株価
大気社とは

株式会社大気社は、日本の設備工事会社であり、空調、塗装、衛生設備の設計・監理・施工を行う総合エンジニアリング企業である。1950年の設立以来、ビル設備から産業設備、自動車塗装システムまで幅広い領域で技術を蓄積してきた。本社は東京都新宿区西に置かれ、従業員数は連結で約5,000名と業界でも上位規模の企業である。大気社は「ビル空調設備」「産業空調設備」「塗装システム」という三つの主要事業分野を中心に展開しており、オフィスビル、病院、商業施設、研究所、工場、クリーンルームなど、多様な建築物に対して空調・換気・衛生設備を提供している。特に自動車塗装設備では国内トップシェア、世界第2位の地位を確立しており、空調分野で培った排気処理や気流制御などの技術が競争力の源泉となっている。また、自動車以外の領域にも積極的に進出しており、植物工場や航空機塗装プラントなど次世代型設備にも取り組んでいる。
大気社は海外展開にも早い段階から力を注いできた企業として知られている。1971年にタイへ初の海外拠点を設立したのを皮切りに、東南アジアを中心に北米、欧州、中国、インドなどへ事業範囲を広げ、現在では19ヶ国に36の海外連結子会社を展開するまでに成長した。設備工事会社の中では突出して海外売上比率が高く、2017年3月期には海外売上比率が49.3%に達しており、現在でも売上の約半分が海外から生み出されている。これは、自動車メーカーや電子部品メーカーといったグローバル企業の工場建設ニーズに対応した結果であり、現地生産体制を整えながら、世界各地で安定した受注を確保していることを示している。
同社のビル空調設備事業では、ビルや病院、学校、ホテルなどに対し、人が快適に過ごせる環境をつくるための空調・換気・給排水・衛生設備の設計と施工を手がけている。産業空調設備事業では、半導体工場や医薬品工場、食品工場など、高度な空気清浄度や温湿度管理が求められる施設に対応しており、クリーンルームや環境試験設備など、極めて高い技術力が要求される分野でも豊富な実績を持つ。そして塗装システム事業では、自動車塗装ラインの設計・施工・改善などを行い、世界的な自動車メーカーから高い評価を受けている。塗装設備は巨大な生産ラインを構築する高度な技術が必要であり、大気社はその技術力と実績の積み重ねによって世界でもトップクラスの地位を占めている。
さらに、大気社は環境技術にも積極的に取り組んでおり、省エネルギー化や脱炭素に向けた設備改善、排ガス処理装置の開発、環境負荷を低減するための空調・塗装システムの提供など、時代のニーズに合わせた技術革新を進めている。植物工場事業では、LED照明や空調技術を応用し、野菜や作物を安定的に栽培する設備の提供を行っており、国内外で需要が拡大している。航空機塗装プラントでは、大型機体の塗装が可能な環境制御システムを提供し、新たなビジネス領域を切り開いている。これらの新分野は、従来の空調および塗装技術を応用した拡張であり、同社の技術基盤の強さを象徴している。
このように大気社は、長年にわたって積み上げた空調と塗装の技術を基盤としながら、国内外で多岐にわたる設備工事を展開する総合設備エンジニアリング企業として成長してきた。国内の建設需要だけに依存せず、早期から海外事業を強化してきたことが現在の高い収益安定性につながっており、世界中で建設・生産インフラの整備を支える企業として高い評価を受けている。
大気社 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益EPS(円) | 一株配当DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3* | 214,793 | 11,556 | 13,001 | 7,917 | 117.3 | 60.5 |
| 連24.3* | 293,556 | 18,270 | 19,852 | 15,602 | 236.0 | 65.5 |
