株価
江崎グリコとは

江崎グリコ株式会社は、大阪府大阪市西淀川区歌島四丁目に本社を置く日本の総合食品メーカーである。コーポレートメッセージは「すこやかな毎日、ゆたかな人生」で、創業100周年にあたる2022年2月11日に新たなコーポレートアイデンティティとともに刷新された。創業以来、国民的ブランドを多数展開し、菓子・食品業界を代表する企業として長い歴史を持つ。
2015年10月には完全子会社であったグリコ乳業と経営統合し、菓子・食品・乳製品・健康食品を含む幅広いジャンルを扱う総合食品メーカーとなった。社名の「グリコ」はグリコーゲンに由来しており、創業初期から「健康」「栄養」「楽しさ」を重視した商品づくりを進めてきた。
同社の主力製品は、チョコレート、スナック菓子、ガム、キャンディー、アイスクリームなどの菓子類を中心とし、グリコ乳業から継承した牛乳・ヨーグルトなどの乳製品も柱となっている。さらに食品領域では、レトルトカレー、カレールー、炊き込みご飯の素、コンビニ向け加工食品、調味料からサプリメントまで幅広く展開しており、家庭用・外食用・業務用のすべてをカバーする商品ラインナップを持つ。
また同社は自販機・直販サービスにも強みがあり、アイスクリーム自販機の「セブンティーンアイス」は長年の人気シリーズとして全国の駅・学校・施設に設置されているほか、オフィス向け菓子の置き菓子サービス「オフィスグリコ」も独自のビジネスモデルとして広く浸透している。さらにグリコ商品専門店「ぐりこ・や」の運営、過去にはファストフード店「グリコア」を全国展開するなど、小売やサービス領域でも積極的な展開を見せてきた。
競合企業としては、菓子分野では明治・ロッテ・森永製菓・不二家・ブルボン、食品分野ではハウス食品・明治・エスビー食品などが挙げられる。市場競争が激しい中でも、グリコはポッキー、プリッツ、ペロティ、パピコ、パナップ、カプリコなど、いわゆる「パピプペポ」を含む独自のネーミングセンスとブランド戦略で長年強い存在感を維持している。商品の種類が非常に多いため、生産終了は原則としてアナウンスしないという独自方針を採っている点も特徴的である。
メインバンクは三和銀行(現:三菱UFJ銀行)で、同銀行系列の親睦会「みどり会」に加盟している。また、創業者・江崎利一と松下幸之助の親交が深かったことから、パナソニックグループとも結びつきが強く、広告・営業活動の場面でパナソニック製品が用いられることもある。
グループ企業にはグリコ栄養食品、アイクレオなどがあり、かつてはグリコハム(現:フードリエ)もグループの一員であったが、エスフーズへの株式売却により離脱している。1984年のグリコ・森永事件以降、商品の包装は「一度開封すると元に戻せない」仕様へと変更され、安全性・信頼性の面で高い基準を維持している。
江崎グリコ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度(単位百万) | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021.12 | 338,571 | 19,307 | 21,708 | 13,519 | 208.4 | 70 |
| 2022.12 | 303,921 | 12,845 | 13,646 | 8,099 | 126.6 | 80(記念) |
| 2023.12 | 332,590 | 18,622 | 21,285 | 14,133 | 222.3 | 80 |
| 2024.12 | 331,129 | 11,065 | 13,348 | 8,113 | 127.5 | 90 |
| 2025.12(予) | 364,000 | 11,000 | 13,500 | 8,000 | 125.7 | 95 |
| 2026.12(予) | 390,000 | 14,000 | 16,500 | 9,800 | 153.9 | 95〜100 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022 | 16,802 | -20,140 | -10,284 |
| 2023 | 28,063 | -8,613 | -6,179 |
