している。
同社は環境負荷低減や資源循環にも強い関心を持ち、飼料原料の有効活用、リサイクル、副産物の活用などに積極的に取り組むなど、サステナビリティへの意識も高い。また、原料調達から製造・物流まで厳格な管理体制を敷き、安全で高品質な製品を安定供給することに注力している点も評価されている。
過去には伊藤忠商事との提携関係があったが、現在はその枠組みを見直し、より独立色を強めている。需要家と直結した商品開発、現場密着型の技術サポートを武器に、飼料大手としての地位を固めながらさらなる差別化を図る戦略をとっている。
総合すると、中部飼料は独立系としての自由度と、飼料メーカーとしての技術力・地域密着性を兼ね備えた企業であり、飼料、畜産、肥料、機器など“畜産バリューチェーンの幅広い領域”に対応する総合力を持つ企業として発展を続けている。
中部飼料 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益(EPS) | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 243,476 | 1,670 | 2,069 | 827 | 28.0 | 34 |
| 連24.3 | 234,227 | 3,932 | 4,464 | 3,327 | 112.6 | 40 |
| 連25.3 | 209,837 | 4,281 | 4,815 | 3,503 | 118.5 | 52 |
| 連26.3予 | 212,000 | 5,200 | 5,600 | 4,100 | 139.8 | 60 |
| 連27.3予 | 220,000 | 5,400 | 5,800 | 4,200 | 143.2 | 65〜70 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | -6,478 | -3,562 | 7,242 |
| 2024 | 10,370 | -4,567 | -4,761 |
| 2025 | 11,992 | -3,830 | 772 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 0.6% | 1.3% | 0.8% | – | – |
| 2024 | 1.6% | 5.0% | 3.2% | – | – |
| 2025 | 2.0% | 5.1% | 3.4% | 高値平均 21.8倍 安値平均 17.4倍 |
0.75倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
中部飼料の業績を単位億円で見ると、売上高は連23.3期の2,435億円から連24.3期に2,342億円、さらに連25.3期には2,098億円と減少したが、これは配合飼料の価格に直結する穀物市況の変動によるもので、事業縮小というより“売上が原料価格に左右される業界特性”の範囲といえる。一方で、利益面はむしろ改善が続いており、経営の質が着実に上がっている点が大きな評価ポイントである。
営業利益は16.7億円 → 39.3億円 → 42.8億円 → 今期予想52億円と右肩上がりで、経常利益も20.6億円 → 44.6億円 → 48.1億円 → 今期56億円と安定成長している。利益の積み上がりは、飼料配合技術の向上、差別化商品の拡大、原材料高騰への価格転嫁の浸透などが背景にあり、売上が減っても利益を伸ばせる「質の改善」が明確に出ている。
純利益も8.2億円 → 33.2億円 → 35.0億円と業績が大きく安定し、今期は41億円とさらに増益が見込まれる。EPSも28円 → 112円 → 118円 → 139円予想と着実に伸びており、利益成長が株主への還元の余力を継続的に高めている。
利益率を見ると、営業利益率は0.6% → 1.6% → 2.0%と改善傾向にあり、飼料業界としては十分に堅実な上昇である。ROEは1.3%から5%前後へ改善しており、自己資本の収益性も明確に高まっている。ROA(総資産利益率)も0.8% → 3%台へと上昇し、効率性が顕著に改善している点は財務評価として高い。
一方でバリュエーションを見ると、2025年の実績ベースPERは高値平均21.8倍、安値平均17.4倍と、数値だけ見ると一見“やや割高”に見える。ただし背景として、過去のEPSが低水準だったこと、改善途中でまだ市場が“利益成長の本格トレンド”を織り込んでいないことがあり、単純に割高と判断するのは早い。PBR0.75倍という数値はむしろ割安圏であり、「成長しているのに資産価値で過小評価されている銘柄」ともいえる水準である。
総合すると、中部飼料は“急成長企業”ではないものの、利益率・ROE・EPSが”確実に改善している変化の出始め”の銘柄であり、財務の質が年々向上している。売上こそ原料相場に影響されるが、利益は拡大基調で安定しており、配当も34円 → 40円 → 52円 → 60円と順調に増えている。飼料メーカーは安定事業でディフェンシブ色が強く、急落しにくい特性もあるため、“地味だが確実に伸びるタイプの企業”として長期投資と相性が良い。
現状のPBR0.75倍と、改善が続く利益推移を考えると、中長期では市場が再評価する可能性が高く、「割安な改善株」と見るのが最もバランスの取れた投資判断と言えるだろう。
配当目的とかどうなの?
