株価
meitoとは

株式会社meitoは、愛知県名古屋市西区笹塚町2丁目41番地に本社を置く食品メーカーで、2025年9月1日に旧社名である名糖産業株式会社から現在の社名へ変更した。1945年(昭和20年)に配置薬メーカー「富士製薬」として創業したのが同社の原点であり、食品メーカーでありながら“製薬発祥”の系譜を持つ点が非常にユニークである。1953年には旧・名古屋精糖の子会社であった製菓メーカー「オックス製菓」を吸収合併し、名糖産業としての事業を本格化させた。現在のブランド名“名糖(メイトー)”は、資本関係のあった名古屋精糖の略称「名糖」に由来しており、この歴史的背景がブランドのルーツとなっている。
同社の主力事業は菓子・飲料を中心とした食品分野であり、その代表格が1970年に発売されて以来ロングセラーとなっている「アルファベットチョコレート」である。当時、大袋商品がまだ一般的ではなかった中で、家族向けの“大容量チョコレート”という新しい提案を行い、市場に独自の地位を築いた。柔らかい甘さとシンプルな味わいで世代を問わず愛され続けているほか、記念企画や限定デザインも積極的に展開している。2016年には名古屋市の東山動植物園で人気となった“イケメンゴリラ”シャバーニをパッケージに採用し大きな話題となった。また、発売50周年記念として2020年に「10月26日=アルファベットチョコレートの日」を制定するなど、長年愛されてきたブランドだからこその独創的な企画力も同社の魅力である。
菓子分野ではチョコレートのほか、キャンディー、キャラメル、バウムクーヘンなど幅広い商品を展開しており、家庭用スイーツで一定の存在感を持つ。飲料分野でもココア、粉末清涼飲料、スティックコーヒーなど多様なラインナップがあり、日常の嗜好品を幅広くカバーしている。家庭向け商品だけでなく業務用商品の供給も行っており、食品メーカーとしての強みを多方面で活かしている。
一方で、同社のもう一つの大きな柱が“化成品事業”である。これは創業が製薬業だった背景を基盤としており、現在では東京都立川市にある化成品事業部で医薬品、酵素、動物用飼料、化学製品などを製造している。特に近年は酵素関連事業の強化に積極的で、健康産業・医療関係・バイオ分野など、食品以外の領域でも事業拡大が進んでいる。食品メーカーとしての顔だけではなく、医薬・工業素材メーカーとしての側面も持つハイブリッド型企業である点は、他社にはない強みとなっている。
また、食品素材事業では乳製品原料や砂糖加工品、甘味料、機能性食品素材などを扱うなど、一般消費者向けの商品だけでなく、BtoB向け原料供給ビジネスも強固に展開している。この多角的な事業構造により、景気変動や原材料相場の変動といった食品業界が直面しやすいリスクに対しても、比較的安定した収益基盤を持つ企業となっている。
総合すると、株式会社meitoは、チョコレートやバウムクーヘンをはじめとした菓子・飲料を中心に一般消費者に長年親しまれるブランドを育てつつ、創業時から続く製薬の流れを汲んだ酵素・医薬関連・化成品事業にまで領域を広げることで、多面的な事業展開を行う総合食品・素材メーカーである。創業80年近い歴史の中で築き上げてきたブランド力と技術力に基づき、今後も食品分野と化成品分野の両輪で成長を続けていく企業として位置づけられる。
meito 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度(単位百万) | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 22,727 | 95 | 1,132 | 700 | 41.5 | 26 |
| 2024.3 | 24,392 | 232 | 1,430 | -703 | -41.6 | 28 |
| 2025.3 | 28,071 | 1,405 | 2,671 | 4,719 | 278.8 | 35(記念) |
