株価
モロゾフとは

モロゾフ株式会社は、兵庫県神戸市東灘区に本社を置く、日本でも屈指の歴史を持つ洋菓子メーカーである。神戸は全国的に洋菓子文化が発展した街として知られており、モロゾフはドイツ菓子メーカーのユーハイム、ゴンチャロフ製菓と並ぶ「神戸三大洋菓子ブランド」の一つとして広く認知されている。創業の起源は、白系ロシア人であるフョードル・ドミトリエヴィチ・モロゾフ一家が神戸で開いた小さなチョコレート店で、その店をルーツとして法人化した同社は、創業者一族の姓を社名として受け継いでいる。
現在の本社は神戸市の六甲アイランドに位置し、全国の百貨店・駅ビル・商業施設を中心に多数の販売店を展開している。2015年(平成27年)時点の店舗数は1,102店に達し、併設の喫茶店舗やカフェ、レストラン形式の店も含めて幅広い業態を抱える。代表的な主力商品には、チーズケーキ、ガラス容器入りプリン、チョコレート、焼き菓子詰め合わせなどがあり、長年にわたり贈答市場で高い人気を保っている。特にチョコレート分野では力が強く、バレンタインデーのギフト文化に大きな影響を与えた企業としても有名である。
同社は1932年、創業翌年に「バレンタインデーにチョコレートを贈る」というコンセプトを日本で初めて導入したとされ、現在では当たり前となった“2月のチョコレート商戦”の礎を築いたパイオニア的存在として知られている。また、モロゾフのプリンはガラス容器に入った高級デザートとして人気があり、1973年までは陶器を使用していたが、その後ガラス容器に切り替えたことでブランドイメージが定着した。食べ終わった後のプリン容器を家庭でグラスとして再利用する習慣は関西圏で特に根強く、「関西の家庭には必ずモロゾフのプリンの空き容器がある」としてテレビ番組『探偵!ナイトスクープ』で紹介されるほど文化的アイコンとして扱われている。
さらに、吉本新喜劇の小籔千豊がネタで「ついつい取ってしまう物の代名詞」としてモロゾフのプリン容器を挙げるなど、関西の生活文化に深く浸透している。モロゾフ自身も容器のリサイクル・再利用を公式に推奨しており、このガラス容器は同社のブランドシンボルとも言える存在となっている。一時的にプラスチック容器に切り替えたことがあったものの、ブランド価値の低下や販売減少が見られたため、再びガラス容器へ戻したというエピソードもある。
事業内容としては、洋菓子の製造・販売を中核に据え、全国の百貨店や商業施設で展開する直営店・販売店の運営、季節イベントに応じた特別商品の企画、ギフトセットの開発、喫茶やカフェの運営など、多角的な事業を展開している。特にバレンタイン・ホワイトデー・母の日などのギフト需要に強く、長年蓄積したブランド力・商品企画力・包装技術が同社の競争優位を支えている。また、近年では原材料の調達網強化、物流拠点の効率化、サステナビリティを意識した取り組みなどにも注力している。
なお、山梨県笛吹市の洋酒メーカー「モンデ酒造」の前身に「モロゾフ酒造」という名称の企業が存在していたが、現代のモロゾフ株式会社とは資本関係も歴史的な繋がりもなく、全くの別会社である。
モロゾフ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益EPS(円) | 一株配当DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.1 | 32,505 | 2,423 | 2,615 | 1,703 | 80.7 | 21.7 |
| 連24.1 | 34,933 | 2,474 | 2,517 | 1,715 | 81.5 | 32.7 |
| 連25.1 | 36,017 | 2,058 | 2,098 | 1,414 | 68.9 | 27.3 |
| 連26.1予 | 35,900 | 1,030 | 1,060 | 580 | 28.7 | 14 |
| 連27.1予 | 36,400 | 1,800 | 1,800 | 1,200 | 59.4 | 14〜24 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 2,200 | -1,540 | -440 |
| 2024 | 2,117 | -456 | -1,011 |
| 2025 | -618 | -622 | -1,822 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 7.4% | 9.1% | 6.4% | — | — |
| 2024 | 7.0% | 8.6% | 6.1% | — | — |
| 2025 | 5.7% | 7.2% | 5.5% | 高値平均 19.2倍 安値平均 14.4倍 |
1.61倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
モロゾフのここ数年の業績を見ると、売上は大きく落ちてはいないが、利益面ではじわじわと弱くなっている。2024年1月期は営業利益が24億ほどあったものの、2025年1月期には20億へ減り、さらに2026年1月期の予想では10億まで下がる見込みになっている。経常利益や純利益も同じ流れで減っており、収益構造の悪化が続いているのがよく分かる。利益率を見ても、営業利益率が7%前後から5%台に落ち、さらに来期はかなり低い水準まで落ち込む可能性が高い。コスト増や人件費の上昇、材料費の高騰などが背景にあると考えられ、ブランド力のある会社ではあるものの、利益体質は弱くなってきている。
ROEやROAの動きも似たような傾向で、資本効率が年々落ちてきている。ROEは8%台から7%台へ下がり、来期はおそらくさらに低下する。ROAも6%前後から5%台へ下がり、こちらも利益水準の低下を反映している。食品メーカーとして突出した収益力があるわけではなく、全体的に効率が悪くなっている印象が強い。
株価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均で19倍、安値平均で14倍と、食品株らしい水準ではあるが、利益が減っているタイミングでこのPERをどう評価するかは難しいところ。PBRは1.6倍で、ブランド価値を考えれば妥当と言えるが、利益の落ち込みが続くと割高に見える可能性もある。さらにEPSは81円から68円、そして28円へと大幅に減少しており、それに伴って配当も32円から27円、そして14円へと減配傾向になっている。利益が落ちているため、配当余力も縮小している。
総合的に見ると、モロゾフはブランド力こそ強く長年親しまれているが、直近の利益水準の悪化がはっきりしており、株としては今すぐ積極的に買いにいく局面ではないと判断できる。売上はほぼ横ばいで保っているため事業そのものが崩れているわけではないが、コスト上昇を吸収できておらず収益面が細っているのが最大の不安材料。来期は利益が半減する見通しになっており、ここが本当に業績の底になるのか、それともさらに弱くなるのかが重要なポイントになる。
当面は無理に手を出すよりも、原材料高が落ち着く兆しや、価格改定による収益改善が出てくるか、または新業態や高付加価値商品の展開など、利益を回復させる明確な動きが見えるまで様子を見た方が無難。長期で見ればブランド力があるため復活の可能性は十分あるが、今の段階では資本効率の悪化と利益の縮小が目立ち、慎重な姿勢が必要な銘柄と言える。
配当目的とかどうなの?