| 2024 | 1,812 | -10,255 | -39,246 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.5% | 5.3% | 3.5% | - | - |
| 2024 | 3.3% | 2.9% | 2.1% |
高値平均:30.2倍 安値平均:23.9倍 |
1.28倍 |
| 2025 | 3.0% | 2.9% | 2.1% | 予想:47.08倍 | - |
出典元:四季報オンライン
投資判断
江崎グリコの業績を3年分並べてみると、食品メーカーとしての安定感はあるものの、利益の推移を見ると課題も明確に浮き上がってくる。売上高自体は3,300億円台を維持しつつ、2025年には3,600億円台に乗せる予想となっているため、売上そのものはしっかり伸ばしている。しかし一方で営業利益・経常利益は2023年の水準から大きく後退しており、利益率が明確に悪化していることが目立つ。営業利益は2023年の186億円から2024年には110億円へと大幅に減少し、2025年予想でも110億円のままとなっており、グリコが稼ぐ力を十分に取り戻せていない状況が続いている。
純利益も同様に、2023年の141億円から2024年81億円、2025年予想80億円と減少したまま横ばいが続く。利益が落ちている一方で売上は拡大しているため、コスト増や原材料価格の高騰、国際事業の収益性低下などの影響が強く残っていると考えられる。営業利益率が5.5%から3.3%、そして3.0%と低下していることからもわかるように、収益性は食品メーカーの中でも低い水準に沈みつつある。
ROE・ROAも同様に低迷しており、ROEは5.3%から2.9%に落ち込み、2025年も2.9%と回復の兆しが弱い。ROAも3.5%から2.1%へ下がり、こちらも改善の見通しは乏しい。企業としての資本効率が明らかに低下しており、経営の収益力が縮小していることを示す指標となっている。
株価指標を見ても、2024年の実績PERは高値平均30倍、安値平均24倍と割高傾向にあり、さらに2025年の予想PERは47倍とかなり高い水準になる見込みだ。利益が伸びない中でのPER上昇は「利益が伴っていない株価の高さ」を意味するため、現在の株価は割安とは言えず、むしろ慎重に見るべき段階にある。PBRも1.28倍と決して割安ではないため、指標面からも積極的に買い向かう理由は弱い。
配当は80円→90円→95円と上昇しているが、利益が減っている中での増配であるため、配当性向が高まり続ける傾向には注意が必要だ。今後も継続的に増配できるかどうかは、利益回復が伴わなければ難しくなる可能性がある。
総合すると、江崎グリコはブランド力が非常に強く、国内外で一定の売上規模を維持できる安定感はあるが、現状では利益率の低下と収益力の弱さが大きな課題となっている。中長期での再成長を期待する投資は否定されるべきではないが、短期・中期での積極的な投資判断は慎重になるべきで、株価指標や収益性の低迷を見る限り、現時点では「無理に買うタイミングではない」という評価が妥当だと考えられる。
配当目的とかどうなの?
江崎グリコを配当目的で見た場合、まず目につくのは予想配当利回りが連25.12、連26.12ともに1.72%というかなり低い水準だという点である。一般的に、配当を主目的に投資する場合は少なくとも2.5〜3%以上が選択基準になることが多く、1%台という利回りは「配当株」としての魅力は正直なところ弱い。さらに、配当自体は80円→90円→95円と増配傾向にあるものの、利益が減少している中での増配であり、配当性向が高まりやすい状態になっている点には注意が必要となる。
特に問題なのは、利益が回復しないまま配当だけが増えている構図で、これは中長期的には持続性への懸念につながる。企業としてはブランド力もあり、売上規模も大きく安定しているものの、営業利益や純利益は2023年以降大きく落ち込み、2025年・2026年の予想でも完全な回復には至っていない。こうした利益の弱さは配当余力の縮小につながり、配当狙いの投資家にとってはリスク要因になる。
また、株価指標の面でも、2024年のPERが高値平均30倍・安値平均24倍、2025年の予想PERに至っては47倍という極めて高い水準にあり、利益に対して株価が割高な状態が続いている。割高株で利回りが1%台というのは、配当目的の投資先としては相当効率が悪く、他の食品メーカーや高配当株と比較しても魅力は限定的となる。
