株価
メンバーズとは

株式会社メンバーズは、東京都中央区に本社を置くDX現場支援会社で、企業のデジタル活用を現場レベルで支援することを中心に事業を展開している。創業者である剣持忠は早稲田大学を卒業後、日本合同ファイナンス(現・ジャフコ)での経験を経て、1995年6月にメンバーズを設立。当時の日本ではWeb制作会社は存在していたものの、多くはデザイン専門かシステム専門の会社が中心で、戦略・デザイン・システムを一貫して提供できる独立系企業はほとんどなかった。メンバーズはこの領域にいち早く参入し、国内では数少ないSIPS(Strategic Internet Professional Services)企業として立ち上がった。
その後、企業のマーケティングや情報発信の主軸がインターネットへと移行する中で、同社はインタラクティブエージェンシーとしての機能を強化。企業のデジタル戦略全体を支援する方向へと舵を切り、Webサイト構築や運用、デザイン、システム開発、デジタルマーケティングなど幅広い領域を扱うようになった。
さらに時代が進み、企業活動の中心がソーシャルメディアへと移行し始めると、メンバーズもまた事業構造を調整し、SNSを活用したマーケティング支援、運用代行、コンテンツ企画など、ソーシャルメディア支援事業へと活動範囲を広げていった。この流れの中で、データ活用やWeb広告運用、SEO、アクセス解析など、総合的なデジタル支援企業としてのポジションを確立していく。
現在メンバーズは、単なる制作会社でも広告代理店でもなく、「デジタル人材が企業と伴走し、現場に入り込んでDXを推進する会社」という立ち位置に進化している。企業のDX推進は経営課題として重要性を増しており、自社でデジタル人材を確保するのが難しい企業も多い中、メンバーズは専門人材を継続的に提供し、現場での業務改善・デジタル化・改革プロジェクトを支える役割を果たしている。
創業時はWebの黎明期にいち早く参入した企業であり、その後インタラクティブ、ソーシャル、デジタルマーケティング、そしてDXと、時代の変化に合わせて事業領域を柔軟に変化させてきたのがメンバーズという会社の特徴である。今では、企業のデジタル活用を支援する国内有数のDX現場支援パートナーとして、多くの大手企業のデジタル部門・マーケティング部門・IT部門をサポートしている。
メンバーズ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 17,662 | 1,441 | 1,399 | 1,010 | 76.3 | 30 |
| 24.3 | 20,467 | 41 | 136 | 126 | 9.7 | 31 |
| 25.3 | 22,329 | 493 | 472 | 349 | 27.4 | 32 |
| 26.3予 | 24,500 | 1,200 | 1,200 | 800 | 62.6 | 33 |
| 27.3予 | 28,000 | 2,800 | 2,800 | 1,900 | 148.6 | 34 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 1,398 | -1,165 | -980 |
| 2024 | 584 | -100 | -1,187 |
| 2025 | 1,211 | -49 | -923 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 8.1% | 15.8% | 8.9% | ― | ― |
| 2024 | 0.2% | 2.1% | 1.0% | ― | ― |
| 2025 | 2.2% | 6.0% | 2.9% | 42.2〜93.7倍 | 2.54倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
メンバーズの業績を改めて見ていくと、この企業は「売上は順調に伸びているけれど、利益が安定してついてきていない」という特徴が非常に明確に表れている。23.3期は営業利益14億円、純利益10億円としっかりした利益を計上していたものの、24.3期は営業利益がわずか4100万円、純利益も1億2600万円という桁違いの落ち込みを経験している。これは単なる一時的な小幅減益ではなく、事実上利益が吹き飛んだ状態で、企業としてはかなり厳しい期だったといえる。売上は204億円まで伸びているのに、利益がほぼ出ていないという構図は、コストの増加や案件の採算悪化、あるいは教育・採用コストの先行投資など、内部の負荷が大きくなっていたことを示唆している。