モロゾフを配当目的で考える場合、結論としては「今の水準だと配当狙いの投資には向いていない」という評価になる。理由はシンプルで、予想配当利回り(2026・2027年度)が 0.89% とかなり低く、食品株のなかでも利回りの魅力は乏しい。しかも利益自体が下がっていて、減配も続いているため、将来の配当が安定して維持される保証があまり強くない。
もともとモロゾフは高配当銘柄ではなく、ブランド力と安定したお菓子需要を軸にした「堅い銘柄」という扱いだったが、ここ数年は利益率が低下し、EPSも81円 → 68円 → 28円へと大きく落ちている。この流れでは配当にまわせる余力がどうしても限られるため、配当だけを目的に持つには無理がある。
さらに、2026年・2027年の予想配当利回りがどちらも 0.89% と横ばいで、しかもその絶対値も低い。配当利回り1%割れの銘柄をあえて配当目的で選ぶ意味はあまりなく、同じ消費・食品関連でも2〜3%台が普通にあることを考えると見劣りしてしまう。
今のモロゾフは、利益が減っているせいで「配当性向を高めて無理にでも配当を維持する」タイプの会社でもなく、むしろ利益が落ちれば普通に減配するタイプの企業だと分かる。つまり、配当の安定性という点でも強みがあるわけではない。
ブランド力がある会社なので長期的な復活の可能性自体はあるものの、あくまで将来の業績反転に期待する投資であって、現時点の配当利回りや還元姿勢を理由に買うべき銘柄ではない。配当目的だけで見るなら、ほかにもっと利回りが高くて、配当が安定している銘柄が多いのが実情。まとめると、モロゾフは配当狙いの投資対象としては現状ほぼ魅力がなく、利回りも低く、利益も落ちているため、配当目当てで保有するには向かない銘柄と言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
モロゾフの株価を現在の1,557円から5年先まで考える場合、まず押さえておきたいのは、この会社が「ブランド力は強いが利益が出にくい体質」になってきているという点だ。長年チーズケーキやプリン、チョコレートなど贈答向け商品で安定した地位を築いてきたものの、ここ数年は原材料高や人件費上昇の影響を強く受け、営業利益が右肩下がりになっている。売上はそこまで大きく落ちていない一方で、利益のほうが削られてしまっているため、投資家は「ブランドの強さ」と「収益性の弱さ」を同時に見ながら判断する必要がある。
まず良い場合のシナリオでは、足を引っ張っているコスト要因が落ち着き、乳製品や砂糖、包装資材の価格が安定することが前提になる。さらに会社側が進めている生産ラインの効率化や、人件費を吸収するための価格改定がうまく機能すれば、営業利益が再び20億〜25億の領域まで戻る可能性がある。この水準になると、PERが15倍〜18倍くらいで評価されてもおかしくなく、株価は2,700円から3,000円近くまで上昇する余地が出る。特にモロゾフはバレンタインやギフト需要が強い会社なので、イベントでの売上が再び伸び始めれば、一気に評価が見直される場面も考えられる。
中間のシナリオでは、利益が完全に回復しないものの、低空飛行で安定する形がしっくりくる。たとえば営業利益が15億前後で推移する場合、収益面では強くないものの、ブランド力があるので売上が大きく崩れるリスクは低い。市場もこの企業に大きな成長は求めず、「安定低収益」の食品銘柄として評価することが多くなる。この場合はPERが13倍〜16倍で動き、株価は1,700円〜2,200円のレンジに収まりやすい。積極的に買われる理由もないが、暴落するような材料も少ないという、無難な結果に落ち着く。
悪い場合のシナリオでは、利益がさらに落ち続け、営業利益が10億割れの状態が長引くことを想定しておくべきだ。食品業界は人件費が上がりやすい構造で、原材料高も完全には元に戻らない可能性がある。加えて、百貨店依存の売上構造は長期的には弱点で、消費者の購買行動がネットや量販店中心にシフトすれば、ブランド力があっても売上の伸びは鈍いままになりやすい。利益が低迷すれば市場はPERを低く見積もるようになり、10倍〜12倍程度で評価される可能性が高く、株価は1,200円〜1,400円まで縮む恐れがある。もし利益がさらに悪化すれば1,000円台前半まで下がるシナリオもあり得る。
まとめると、モロゾフの場合短期的には利益が落ちていることで株価の伸びしろが限定されているが、長期ではブランド価値の高さが底支えになるという特徴がある。お菓子業界では、ブランドの知名度が売上の安定性に直結するため、急激に売上が崩れにくいという強みがある一方、利益率が低いために一度コストが増えると回復が遅くなる。結局は会社がどこまで原価と人件費を吸収し、どれだけ効率的に利益を出せる体質に戻れるかが、5年後の株価を大きく左右することになる。
この記事の最終更新日:2025年11月30日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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