中部飼料の予想配当利回りは、連26.3期で3.34%、連27.3期では3.67%と上昇見込みになっており、安定株の多い食品・飼料セクターの中でも比較的高めの利回り水準に位置している。日本株全体の平均利回り(約2%)を明確に上回りつつ、事業の安定性も高いという点で、配当目的の投資との相性はかなり良い部類に入る。
中部飼料はもともと利益率が高い業界ではないものの、ここ数年で営業利益率・ROE・ROAが改善しており、過去のような超低収益体質から“普通の収益体質”へ変わりつつある段階にある。利益成長がはっきり見えてきたタイミングで配当も34円 → 40円 → 52円 → 60円と増配が続いており、今後も利益が伸びる限りは配当の引き上げ余地がまだ残されている。
EPSは28円 → 112円 → 118円 → 139円予想と大きく改善しており、配当性向は依然として低めで、配当を“背伸びして払っている状態”ではない。無理のない範囲でしっかり還元しているため、減配リスクはかなり低い。飼料メーカーは景気敏感ではなく、生活必需系の畜産業を支える安定ビジネスのため、市場環境が悪化しても配当が大きく揺らぎにくい点もメリットになる。
さらに評価すべきなのはバリュエーションで、PBR0.75倍ははっきり“割安ゾーン”。利益が改善し続けているのにPBRが1倍を割れている状態は、市場が企業価値を過小評価しているパターンで、株価の下値が固く、長期保有で株価の見直しが起こりやすい形になっている。配当を受け取りながら、同時にPBRの修正による株価上昇も狙える点が、配当投資家には特に魅力的。
総合すると、中部飼料は「高すぎないが安定して高めの利回り」「利益改善による増配余力」「割安なPBR」「事業の安定性」を兼ね備えており、配当目的での長期保有に非常に向いた銘柄である。爆発的に株価が上がるタイプではないが、コツコツと利益を伸ばしながらじわじわと配当も増えていく“質の良いディフェンシブ高利回り株”と言えるだろう。
今後の値動き予想!!(5年間)
中部飼料の現在値は1,795円で、PBR0.75倍と企業価値から見ても市場に割安放置されている状況にある。飼料事業は景気に左右されにくく、長期的に安定している点が特徴で、原料高や為替の影響はあるものの、販売戦略や差別化製品の比率向上によって利益水準は確実に改善している。EPSは過去3年で28円 → 112円 → 118円 → 今期予想139円と大きく伸びており、利益成長が配当や株価にじわりと効いてくる局面に入っている。
まず良い場合は、営業利益率が2%から2.5〜3%台へ改善し、差別化飼料の比率上昇やコストの吸収が順調に進むパターンである。このシナリオではEPSが150〜170円程度に上昇していく可能性がある。PERが過去レンジ上限の17〜21倍で評価されれば、株価は2,600円〜3,200円あたりが見込める。中部飼料はPBRが1倍を割っているため、利益が安定成長すれば「資産価値の再評価」が入りやすく、5年でこの水準に届く可能性は十分にある。
中間の場合は、現在の利益水準がほぼ横ばいで推移し、営業利益率が2%前後、EPSが130〜150円程度にとどまるパターン。PERは市場が中立的に評価して12〜15倍程度に収まりやすく、株価は1,800〜2,300円のレンジで推移する。大きく上がらないが値崩れも起こしにくく、配当3%台を受け取りながら安定して保有するには悪くないシナリオである。飼料業界の特性からも、この“安定横ばい”は最も現実的な路線といえる。
悪い場合は、穀物価格高騰や円安が長期化し、コスト転嫁が追いつかないケースである。この場合、EPSが110〜120円程度に下振れし、PERも市場の評価が控えめになって10〜12倍で推移しやすい。そうなると株価は1,200〜1,500円台のレンジが想定される。事業が生活必需系の畜産向けであるため急落リスクは低いが、利益率が薄い業界である以上、外部環境が悪化すると一定の下押しは避けられない。
総合すると、良い場合は2,600〜3,200円、中間では1,800〜2,300円、悪い場合でも1,200〜1,500円あたりが想定される値動きとなる。飼料業界というディフェンシブセクターに属し、利益が改善基調にあること、そして配当利回り3%台を継続できる点を踏まえると、中間シナリオが最も現実的で“配当を受け取りながらじわじわ株価の見直しを待つ”という相性の良い銘柄であると言える。
この記事の最終更新日:2025年11月27日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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