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森永乳業とは

森永乳業株式会社は、東京都港区東新橋(汐留)に本社を置く日本の大手乳製品メーカーで、森永製菓とは兄弟会社としてモリナガグループを形成している。1917年に創設された日本煉乳株式会社をルーツに持ち、1920年に森永製菓と合併して畜産部として発展し、その後の再編を経て現在の森永乳業となった。昭和初期には日本の乳業業界のトップ企業として君臨した歴史を持つが、1955年のヒ素ミルク事件によって大きな打撃を受け、業界首位の座を雪印乳業に譲った経緯がある。その後も業界の再編や事件を経て勢力図は変わり、現在では明治に次ぐ「乳業業界の大手企業」として位置付けられている。
森永乳業は乳飲料、ヨーグルト、アイスクリーム、デザート類、栄養食品など多彩な商品群を持つ総合乳製品メーカーである。特にチルドカップコーヒーの元祖とされる「マウントレーニア」は1993年の発売以降、チルド飲料市場で圧倒的な存在感を持ち続けており、森永乳業を代表する看板ブランドである。また「アロエヨーグルト」や「ビヒダス」はヨーグルト市場でも高いシェアを持ち、健康志向の高まりを背景に長年愛されるロングセラー商品となっている。
デザート・冷菓事業も非常に強く、「ピノ」「MOW」「PARM」「ビエネッタ」「チェリオ」など、多くの人気アイスブランドを展開している。かつてはユニリーバと提携し「エスキモー(Eskimo)」ブランドを展開していたが、2010年以降はブランド価値の一元化を目的に森永ブランドへ統合され、今ではMマークの製品が中心となっている。プリン・ゼリーなどのデザート分野でも「森永牛乳プリン」「焼プリン」など多数のヒット商品を持ち、幅広い年齢層に認知されている。
飲料分野では「森永のおいしい牛乳」「森永マミー」「ピクニック」など定番商品に加え、「第三の牛乳」とされる乳飲料系シリーズや機能性飲料も投入し、健康志向市場にも積極的に対応している。プロテイン強化商品のPREMiL Blueなど、栄養価を高めた商品開発も進んでおり、機能性表示食品の領域にも参入している。
さらに、森永乳業は乳幼児向け粉ミルクから高齢者向け食品、業務用原料、海外展開まで、幅広いビジネス領域をカバーしている。特に東南アジアではアイスや飲料の販売を拡大しており、海外での需要増加に合わせて現地生産や提携を進めている。健康科学分野では乳酸菌研究に重点を置き、ビフィズス菌や機能性素材に関する研究開発が強みとなっている。
森永乳業は、創業から100年以上の歴史を持つ乳業の老舗企業でありながら、新しい飲料市場、健康食品市場、海外市場の開拓にも積極的で、伝統と革新の両面を持つ総合食品メーカーとして成長を続けている。生活に欠かせない乳製品を中心に、国内外で高いブランド力と安定した需要を持ち、今後も食品・健康領域の中核企業として重要な役割を担う企業である。
森永乳業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益EPS(円) | 一株配当DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 525,603 | 23,939 | 25,218 | 16,875 | 186.6 | 45 |
| 連24.3 | 547,059 | 27,839 | 28,104 | 61,307 | 696.9 | 60 |
| 連25.3 | 561,173 | 29,658 | 29,864 | 5,459 | 64.6 | 90 |
| 連26.3予 | 580,000 | 32,000 | 31,900 | 19,000 | 230.5 | 93 |
| 連27.3予 | 605,000 | 35,000 | 34,900 | 21,000 | 254.7 | 93〜105 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年度 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 19,382 | -25,463 | 2,925 |
| 2024 | 56,583 | 25,223 | -38,624 |
| 2025 | -12,456 | -18,786 | -5,028 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.5% | 7.5% | 3.4% | — | — |
| 2024 | 5.0% | 22.1% | 10.8% | — | — |
| 2025 | 5.2% | 2.0% | 1.0% | 高値平均 35.4倍 安値平均 26.2倍 |
1.13倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
森永乳業の直近3年間の数字を見ると、最も目立つのが純利益の「大きな上下動」である。2024年3月期(純利益)は613億円と通常の6〜10倍レベルに急増しているが、これは明らかに特別要因による利益計上で、本業の収益力そのものが急激に伸びたわけではない。翌期の純利益が54億円まで一気に戻っていることから、企業本来の実力値は過去平均に近い水準だと考えるのが妥当になる。
一方で本業を示す営業利益は安定しており、278億 → 296億 → 320億と右肩上がりで推移している。営業利益率も4.5% → 5.0% → 5.2%と少しずつ改善しており、乳製品という成熟市場の中でも、価格改定や付加価値商品の強化などで収益力を高めていることがわかる。
ROEやROAに関しては、2024年の急跳ねが特別益の影響であるため異常値と言える。2025年の予想でROEが2%、ROAが1%という低水準なのは、純利益が戻る一方で自己資本が重く、資本効率が悪化して見えるためだ。これはネガティブに見えるが、逆に言えば2024年の純利益が異常なだけで、2026年以降、純利益が安定してくればROEは自然に戻っていく可能性もある。
株価指標で見ると、PERは26〜35倍とかなり高めであり、森永乳業は食品株の中でも比較的割高に評価されている。これはブランド力の強さと高い安定性がプレミアムとして乗っているため。PBRも1.13倍と控えめだが、これは資産が大きい乳業メーカーならではの特徴で、過度に割安とも割高とも言いにくい水準だ。
総合すると、森永乳業は「急成長する企業ではないが、収益基盤はしっかりしており、長期的に業績の安定が期待できる堅実銘柄」という評価になる。ただし、株価は食品株としてはやや高めに買われているため、成長を強く織り込むようなタイプの銘柄ではなく、安定性とブランド力に価値を感じる投資家向けになる。
急激な株価上昇を狙う銘柄ではなく、中〜長期で安定配当と緩やかな業績成長を期待する、ディフェンシブ寄りの投資対象として扱うのが適している。純利益の乱高下に注意しつつ、本業を見ると着実に強化されているため、押し目で少しずつ拾うスタンスが現実的だと言える。
配当目的とかどうなの?
