株価
昭和産業とは

昭和産業株式会社は、東京都千代田区の内神田に本社を置く総合食品メーカーであり、小麦粉の製粉、食用油の製造、配合飼料の販売など、食品原料から加工食品まで幅広く手がける企業である。1936年に設立され、長い歴史を通じて日本の小麦粉・食用油・飼料産業の発展に深く関わってきた。小麦粉、食用油、パスタ、ブドウ糖、飼料、冷凍食品など、日常生活に欠かせない食品素材や加工食品を幅広く製造・販売しているほか、穀物サイロの運営や不動産事業なども展開するなど、多角経営を進めている会社である。
企業理念は「人々の健康で豊かな食生活に貢献する」であり、企業ブランドとして「穀物ソリューションカンパニー」を掲げている。製粉分野と食用油分野では国内第3位のシェアを持ち、特に天ぷら粉は国内シェア1位とされ、家庭向けだけでなく業務用分野でも存在感が大きい。パスタや油脂製品、糖質素材、飼料など扱う領域が広く、食品原料から家庭用・外食用食品まで一気通貫で供給できる体制を整えている点が特徴である。
事業構成としては、製粉事業が小麦粉・ふすまなどを製造し、製菓メーカーや製パン企業、食品メーカー向けに供給している。油脂食品事業ではサラダ油、食用油、ショートニング、マーガリンなどの油脂製品に加えて、パスタや冷凍食品などの加工食品も扱っており、家庭用・業務用の双方で需要がある。糖質事業ではブドウ糖やコーンスターチなどの糖質原料を供給し、飲料や菓子メーカーなど多様な産業に重要な素材を提供している。飼料事業では畜産・水産向けの配合飼料を製造し、食品素材メーカーとしての垣根を越えた広い領域で事業を展開している。
2020年3月期の売上構成比を見ると、製粉32.7%、油脂食品30.8%、糖質13.6%、飼料20.7%となっており、特定事業に偏らないバランスの良い収益構造が昭和産業の特徴である。また、穀物関連の原料調達力と加工技術を強みに、海外にも拠点を持ち、アジアを中心に製粉・油脂・食品素材の供給を行っている。
人材面でも特徴があり、男性の育児休業取得の促進や年次有給休暇取得率の向上など、働き方改革に積極的に取り組んでいる。こうした取り組みが評価され、2007年から厚生労働省の「くるみんマーク」を取得しており、従業員が安心して働ける環境づくりにも注力している企業である。
さらに、2020年12月には糖質事業の強化を目的としてサンエイ糖化株式会社を完全子会社化し、糖質素材領域の事業基盤を拡充している。食品原料から加工食品までグループ全体で幅広いラインを持つことで、安定した収益基盤と成長余力を兼ね備えた体制を築いている。
全体として昭和産業は、製粉、油脂、糖質、飼料といった食品素材の主要分野を押さえつつ、冷凍食品や加工食品など日常的に使われる商品も幅広く提供する、日本の食を支える総合食品メーカーとして確固たる地位を築いている企業である。
昭和産業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益EPS(円) | 一株配当DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 335,053 | 4,184 | 6,525 | 7,776 | 232.6 | 65 |
| 連24.3 | 346,358 | 13,146 | 16,558 | 12,358 | 369.4 | 80 |
| 連25.3 | 334,425 | 11,126 | 13,591 | 11,599 | 356.0 | 100 |
| 連26.3予 | 340,000 | 11,000 | 13,000 | 9,500 | 292.3 | 100 |
| 連27.3予 | 350,000 | 12,000 | 14,000 | 9,700 | 298.5 | 100〜110 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | -2,930 | -6,155 | 6,136 |
| 2024 | 23,751 | -12,401 | -9,435 |
| 2025 | 20,274 | -11,385 | -10,057 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 1.2% | 6.8% | 3.1% | – | – |
| 2024 | 3.7% | 9.5% | 4.7% | – | – |
| 2025 | 3.3% | 8.5% | 4.5% | 高値平均 10.0倍 安値平均 7.1倍 |
0.70倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
昭和産業の業績推移を単位億円で見ると、売上高は連23.3期の3,350億円から連24.3期に3,463億円へ微増し、その後連25.3期は3,344億円とやや後退している。売上の伸びは大きくないが、製粉・油脂・飼料・糖質といった食品素材中心の事業構造を持つ企業としては比較的安定した動きで、急激に落ち込むようなリスクは小さい。
営業利益は41.8億円から131.4億円へと大きく増えた後、112.6億円にやや減少しているが、これは原材料価格の変動や為替影響が大きく、食品素材メーカー特有のコスト変動の範囲に収まる。今期予想では110億円と、近年の平均的な水準を維持する見込みであり、事業が劣化している兆候はない。経常利益も65.2億円 → 165.5億円 → 135.9億円 → 今期予想130億円と推移しており、利益基盤は比較的安定している。
純利益に目を向けると、77.7億円 → 123.5億円 → 115.9億円 → 95億円予想となっており、食品素材業界としては十分に高めの利益水準を維持している。EPSは232円 → 369円 → 356円と推移し、今期予想は292円とやや減少するが、これは収益構造の悪化ではなく、原材料価格や一過性要因の影響が大きいと考えられる。
利益率を見ると、営業利益率は1.2% → 3.7% → 3.3%と改善傾向にあるものの、食品原料を扱う企業としては標準的な水準である。ROEは6.8% → 9.5% → 8.5%で、自己資本効率は悪くなく、過度に低いという印象はない。ROAも3.1% → 4.7% → 4.5%と企業規模を考えると十分なレベルにある。
特筆すべきはバリュエーションで、2025年実績ベースのPERは高値平均10倍、安値平均7.1倍と低めで、PBRは0.70倍と大幅に1倍を下回っている。食品素材メーカーで財務が安定している企業としては割安感が強く、資産価値から見た株価の見直し余地は大きい。PBR0.7倍台は、市場が「低成長だが堅実」と評価していることの現れである一方、長期保有では評価修正が起きやすいポジションでもある。
総合的に見て、昭和産業は急成長企業ではないものの、製粉・油脂・飼料・糖質という生活必需品分野で堅実な収益基盤を持つ安定企業である。利益は原材料価格や為替に左右されやすいが、長い目で見ると安定した推移を続けている。PERとPBRの割安さ、そして配当利回り3%台(今期予想3.23%)を考慮すると、成長株というより“割安な安定配当株”としての魅力が強い。高成長は望みにくいが、下値の硬さと配当の安定性を求める投資家には向いており、長期保有でじっくり評価の修正を狙える銘柄だといえる。
配当目的とかどうなの?
