株価
カルビーとは

カルビー株式会社は、東京都千代田区丸の内に本社を置く日本を代表するスナック菓子メーカーで、ポテトチップス市場の開拓者として長年業界を牽引してきた企業である。1949年に広島で松尾糧食工業として創業し、1955年に現在の社名へと変更された。「カルビー」という名称は、日本人に不足していたカルシウムの“カル”とビタミンB1の“ビー”を組み合わせた造語であり、健康食品メーカーとしての志向を強く反映したものだった。
1960年代には「かっぱえびせん」が大ヒットし、カルビーの名前は全国に広がった。その後も「仮面ライダースナック」や「カルビーポテトチップス」のテレビCMなど、話題性を持つ商品と広告展開で一気に全国的な存在感を獲得した。1973年には本社を広島から東京に移し、全国展開の基盤を固めた。
2000年代に入ると経営改革が進み、同族経営からプロ経営者への転換が行われた。2009年にはペプシコ傘下のジャパンフリトレーを買収し、「ドリトス」などトルティーヤ系スナックを取り込むことで商品ラインアップが大きく広がった。同時にペプシコがカルビー株を取得し、資本・経営両面でのパートナーシップを深めることで、グローバル展開の流れを加速させた。この時期には社外取締役の導入も進み、ガバナンス強化の面でも大きく踏み出している。
カルビーの製品群は圧倒的に多く、ポテトチップスだけでも地域限定を含め年間約200種類が登場するほど開発スピードが早い。「堅あげポテト」「ポテリッチ」「サッポロポテト」「じゃがりこ」「じゃがビー」「ピザポテト」「サッポロポテトベジタブル」など、長く売れ続けるロングセラー商品が多数存在する。北海道限定の「じゃがポックル」や、季節限定の「チーズビット」「おさつスナック」など、地域性や季節性を活かした商品戦略も強みとなっている。
また、スナック菓子だけにとどまらず、シリアル食品「フルグラ」は国内市場を席巻し、シリアル業界のトップブランドとして定着している。フルグラは健康志向の高まりを追い風に、低糖質や栄養強化タイプ、機能性表示食品など、消費ニーズを取り込んだ多様なラインアップを展開している。
カルビーの競争力の源泉は、商品開発力の高さ、製造技術、安定した原料調達体制、大規模な物流ネットワークにある。特にジャガイモの大量契約栽培により供給体制を確保している点は他社にない強みで、品質の安定やコスト管理にも大きく寄与している。また、全国に工場を配置しているため、地域ごとの需要に対応しやすく、災害時の供給リスクを分散する構造を持っている。
海外展開も進んでおり、中国や東南アジア、北米など多くの地域で販売網を広げている。アジア市場では日本ブランドへの信頼と健康志向の高まりが追い風となり、日本発スナックとしての人気が高まっている。海外では“カリッと軽い日本式スナック”として評価され、独自のポジションを築きつつある。
総じてカルビーは、長年のブランド力と開発力に加え、経営改革、海外展開、商品多様化を進めることで、スナック菓子の枠を超えた総合食品メーカーへと成長した企業と言える。定番商品が多く売上の安定性が非常に高い一方、健康志向や新たな食文化にも柔軟に対応しており、今後も国内外で確かな存在感を保ち続けることが期待される。
カルビー 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益EPS(円) | 一株配当DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 279,315 | 22,233 | 23,460 | 14,772 | 115.2 | 52 |
| 連24.3 | 303,027 | 27,304 | 31,155 | 19,886 | 159.2 | 56 |
| 連25.3 | 322,564 | 29,066 | 29,844 | 20,874 | 167.1 | 58 |
| 連26.3予 | 341,000 | 29,200 | 29,800 | 20,100 | 160.9 | 60 |
| 連27.3予 | 361,000 | 31,000 | 31,600 | 21,300 | 170.5 | 60〜62 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 19,310 | -20,329 | -20,004 |
| 2024 | 24,350 | -35,307 | 16,850 |
| 2025 | 39,100 | -28,604 | 2,541 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 7.9% | 8.4% | 6.1% | — | — |
| 2024 | 9.0% | 10.3% | 6.8% | — | — |
| 2025 | 9.0% | 10.1% | 6.5% | 高値平均 23.7倍 安値平均 17.6倍 |
1.80倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
カルビーは食品メーカーの中でも売上規模が大きく、主力のポテトチップスやじゃがりこ、フルグラなど強いブランドを多数持っている点が他社と比べて大きな強みになっている。直近の業績を見ても、売上は3030億から3225億、さらに3410億の予想と、安定成長を続けていることが分かる。利益面でも営業利益が273億から290億、そして292億予想と、急成長ではないものの安定した水準で推移している。
ただし、純利益は198億から208億、そして201億予想と、若干の伸び悩みや横ばい感がある。これは原材料高騰や物流コストの上昇など、食品メーカー全般が抱える課題の影響が出ている可能性がある。営業利益率は7〜9%台と食品業界としては平均的で、突出した高収益企業というわけではないが、商品ブランド力の高さと継続した需要により大きく崩れにくい体質を持っている。
ROEは8〜10%台で、極めて高いわけではないが、食品メーカーとしては許容範囲に入る。日本企業はROE5%台が多い中で、カルビーは比較的良好な水準を維持している。ROAも6%台と安定性重視の企業らしい数字になっている。市場からの評価を見ると、PERが17〜23倍で推移しており、食品メーカーとしてはやや割高寄りで、これはカルビーのブランド力と安定性が高く評価されている証拠と言える。PBRも1.8倍と、食品株としてはそこそこ高めである。
総合すると、カルビーは大きく成長するタイプの企業ではなく、安定した需要とブランド力によって長期的に堅実に利益を積み上げていく中〜低成長の優良株というイメージになる。急成長株のような値上がりは期待しにくいものの、大幅に崩れにくいビジネスモデルを持っているため、景気に左右されにくいディフェンシブな銘柄としての価値は高い。
投資視点では、値上がり益を大きく狙うというより、安定した業績とブランド力を評価して長期保有するタイプの銘柄だと判断できる。PERが比較的高めに評価されているため、押し目でコツコツ拾う投資が向いている。食品株の中では比較的安定感と成長性のバランスが良い企業だが、利益率が急に改善するような大きな伸びは期待しづらいため、保守的に見るのが妥当な銘柄となる。
配当目的とかどうなの?