森永乳業を配当目的で考える場合、現状の予想配当利回り(2026・2027年度)は2.48%と、食品メーカーとしては比較的良い水準に入る。高配当株と呼べるほどではないものの、2%台後半に近い利回りは「安定配当を期待する長期投資」として十分に検討できる水準で、ディフェンシブ業種としての安心感も合わせれば悪くない位置づけになる。
森永乳業は牛乳、ヨーグルト、アイスクリームなど日常消費に根ざした商品群を持ち、景気変動の影響を受けにくい点が大きな特徴である。そのため業績も比較的安定しており、急激な利益の減少が起こりにくい。実際、営業利益は毎年じわじわと増加しており、価格改定や高付加価値商品の投入によって収益力の底上げが続いている。この安定性は配当の確実性に直結しており、減配リスクが低いという点は配当投資において大きな魅力と言える。
配当の推移を見ると、45円 → 60円 → 90円 → 93円と増配傾向にあり、とくに24年から25年にかけての増配幅は大きい。ただし、これは前期の特別利益によってEPSが急増した影響もあるため、突発的な増配であり、今後同様のジャンプが続くとは考えにくい。とはいえ長期的に見れば、森永乳業は安定的に利益を積み上げており、配当もゆるやかに増えていく傾向があるため、「ゆっくり増える安定型配当株」としての位置づけがしっくりくる。
利回り2.48%という数字は、高配当株を求める投資家にとっては物足りないかもしれないが、食品セクターの安定性、ブランド力、業績の底堅さを考慮すると、リスクを抑えながら配当を得たい投資家にとっては悪くない選択肢になる。PERが26〜35倍と高い評価を受けているため、利回りだけを見ると「割高に見える配当株」ではあるが、株価が大きく崩れにくいディフェンシブ性を持つため、トータルリターンとしてはバランスが取れている。
総合的には、森永乳業は「配当を主目的に据えるほど高利回りではないが、安定成長と安定配当の両方を求める長期投資に向いた堅実な銘柄」という評価になる。大幅な増配や高利回りを期待する銘柄ではなく、生活密着型企業による安定したキャッシュフローに支えられ、長期的にじわじわと配当を受け取るイメージが合っている。
今後の値動き予想!!(5年間)
森永乳業の現在の株価3,750円は、食品メーカーとしてはやや高めの評価を受けている位置にある。PERが26〜35倍、PBRが1.13倍という数字から見ると、市場は森永乳業に成長性というより「安定性」「ブランド力」「ディフェンシブ性」を強く求めており、株価にはそれが反映されている。業績は安定しているものの、成長スピードは急激ではなく、大きな株価変動が起こりにくいタイプの企業であるため、今後5年間の値動きは“緩やかな上昇または緩やかな調整”というレンジ内に収まりやすい。
まず良い場合のシナリオでは、ヨーグルト・アイス・チルド飲料など主力商品の販売が順調に続き、さらに健康志向の高まりが追い風となって高付加価値商品の売上が伸びるケースが想定される。価格改定が成功し、原価高の影響が落ち着いて利益率が改善していけば、営業利益も今の伸びを維持しやすくなる。また、海外市場での販売が拡大し、ASEAN地域でのアイス事業や乳製品の展開がさらに広がれば、株価の評価も上がりやすい。こうした流れが揃った場合、森永乳業は“安定成長銘柄”として再度見直され、5年後には株価が4,400円〜4,900円程度まで上昇する可能性がある。市場全体が好調で食品株も資金が流入する局面では、5,000円台突破も視野に入る。
中間のシナリオでは、業績が堅調ながら大きな成長はなく、従来通りの緩やかな増収・微増益の状態が続くケースである。乳業の原料コストは変動しやすいものの、消費者ニーズは安定しており、森永乳業は極端に業績が崩れることは少ない。そのため株価も大きく動かず、現在値からゆっくりと上または横ばいに推移する可能性が高い。この場合、株価は3,900円〜4,200円程度のレンジで落ち着き、食品セクターらしい“安定した価格帯”を形成することになる。大きな上昇は期待しづらいが、下落も限定的で、最も現実的なシナリオと言える。
悪い場合のシナリオでは、原材料価格の高騰が続いたり、為替の影響でコストが上昇したりすることで利益率が低下するケースが考えられる。とくに乳製品は原価高の影響を受けやすく、価格改定が遅れれば利益が圧迫されやすい。また、少子化による国内市場の縮小や競合他社とのシェア争いが激化すると、業績の伸び悩みが鮮明になる可能性もある。PERが修正されて株価が割安方向に調整されると、5年後には3,000円〜3,300円あたりまで下落するシナリオも現実味がある。さらに市場全体が不調な局面では2,800円前後まで押し込まれるリスクもある。
総合的に見て、森永乳業は大きくジャンプする株ではないが、大きく崩れる株でもない“典型的なディフェンシブ銘柄”である。良い場合は5000円まで上昇、中間では安定推移、悪い場合は一定の調整にとどまり、極端な値動きが少ない点が特徴。配当利回りも2.48%と食品株としては悪くなく、長期保有しながら緩やかな株価上昇と配当を期待する投資スタイルに向いている。
この記事の最終更新日:2025年11月30日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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