| 連25.3* | 276,212 | 17,971 | 19,938 | 11,026 | 169.4 | 72 |
| 連26.3予 | 279,000 | 17,100 | 18,200 | 12,000 | 188.7 | 94 |
| 連27.3予 | 296,000 | 18,500 | 19,600 | 13,000 | 204.5 | 95〜105 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 4,806 | -1,748 | -9,822 |
| 2024 | 20,738 | 2,148 | -5,545 |
| 2025 | -21,219 | -4,982 | 1,907 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.3% | 6.2% | 3.3% | – | – |
| 2024 | 6.2% | 10.8% | 5.8% | – | – |
| 2025 | 6.5% | 7.4% | 4.1% | 14.1倍(高値平均) 10.6倍(安値平均) |
1.35倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
大気社の直近の業績推移を見ると、まず売上は23.3期が2,147.9億、24.3期が2,935.5億、25.3期が2,762.1億、26.3期予想が2,790億と推移しており、24.3期の特需的な増加のあと横ばい圏で安定している。景気後退局面でも売上が大きく崩れない点は、ビル空調や産業設備、自動車塗装システムなど、一定の設備投資需要が継続する領域を主力としている強みが表れている。
営業利益は23.3期が115.5億、24.3期が182.7億、25.3期が179.7億、26.3期予想が171億で、利益が急落するような弱さはなく、高い水準をキープしている。経常利益も23.3期130.0億、24.3期198.5億、25.3期199.3億、26.3期予想182億とほぼ同様に安定しており、コスト管理や工事採算の改善が効いている印象がある。純利益は23.3期が79.1億、24.3期が156.0億と大幅に伸びた後、25.3期は110.2億に調整し、26.3期予想は120億と再び増加の見込みとなっている。利益の上下はあるものの、企業体質としては非常に堅いタイプといえる。
収益性の指標を見ると、営業利益率は23.3期5.3%、24.3期6.2%、25.3期6.5%と改善傾向が続いている。ROEは23.3期6.2%、24.3期10.8%、25.3期7.4%で、24.3期は純利益の急増により跳ねたが、現在は平均的な水準に落ち着いている。ROAは23.3期3.3%、24.3期5.8%、25.3期4.1%となっていて、総資産規模を考えれば標準的で安定した収益力を示している。
株価バリュエーションに関しては、25.3期ベースでのPERが高値平均14.1倍、安値平均10.6倍と、設備工事系銘柄としては標準的なレンジに収まっている。PBRは1.35倍で、資産内容を踏まえると極端に割高ではなく、むしろやや割安寄りに見える。EPSも117円→236円→169円→188円予想と推移し、配当も60.5円→65.5円→72円→94円と増配が続いており、株主還元姿勢は非常に強い。
総合的に判断すると、大気社は急激な成長株というより、海外売上比率約5割という強みを持ちつつ、安定した利益を積み上げ、着実に配当を伸ばしていく「長期安定型」の企業という印象が強い。利益率の改善が続いている点や、業績が大きく崩れにくい点、世界2位の自動車塗装システムという確固たるコア事業を持つ点を考えると、長期的に保有してじっくり配当と株価のゆるやかな上昇を狙う投資に向いている銘柄だといえる。直近の業績見通しからも大きな不安材料は見当たらず、割高感も薄いことから、中長期の投資妙味は十分にあると判断できる。
配当目的とかどうなの?