カルビーを配当目的で考える場合、予想配当利回り(2026・2027年度)はおおよそ2.21%で推移しており、食品株としては標準よりやや良い水準に入る。高配当株とは言えないものの、利回り2%台前半を安定して確保できる銘柄としては悪くない位置づけになる。食品メーカーは景気変動に強く、売上の変動幅が小さいため、配当の安定性が確保されやすい特徴がある。カルビーもその例にもれず、業績が比較的安定しており、減配リスクが極端に高い銘柄ではない。
配当政策を見ても、56円 → 58円 → 60円へと少しずつ増配しており、直近の業績でも利益が大きく崩れていないことから、今後も微増傾向の配当スタンスは継続される可能性が高い。大きな増配を行うタイプの企業ではないが、食品メーカーとしては堅実に配当を出し続けるタイプで、長期保有に適した安定志向の設計になっている。
ただし、配当利回り2.21%という数字は「配当狙いの主力候補になるほど高いか」と言われると、そこまでの魅力はない。例えばJTや三菱HCキャピタルのような3~5%の高利回り株とは性格が異なり、配当だけを目的にポートフォリオに組み入れると、期待値としては物足りなさが残る。一方で、株価の下落が大きくなりにくいディフェンシブ性やブランド力の盤石さを考えると、リスクの低い安定配当株としての価値は高い。
カルビーは高収益企業だが、利益率は9%前後で大幅に伸びるタイプではなく、成長スピードも比較的緩やかである。そのため、配当性向を急に引き上げて高配当株化する動きは期待しづらい。あくまで「安定した会社が安定して配当を出す」という姿勢で、大幅な増配や株主還元強化を狙う銘柄とは違う。
総合的に見ると、カルビーは配当目的のメイン商材というより、長期的に安定した配当を受け取りながら、株価のゆるやかな上昇も期待したい人に向いた銘柄といえる。利回りはやや物足りないが、会社の安定性・ブランド力・ディフェンシブ性を加味すれば、安心して長期保有できるタイプの企業であり、ポートフォリオの中で「中くらいの利回りで安定感のある枠」として使える銘柄になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
カルビーの現在の株価は2,975.5円だが、この水準は食品メーカーとしては比較的高めの評価を受けている位置にある。PERは17〜23倍、PBRは1.8倍と、安定成長銘柄としてプレミアムが乗っている状態だ。それだけ市場はカルビーのブランド力や安定性を評価して買っているということになる。今後5年間の株価を考える場合は、成長スピード、収益性、原材料価格、海外展開の成否といった複数の要因が鍵となる。
まず良い場合のシナリオでは、ポテトチップスやじゃがりこなどの主力ブランドが安定的に売れ続けるだけでなく、海外市場での販売が予想以上に伸びるケースが想定される。アジア市場でのシェア拡大や健康志向の高まりに合った商品展開が成功し、売上と利益が毎年堅実に成長するパターンだ。加えて原材料価格の高騰が落ち着き、収益率の改善が進めば、株価はプレミアムを維持したまま上昇する。こうした条件が重なれば、現在値から1.3〜1.5倍ほどの上昇も視野に入り、5年後には3,800円から4,500円あたりまで上昇する可能性がある。成長スピードが予想以上に出れば5,000円台が見えてくる展開も考えられる。
中間のシナリオでは、売上が緩やかに伸びるものの利益率は大きく改善せず、現在の安定成長がそのまま続くケースとなる。食品メーカー特有の安定性に支えられ、業績が右肩上がりを維持すれば、株価もゆっくりとした上昇に落ち着く。この場合、PERは横ばいかやや低下し、株価は現在値の2,975円から3,200〜3,600円あたりのレンジに収まる。急騰はないが、急落もしにくく、ディフェンシブ株として安定した推移を見せる形だ。
悪い場合のシナリオでは、原材料価格の上昇が続き、利益率が圧迫されるパターンが懸念される。じゃがいも価格の不安定さや円安による輸入コスト増が長期化すると、利益が伸び悩む可能性がある。さらに新商品のヒットが減ったり、海外市場での競争が厳しくなったりすると成長鈍化が鮮明になり、PERの下方修正が起きる。その結果、株価が割安方向へ調整され、5年後には2,200円〜2,600円の水準まで下がるシナリオも考えられる。全体相場の悪化が重なれば2,000円前後まで押し込まれることもありうる。
総合して見ると、カルビーは高成長株ではないものの、ブランド力と安定した需要に支えられており、大きな崩れにくい銘柄である。良い場合は中程度の上昇が期待でき、中間でも安定推移、悪い場合でも限定的な下落にとどまる可能性が高い。長期的には比較的読みやすいディフェンシブ銘柄として扱えるが、急騰するタイプではないため、買い時は押し目を狙いたい銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2025年11月30日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す