ただ、その後の25.3期には営業利益4.9億円、純利益3.4億円とわずかながら回復の兆しが出ており、さらに26.3予では営業利益12億円、純利益8億円と「ようやく正常な利益水準に戻り始めている」という印象がある。売上も176→204→223→245億円ときれいな増収トレンドが続いているため、事業規模自体は着実に拡大している。問題はその売上成長に対して利益が追いつく速度が非常に遅いという部分で、ここが投資判断において最も重要なポイントになってくる。
利益率の推移を見ると、23.3期の営業利益率は8.1%と悪くない水準だったが、24.3期は0.2%まで落ち、その後25.3期が2.2%と回復途上、26.3予でようやく5%弱程度まで回復のイメージが見えてくる。これは「まだ本調子には程遠い」という評価が妥当で、利益率が再び7~10%に戻せるかどうかが、長期的な企業価値に大きな影響を与える。
ROE・ROAも同様で、23.3期はROE15.8%・ROA8.9%と優良水準だったのに対し、24.3期でROE2.1%、ROA1.0%まで急落し、その後も25.3期はROE6.0%、ROA2.9%と回復し切れていない。資本効率がここまで落ち込むということは、企業が成長投資を優先したか、あるいは利益が圧迫される構造的な問題に直面しているということであり、投資家目線ではかなり慎重に見るべきサインと言える。
さらにバリュエーションを見れば、2025年の実績PERが高値平均93倍、安値でも42倍という数字は、利益規模に対して株価がかなり割高に評価されていることを意味する。PBRも2.54倍と決して安くはない。この水準は「成長期待が先に走り、利益が追いついていない状態」と読み取れるため、短期的には株価が重くなりやすい状況だ。
まとめると、メンバーズは売上成長が継続しており事業規模は着実に拡大しているものの、利益率の改善が遅れており収益の安定感には課題が残る企業だと言える。改善の兆しは見えているが、まだ“回復途中の段階”であり、安心して強気で買えるほど収益体質が盤石ではない。また、PERが高いため、株価に割安感はほとんどない。よって現時点の投資判断としては「中立」あるいは「改善確認待ち」が適切で、今すぐ積極的に買いにいくよりも、利益率の明確な回復とROEが再び10%台に乗ってくるタイミングを待つほうが、リスクを抑えた合理的な投資行動になるだろう。
配当目的とかどうなの?
メンバーズを配当目的で考えると、まず率直に言って“配当狙いとしては悪くないが、積極的に選ぶほどの魅力は強くない”という中間的な評価になる。予想配当利回りは26.3期が2.97%、27.3期が3.06%と、いわゆる高配当株というほどではないが、日本株の平均利回り(2%台前半)と比べればしっかり上回っており、一定の還元姿勢は感じられる水準だ。
ただ、この企業の過去の利益推移を見ると、配当目的として本当に安心できるかという視点では少し疑問が残る。23.3期は純利益10億円、24.3期はわずか126百万円(1.2億円)、25.3期は3億円、そして26.3予が8億円と、利益が大きく上下していて安定感に欠ける印象がある。利益がしっかり出ているときは配当余力に問題ないが、利益が一桁億の時期が続くと、配当性向が上がりすぎて無理をしている可能性もある。
一方、メンバーズが手掛けているDX支援やデジタル人材関連の事業は今後も長期的に需要が見込めるため、業界全体としての成長性は高い。だからこそ、会社としても人材採用や教育などに継続投資せざるを得ず、それが短期的な利益率の低下につながることがある。つまり、この企業は“投資優先のシーズン”と“収益化のシーズン”が交互に来るタイプの会社で、常に安定配当を期待できるディフェンシブ株とは性格が違う。
ただ、利回り3%前後なら、配当目的として選んだ場合でも一定のリターンが期待できるし、企業規模の拡大に合わせて将来的に配当が増える可能性もある。特に27.3期の予想配当利回りが3.06%まで上がっている点は、業績回復傾向の表れと見ることもできる。長期で持つなら、業績改善とともに配当もじわじわ増えていくシナリオも十分あり得る。