もちろん、グリコはブランド力が強く、ポッキーやパピコ、セブンティーンアイスなどの国民的ブランドを持ち、売上そのものは安定しているため、極端に業績が悪化しやすい企業ではない。しかし、現状は利益率の低下とコスト上昇の影響が続いており、配当目的で長期保有するには「利回りが低い」「利益が弱い」「株価が割高」という三重苦の状態になっている。
総合すると、江崎グリコは「配当目的の投資先としては向かない」という評価が妥当となる。安定したブランドと事業基盤は魅力だが、利回り1.7%では配当株としての魅力はほとんどなく、むしろ業績回復を待ちながら株価上昇を狙う成長期待型の投資スタンスでなければメリットが出にくい。
今後の値動き予想!!(5年間)
江崎グリコの現在値は5,500円だが、この株価が今後5年間どのように推移していくかは、同社の収益構造の変化、原材料価格の動き、国内外の消費環境、そして大型商品の販売動向とブランド力の持続性が大きな要因になる。グリコはポッキー、パピコ、ジャイアントコーン、プリッツなど国民的ブランドを数多く抱え、菓子メーカーの中では圧倒的に強い知名度を持っている。さらに「セブンティーンアイス」や「オフィスグリコ」など独自サービスも収益基盤の一部を支えており、事業は多角化されている。しかし最近では原材料価格の高騰や物流費の上昇が収益を圧迫し、営業利益率が大きく落ち込む状態が続いている点は無視できない。
こうした現状を踏まえ、グリコの株価推移を「良い場合」「中間」「悪い場合」の3パターンで考えてみる。
まず「良い場合」のシナリオでは、原材料コストの落ち着きや新商品のヒット、あるいは海外展開の加速が追い風になる。特にアジア市場ではポッキーの人気が高く、中国や東南アジアでの販売拡大が軌道に乗れば収益性の改善につながる。また、健康食品・高付加価値カテゴリーが育ち、利益率の高い商品の比率が増えることで全体の収益が底上げされる可能性もある。もしこれらが複合的に機能すれば、株価はじわじわと持ち直し、5年後には7,500円から9,000円ほどの水準に到達するシナリオも想定できる。成長ストーリーが投資家に評価されれば、再び市場の注目を集める可能性も高い。
次に「中間シナリオ」では、売上自体は安定しているものの、利益率はすぐには戻らず、現状の課題を抱えたまま横ばいで推移する展開が予想される。菓子業界は景気に左右されにくく、一定の需要が常に存在するため、大きな落ち込みは発生しにくい。しかし同時に劇的な成長もしづらく、現実的には5,500〜6,500円のレンジでゆっくり推移しやすい。配当利回りは低めだが、ブランド力のある企業として安定保有には適しており、株価の大きな変動を望まずに長期でバランス良く保有したい投資家向けのパターンと言える。
一方で「悪い場合」のシナリオでは、原材料価格の高騰が収まらず、円安によるコスト増が続き、売上は維持できても利益率がさらに低下する可能性がある。また、消費者の嗜好変化や海外市場の競争激化で主力商品が以前ほど売れなくなると、収益構造が弱体化し、投資家が成長性への懸念を強める。特に現在のグリコはPERが高い割に利益が伴っていない状態で、こうした環境が続くと株価は割高感から売られやすくなる。もし業績回復が遅れれば、5年後の株価は4,000〜4,800円あたりまで下落する可能性もあり、安定企業とはいえリスクも小さくない。
総合すると、江崎グリコは「超安定・高収益型」ではなく、現状はどちらかと言えば「ブランド力は強いが収益性が弱め」というバランスの企業であり、株価の大きな成長を見込むよりも、回復を待ちながら中長期でじっくり保有するタイプの銘柄といえる。5年間の株価も急騰は見込みづらく、業績回復次第では上昇もあるが、現時点では期待しすぎない方が堅実だ。安定性はあるが利回りは低いため、配当目的としてよりは「ブランド株」「長期的に緩やかな回復を待つ投資」向けの企業という印象が強い。
この記事の最終更新日:2025年11月30日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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