| 2026.3(予) | 29,500 | 1,600 | 2,800 | 2,000 | 118.1 | 40 |
| 2027.3(予) | 30,000 | 1,700 | 2,900 | 2,070 | 122.2 | 42 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位百万) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | -85 | 1,207 | -1,249 |
| 2024 | 2,903 | -3,611 | 1,718 |
| 2025 | 4,236 | 960 | -4,365 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 0.4% | 1.5% | 0.9% | - | - |
| 2024 | 0.9% | -1.4% | -0.9% | - | - |
| 2025 | 5.0% | 8.5% | 5.6% |
高値平均:41.5倍 安値平均:37.6倍 |
0.67倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
株式会社meitoの直近の業績推移を見ると、まず目につくのは売上の堅調な伸びである。2023年の227.2億円から2025年には280.7億円と、食品メーカーとしては順調にミドルレンジの成長を続けている。しかし、それ以上に特徴的なのは利益の振れ幅の大きさだ。2023年は営業利益が0.9億円と実質ゼロに近い状態で、2024年も営業利益2.3億円と非常に低水準だった一方で、2025年には営業利益14.0億円まで改善し、経常利益も26.7億円、純利益に至っては47.1億円と過去と比べても大きく上振れしている。
ただし、この2025年の急回復は一時的な要因が強く、翌年予想の2026年では純利益が20.0億円へと半減する見込みであり、利益が毎年安定して積み上がるビジネス構造とは言い難い。食品メーカーとして売上が堅調に増えているのはプラス材料だが、利益率が極めて低い年が続いた点は見逃せず、事業構造の脆弱さが表れている。
営業利益率を見ると、2023年が0.4%、2024年が0.9%というかなり厳しい水準で、食品メーカーでも最低レベルと言ってよい状態だった。それが2025年には5.0%までようやく改善しているものの、まだ業界平均と比較して十分とは言えず、収益体質の改善余地は大きい。ROEとROAも同様で、2024年は赤字のためマイナスに落ち込んだが、2025年にようやくROEが8.5%、ROAが5.6%まで持ち直している。しかし利益が大きくぶれる企業特性を考えると、中長期的に安定して株主価値を積み上げる構造にはまだ時間がかかる。
株価指標を見ても、2025年のPERは高値平均41.5倍、安値平均37.6倍とかなり割高である。PBRは0.67倍と一見割安に見えるが、これは株価が低いというより純資産が大きいことに起因するため、単純に指標だけで割安と判断するのは危険だ。特に利益の変動が大きい企業はPERが意味を失いやすく、急回復した年の数字だけで判断するのは妥当ではない。
総合的に見ると、株式会社meitoは売上の伸び自体は堅実なものの、利益率の低さや収益の不安定さが目立ち、食品メーカーとしての安定性という面では課題を抱えている。アルファベットチョコレートをはじめとしたロングセラー商品やブランド力は強みだが、投資対象としては利益の安定が乏しく、優先候補として強く推せる銘柄とは言い難い。
成長力のある中小食品メーカーを好む投資家であれば検討はできるが、安定配当や安定収益を求める投資スタイルには向かない。どちらかといえば「業績の波を許容しつつ、長期的にブランド価値と新規事業の成長を待つ」タイプの投資が必要であり、現状では積極的に買うよりも、利益率の改善と安定感が確認できてから判断しても十分間に合う銘柄であると言える。
配当目的とかどうなの?