問題は、配当株としての“安全性”である。過去のように利益が大幅に落ち込む年があると、当然ながら配当が維持できるかの不安が生まれる。メンバーズは財務的に極端に弱いわけではないが、利益の安定性についてはまだ改善途上の印象が強い。したがって、配当狙いだけで買う銘柄としては少し心許なく、どちらかというと「配当“も”もらえる成長株」という位置づけに近い。
結論としては、配当目的で完全に安心して持てる銘柄ではなく、あくまで“配当はオマケ”くらいに考えておいたほうが良い。利回りは平均以上で悪くはないが、配当の安定性は高配当銘柄ほど強くない。今の利回り3%前後は魅力があるものの、投資判断としては「業績の安定が見え始めたら配当込みで保有を検討」「現時点では配当主体で買うほどではない」という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
メンバーズの現在株価1,111円を基準に今後5年間の値動きを考えると、まずこの企業は「売上は安定成長、利益は回復途上」という独特のポジションにあるため、株価も業績の改善度合いによってシナリオが大きく分かれることになる。DX人材の需要は引き続き強く、企業としての成長余地はあるものの、過去に利益が急落したように、収益の安定性が完全に確立されていない点は、株価の変動幅を大きくさせる要因のひとつになる。
まず良い場合のシナリオだが、これは「利益回復が順調に進み、再び成長企業として市場に評価される」ケースになる。売上はすでに伸び続けており、あとは利益率が回復しROE・ROAが再び高水準に戻るかどうかが鍵になる。26.3予では営業利益12億、27.3ではさらに伸びる見通しとなっており、もしこの改善傾向が確実なものになれば、市場は再び成長期待を株価に織り込み始める。過去のPERの高さを考えると、期待先行で買われやすい銘柄でもあるため、5年後には株価が1,600〜1,900円程度まで上昇するシナリオも現実味を帯びる。特にデジタル人材市場の追い風が続き、利益率が改善していけば、株価が2,000円に近づく可能性もある。
次に中間シナリオだが、これは最も現実的なラインである。売上成長は続くものの、利益率がゆっくりとしか戻らず、急成長とは言いにくい状態が続くケースだ。この場合、PERは現在よりもやや低めの水準(20〜30倍の間)で推移し、株価も緩やかに上下を繰り返しながら、じわじわと時間をかけて評価されていくことになる。5年後の株価としては1,200〜1,400円程度が妥当なゾーンとなり、現在の1,111円から見れば10〜30%程度の上昇に落ち着く可能性が高い。配当利回りも3%前後で安定するため、株価上昇+配当でトータルリターンは手堅いが、大幅な株価上昇を期待する銘柄ではない。
最後に悪いシナリオだが、これは「利益率の改善が鈍化し、収益性の弱さが再び露呈する」ケース。DX支援は需要が強いものの、競合が増え続けているため、価格競争や採算悪化が発生しやすい業界でもある。もし人件費や採用投資が再び利益を圧迫したり、大型の案件が減少したりすれば、利益が思うように伸びず、ROE・ROAも低空飛行が続くことになる。この場合、PERは15〜20倍程度まで下落し、株価も期待が剥落して900〜1,050円程度まで落ち込む可能性がある。現在価格を割り込む可能性も十分にあり、利益の安定性が確認できない限り市場が厳しい目線を向ける可能性が高い。
まとめると、メンバーズの5年後の株価は「利益率の回復速度」によって大きく3つの方向に分かれる。良い場合は1,600〜1,900円、中間では1,200〜1,400円、悪い場合は900〜1,050円というレンジになる。現在の1,111円はこのレンジの“ほぼ真ん中”に位置しており、上にも下にも動き得る転換点にいると言える。今のメンバーズは配当利回りが3%前後あるため、中長期的にじっくり持つ選択肢としては悪くないものの、収益改善が明確に見えない段階で強気に攻めるよりは、今後の決算で利益率の回復が持続するかどうかを見極めつつ投資を判断するのが合理的だといえる。
この記事の最終更新日:2025年11月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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