大気社の配当利回りは26.3期が2.93%、27.3期が2.96%と、ほぼ3%前後の水準にある。3%をしっかり超える“高配当株”とまではいかないが、日本株の平均利回り(約2%前後)と比べれば明確に高めであり、配当を受け取りながら長期で保有するには十分魅力的な水準といえる。さらに同社はここ数年で配当を着実に増やしてきており、23.3期60.5円、24.3期65.5円、25.3期72円、26.3期予想94円と増配が続いている点は大きな安心材料になっている。
大気社は業績が極端に大きくぶれる会社ではなく、空調設備工事、産業空調、自動車塗装システムという、景気に左右されつつも一定の更新需要が出続ける分野を主力としているため、利益の安定感が比較的高い。海外売上比率が5割を超えており、自動車生産や工場建設需要など、国内だけでなくグローバルな設備投資と連動する構造になっているため、長期で見れば収益基盤は強固といえる。こうした事業特性のおかげで、会社としても安定的に配当を出しやすい。
利回りは“超高配当”ではなくても、業績の底堅さと増配余地を考えると、配当目的の投資として十分検討価値がある。今後も業績が緩やかに成長していくなら、配当が年々増えていく可能性が高く、長期保有の配当狙いには向いている企業と判断できる。急激な株価上昇を期待するタイプではないが、安定した配当を受け取りながら低リスクで保有したい投資家には相性の良い銘柄だといえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
大気社の現在値は3,205円で、今後5年間の株価を考えると、業績の伸び方、世界の設備投資の回復、自動車生産動向、為替環境など複数の要因によって三つのシナリオに分けて考えることができる。
まず良い場合は、海外の設備投資が再び強い拡大局面に入り、特に同社の主力である自動車塗装システムの受注が継続的に増加していくパターンである。大気社は海外売上比率が約5割と建設・設備業界でも突出しており、東南アジア、北米、欧州、中国など幅広い地域に拠点を持つため、世界的な設備投資の回復局面ではダイレクトに利益貢献が期待できる。この場合、営業利益率が現在の6%台から7%前後へさらに改善し、EPSも200〜230円台を安定的に確保できる可能性が高い。PERについても過去の上限近い14倍前後の評価を受けやすくなり、株価としては4,000円台後半から5,000円台へ向かうシナリオが現実味を帯びてくる。特に自動車メーカーのEV化に伴い新規設備投資が増える局面では、大気社の塗装設備需要も増加するため、世界の製造業が成長モードに入ると5,000円付近まで株価が上昇する可能性は十分ある。
次に中間の場合は、現在の業績水準が安定的に続き、売上が2,700〜2,900億のレンジで推移し、営業利益が170〜190億の間で動くようなケースがこれに当たる。EPSは170〜200円前後で推移し、急激な伸びはないものの、確実に利益を上げ続ける安定企業として市場から評価される。PERも11〜13倍の標準的なバリュエーションに収まり、株価は3,500円から4,200円程度の範囲に収まる可能性が高い。株価自体が大きく跳ねるタイプではないものの、同社は配当を増やし続ける傾向が強く、94円配当を出す26.3期予想や、さらに増える可能性のある27.3期の配当などを踏まえると、配当収入を含めたトータルリターンは悪くない。この中間シナリオは最も実現確率が高く、株価が緩やかに右肩上がりを続けながら配当も伸びていくため、長期保有してじっくり資産を増やす投資家には相性の良い展開となる。
一方で悪い場合は、国内外の企業が設備投資を抑制し、自動車生産の伸び悩みや、景気後退の影響などで受注環境が弱まるパターンである。大気社は比較的業績の底が堅いとはいえ、自動車関連比率が高く、製造業向けの設備投資に左右される側面があるため、世界的な景気悪化が続けばその影響を避けることはできない。営業利益が150億を割り込み、利益率も6%台から5%台へ後退するような状態になると、EPSも150円前後まで低下し、PERも市場からの評価不足で10倍前後に留まりやすくなる。この場合、株価は2,200円から2,800円の範囲で推移する可能性がある。現在の株価水準から考えれば下落余地は一定あるものの、同社は海外事業が強く、完全に需要が消えるわけではないため、1,000円台まで急落するような極端なリスクは低いと考えられる。
これらのシナリオをまとめると、良い場合は5,000円前後までの上昇、中間なら3,500〜4,200円の安定推移、悪い場合でも2,200〜2,800円の範囲が想定される。配当が今後も増えていく可能性が高く、利益率も徐々に改善していること、そして海外事業が強く収益基盤が分散されていることを考えれば、中間シナリオが最も現実的で、長期保有で配当と株価の両面から堅実なリターンを期待できる銘柄だと言える。大きく跳ねるタイプの株ではないが、崩れにくさと安定的な増配という点では長期投資に向いた企業であり、5年間でじっくりと価値が積み上がるイメージの銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年11月27日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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