株式会社meitoを配当目的で見たとき、まず確認すべきなのは予想配当利回りが連26.3期で1.90%、連27.3期で2.11%という水準に留まっている点である。食品メーカーの中には3%前後の利回りを維持する企業も多いことを考えると、meitoの配当利回りは決して高くはなく、配当株として特に魅力的というわけではない。むしろ中小食品企業としては標準か、やや物足りない部類に入る。
また、配当の裏付けとなる利益の安定性を考えると、meitoは毎年利益が大きく変動する特徴を持っており、安定配当を強く期待できる企業とは言いにくい。2024年の純利益がマイナスであった一方、2025年には47.1億円まで急回復し、翌年2026年には20.0億円へ再度落ち込むなど、利益の上下動が大きい。こうした振れ幅は配当余力に不安を残し、今後も安定的に増配を続けられるかどうかには慎重な見方が必要となる。
利回りが2%前後という水準は、株価が低迷して利回りが自然に上昇しているわけでもなく、企業側が積極的に株主還元を強化しているというほどでもない。記念配当を実施した2025年を除けば、配当政策は比較的控えめであり、配当を軸に投資判断を行う投資家にとっては大きな魅力とはなりにくい。
ただし、PBRが0.67倍と低い点は評価でき、株価が純資産に対して割安に放置されている状況ではあるため、リスクを許容して長期保有する場合には、2%前後の利回りを受け取りながら企業価値の見直しを待つという投資スタイルも一応は成立する。しかし、積極的に“高配当株”として選ぶ理由は乏しく、配当収入を重視する投資家にとっては候補としての優先度は低いと言わざるを得ない。
総合すると、株式会社meitoは配当目的としては物足りない利回りであり、安定配当株としての魅力は限定的である。どちらかといえば、配当よりも企業改革や収益改善による株価の見直し余地を狙うタイプの投資であり、純粋な配当狙いで購入する銘柄ではないという判断が妥当である。
今後の値動き予想!!(5年間)
株式会社meitoの現在値は2,362円だが、今後5年間の株価推移を考える上では、売上の堅調な成長、利益の振れ幅の大きさ、低いPBR、そしてブランド力と事業の多角化といった特徴が鍵になる。売上は右肩上がりで伸びているものの、利益は年によって大きく変動し、純利益がマイナスになった年もあるため、株価は業績に連動して上下しやすい構造を持っている。こうした特性を踏まえ、今後の値動きを3つのシナリオで見てみる。
まず良い場合のシナリオでは、主力の菓子事業が順調に伸び、アルファベットチョコレートやバウムクーヘンなどのロングセラー商品の販売が安定し、加えて化成品や酵素事業が新たな収益源として成長するパターンが想定される。利益率が改善し、2025年の大幅な利益回復が一時的ではなく継続的なものとなれば、市場の評価も高まり株価は見直される可能性がある。この場合、株価は5年間でおおむね2,800円から3,200円程度まで回復し、場合によっては3,500円台に乗せる場面も見えてくる。PBRが1倍割れという割安感が評価され、資金が流入する展開となる。
次に中間のシナリオでは、売上は伸び続けるものの利益の安定性は不足し、現在のような「伸びる年と落ちる年のばらつき」が続く状態を想定する。この場合、株価は業績に応じて上下するものの、長期で見れば緩やかに上向く形となり、2,300円〜2,700円のレンジを中心に推移する可能性が高い。企業としての安定感は一定程度あるものの、利益率の低さが株価上昇のブレーキとなり、急伸は望みにくい。配当利回りも2%前後と突出した魅力はないため、長期保有でじっくりというスタンスになる。
最後に悪い場合のシナリオでは、原材料価格の上昇や消費の鈍化、化成品事業の伸び悩みなどによって利益率が再び低下し、純利益も初期の低水準に戻るパターンが考えられる。営業利益が2023〜2024年のような薄利状態に逆戻りすれば、投資家からは成長性の乏しい企業と受け止められ、株価は割安でも放置されやすくなる。この場合、株価は2,000円〜2,200円程度のレンジに沈む可能性があり、市場全体が冷え込む局面では1,900円台まで下落する場面もあり得る。
総合すると、株式会社meitoは売上は順調だが利益の安定性に課題があり、株価も「業績の波」に連動しやすい。ブランド力はあるものの、食品メーカーとしては収益性の弱さがネックで、将来の株価も大きく跳ねるというよりは、利益改善があればじわじわ見直され、改善がなければ横ばいまたは弱含みという、比較的穏やかな値動きが想定される。長期投資を考える場合は、利益率改善の兆しや化成品事業の成長が確認できるかどうかが重要な判断ポイントになるだろう。
この記事の最終更新日:2025年11月30日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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