昭和産業の予想配当利回りは3.23%と、日本株の平均利回り(約2%)を大きく上回り、食品セクターの中でも比較的高めの水準に位置している。製粉、油脂、飼料、糖質といった生活必需品に近い食品素材を中心とした事業構造を持つため、景気の影響を受けにくく、利益のブレも大きくない。この安定性の高さは配当狙いの投資において大きなメリットとなる。
配当の推移を見ると、65円 → 80円 → 100円と順調に増配しており、今期・来期も100〜110円と高水準が維持される見込みで、減配のリスクは小さい。EPSは一時的に369円まで増加したが、通常時でも300円前後を確保しており、配当性向も30%以下の無理のない範囲に収まっている。企業として配当を「背伸びせずに払える」安定した状態であり、継続性の面ではかなり信頼度が高い。
さらに注目すべきはバリュエーションで、PBR0.70倍は明らかに割安圏にある。財務が安定している食品素材メーカーでPBR1倍を大きく割れている状態は、市場が過小評価している可能性があり、中長期では株価が見直されやすいポジションにある。配当を受け取りながら、同時に株価の緩やかな上昇を狙う「配当+バリュー」の両取り戦略が成立しやすい銘柄といえる。
営業利益率やROEを見ると、華やかな成長企業ではないものの、3〜4%台の営業利益率、ROE8〜10%台は食品素材メーカーとして十分に安定している数字で、急激に悪化する可能性は低い。原材料価格や為替に左右される時期はあるものの、事業そのものの安定性が高いため、長期の配当目的投資としては安心感がある。
総合すると、昭和産業は「利回りが高め」「事業が安定」「株価が割安」「減配リスクが小さい」という4つの条件を満たしており、配当目的の投資として非常に相性の良い銘柄といえる。単純な利回りの高さだけでなく、事業の安定性とバリュー要素を兼ね備えている点が魅力で、長期保有で配当を積み上げたい投資家に向いた銘柄である。
今後の値動き予想!!(5年間)
昭和産業の現在値は3,095円で、PBR0.70倍、PERも7〜10倍と割安圏にある。食品素材を中心としたディフェンシブ企業であるため、急激な成長は見込みにくいが、逆に景気変動による下振れリスクも小さく、株価が大きく崩れにくい安定した特徴がある。今後5年間の株価を考えるうえでは、原材料価格と為替の影響がどれだけ落ち着くか、また製粉・油脂・飼料といった基幹事業の利益率がどの程度維持されるかがポイントになる。
まず良い場合は、原材料価格の安定や生産効率の改善が進み、営業利益率が現状の3%前後から3.5〜4%台にじわりと改善するシナリオである。この場合、EPSは300〜330円台の水準を安定して確保でき、PERが業界平均に近い10〜12倍まで評価されれば、株価は3,800円から4,200円台が見えてくる。昭和産業は事業の安定性が高く、PBR0.7倍という割安さも手伝って、どこかのタイミングで評価が戻る可能性は十分にある。
中間の場合は、現在の利益水準がほぼ横ばいで推移し、営業利益率は3%前後、EPSは260〜300円の範囲で動くケースである。この場合のPERは現在と同じ7〜10倍レンジに収まりやすく、株価は3,000円から3,500円あたりで推移する。大きく上がらないが、大きく下がりもしない、ディフェンシブ株らしい値動きとなる。配当利回り3%台が続けば、株価が動かなくても配当でリターンを確保できるため、長期保有の満足度は高いシナリオになる。
悪い場合は、原材料価格の高止まりや円安によるコスト増が長期化し、営業利益率が3%を割り込んで2%台に落ち込むケースである。EPSは220〜250円程度まで下がり、PERも市場から慎重に見られて7〜8倍が上限となると、株価は2,000円から2,600円程度のレンジが想定される。現在の株価3,095円からは下方向の余地があるものの、生活必需食品向けの事業が中心のため、極端に崩れて1,500円割れのような事態は起こりにくい。
総合すると、良い場合は3,800〜4,200円、中間では3,000〜3,500円、悪い場合でも2,000〜2,600円といった価格帯が想定される。昭和産業は華やかな成長株ではないが、高めの配当利回りと低PBRによるバリュー性を兼ね備え、長期で大きく崩れないという特徴があるため、安定性と配当を重視した投資家には相性の良い銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年11月27日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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